Top/71-71

#吉村俺と寝ろ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

#吉村俺と寝ろ

 「吉村さん、男はぼくが初めてじゃないですよね」
 歯切れのいい、魅力的な東国の言葉つきで男が言う。遥か昔には「東(あずま)言葉」と呼ばれた。今は「標準語」などと言うが、元来関西人はそんなスカした言い方はしない。「関東弁」と言うのである。なんで東言葉が「標準」やねん、である。
 やや廃れた用法だが、「東京弁」とも言う。話者の出身地が茨城でも神奈川でも埼玉でも群馬栃木でも、ことによると静岡やら山梨でも、いやひどい場合は東北やら愛知、いいやもしかしたら関西以外の西日本でも、とにかくTVでアナウンサーが喋っているのに近い(と関西人が思う)イントネーションや語法文法で喋ると「東京弁」なのである。
 話をややこしくしてしまったが、もちろん、この男の生まれ故郷であり、新しい芸名の由来ともなっているあのミッキーマウスと落花生の県でも同様だ。彼は非常に美しい「東京弁」のネイティブスピーカー、飄々とした東男(アズマオトコ)である。
 その声もいい。やさしく、それでいてセクシーで、実に気色のいい声だ。
 長身の自分よりもまだ上背のある大柄な男の裸の肩に寄りかかりながら、絶大な支持率を誇る大阪府の若き首長、今を時めく日本維新の会副代表はふと呟いた。
 「『そこら辺が関西人の大雑把な性格をよう表しとる』なんて言うたら他府県の人、特に『じゃない』方の府、とか言うてるお高くとまった人らが怒るやろなあ。『一緒にせんといてー』とか言うて」
 「え?何か言いました」
 「いやべつに、こっちの話。っていうか、なんでぼくと君がこうナチュラルに事後のピロートークする展開になってるん?ぼくら面識ありましたっけ」
 「そういうメタな発言はやめて下さい。ただでさえよくわからない作品の方向性がヤバイくらいに定まらなくなります。面識があったかどうかは忘れました。ただ吉村さんが新喜劇に出演したことは嘘みたいですが実際にあります。
 では、さっきの質問です。吉村さん、初めてじゃないですよね。あなたを美味しくいただいちゃった最初の男は誰ですか?やっぱり橋下さんですか」
 男はくるっと吉村に向き直り、両手首を掴んで仰向けに押し倒し、でかい図体を伸し掛からせた。吉村もでかいので二人の絡みは結構な迫力である。
 「教えて下さいよ。橋下さんはあなたのドスケベな体にどんないやらしいことをしていじめたの。ここを、こうしたのかな」
 「いや、ちょっと、そんなんしたら・・・・やっ」
 「あなたは橋下さんにこんな所をこういじくられて、どんな声を出したんですか」
 「くっ、公平、あかんて!」
 「ハハハ、大丈夫です、濃厚接触してもイソジンでうがいをすればいいって大阪府で一番偉い人が言ってましたから」
 「自分、ぼくのことバカにしてるやろ・・・・あーっそこなぶったら」
 「一言言っておきましょう。あなたの関西弁と一人称『ぼく』はあざとい」
 「そんなんゆーたかて、生まれた時からこの言葉喋っとるんやからしょうがないやん・・・・やんっ。イケメンは関西弁喋らんと思っとるんか!?・・・・あんっ」
 「イケメンって自分で言わないで下さい。見た目を飾って人気を取るように思われては却って逆効果ではないのですか?」
 「あっそこいいッ・・・・何を、票は顔で取るんや!」
 「ほうー、まだそういうこと言います?かわいくないですね、やめちゃおっかなー」
 「いやっ、やめんといてッ」
 「おお、吉村はんよう勃っとる!」
 「イントネーションが違うわ!」
 「じゃあ『吉村はんよう勃っとる』ってネイティブアクセントで言ってみて下さい。でないとしませんよ」
 「堪忍して、お願い」
 「それがあざとい、と言ってるんです。とにもう、うちの猫くらいかわいいんだから」

