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弟の手

l>PLAY ピッ◇⊂(・∀・)オリジナル投下

不謹慎な時事ネタなので、ヘタレ以前に失礼かも知れません…

関東を震度7の地震が襲った時、弟の渚と共に建物の下敷きになった。
もう4日は経つ。
体中痛くて、救急隊は来なくて、このまま死ぬんだと思った。
「みさき」
意識を手放しそうになる度、渚は俺の名前を呼んでぎりぎり触れ合ってる手を繋いだ。
「まだ生きてる?」
「駄目だ…」
こんな弱音しか吐けないなんて、兄失格だな。
頭も口の中も背中も腕、腹、かかと、爪先全部痛い。
千切れてしまえばどんなに楽か。
「俺は岬と違って全然痛くないのに…」
痛みに差があれ状況は変わらない。
きっとこのまま
「…兄弟仲良く死ぬんだ…」

もっと生きたかった。
こんな辛い死に方嫌だ。

まだ俺も渚もやりたい事が沢山あるのに。
ちくしょう、死ぬのか。
「駄目だよ」
「渚…」
唯一痛みを感じない繋がった手に力がこもる。
「生きて、岬は生きてよ」
「なぎさ?」
「まだやれるよ。生きて。これから何があっても絶対に生きてね」
崩れた建物に挟まれて顔なんか見えないけど、渚が笑った気がした。
「渚どういう意」
「痛い!」
途端に渚が叫ぶ。
辺りで人の声が聞こえる。
「痛い!痛い!痛い誰か早く来て!」
「渚?!」
繋いだ手がカタカタ震える。
誰か来て。
誰か、渚を、俺の弟を助けて。
「…死、ぬなぁっ!」
必死で叫んだ。
無我夢中で言葉にならない声を叫んだ。
がらがらと掻き分けて、誰かが来たのが分かった。
助かるんだ!俺達は助かるんだ!
生きて家に帰ろう…
無意識のうちに叫ぶと頭が遠くに離れる感覚が襲いそのまま暗闇に沈んでいった。

暗闇の中、声が聞こえる。
光が刺す。

 ひとがいるぞ
 だれかはやく
 たんかをだせ

渚、お前

人を呼んでくれたんだな。
ありがとう。
早く家に帰ろう。
出来るだけ早く一緒に…
我慢出来ずに目を閉じる。
どこか遠くで、誰かが「さようなら」と言ったのが聞こえた。
少しだけ、渚の声に似ていた…

目を覚ますと真っ白なカーテンが見える。
風に揺れる白。
目に眩しくて、瞑ったり開いたり、瞬きしてやっと目に慣れる。
手が動く。足も頭も自由に動く。
あぁ、生きてる。
良かった。生きてる。
俺は大丈夫だ。
「岬君、目が覚めましたか?」
「…みさき!」
医者が笑う。母さんは泣いてる。泣きながら俺の手を握る。
渚の手を思い出す。
きっと俺は、渚がいなかったら、手を繋いでくれなかったら諦めていただろう。
ありがとう渚。
お前のお陰で生きてるんだ。
緊張して声がうまく出ない。もどかしい。

「か、さん…なぎさ、ぁ、、どこ?」
「! みさ…き…っう、っうぅ…」
「亡くなられました」

亡くなられた?
嘘だ。
あんなに励ましてくれた渚が死ぬなんて。
俺は生きてるのに、渚は死んだのか?
そういえば渚、痛いって言ってた。あのまま死んだのか。
痛いと叫びながら死んだのか、渚。
死ぬなんて、そんな、酷過ぎる。

「渚君は…即死だったよ」

「あんたが頑張ってる横で…渚は…もう…あの子は…」
嘘だ。母さん、だって俺達ずっと側にいた。
痛い時励ましてくれた。
手を繋いで生きてね、って言ってた。
「4日も…一人で頑張ったねぇ…岬」
即死な筈が無い。
渚は生きていた。
痛みに震える俺の横で4日間生きていた。
即死な筈が無い。
「なぎさ…」
涙が溢れた。
死んだのか。いや、死んでたのか。
あの声は、さようならの意味はきっと…

俺のために励まして、俺のために助けを呼んで、
そうやって守ってくれたのか?

俺生きるよ、必死で生きてくよ。
お前の分も生きていく。

□ STOPピッ◇⊂(・∀・)スイマセン

本当に申し訳ありません。


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