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北方三国志 趙雲→劉備(→関羽)

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                    |  某喜多方三国志チョウウン→リュビ(→カンヌ)なお話。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|   今更投下な感じ
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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その一報が入った時には、自分は遠く隔たれた場所に居た。
吐く邸の城と、駅週の自分の間は遠い。思いの他遠かった。
実際の道のりよりも、別のものが遠かったのだ。
歯痒い思いが募る。何に対してかは判らない。しいて言えば全てだろう。
僅かな時を得て、知らず内に駆けて居た。

「チョウウン殿」
息を切らせ、数騎の共しか連れて居ない自分を見て、軍師は驚いたようだ。
城へ向かう途中、夜目にも息を飲んだ表情が、暗い夜道でもぼんやりと見える。
「来られたのですか」
「すぐに帰るつもりでは居る。殿は」
すでに事情は判って居る。あえて口に出す必要も無いし、その時も惜しい。
「一報を受けられた際は、自室に戻られました」
「剣を研いで居たか」
「はい。…チョウウン殿」
何も言う必要は無い。目で頷くと、※イ殿、と一度呼び掛けた。
切望する思いよりも何よりも、何かに擦り切れそうな声だ、と思う。
そんな声を出す程、自分は取り乱しているのだろうか。
自分の声を聞いた軍師は、頼みます、と言った切り立ち尽くし、駆ける自分を見送った。

城へ着いた頃には、既にカンヌ将軍死亡の報から数日経っていたものの、未だ混乱は続いていたようだった。
表面的な騒動というよりも、深い部分での混乱と、重い沈んだ空気だ。それは殿から直結したものだ。
そしてその混乱は、確実に自分にも及んでいるのだ。

にわかには信じられない一報。
皆離れざるを得ない状態ではあったが、自分の兄と慕う男が、死んだのだ。
そしてカンヌ、チョウヒの二人と殿とは、自分が出会う前からの、兄弟だった。
血より濃い絆で結ばれていたのだ。
今の殿の心は、荒れ狂う嵐にも似たものだろうか。
それとも、嵐の中心のように、穏やかなのだろうか。

殿の自室の前に着いた後は、何も言わず中へと入った。
警護のものも、何も言わず通してくれた。
察してくれたのだろうか。室へ入ると、剣をじっと覗き込む背中が見えた。
「チョウウンか」
「殿」
涙を流してはいなかった。しかし今まで流れていただろう、涙の痕は頬に残り、肌が少し赤く腫れている。
澄んだ眼差しだったが、時折視線が宙をさ迷う。
漢中王となった後でも、帝となった後でも、この人は変わらない。変われないのだ。
何処か虚ろな視線が痛々しいと同時に、胸の奥が鈍く痛む程、感動すら覚える。そして羨ましいとも。
羨ましいと思ったならば、胸の奥の痛みは、感動とは呼べない。
もっとどす黒い、嫌な感情だ。それは今は必要無いので、押し隠した。
「お前と、チョウヒと、カンヌ。兄弟が一人でも欠けてしまうとはな」
不謹慎ではあるが、兄弟と認められた言葉が、とても嬉しい。
こんな今でさえなければ。隠した嫌なものが、頭を出しそうになる。
「…殿。仇は、きっと」

「ソンケンを、殺す」

はっきりと吐き出した声は昏く、重たいものだった。
表情こそ、凪いでもいないが、荒れ狂う内面を表すかの声だ。
しかしそれきり、殿は黙り、また自分も黙った。
ただ殿の持つ剣に映る、殿の姿を見詰めていた。

一晩、語り合うつもりだったが、殆ど話らしい話もしなかった。
ただ酒を飲み、昔の話を一つ二つとしただけだ。
自分と殿が会った頃、チョウヒが拗ねて暴れた話を、初めて聞いた。
他にも、カンヌとチョウヒと殿が、初めて出会った頃の話などを聞いた。
酒に弱いわけでは無いのだろうが、殿は杯を幾つか飲んだだけで、すぐにぼんやりとし始めた。
「もうお休みになられた方が」
「そうだな。そうさせて貰おう」
「今宵は、このチョウウンが警護致します」
「お前も休んでくれ。警護は他の者がするだろうから。夜通し駆けて来たのだろう」
こんな時でも、自分を労わる言葉が哀しい。
結局自分が言い張る事で押し通した。
余り普段こう言う事が無いので、殿が気を汲んでくれたのかも知れない。

異変はすぐに現れた。

殿の眠る奥から、異様な呻き声が聞こえて来た。慌てて室内へ入る。
衝立の向こうに行きたいが、奥はすぐに寝所だ。流石に躊躇う。
他の思いでも、また躊躇う。殿の眠る姿を、見たくない。
しかし暗殺と言う言葉が頭を過ぎり、すぐに逡巡は捨てた。
失礼します、と声を掛け、衝立の奥へ急いだ。
「……、…」
「殿。…殿」
臥床を囲う薄絹の向こうに、蹲る人影が見える。ぼんやりと見えるだけだが、殿に違い無い。
他に人影も、気配も無いので、一応は安心出来たが、その雰囲気に息を飲んだ。