 「吉村さんの奥さん、元CAでえらく美人なんですって?顔も身長も、何もかも完璧な旦那が、男に体を弄ばれてあられもない姿できゃんきゃん言ってるなんて知ったらどう思うんでしょうねえ。週刊誌やネットにはどんな風に書かれるでしょう」
 二戦目を終えて一息ついた千葉は、法律家の取り澄ました横顔を見やる。
 「顔と身長しか取り柄ないみたいな言い方せんでくれる?」
 「そんな風に聞こえました?」
 千葉は吉村の髪に軽く手を絡ませた。まだ三十代と言っても通るであろうこの男、きれいな顔して腹の中は真っ黒だ。元は橋下の門下でサラ金の顧問弁護士を務め、法外な相談料を取って立場の弱い相手にスラップ訴訟を仕掛けていた、いわばインテリヤクザだ。金にも汚いし人も陥れる。極右思想の持ち主であり、計算高く権力志向であるのは言うまでもない。メディアを駆使したイメージ戦略とは本当に恐ろしいものだ。水で洗えば娼婦も処女とばかりに、よりによってこんな薄汚れたチンピラ上がりを捕まえて、清廉潔白、正義の志士であるかのような幻想を大衆に抱かせることに成功しているのだから。
 なんでこんな若くていい男が政治家なんだ――うだつの上がらぬ政敵らが臍を噛んで悔やむのは容易く想像がつくが、果たして大阪府市民はこのタチの悪い色男に何かいいことをしてもらったのだろうか。千葉は2020年に芸名まで改めて本拠地を東京から大阪に移した身であり、関西の政情には疎い方だが、そんな彼の目にもあまりそうは見えなかった。
 日本第二の都市でありながら、大阪は貧しい。とても貧しい。千葉の住む西成は特にそうだ。
 それでも、「何か楽しげなこと」「華やかで勢いのありそうなこと」に心を寄せずにはいられない、熱狂せずにはいられないのが大阪人の性なのか。その大らかさに救われる人も多いのかも知れない。ひょっとしたら千葉自身も含めて。
 「何と書かれようと、ぼくは構へん。妻のことなんか言わんといて。白けるわ。公平、三回目しよーな」
 西成の慎ましい住まいで一緒に暮らしている雌猫が甘えてじゃれついてくる時のように、同い年の男が小首を傾げ、瞳をキラッと光らせて千葉に身をすり寄せてくる。やれやれタフだなと思いながらも、千葉はその媚態に負け、男を抱き寄せ、賢しらな唇を存分に吸った。
 「君は、巧いで」
 千葉の腕の中でしどけなく、されるままになった後、吉村がふと言った。
 「何がですか。キスがですかフェラチオがですかおっぱい舐めがですか」
 「ちゃうわ。芝居の話。君は才能あるで。おもろいで。『お笑い芸人』なんて呼び方失礼や。君らみんな、関西が誇る立派な舞台役者や」
 「ありがとうございます」
 「よう来た。ほんまによう来た。大阪に骨埋める気なんか?」
 「ええ、そのつもりです。でも、あなたはいずれ国政に戻るつもりなのでは?」
 吉村は笑み、答えない。今ではそんな機会も激減したが、曾ては千葉も何度も見たことのある、あの繊細な洋菓子のように美しい国会議事堂。春は花、秋はもみじ葉萌え出ずる麗しの帝都、永田町。千葉は再び、したたかな恋人の細身だが筋肉質な体を強く掻き抱き、その耳朶を軽く噛み、舌先で嬲った。
 「吉村センセイ、教えて下さい。同性どうしでも法律上の不貞行為になるのですか」
 「だからそういう話やめてって言うてるやんか」
 「なるんですか、どうなんですか」
 「現行法では、厳密に言うとならないと思いますが、グレーですね。裁判官によって判断が分かれるでしょう。・・・・くくっ」
 「そうなんですか!その規定はどこに書いてあるのですか」
 「民法第七百七十条です。あっ耳めっちゃいいッ」
 千葉はくすっと笑って、吉村の耳から首筋へと舌を這わせた。両手の指で双の乳首を転がし、引き締まって張りのある胸筋を撫で回しながら何度も舌を行きつ戻りつさせ、たまに肩を甘噛みすると、おもしろいように吉村が反応する。
