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GCCX再放送の239話を見て滾ってしまった音声と16代目
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「お疲れ様です」
「どうも」
ぺこりと頭を下げる姿は、年齢以上に若く見える。それでもインスタントコーヒーを濃いめに作る癖は、やっぱり普通の大人の男なんだよなと思わされた。
「カガ! そこ大道具通るから、ちょっと外出てくれ!」
内線がビーと鳴り、壁のスピーカーから声がした。俺とカガくんは顔を見合わせる。長い大道具を持ち込むときは、どうしてもこの給湯室まで入り込んでしまうから、非常階段に出るのがお約束だ。
「了解でーす」と声をかけ、カップ片手にカガくんは部屋を出る。俺も差し入れの菓子をテキトーに一掴みして後ろに続いた。
「終電、大丈夫ですか」
「あ、え、俺? 平気だよ。今日は飲みだろうし」
「フカワさん、大活躍でしたもんね」
朝ドラのように屈託のない笑顔を向けられて、俺は少し面食らった。本当に、カガくんは、少年のようだ。
「この企画だけはミスれなかったからなー。ロケハンとか初めてやったよ」
あ、本来の意味でのロケハンはあるけどね。そう付け足すとカガくんはくぐもった笑い声を上げた。彼の癖だ。だから音が、少し拾いにくい。
「……カガくんも、けっこう頑張ったでしょ」
「そうですね」
こともなげに肯定する。細い目の下には隈も見えるし、白い肌は荒れている。一応はテレビに映るということでドーランをしてはいるが、そういうのが苦手なのだろう、カガは収録が終わるとすぐに顔を洗ってしまう。
俺が出るときはほとんどが偶然で、少し前のクイズのときもほとんど予期しないタイミングだった。同じスタッフだけど、でも、少し違う。
手すりにカップを置いて、握っていた菓子を一つ差し出した。軽く会釈をして、ありがとうございます、と受け取る。仙台銘菓を見て、そういえば今度はフェリーでやるのかと思い出した。
「フェリーでのソフトってなに?」
「リュウケンデン3です」
「うっわ~! うわぁ……それは……」
「延長しそうですよね」
その笑いはもはや諦めたようでもあった。
「でも、いいです。それはそれで。視聴者の皆さんは、あの人の諦めないところが、好きなわけですから」

夜の東京の、制作会社の非常階段は、不意に何かを話したくなるんだろう。突風が吹いて不安定なカップを二つ押さえた。いつの間にかカガくんは飲み干していたので、俺もカラにして、足元に置いた。
「続けられそう?」
そのまま、視線を床に、地上を走る車のライトに向けたまま言う。
「それは、……えっと、助っ人を、ですか?」
「会社をさ」
少しだけ目線を向けてみれば、おたおたと不安そうな顔をしていた。
「いま歴代の助っ人さんを呼んでの企画やってるけど、結構やめちゃった人多いんだよね。こういう仕事だから、まぁ、無理になっちゃうのも分かるんだけど……」
俺もあの頃とは違う。腹も出たし、生活も変わった。夢を与える仕事だというのは分かる。分かるが、俺たちはどうしようもなく、大人にならないといけない。
この人はどうだろうか。カガくんはしばらく目を泳がせていたが、やがてキッとした顔を向けた。
「やるだけ、やってみます」
「……うん。あははは、それがいい。それぐらいがいいよ」
嫌になったらやめてもいい。人生はいくらでも、好きなところでやり直せばいい。
「ごめんね、なんか詰めるようなこと言っちゃって」
「いえ」
「連絡先教えてよ。俺も番組長いから、少しぐらいは話聞けるし」
「あ、はい」
交換してからなんてことない話をして、そろそろいいだろうとドアを開けた。あ、と振り返ると、カガくんはしっかり俺のぶんのマグカップも持っていた。口に思いっきりお菓子を咥えて。
「甘いの好きじゃなかった?」
ぶんぶんと首を横に振られる。もらうだけもらって忘れてたというところか。
「半分もらおうか」
今度はこくりと縦に頷かれた。顔を近づけて、カガくんの口からはみ出ている部分をがぶりといただく。ついでに俺のカップもと手に触れると、信じられないぐらい熱くなっていた。
「おわ、カガくん、大丈夫?」
「ふぁい、ひょうぶ、です」
「そう? 俺、トイレ行きたいから先戻るね」
「はい……」
ちらっと見ると、カガくんは口を押さえて赤くなっていた。それはやはりまだ初々しい、中学生かそこらに見えた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
16代目が可愛すぎて禿げる


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