薄絹の向こうでは、蹲った人影が、明らかに泣いていた。
押し殺してはいたが、それは殺し切れるものでは無かったようだ。
ただ蹲り、どうしようも無い衝動に突き動かされそうな体を必死になって押さえているようだった。
すっかりと乱れた夜着の襟刳りが、大きく開いてしまい、伏している首筋が仄かに白く見える。
「殿」
「…ゥ…」
薄絹一枚隔てて立ち尽くす自分に、漸く気付いたようだ。
上げた顔には涙が光っていた。大きく見開いた目からは、涙が零れている。
表情は殆ど普段と変わらない。穏やかにすら見えるのが、痛々しい。
人影は、上がりそうになる嗚咽を堪えて、歯を食い縛ったようだ。大きく肩が跳ねた。
ぐ、と押し殺した呻き声が、低く零れる。
「私は、駄目だな、弟よ」
意外にしっかりとした声で、苦笑いのように囁く。
その声に斬り付けられたかのようで、途端、胸が重くなる。
「殿は、兄弟を亡くされた。それは、」
「違う。…このような時に、思い出してばかりなのだ」
既に苦悶の為、打ち振るっただろう頭は乱れている。更にその頭を振る。
駄目だな、と困ったように繰り返す声が虚ろで、自分の無力さが恐ろしい。
こんな時に自分は何も出来ない。
只、お休み下さい、私がお傍に居ります、と繰り返すだけだ。
自分が歯痒い。歯痒いと思っていたのは、自分に対してだったのか。
「困らせて済まん。…頼みがあるのだが」
こんな時でも、殿は自分を気遣う。それも今は只哀しい。
「何なりと」
「手を、握っていても良いだろうか。眠るまでで良い」
つきりと胸の奥が、切ない痛みに包まれる。
しかし今まで感じた痛みよりも、それは甘美だ。
一瞬答えには迷ったが、結局、はい、としか答えなかった。

殿が夜着を整えるのを待って、薄絹の向こうへ入る。
先程まで苦しげに蹲っていた姿は、全く無い。
多少目許が赤く腫れているが、他は穏やかな表情のままだった。
横たわる殿の横へ、失礼致します、と声を掛け、腰を下ろす。
多少は広く取られている臥床ならば、自分一人が横へ腰を下ろした所で悠々とした広さはあるのだ。
枕元へ座し、殿の手を取った。

歴戦の武将である手は、節ばっていて意外に指が長い。
整っているせいか、手が小さくも見えるが、実際は自分とそう変わらない大きさだった。
細かな小さな線が指先にあるようだ。握ると微かに、線状のつるつるした薄い皮膚に触れる。
それは剣を扱った際の切り傷だろう。
「済まんな。私は駄目な兄のようだ」
「こんな時くらい、弟を頼って下さい」
済まない、と幾度も繰り返す声は、しかし徐々に落ち着き、安らいでいる。
そして自分もまた、殿から頼られる嬉しさが、悲しみを和らげる。
そんなどす黒い自分は嫌だとも思うが、心地良さから逃れられない。
一時でも良い。これがまだ続いてくれと切に思う。

「昔、一度こうして、カンヌに手を握って貰った事があった」
カンヌ、と言う殿の声が、不意と切なげなものに変わった。
ぽつと言われた言葉から、心地良さは引いた。
全身から血の気が引いていく。しかしそれは予想していた事では無いのか。
不思議と落ち着いて、殿の声を聞く。最初から判っている絶望は、絶望とは呼ばない。
それは諦めに近いのだ。新たに傷は出来ても、今更血は流れない。
僅かだが、その変化は判る。判るくらいは、共にいる時間があった。
そして前に一度、同じ声をして、同じ事を言った男を、知っていたからだ。
その男は、殿を兄者と呼び、赤兎と呼ばれる馬に乗っていた。

つまり、とうに二人の気持ちなど判っていた事なのだ。
だから、自分がどうこう思う余地など無い。

「私がエンショウの元へ走り、チョウヒが流浪し、カンヌが許都から帰還した頃だ」
――その頃兄者は、私が何処へ行くにも心配された。
「何時だったか、カンヌが遠出した際に、どうしようも無く心配になった」
――帰って来た私を呼んで、夜の間ずっと語り、手を握ってくれと言われた。

笑みさえ混じって話す声は、哀しいと言うよりも切ない。
それ以上に溢れる思いが痛い程伝わって来た。
握った手から、感情が伝わる。それに身を斬られ続ける。
優しい切ない声は鈍い刃で、鈍いだけに斬られた身は痛みを増す。
だがそれでも、そこから逃げる事が出来ない。
その哀しい声が愛しい。今は既にいない男を想って、語る声すらも。
そしてその男の代わりに自分が今はいるのだと思うと、昏い悦びすら覚える。
本当は、代わりなどなれる筈も無いのに。
それは、何時だったか、もう一人の男から聞いた時も、感じた事だった。
思い出すのは、ただ目を伏せた穏やかな表情と、兄者、と呼ぶ声だ。

殿が話す切ない、低く掠れた声を、美しいと思った。
しかし自分には、ただ黙って手を繋ぎ、聞く事しか出来なかった。

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                    |  萌えの勢いだけで書いた。
                    |  今は反省している。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  しかも長すぎておこられた。
 | |                | |            \
 | | |> STOP.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ モメンナサイ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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