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お皿は片付けるべき

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某ちっちゃくなっちゃう名探偵のえふびーあい×こーあん
俺僕混在は仕様です

ガチンガチャバタン。
玄関の扉が開けられ誰かがこちらに向かってくる気配がする。
誰か、なんて勿体付けたがこの部屋の合鍵を持っている人間なんて一人しかいない。
しかし彼が実際に合鍵を使うことなど数えるほどしかなかった。
彼は僕が在宅している時にしか訪れない上に、わざわざインターフォンを鳴らしてドアを開けさせるのだ。
一度、料理をしている途中のこともあるのにいちいち手を止めさせるなと文句をぶつけたこともあった。
そのウィスキーボトルチャームのついた合鍵は飾りですか!?と。
彼の返答を聞き、二度と言おうとは思わなかったが。

「いらっしゃい、と君に迎えられるのが嬉しいんだ。ここにきてもいい許しを得ているようで」

合鍵を渡している時点で部屋に入ることなどとっくに許しているのに。
いつだってふてぶてしい態度でこちらをおちょくってくる(そんなことはないというがあれは絶対におちょくっている!)彼の
らしくない弱気がなんだか可愛らしく思えて、ならいいかなんてほだされてしまった。
我ながら単純だと自重する。
以来いつだって彼の来訪はインターホンが伴うのに、はてさて今日はいったいどうしたことか。
鍋から目を離さず考える。
リビングダイニングの入り口は、今僕が立っているカウンターキッチンのからはやや死角。
そちらの方をあえて見ないように。
ワーテルゾーイは初めてだ。初回で失敗したくはない。
くつくつと小さな泡を立てるミルク色のスープからはなかなかに美味しそうな匂いが立っている。
味見しようかとスプーンに手を伸ばしたところで、背中から無言で抱き着かれる。
腹に回された腕はいつになく力がこもっていて、なんだか迷子が母親を見つけたみたいだ、とクスリと笑う。
この人は、やっぱり可愛い。
「お腹すきました?」
背後の男は無言で首を振る。
彼のトレードマークであるニット帽からこぼれた癖のある長めの前髪がうなじを掠めてくすぐったい。
「すいてなくてももうすぐ出来るので、食べてください。初めて作ったんであんまり自信ないですけど」
無言。おしゃべりな男ではないがこちらの問いかけに応えないほど不愛想でもない。
声の代わりに回された腕の力が一層強くなった。
「ねえ苦しいですよ。いったん離れて、あなたのしょぼくれた顔見て笑わせてください」
「……しょぼくれてなどいない」
そんな拗ねた声音で言ってもね、と苦笑する。
本当に珍しいこともあるものだ。

「キスがしたい」
「いつだって好き勝手にするでしょう」
「してもいいのか?」
「あなたがしたいなら。そのためにはまず腕を緩めて」
言葉の途中で強い力で体がひっくり返される。
そのまま片手で顎を掴まれて、噛みつくように口づけされた。
もう片方の手は後頭部に回されがっちりホールドされている。
顎を掴んだ手が無理やり口を開けさせ、彼の舌が無遠慮に口内に侵入する。
くそっ誰だこいつを可愛いとかほざいた浮かれ野郎は!俺だよ!!
舌に舌を絡ませ、引きずり出し、なめ上げ、吸われ……
濃厚な口づけに注がれる唾液が飲み下しきれず口の端をから溢れ顎を伝う。
それに無礼男の意識が一瞬それた瞬間、渾身の力を込めた拳を男のみぞおちに叩き……
こもうとしてあっさり止められた。
むかつく!誰だこいつを可愛いと(ry
「何なんだお前は落ち込み詐欺か!」
「落ち込んでなどいないといっただろう。だから詐欺ではない」
やっぱり一発殴るべきだとファイティングポーズを取ろうとして、はっと気づく。
「やばい、鍋!」
「火なら止めたぞ」
「いつだよ!」
「君がキスに夢中になって俺の背に腕を回したあたりで」
「俺がいつ腕を回したっていうんだ」
「気づいていなかったのか。無意識にあんな誘うような仕草をするとは君は」
やはり心配だ。
ぼそりとつぶやいた音は聞かせるつもりはなかったんだろうが、しっかり聞こえている。
はーっ、と腰に手を当て大きくため息をついた。
「もういいです、ご飯にしましょう。皿、出してください。上の深いやつ」
「了解」

食卓は静かだった。ナイフとフォークの立てるわずかな音しかしない。
時折、何か言いたげにこちらをうかがうグリーンアイを完全に無視して黙々と食事をつづける。
言いたいことがあるならさっさと言え。
喋らないせいで食事はあっという間に終わってしまった。
「美味しかったですか?」
片付けようと席を立ちこちらの皿まで手を伸ばす男に声を掛けた。
一瞬きょとんとした顔を見せた男は、すぐにいつものポーカーフェイスに戻りああと短く答えた。
「何ですか、ああ、って。美味しかったら美味しかったと言え」
「すまない。とても美味しかった。クリーム煮のようだがさらっとしていて食べやすかった」
「そうでしょうとも。僕の作ったものよりおいしい物にはきっと現地でも出会えませんよ。僕の味に焦がれるがいいざまあみろ」
男の目つきが一瞬鋭くなり、すぐに解かれた。
知っていたのかとつぶやく男にふふんと得意顔で答える。
「僕を誰だと思っているんですか。探り屋バーボンは伊達じゃないんで」
まあ彼がベルギーに行くと知ったのは別件調査中の偶然だったのだけれども。別にいう必要はないだろう。
目に見えて彼がまたしょぼくれた。
任務のためなら恋人と平気で別れた男とは思えない姿だ。
僕も彼がベルギーに行くという以外は詳しいことは知らないし知ろうとも思わない。
それは彼の領分だ。
だが、この強靭な精神を持つ男がここまで思いつめるということは、よっぽど危険な任務なのだろう。
なんだかかわいそうになって、今日ぐらいは優しくしてやろうかななんてつい仏心がわいた。
「待っててあげますよ」
虚を突かれたように彼が顔を上げる。
「僕はこう見えても気が長い方なんで、」
「何かの冗談か…っいたいぞ」
「口をはさむから蹴られるんです!……ごほん、僕は気が長い方なんで、生きてる限りは待っててあげますよ」
僕の言葉を聞いた彼は、さっきまでの情けない顔が嘘のようにいつものふてぶてしい笑顔を見せた。
「そうは言っても、君は俺が死んだと言ったって信じないだろう?」
かつて彼が「死んだ」とき、俺はそれが信じなかった。
この世界一抜け目のない何をやるのもスマートでいっそむかつく男が死ぬわけがないのだ。
「あなたを殺せるのは僕だけなので」
「ああそうだ。俺を殺せるのは君だけだ。もっとも君ならば銃もナイフもいらないがね」
そういうと男は僕の腰に手を回しもう片方の手を顎に添え、耳元にささやいた。
―――この瞳だけあればいい。
ああ。それこそ僕のセリフだ。
そのまま瞼を閉じ彼の口づけを受け入れた。そして導かれるままに寝室の扉をくぐっていった。

「それで?どれくらいなんですかあなたのベルギー行きは」
事後の気怠さに身を任せうつぶせたまま、傍らでたばこを吸う男を見上げる。
俺の部屋でたばこを吸うなといつもなら怒鳴りつけるが今日だけは見逃してやろう。
男は手を伸ばし俺を頭を撫でると、悲しげな色を緑に浮かべこういった。
「二週間だ」
「は?」
「二週間も君に会えない」
「はああああああああ?」
にしゅうかん。ふぉーてぃーんでいず。さんびゃくさんじゅうろくじかん。
それだけか。それだけなのかFBI。
「二週間も君に会えない触れられないキスできない。こんなつらいことがあるか」
おいこいつは誰だ。
『「銀の弾丸(シルバー・ブレット)」の異名を持ち、組織から最も警戒されているFBI捜査官。
クールでポーカーフェイスであるため、あまり感情を表に出すことはない』(Wikipediaより)じゃなかったのか。
それが二週間ぽっちの遠征で恋人に会えないと嘆いている。
こんな腑抜けに誰がした。俺か。
なんだか途轍もなく馬鹿馬鹿しくていろんなことがどうでも良くなってきた。
ベルギー料理なんて作るんじゃなかったな、なんて考えながら煙草を取り上げる。
「おい」
「僕の部屋は禁煙です」
不満げな駄々っ子にキスを一つ与えて、たばこを灰皿に押し付ける。
最初のキスで一回、さっきので一回。
「ねえ赤井、もう1R、しましょ?」
それじゃあもう一回必要だよね。
二週間も恋人と離れる可愛そうで可愛い彼のために、仏の顔も三度まで。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ

スパダリ大好きなのに全然スパダリってくれなかったよ!


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