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nico

旧局朝仁R 田和場×登坂
※未成年が喫煙する場面があります

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

裸のまま煎餅布団にうつぶせていた。日に焼けた畳は乾ききった色で、かさかさと毛羽立っている。北風が安普請の窓を鳴らし、すきま風がうなじにかかる髪を冷やした。
田和場さんは下着姿で新しいタバコの封を切っている。箱をトントンと叩いて数本生えてきたタバコのうちの一本をくわえ、火をつけて煙を吐く姿が、今日はやけに旨そうに見える。
「一本吸わせてくださいよ」
何気なく頼むと、田和場さんはあからさまに嫌そうな顔をした。
「お前未成年じゃねえか」
「気にするんですか、そんなこと」
「吸い方も知らない奴にやるのはもったいない」
「だーいじゃうぶ」
私は中指をたてて答える。
「私ももう高校生、タバコ位たしなみます」
「その発言は色々と問題があるぞ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、田和場さんはタバコを一本渡してくれた。
「タバコは高校生で覚えて、卒業と同時にやめるもんです」
「めちゃくちゃだなお前は」
呆れ顔の田和場さんをよそに、私は辺りにライターを探した。しかし、ライターはちょうど手の届かないちゃぶ台の端に乗っかっている。わざわざ起き出すのも面倒だ。
「ライター取ってくださいよ」
「馬鹿、枕が燃えるだろう」
そう言うと田和場さんはかなり短くなった自分のタバコから、私がくわえているタバコに火をうつす。タバコの先と先がふれ合い、葉の燃えだす小さな音と共に細く青白い煙が上がる。
先程はいかにも喫煙者めいたことを言ったが、実際吸うのは初めてである。咳き込みでもしたらみっともないな、と懸念していたが果たしてそれは大丈夫だった。案外体はすんなりと煙を受け入れた。
――田和場さんも吸っているくらいだ、どうってことはないだろう。
その田和場さんは吸殻を灰皿の上で潰し、若干顔をしかめながらこちらの様子を見ている。汚れた枕や、畳に焦げ穴が開くことを恐れているのだろう。
いざ吸ってはみたものの、煙がうまいという感覚はどうにもわからない。うまいと言うなら焼き肉弁当の方がよほどうまいと思う。
落ち着く、あるいは気分が高まるというのもいまひとつ実感がわかない。たき火の煙とタバコの煙と、いったい何が違うのか。
きっと一口二口吸ったくらいでは味や効能はわからないのだ。そう考えて私は肺深くタバコの煙を吸い込む。
しばらく胸の中に煙をためていたが、特に何も起こらない。
若干のつまらなさを覚えながら煙を吐き出すと、何故か視界が揺れた。
と、同時に煙を出した肺になにかがこびりついているかのような不快感。
私は思わず口を押さえた。
「こら、灰が落ちる!」
あわてて灰皿を差し出した田和場さんの姿も何となく歪んで見える。
「どうした?」
「何でもないです」
気取られまいと努力するが、タバコに関してはあちらに一日の長がある。
たった一口吸っただけでこんな有り様だなんて、絶対に知られたくないのだが、どうやらそれは無理な相談らしい。
田和場さんは心得顔で、
「ニコチン酔いしたならもうやめとけよ」
と言った。ニコチンに酔うことがあるなんて知らなかった。その知らないと言うこと自体に腹が立つ。
だからこそ、ここで素直にはいさうですか従うのは敗北であり、私の主義に反する。これは私に対する挑戦だ。
「なんのこれしき、負けませんよ、私は」
こういって、吐き気をこらえてもう一口無理矢理煙を肺に入れようとすると、頭を思いきりはたかれた。
「もったいない吸い方をするんじゃない!」
衝撃で怯んだ隙に、手元のタバコが奪われる。今吸った煙が胸を焼く。私は不服ながら枕の上に伏せた。
田和場さんは私の吸いさしのタバコを平然と吸う。ヤニの茶色く染みた壁に、また煙が吹きかけられた。
何故あんなに平気でいられるのかと思うと釈然としない。私は最強だというのに。
田和場さんは不満げな私に気づくとニヤリと笑い、
「お前にはまだ早い」
と言いながら顔に煙を吹きかけてきた。思わず咳き込む私を田和場さんは妙に楽しそうな顔で見ている。煙が目にしみ、涙が出た。
「…ひきゃうですよ」
抗議と共ににらみつけると、田和場さんはおどけたように笑った。先ほどより旨そうにタバコを吸う横顔を睨むと先輩は、
「まぁ、慣れんことはするな」
と言ってあやすように私の頭を軽く叩いて天井に向かって煙を吐いた。
私が吸っていたタバコは田和場さんの口許で次第に短くなっていった。六畳間はゆっくりと煙に沈んでいく。私はひどいめまいを感じていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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