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Interlude

∞高炉。黒服兄×弟前提で、少.年.編終了直後。
でも出張っているのは何故か合コンに忙しい人。(※くっつきません)
数年前のゲームですがNPCの生死に絡む話ですので、積みゲーにしてたりする方はご注意ください。
前提から捏造設定全開。最初だけ微エロ。

書き始めた時は普通に青.年.編時点の話だった、というか兄さんを巻き込む予定はまったく無かったのに、一体何がどう捻れてこうなった…。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 温かい感触が瞼に落ちてきた。
 一旦離れたそれが背筋を貫く痺れとともに僕の唇に触れる。次第に深くなっていくキスに酔いながら、柔らかな黒髪に指を絡める。
 僕のイイところをすべて知っている指が、僕の体温を上げていく。
 熱を帯びた吐息とともに耳殻に流し込まれる僕の名に、理性が溶かされる。
 体内で律動を刻むそれが時々震えるのが愛しい。
 やがて僕の内側で熱が弾ける。そして——。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 伸ばした手は空を掴んだ。
 ——兄はもういない。

 自身の昂ぶりを機械的に処理した後、僕はのろのろと遺品の整理を再開した。
 士官学校に休校届けを提出し兄の官舎を片付けにきてから、すでに二日が経過していた。
 兄の戦死を知らされたあと、僕は泣いていなかった。
 泣けば、頭では理解しつつも認めなくないことが僕の中で現実になってしまう。それが怖かったのだ。

 部屋の主はもう帰ってこないのに、ここにはまだ兄の匂いが残っている。
 このままこの部屋にいれば、気が狂うのも時間の問題だろう。
 いっそその方が楽なのかもしれない。
 狂ってしまえばいい。幸せな夢に溺れて。
 不健康な思考に浸っているうちに、また作業の手が止まる。
 ため息をつき、クローゼットの扉にもたれて座り込んでいると、ドアベルが鳴った。

「まるで未亡人だな、おい」
 迷惑そうに戸口に出た僕の顔を見るなり眉をひそめたのは、昨年まで兄の副官を務めていた近衛艦隊のハルト少佐だった。
 真面目一方だった兄とは色々な意味で対照的な人だが、兄とは妙に馬が合ったらしく、彼が自分の艦隊を持って兄の麾下を離れた後も友人づきあいが続いていた。
 そして彼は、僕と兄の関係を知るおそらく唯一の人物だった。

 その事実を知った後も、彼の僕たちに対する態度は一切変わらなかった。そのことで、いびつな愛情とお互いを求める身体とその双方がもたらす罪悪感の連鎖に押し潰されそうになっていた僕たちは、すこしだけ救われた気分になった。
「そりゃ、自分がやらないかと言われたら全力で遠慮しますが」
 私たちはおかしいと思うか? と兄に問われた彼は、そう前置きして続けた。
「対象はどうあれお互いの合意に基づいたものならすべての愛は等価ですよ。自分の思想や嗜好に合わないからって他人のそれを否定するのは偏狭ってもんだと思いますがね」
 僕たちとは別のベクトルで「世間の良識」と仲が悪いらしい彼は、僕たちの耳元で非難の声を吐き続けるそれを平然と蹴飛ばしてのけた。
 その恋愛に対するスタンスから受ける軽い印象に反して、彼が他人のプライバシーを面白おかしく吹聴して回るような人物ではなかったことは、僕たちにとって幸いだったのだと思う。

「まともに寝てないんだろう。ひどい顔してるぞ」
「……あなたに何がわかるんです」
 僕の口から出た声は、自分でも驚くほど刺々しかった。
 この部屋で眠れば夢を見る。
 夢を見るのが怖いのではない。夢から引き戻される瞬間が怖いのだ。
「あなたがこの空隙を埋めてくれるっていうんですか?」
 僕は上目遣いに少佐の目を見て笑ってみせた。いや、たぶん僕の表情は笑顔になっていなかったのだろう。
「アホか。俺は生物学上オスに分類されるもん相手にゃ勃たねーよ」
 ハルト少佐は不機嫌に言った。

「ちなみに今ウルムバウト標準時の15時35分だ。いつからそうしてた」
 少佐はまっすぐ部屋を横切ると、締め切っていたカーテンを勢いよく開いた。
「換気くらいしろっての。ああもうこんなのは俺じゃなくてネスの奴の台詞じゃねえか」
 淀んだ空気に混じったにおいは、僕が繰り返していたことを彼に推測させるには十分だっただろう。
 大きく開けられた窓から、晩秋の少し冷たい風が流れ込む。
 傾きかけた日差しを背にこちらを振り向いた少佐は、わずかに目を細めて僕の顔を見据えた。
「お前、自分が兄貴の人生を歪めてしまったんじゃないか、とか考えてないか?」
 胸の奥に澱のように沈んでいた後悔を正確に言い当てられ、僕は俯いた。
 そう、可愛い奥さんを貰って幸せな家庭を築く。そんなごく普通の選択だって兄にはあったはずなのだ。僕が彼を求めさえしなければ。
「大佐も同じことを言ってたからな。ほんとよく似てるよお前ら。真面目っていうか不器用っていうか」
 ハルト少佐は思い出したようにくすりと笑った。
「そのくせ酔っ払うと、うちの弟がいかに可愛いか、って話が止まらないんだぜ、あの人」
 行為のあと僕を不安げに見つめる黒い瞳と、頬を撫でる指と、優しいキスと。
 心の底に押し込め忘れようとしていた記憶が質感を持って蘇り、鼻の奥につんとした感触が生まれる。
「泣きたいときはちゃんと泣いとけ」
 勝手知ったる様子で洗面所を覗いた少佐がタオルを投げてよこす。
 それが合図だったかのように、視界が歪んだ。
「キッチン借りるぞ」
 さりげなく席を外してくれた彼に感謝しながら、僕は壊れた水道のように泣いた。

「ほれ」
 僕が落ち着くのを待っていたようなタイミングで戻ってきた少佐が、僕の手にカップを押しつけた。
 チョコレートの匂いが湯気とともにたちのぼる。
「……子供じゃあるまいし」
「こういうときは甘いもんがいいんだよ」
 鼻声の苦情をきれいに無視して、こちらは普通にコーヒーとおぼしきカップを手にした少佐が確信に満ちた口調で言った。
「お前もうっかり女の子泣かせちまったときはやってみろ。よく効くぞ」
 泣いていたのは僕だということには触れず、にやりと笑う。
 ほんと、この人にはかなわない。
 ひとつため息をつき、冷えた両手をカップで温める。
 浮いた話には事欠かない少佐だが、別れた女性に恨まれたという話をあまり聞かないのは、こういった目立たないが効果的な気遣いゆえなのだろうか。

「タイタレス級って知ってるか?」
 結局ホットチョコレートを飲み干し、僕がようやく穏やかな気持ちになった頃、ハルト少佐が低い声で訊いた。
 聞き覚えのない名に、僕は首を振った。
「いつかアッドゥーラとやりあう時のために開発されてたって巨大砲艦だ。超新星爆発誘発用のエクサレーザーを積んでる」
「超新星!?」
 物騒などというレベルではない単語に、僕は思わず鸚鵡返しに聞き返した。
 百年前、ネージリッドで起こった超新星爆発ではあの国の領宙の六割以上が居住不能になり——つまり、その宙域に存在していた生命体は、星間物質を取り込みながら拡大していく高温の衝撃波面と、広範囲にゆっくりと到達する、だが回避不可能なガンマ線の嵐によってほぼ死に絶え——避難した人々もその多くが故郷の星を失うことになった。
 そんなものを人為的に発生させ兵器として利用するなど、人間が手を出していい領域を完全に越えている。
 僕の表情をちらりと見たあと、少佐は淡々と続けた。
「完成した一番艦は、発射実験のために大佐の艦隊に随行していた」
 兄は実験部隊の指揮官ではない。それに今回の艦隊派遣は、小マゼランからの支援要請によるものだったはずだ。
 納得がいかない、という顔をした僕に、紛争地域のどさくさに紛れて表に出せない代物の実験をやっちまおうって、まあどこの軍でもよくある話さ、と、少佐は不快感を隠そうともせずに説明した。
 この人も根っからの0Gドッグだ。地上の人間を戦いに巻き込んではならない、という宇宙航海者の不文律を根底から覆すような兵器には、とても賛意を示す気にはなれないのだろう。
「そして小マゼランへのボイドゲートが突然使用不能になり、大佐は帰ってこなかった。大佐たちは何らかの理由であれを実戦で使わなければならない状況になった……俺はそう見てる」
 確かに、現代兵器では破壊不可能と言われるボイドゲートを使用不能にするには、超新星爆発に呑み込ませるくらいしか手はないだろう。
 その結果、どれだけの生命が失われることになったのか。想像するだけで口の中が苦くなる。だが少佐の予測を否定できる理屈は僕には思いつかなかった。
「あっちでは相当ヤバいことが起こってる。そうでなきゃ、あのくそ真面目なバーゼル大佐がそんな無茶な手段に出るわけがない」
 僕も同感だった。あの兄にそこまでの決断をさせるということは、あちら側に、決してこちらに来させてはならない何かがいるということを意味する。
 兄は一体、ゲートの向こうで何を目にしたのか。

 ハルト少佐が携帯端末を起動し、画面をこちらに示した。

「ゲートが使えなくなる直前に、大佐がこちら側に脱出させた民間人の艦がある。ゼオスベルトに入ったところで運悪くエンデミオンの国境警備隊に拿捕されちまったようだが」
 コピーを重ねたニュース映像なのだろう、荒れた画像のその動画には、疲れきった表情で質問に答える銀髪の少年が映っていた。
 年の頃は十五、六歳だろうか。華奢な体躯はとても一人前の0Gドッグには見えなかった。
 その感想がそのまま声に出る。
「こんな子供が、艦長?」
「大佐は、そのガキにお前を重ねたのかもしれんな」
 一瞬目を伏せたあと、再び厳しい表情で少佐は続けた。
「そして、こいつに関わるニュースはこの後どこの国でも一切報道されていない。どういうことか、わかるな?」
「報道管制……」
 それも、相当高いレベルの。
 銀河連邦が公表を恐れるような事実を、この少年は知っているというのか。
 少佐は鼻で笑った。
「連邦の都合なんざ知ったことか。俺は向こうで一体何が起こってるのかを知りたいんだよ」
 でも、どうやって、という僕の呟きが耳に届いたのか、ハルト少佐は傲然と言い切った。
「お偉方が知らぬ存ぜぬを決め込む気なら、黙ってても知らせてもらえる身分になればいいだけさ」
 ——あいつはそのうち「ロエンローグ卿」の名を継ぐことさえできる器かもしれん。
 いつかそう言っていた兄の言葉を思い出す。
 遠くない未来、それは現実になるだろうと僕は確信した。
 この人は必ず、求めるものを見つけ出し、その手で掴み取るに違いない。
 
 ならば、僕は。
 彼が道を切り開き、真実を探そうとしている間、僕はこんなところで怯えた子供のように座り込んでいるしかないのか?
 ——違う。
 兄が命を賭して、非人道兵器使用の汚名をも厭わず食い止めようとしたものが何なのかはわからない。だが、このまま兄の遺志を闇に葬らせはするものか。
 少佐と同じ方法で真相に迫ることは、僕には多分できない。
 それでも。どんなに非力であろうと。どんなに回り道をしようと。
 僕も、僕なりの方法で戦うべきだ。
 その結論が生まれた瞬間、兄が笑って僕の背中を押した気がした。

 僕の中で何かが変化したのは表情にも出ていたのだろう。僕の顔を面白そうに見ていたハルト少佐が立ち上がった。
「んじゃ俺帰るわ。そのうち合コンセッティングしてやるから出てこいよ。お前、大佐と同じく顔だけはいいから、座っててくれれば女の子たちが喜ぶ」
「自分が合コンしたいだけじゃないんですか、それ」
 なんとか弱々しい笑いを浮かべることができた僕ににやりとしてみせると、少佐は軽く右手を上げ、ドアを閉めた。

***

 結局、兄が死ぬ間際に本国に送信していた情報の全容を私たちが知るまでには数年を要した。
 だがその内容よりも、その間この国も銀河連邦もなにひとつ行動を起こさなかった事実に、私たちは慄然とした。

 そして兄の死から十年を経て、私は成長したあの少年に出会った。
 停滞していた世界は、その時からめまぐるしく動き始める。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

「お茶」が古文書の中にしか存在しない世界にコーヒーやらチョコレートは存在するのか、この星の自転周期は24時間なのか、四季はあるのか、等々突っ込みどころ満載ですが生暖かくスルーしていただけると幸いです。
某氏の生活能力皆無設定との矛盾に関しては、女の子の扱いに関連するスキルは別枠ということで。(でも多分台所は片付けてない)

本編ではこの兄弟、同時に登場する場面そのものが存在しませんので念のため。
兄さんと卿も同様に本編での関わりはありません。共に近衛艦隊の所属、という設定があるのみです。


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