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八重の桜 山本覚馬×川崎尚之助

今年の鯛画 兄×白羽織
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

何故か、と角間は思う。
結婚してからの方が、前よりも一層将之助の肌に触れたいと思うようになった。
妻の寝入ったのを確認してそっと部屋を抜け出す、
後ろめたい気持ちも妻と将之助両名に対してあるのにそうせざるを得ないのだ。
結婚を反対されて駆け落ちしたくなる若者のようなものか、とも思って見る。
前よりは不自由になった身が、将之助との逢瀬をより求めるのかもしれないと、
角間は一応の結論を付けて思考を止めた。

「将さん」
角間が将之助の部屋の前で小さな声で呼びかけると、わずかな衣擦れの音が聞こえて、
将之助が起き上がる気配がした。
「はい」
角間は将之助の返事を待って滑り込むように部屋に忍び入った。
闇に慣れた目は将之助の表情もかなり見て取ることが出来た。
いつものように穏やかな顔だった。
すべてを受け入れている顔だ、と角間は思う。
世の不条理も、もしこの先別れが来ても、きっと将之助はこんな顔をしているのではないかと思っていた。
それに甘えている自覚はあったが、改めることはできなかった。
「将さん」
角間が名前を呟いて近づけば、将之助は角間の腕の中に自分から落ちてきた。

将之助は武士らしいと言ったらいいのか、情交の際に大きな声を出したりはしなかった。
必死で声を堪えているのだが、その様が角間をさらに煽った。
確かにあまり大声を出されたら困るのは困るのだが、どうしても一度、将之助のすべての箍を外させたい、
そんな暗い野望を秘めていた。
もっともそれは恨み言の一つや二つ言わせることもできない自分のふがいなさを恨めしく思っていたせいもあったが。
将之助にしてみればそれが唯一の角間に対する意趣返しのようなものだったのだが、角間は知る由もない。

「…角間さん、奥方とは上手くいってますか?」
情交の後、不意にそう聞かれて、余韻に浸っていた角間は一気に現実に引き戻された気分になった。
「な、なじょしてそんなこと…」
「すみません。ただ、私といくらこうしてても山元家の跡継ぎはできませんから…」
角間は将之助がやはり以前よりも自分に執着していることに気づいていたのだと思った。
「さすけねぇ。なんとか上手ぐやってる」
「そうですか。だったらいいんですけど」
少し微笑って将之助は角間の胸に顔を寄せた。
その様が角間にはどうしようもなく愛おしかった。
「ただ…」
「はい?」
「こんだけは言っておくんだけんじょ、裏を抱いた後将さんの所に来るような真似だけはしねぇから、だから…」
『許してくれ』という言葉は将之助の唇に阻まれて言えなかった。
言わなくていいという事か、と理解して角間は将之助の唇に更に深く分け入った。

将之助にしてみれば角間の今の言葉は殺し文句以外の何物でもなかった。
角間が自分の所に来る時は、奥方の残滓などどこにもない角間なのだ。
角間が自分の部屋に来た日は、角間の相手をするのは自分だけなのだという
自分と角間だけしか知らない秘密が出来たことが、将之助は嬉しかった。
それに将之助は角間に謝ってなど欲しくはなかった。
角間が思っている以上に、将之助は幸せを感じていた。
好きな人の側で好きなことがやれる今の状況以上のことなど望みようがないと思っていた。
それに将之助は山元家の人間皆が好きだった。
嫁に来た裏でさえも。
だから、詫びなどいらなかったのだ。

「…将さん、いつも不思議に思うのだけんじょ」
しばらく唇を重ねた後、角間は将之助を抱きしめたまま呟いた。
「なんです?」
「将さんが女だったらよかったとは、思ったことねぇんだ」
将之助はクスリと笑った。
「わたしもです。そもそも女だったら角間さんと会うこともなかったでしょうね。出石の田舎で親の決めた誰かと結婚してそれで終わり」
「そだな」
「それに、わたしは家で角間さんの帰りを待っているより一緒に仕事をする方が良いな。もし来世で選べても、きっとそっちを選びます」
「…そ、そだな、俺もそっちが良い」
角間は実は家で待っている将之助もいいなと思ったが、将之助の意見に賛同しておいた。
「ま、一番いいのは一緒に仕事が出来る女、なんでしょうけど」
「…それはなんか弥恵みてぇだな」
「確かにそうですね」
今度は将之助はクスクスと小さな声を立てて笑った。
将之助は弥恵の事を考えると心が軽くなる気がしていた。
勝気ではねっかえりだけど、綺麗な真っ直ぐな目をした少女は、やはりどこか角間に似ていて…好ましい。
「さ、そろそろ帰ってください。寝る時間なくなりますよ」
暁の八つの鐘の音が聞こえていた。
「ん。そだな」
名残を惜しむようにその日の最後に交わした口づけは、まるで初めてそうした時のように将之助の心に甘い余韻を残した。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
規制が厳しい;
書き忘れましたが兄の新婚当時の話でした。


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