 薔薇色に上気した端整な顔を至福の思いで見ながら、腰から下へと手を伸ばした。臍まで反り返る情熱をそっと掌で包み、何度か上下させる。
 「まだイカせないよ、もうちょっと我慢してね」
 千葉が冷静に囁くと、彼は切なそうに眉根を寄せ、身を捩り、濡れた唇の間から深く、苦しげな息をついた。その様を見て、千葉の下腹にもまた新たな血流が漲ってくる。
 指先に熱く滴る蜜を舐め、自分の唾液と混ぜ合わせて吉村の秘めやかな部分に塗りこめた。
 千葉は大きく腰を引き、吉村の開かせた足の間に荒ぶる雄を一息に叩きこんだ。吉村の体が跳ね、二人の巨漢の体重と激しい律動にベッドのスプリングも悲鳴を上げる。
 「世の中が穏やかになるとろくでもない侍がのさばりやがる」
 なんかの時代劇で渡辺謙が言っていたが、本当にその通りだな。吉村の嬌声と肉茎への刺激を心ゆくまで楽しみつつ、その体の上で腰を揺り動かしながら、千葉はそんなことを考えている。維新だとか、新選組だとか。百五十年も前の無頼に憧れ、自らを準えるとは、何とも安っぽいヒロイズムだ。抜刀して斬り結ぶでもなく、やることといえばツイッターで小競り合い。いい年こいた男や女が恥ずかしくないんだろうか。
 「吉村さん、きれいだよ。最高。すごく・・・・締まるね」
 枕の脇で千葉が吉村の片手に片手を重ねると、吉村は焦点の定まらぬ目で快感に揺蕩いながら、自分から五本の指を絡みつけ、ひしと握り返した。
 平成が令和と改まり、自分は金成公信(かねなりきみのぶ)という名前を捨ててこの異邦、西国へとやって来た。穏やかなる世にのさばるのは、ろくでもない侍と、度々名前を変えることを何とも思わぬ無節操な人々。どれだけ誤解されても決して名前を変えぬ不器用な人々。こんな連中のために毎日、「彼ら」の神とやらに祝詞を奏上しつつ、ついに嫡嗣を得られぬまま老いてゆく徳仁。
 そしてそれら全ての時代の情景をどこか他人事のように冷めた目で見ている自分。実際に他人事だからだ。
 千葉がこの国で生まれた時から感じてきた、途方もない疎外。
 それを権力者、まして今自分に組み敷かれ犯され、えも言われぬ艶な姿で身悶えしよがり狂っている冷淡で身持ちの悪い男にわかってもらおうなどとは、毛頭、思わない。ただ相手の肉体を思うがままにあしらい、欲望を捌けさせ、ひと時の快楽を分かちあうだけだ。恋と言えるほどのものでもない。
 「公平・・・・!」
 千葉が吉村の中で達する瞬間、吉村が目を見開き、千葉の腕に強くしがみついた。すぐ力が抜けた。荒い息をつきながら千葉が見ると、年若く、勝ち気な政治家は、両者の体液に塗れ、乱れた白いシーツの上で意識を失っていた。

 「公信」
 シャワーを浴び、身支度して先にホテルの部屋を出ようとした時、まだシャツに腕を通しただけの姿でベッドにいた吉村から本名で呼ばれた。
 「はい」
 振り向くと、
 「また、NGK(※)行くわな。今度は観客で。もちろん一人で」
 「ありがとう、待ってます。他のお客さんに気づかれて取り囲まれないように気をつけて」
 「わかってる。ええ芝居見せてーな」
 吉村は目まですっかり和ませて笑顔になった。この男にはあまりないことに。

Fin.

 「大衆は女と同じだ」
 「大衆は理性で判断するよりも、感情や情緒で反応する」
 「大衆の多くは無知で愚かである」
 「政策実現の道具とするため、私は大衆を熱狂させるのだ」
(アドルフ・ヒトラー)

※なんばグランド花月。大阪市中央区難波千日前にある吉本興業直営の劇場。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

吉村はん、心のチンコは挿れても票は入れしまへんで


このページを共有:

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP