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密やかなる兄弟

※『華/麗/な/る/一/族』原作小説設定で、小学生次男→高校生長男のBL未満
※ドラマ化されてるので一応人名は伏字
※ところどころ捏造設定あり
※死ネタ注意

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  └──────│最近読み返したら突発的に萌えたので書いてみた
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「…兄さん」
 冬の真夜中。万表邸の、鉄兵の部屋のドアをノックする者があった。
「銀兵…眠れないのか」
 銀兵はこくりと頷く。鉄兵はドアを開けると、弟を部屋の中へ招き入れた。
十六歳の鉄兵にとっては、十一歳の銀兵はまだまだ幼い。
鉄兵は膝をかがめ、銀兵の肩に手を置きながら言った。
「お母さんのことなら…お医者様が付いてくれているから、大丈夫さ」
 そう言いながら、鉄兵もどこか不安げではあった。
「市子姉さんと次子たちは、今夜は三人一緒に寝るって…」
「僕たちは男だろう?」
 鉄兵は苦笑しながらも、弟の言うことを可愛らしく思った。

――お母さんが心臓発作だなんて、真っ赤な嘘ですよ、兄さん。
お母さんは何か薬を飲んで死のうとしたんだ。それもこれも、お父さんが…

 銀兵はたったいま屋根の上から母の部屋を覗き見て知ったことを
兄に伝えるべきか、少しの逡巡の末、やめにした。
決して不真面目ではない銀兵以上に一本気な鉄兵のことだから、
きっと余計な心労を増やしてしまうだろうと考えたのだった。

 鉄兵がベッドを整え直し、二人は初めて一緒に寝ることになった。
万表家では子供たちは皆小さいうちに一人部屋をもらうため、雑魚寝などしたことがない。
「しかも添い寝だなんて…明日、市子たちにばらしてやろうか」
「仕方ないでしょ、ベッドは一つしかないんだから」
 くすくすと笑って鉄兵が言い、すかさず銀兵が言い返した。
母を蔑ろにする父と家庭教師の藍子との奔放な関係を見ながら次第に傍観的な性格に
なっていった銀兵だが、この時は確かにまだ子供らしさを残していた。

 兄と一緒の布団に入りながら、銀兵は仰向けに寝る鉄兵の顔を密かに見つめた。
後に口々に祖父似だと言われることになる鉄兵の顔は、このころ母・靖子の面影を宿してもいたのだ。
母似の市子と鉄兵、そして父似の銀兵と次子と光子を見れば、一目できょうだいだと分かった。
(お父さんが鉄兵兄さんにだけ冷たいようなのは…)
 父親である自分に似ていないからだろうか。しかし同じ母似の市子に対しては、
銀兵たちと同様に愛情を注いでいる風に見える。
長男だからわざと厳しくしている、というのとも違う気がする…
それに、優しく美しい母が鉄兵を見て時折怯えたような顔を見せるのも気になっていた。
この時まだ存命だった祖父だけは、屈託なく鉄兵を可愛がっていたけれど。

「兄さんは…」
「ん?」
「お父さんと同じ、慶応大学に行くんでしょう」
 何か話をしていないと、母の容体が気になって眠れそうになかった。 
兄弟らしく、将来の夢でも語らってみたい気持ちになって銀兵はこう切り出した。
父は日頃から長男の鉄兵を母校の経済学部へ進ませ、銀行を継がせる気でいる。
鉄兵は、心なしか体を強張らせた。銀兵がどうしたろうと思っていると、
「お父さんにはまだ、内緒だぞ」
「え…」
 鉄兵は天井を見つめたまま、真剣な顔をして話を続けた。
「工学部に…出来れば、東大の工学部に進もうと思っている。
僕は金勘定は性に合わないよ。銀行よりも、お祖父さんの製鋼会社を大きくしたい」
 銀兵は思わず息を呑んだ。万表家では父・大助の威光は絶対で、
子供たち――ましてまだ十代の――が、父に逆らうなど銀兵には考えられぬことだった。
祖父はきっと鉄兵に賛成するだろうが、この家の当主の座は既に父に譲られている。
「銀行ももちろん大事だけれど、僕にとっては鉄を作る方が魅力的なんだ」
「…お父さんに、叱られますよ」
 ただでさえ父に充分愛されていない兄が、これ以上父に睨まれるのではと銀兵は不安なのだ。
「平気だよ。…きっとお父さんを説得してみせる」
 終始囁くような調子だったが、鉄兵の声は力強く響いた。

 突然、鉄兵が布団の下でがばりと銀兵を抱きしめた。
祖父に付いてよく狩りに行くため、たくましく育ちつつある体躯。
日焼けした顔に映える白い歯が、この暗い中でもちらりと見えた。
「に、兄さん…」
 銀兵は頬を熱くした。兄が単に自分を子供扱いしてこうしているのだと、分かっていても。
「銀行の方はお前に任せたぞ。せっかく名前に“銀”の字が入っているんだから…
鉄兵が鉄鋼工場を、銀兵が銀行を継ぐなんて、丁度いいじゃないか」
 鉄兵が銀兵の頭をごしごしと乱暴に撫でる。
銀兵の体を、母といる時にも父といる時にも感じたことのない暖かさが滲み渡った。

 ――兄に心惹かれるのは、大好きな母に似ているからだと思っていた。
それならどうして市子では駄目なのかと、思ってはいたけれど…
銀兵はまぎれもなく兄に、兄の強さに、魅力を感じているのだ。

「ふふっ…」
「何だ、急に笑ったりして」
「お祖父さんが、兄さんの名前を“金平”と付けようとしたって話を思い出したんです」
「あっ、嫌なことを持ち出して…お父さんが止めてくれなかったら大変だったよ」
 万表家の親族が集まるごとに出る笑い話だ。祖父は金が金属の王様だからと提案したようだが、
まるで大昔の役者のような名前で、その話をすると鉄兵はいつもふて腐れてしまうのだった。

 ――やがて兄弟は、お互いの体温に包まれながらすやすやと寝入っていた。

◇◇◇

 もう二十年以上前の出来事を思い出していた。
一月の冷たい風が、銀兵の体に吹いてまた去ってゆく。
(昔は…子供の頃は、確かに家族七人で笑い合うこともあったのに)
 家族というのは、もちろん父、母と二男三女のきょうだいのことだ。
「どうして、こんなことになってしまったんでしょうね…」
 鉄兵兄さん。銀兵が兄の一周忌の直後に訪れた墓の前で問うた言葉に、答える者はなかった。

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                ◇,,(∀・  ) この兄弟はやっぱり萌えるんだな
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