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敵わない人。

一角獣 唄四弦 ※要注意:生物・エロなし・新年なのに年末話

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「最近、ヤってねーなー…」
「え?夕ミ男さん誰と会ってないんですか?」
「いやいや何でもない。」

スタッフに独り言を聞かれてしまうとは…。
そろそろ50に手も届きそうなおっさんが思春期の高校生の様な事を思ってるなんて、誰にも言えるわけないだろ。
しかも相手が相手だしな。
でもヤリたいもんはヤリたいと思うのは、これはもう男の性(さが)としか言えなくて。

コンコン

楽屋のドアを叩く音が聞こえた。
この業界に飛び込んで25年以上経った事もあり、俺自身が大物という扱いを受ける事が多くなった。
若手から尊敬してると言われる事もあるが、本当はそんな事は気にしないで一緒に音楽を楽しみたい。
まあ、こういう事を喋るキャラでもないので、あまり公にする事もないが。

同じライブに出演する若手が、今日も挨拶に来てくれている。
恐らく緊張しているだろう若手の緊張をほぐす為に、いっちょ笑わせてやろう。
そう思いながらドアに向かって返事をした。

「どーぞー」
「「「しっつれいしまーす!伝台でーすっ!!よろしくおねがいしまーす!!!」」」

コントの様に椅子からずり落ちてしまった。
若手じゃないじゃないか!
いや…バンド的には新人だが、若手じゃない見慣れた3人が部屋に入ってきた。

「来たよー!」
「〒嶋が夕ミ男に挨拶しとこうって言うからさ~」
「いや何言っとんねん!2人が夕ミ男を驚かそうって。」
「またまた~!〒ッシ-が夕ミ男に会いたいって言うから付いて来ただけだしw」

一気に楽屋が煩くなった。
久々の一角獣メンバーが楽屋にいるだけで、なんとなくの安堵感に思わず笑みが腹の底から湧いて来る。
まぁ今年は5人が一緒に揃う機会が少ないせいもあるけど。

「〒ッシ-、そんなに俺に会いたいとか気持ち悪いわ!」
「な!こ…こっちこそ気持ち悪いわ!」
「夕ミ男も〒ッシ-も素直じゃないんだから~ははは」
「みんな素直で可愛いねぇ。」
「皮にっつぁんも何なんだよ!」

「でもおれは夕ミ男に久々に会えて嬉しかったよ。」

こいつ…
本当に何時もこうなんだよ。
自分の思った事をストレートに表現するんだよ。
そういう事を言われると、どう返して良いかわからなくなる時がある。

「夕ミ男?どうしたの?」

近い近い!
昔と比べて随分短くなった髪の毛が少し揺れて、顔に触れそうになるくらい近づいてきた。
また思春期の様な想いがもたげそうになって来るじゃないか!
ちょっと顔が赤くなってるのがわかって、つい目線を逸らしてしまう。

「た・・・煙草吸いに行こうぜ!」
「そうだね」
「あ!俺、別のバンドに挨拶してくるわ。この前、一緒に呑んだんだよね。」
「皮西さん、ほんま友達が多いのー」
「寂しいから〒嶋一緒に行こうよ。」
「1人で行け。」
「えー俺が寂しいから行こう。」
「ちょ…」

そう言うと皮西さんは〒ッシ-の腕を掴んで楽屋から出て行った。
と思ったら、皮西さんが楽屋のドアから顔だけ出して一言。

「夕ミ男!貸しね♪」
「…うっさい!」

普段は子供染みてるくせに、こういう時だけは鋭い大人になる。
さすが無駄に年取ってるだけあるよ。
やっぱりまだまだあのおっさんには敵わない。

「夕ミ男?行こうよ~」
「おう。」

廊下は色々な人が行き交っているので、邪魔にならない様に、でも微妙に早歩きになってしまう。
そんな俺の気持ちに気づいているのかどうか知らないけど、あいつも無言で後ろをついて来る。

『早く2人きりになりたい』

あいつもそう思っててくれると少し嬉しい。
そんな青臭い事を思っていたら、あっという間に喫煙所に着いてしまった。

時代は禁煙ブームとか言いつつも、なんだかんだで喫煙所は混んでいる。
俺たちは2人で喫煙所の隅に、壁に向かいながら煙草を吸う事にした。
これなら周りから見ても一角獣について話し合ってると思ってもらえて、誰も近づいて来ない。
実際には他愛もない話しかしないが。
…多分。

「今年はあっという間だったなぁ。」
「そうだな。」
「おれは伝台がメインだったけど、夕ミ男も色々やってたしね。」
「ああ。」

おかげで2人だけで会える時間は少なかったけど、でもお互い充実した1年を過ごせていたと思う。
…と思う様にしないと、心の中で少しは寂しさが募ってしまう。
もうオッサンなのにな、と心の中で苦笑した。

「でもね。おれ、寂しいなーって思う事がたまーにあったよ。」
「…何が。」
「やっぱりさ、喋りたいなーとか一緒にいたいなーとか。」
「誰と?」
「夕ミ男と!」

そういって相変わらず無邪気な笑顔を向けてきた。
本当にこいつは無邪気すぎる。
だからいつだって心配なんだよ、俺は!
ここに誰もいないんだったら思いっきり抱きしめたいよ、お前を!

「ねぇ?」
「な…なんだよ。」
「煙草、1本ちょうだい。吸い終わっちゃった。」
「早えーな。ちょっと待てよ。」
「もうあるじゃん。」
「まだ出してないぞ。」
「ここに。」

そう言ってあいつは俺が口に銜えてた煙草を、自分の口元に持っていってそのまま吸い出した。

「ふ~…」
「お前なー。」
「みんなの前でしちゃったね。」
「何を?」
「間接キス。」

そうしてあいつは普段の笑顔ではなく、どこか小悪魔めいた笑みを俺に向けていた。
2人だけで一緒の時間を過ごす時にしか見せない笑みを。

「でも、これだけじゃ物足りないよね。やっぱり溜まってるしさ。」
「あのなー。こんなとこ…」
「だって、おれも男だもん。」
「…あー!そうかよ!」
「夕ミ男、今日の打ち上げ何時まで?」
「11時くらいだよ。」
「じゃあ10時に待ち合わせね。」
「抜け出せってのかよ。」
「おれは今すぐ抜け出したいけどね。」

なんだかんだ言って、こいつにも敵わないのかもしれない。
だって、どうやったら10時前に打ち上げから抜け出せるかを計算しだしている自分がいる。
今すぐこいつと抜け出したい自分がいるのだから。

「さ!そろそろ楽屋に戻ろうかな。」
「お前の煙草も寄越せよ。俺だけ損だろーが。」
「え~?」

そう言ってそのままあいつの耳元で囁いた。

「俺もしたいんだよ。お前と」

びっくりして大きい瞳をさらに大きくさせていた。
本当に可愛いな、こいつは。

「夕ミ男…たまに大胆だよね。びっくりする時があるよ。」
「たまにはな。」

苦笑しながらも自分の煙草に火をつけて、そのまま俺に渡してきた。
この煙草の味は好きではないけれど、こいつが吸ってたなら何故か美味く感じる。
そう思って楽屋に戻るまでの僅かな2人だけの時間を、もう少し堪能したいと思った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初のSSでしたが、文章がめちゃくちゃでごめんなさい。
今年こそおっさん達の萌えを存分に浴びせて欲しい。


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