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正義のヒーロー

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 | |                | |     半生 W巣6話の後輩→先輩 ……のつもりが
 | | |> PLAY.       | |      出来たらBL臭が色水より薄くなってたらしいよ
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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正義のヒーローになりたかった。
警察官を目指したのはそんな立派な目標を持ってたわけじゃなく、安定性のある公務員だからなんて現実的な理由だったけれど、それでも初めて制服に袖を通した時、僕は正義のヒーローになれたのだと思って感動した。
警察官でいることは楽しかった。
制服姿で交番にいるだけで、誰かが頼ってくれる。誰かの力になることが出来る。
子どものころに夢見た、特別な力を持って悪の組織と戦うヒーローじゃなくてもよかった。この手で誰かを守れるのならそれだけで。

それなのにあの女性(ひと)は死んだ。
助けてくれと、守ってくれと泣いたあの女性を、警察官の僕たちは救えなかった。
愚かにも僕はそうなって初めて気がついたのだ。
警察官は、正義のヒーローじゃない。警察官は人を守れない。救えない。警察官が守れるのは、法だけだ。

「先輩」
その日は僕も先輩もひどく酔っていた。
酔いたかったのだ。少なくとも、僕はそうだった。
「正義って、何なんでしょうね」
先輩は答えなかった。
僕たちがあの女性からストーカーの相談を受けていたという事実はほとんど揉み消されていた。
僕と先輩が今日あの1枚の書類にサインをした時、彼女の最後のSOSは無かったことになった。警察の威信を守るために。
居酒屋の隅のテレビが、いかにも俗っぽいワイドショーを映している。
あの男は僕も知っている。投資詐欺まがいのことを繰り返しては逃げる男。いや、逃げるというのは正しくない。あいつは逃げない。何故なら「詐欺まがい」は「詐欺」ではないから。
警察官は、あいつを捕まえられない。あいつに傷付けられた人たちが何人いても、あいつが法を犯すまで、僕たちは何もできない。
警察官は法を守る。あいつは、法に守られている。
「あんなクズは死ねばいいのにな……」
すぐ傍でそんな声が聞こえて、驚いた。
「弱い人を守って、ああいう奴を捕まえるのが警官だろう。何であの人が死ななきゃならなかったんだ。何で、あいつがのうのうと生きてるんだ。どうして法律はクズばっかり守るんだ」
先輩の低い、悔しげな声。
グラスを握る指は白くなるほど力がこもっている。
「何で俺は、あの男を殴ることもできなかったんだ……!」
先輩の顔が悲痛に歪む。
心が痛んだ。先輩があの男、彼女を殺したストーカー男に殴りかかるのを止めたのは僕だった。もちろん先輩は僕を責めているわけじゃないのだろう。それでも僕は、何故あの時先輩を止めてしまったのかと悔やまずにはいられなかった。
しかしどれだけ後悔していても、いつかまた同じことがあったら僕は同じように先輩を止めなくてはいけない。
僕たちは警察官だから。

『あんなクズは死ねばいいのにな』
あの日の先輩の吐き捨てるような呟きが甦る。
あれは夢だったはずだ。「正義のヒーロー」と同じ、叶わない夢。叶わないと知ってそれでも口にせずにはいられない祈り。
結局僕らは「警察官」であることしか出来なかったのだ。
ところが。
今僕が手にしている鉄塊は夢でも幻でもない現実だった。
ああ、先輩は、「正義のヒーロー」になろうとしている。
クズばかりを守って大切なものを何ひとつ救えない警察官なんかじゃなく、弱者を救い悪を叩きつぶすヒーローに。拳銃という特別な力を持って。
手が、胸が震えた。
先輩はもう誰かに正義の鉄槌を下したのだろうか。
ひとつの空きもない弾倉を見て、そうでないことを知る。
分かっていた。先輩は強いけれど、優しくて、臆病だ。だから苦しんでいるのだ。正義とこの矛盾した世界との狭間で、最後の一線を越えられずに。
先輩を苦しみから救うのは僕だ。
僕がこの銃を見つけたのはきっと、神の啓示だった。
「あんなクズは死ねばいい」
ロッカールームで一人、口に出してみる。
とてつもなく凶暴で、醜悪で、甘美な響き。
警察官が高潔で清廉なものならば、これはまさしくその正反対にあるべき言葉だ。
「あんなクズは、殺せばいい」
――貴方がためらうのなら、僕が代わりにヒーローになろう。
あの時は貴方を止めることしかできなかったけれど、今度は僕が、貴方の先に行こう。

「なあ、聞いたか? 銃殺事件だってよ。こっちじゃこないだ密造とっ捕まえたばっかりだってのに、物騒な世の中だよな」
「あ、あぁ、そうだな……」
同僚の世間話に先輩は弱々しい相槌を打っている。
薄々は勘付いているのだろう。自分が持っていた拳銃が持ち出され、悪人殺しに使われたことに。
犯人が僕であることまで気付いてくれるだろうか。
僕がヒーローになったことに、気付いてくれるだろうか。
早く気付いてほしい。「お前がやったんだろう」と言って、「よくやった」と褒めてほしい。
早く、先輩もこちら側に来ればいい。

僕は正義のヒーローになった。
引鉄を引くだけで、何十人、何百人もの人を救うことが出来る。それが僕の喜びだった。
もう三人殺した。人を殺すことも、法を犯すことも怖くなかった。警察官だった僕には守れなかったものが守れるのだから。
先輩は多分もう僕が犯人だと気付いている。
何も言ってはくれないけれど、僕を止めないでいてくれるという、それだけで十分だった。
冷たい拳銃を撫でる。
足音が聞こえた。腹立たしいほど無防備な。
「クズは死ねばいい」
呟いて、姿を現した悪人に銃口を向ける。
自分は守られているのだと勘違いした馬鹿の間抜け面。
銃声。掌に衝撃。硝煙の臭い。

法がお前らを守っても、僕たちの正義はお前らのようなクズを守らない。

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 | |                | |       お察しの通り、連投規制でした
 | | □ STOP.       | |         >>315さん支援ありがとうございます
 | |                | |           ∧_∧    >>318さん、こちらこそすみませんでした…
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __  ナンバリングスラマチガエテルシ…
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