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ナイフ×眼鏡

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                    |  触発された「対決(要和訳)ナイフ×眼鏡だモナ‥‥。
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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 鼻歌が聞こえる。
 まだ眠いのに、畜生何時だよ。うっわまだ3時間しか寝てねえよ。シーツをひっぱって潜り込んだ。
「ゥルララララァ~!」
 階段を上って近づいてくる足音。それだけでももやかましいのに何だそれ、もう鼻歌じゃないよ。オペラか何かだよ。
 乱暴にドアが開いた。開けたってよか蹴破ったな。
「おはよう!爽やかな朝だぜぃ」
 昨夜一緒に眠ったはずの彼はきちんとスーツを着込んで、上機嫌の顔に返り血なんか浴びている。どっかで暴れてきたな。どうしてこう体力無尽蔵なんだろう。
 血圧が戻りきらない眼で睨みつけてやると、彼はオーバーに上体をそらした。ひらひらと手が泳ぐ。
「御機嫌ナナメだァ~ラララ」
「歌うな」
「まあまあまあ」
 ベッドにかがみこんできたその眼がきらきらしている。楽しいことがあったらしい。
 音をたてて口づけられた。
「お土産があんだよ」
「え?」
 眼鏡を探そうとした手を握られた。上を向けられた掌に何だか細くて湿った感触。
「ヤクソク、だ。約束」
 手の上で転がったそれは、汁をたらしているみたいだ。眼を近づけてよくよく見てみる。
「……おい」
「キレイだろ」
「指つきで指輪持ってきてどうしろってんだよ」
 まだ血のしたたる誰かの指。放り出してシーツで手を拭った。彼は眼を見開いて、それから顔を寄せてくる。
「デザインがまずかった?シルバーは嫌いか?」
「そうじゃなくて」
「なら何?」
 言いつのる顔を押しのけて眼鏡を取る。彼の困り顔がクリアになった。

 昨夜はじめて彼をベッドに入れた。
 正真正銘のサディストなのは判っていたけど、どうにもやりきれない気持ちをまぎらわす足しにはなるかと思った。時々そういう気分になるのは外道の暮らしをしているから。
 冗談めかして求愛してくる彼が引けばそれまでだし、本気だったらそれはそれでどうでもいい。
 他人の心なんて、自分のと同じくらい興味がなかった。
 なのに。
 痛くするどころか彼の愛撫は優しくて、何度も口づけながら微笑むその顔があんまり幸せそうで、どうしてかと聞いたら何度も抱きしめられた。
 愛してるからに決まってる、彼はそう言った。
 キレイな指で全身を撫でられて、自分でも知らないところが熱くなって、耳には言葉が、眼には微笑みがふりそそいだ。冗談だとばかり思ってた彼の言動、甘く見ていたのはこっちだったらしい。
「一生大事にする」
「明日死ぬかもしれない馬鹿だろ、俺もあんたも」
「死にやしない」
 熱にうかされながら言葉を交わした。
 体のすみずみまで見られながら、裏側や奥まで彼がしみとおっていく。
 信じられない、と思った。他人の命をもてあそぶ外道が口にしていいことじゃない。
 こんなこと、俺に起こっていいことじゃない。虫けらみたいに俺は人を殺す。彼だってそうだ。
 いつかは同じように殺される。
「いつまでも俺たち、二人で生きてくさ」
「……嘘だ」
「嘘じゃない」
 薄い唇が指先をたどった。
「絶対、だ」
 何度めかに愛してる、と言われた時に頂点がやってきて、後は覚えていない。

 彼は指を取り上げて、薄暗い部屋で鈍くひかる指輪をはずした。指の方は無造作に放り投げてしまう。
「ほら、これでどうだぃ」
「どうしてそこで指輪な訳」
「約束っつったら指輪だろ?」
「どうしてそう…」
 一回寝たくらいで、という言葉を呑み込んだ。
 口に出そうとしたら、胸がつっかえたのだ。
「奴隷だったら首輪か焼き印なんだけどよ、おまえは奴隷じゃないし、傷つけたくないもん」
「何で」
「何でって、おまえはその、トクベツだからだよ」
 彼の眼が真ん丸に見開かれ、人さし指がつきつけられる。
 一生、と彼は言った。
 一生ともにいたいと。
「まじかよ」
「おー。まじだよ」
 華やかに笑って抱きしめる腕に迷いはない。いつだってそうだ。
「これで一生、おまえといるってこった」
 常識もモラルも何もない人殺し。頭は切れることも、キレることもある。ナイフをいくつも隠し持ち、誰かれ構わず振り回す。
 そんな男が俺を愛すると言う。一生。
 一生。
 くらくらしてきた。頬が熱くなる。まともな判断ができやしない。
「どこにはめるんだっけ」
「薬指じゃないか?フツー」
 答えてからしまった、と思う。彼はにたりと笑って指輪をかざした。強引に手をとられ、はめられてしまう。

「……すかすかだな」
 彼のことだから、指輪にサイズがあることなど知らなかったとしても驚かない。洒落者で着飾るのは好きだけど、いまいち抜けている。殺しで興奮していたならなおさらだ。
 額に手を打ちつけて、しばらく口の中で奇声を押し殺していた彼はひとりで頷いた。
 順番に俺の指を試していき、おさまったのは左手の人さし指。
「これでよし、と」
 ためつすがめつしてから、彼はびっくりするほど真剣な眼をして指輪に口づけた。
「今度は俺の手にあうやつ持ってこないとな」
 指の慣れない重みが俺の口を滑らせたに違いない。
「それは俺が選ぶよ」

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ デキゴコロデヤッタ イマハハンセイシテイル
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