Top/68-80

優しい眠り

・生物注意報。
・ひっそりとショウギ界。十八世酩人×十九世酩人。プラトニックでヌルイ。
・下手文章。現実乖離ご容赦。
・規制により10行ずつ。長くて細かくてすみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

十八世side

隣に暖かな気配を感じ閉じていた目をゆっくりと開けると、
眠る前には無かったはずの他人の頭が視界を覆っていた。
ぼんやりとその頭に手を伸ばし髪を撫でつけると、
覚えのある癖の強いすこし固い感触。
そのまま優しく触れているとぼやけていた意識が覚醒し始め、
ああ今日は彼とのタイトル戦の第二局が終わったんだったと思い出す。

終局した時の彼の消耗しきった姿を思い出しながら髪を撫で続けると、
吐息を漏らしながら自分の胸元に顔を埋め擦り寄って来る。
まるで猫みたいだな、と緩んだ表情を自覚して心が誘われるままに
二本の腕で彼を包み込んだ。

いつものように。
彼の冷たい体温が少しでも暖かくなるように。
青白い彼の肌に少しでも赤い血が巡るように。
…明日、また彼にいつもの笑顔が戻るように。

いつの頃だったかはもはや遠い記憶過ぎて覚えていないが、
ある時から彼は対局が終わった夜、自分の傍らで眠るようになった。
彼が対局のとき、そして自分が何らかの理由で同じ所に泊まっているとき、
深夜目を覚ますといつの間にか彼は隣に眠っていて、早朝には何も言わず帰ってゆく。
さすがに二日制番勝負の一日目に来るようなことは無いが、
終局した夜には、たとえその対局相手が自分であったとしても必ず来る。

何を思ってこうして自分の隣で眠るのか、
長い付き合いになるが一体何を考えているのかよくわからない所が彼にはある。
ただ、自分からそれを問うたことは一度も無かったのは、
自分の方もこのよくわからない感情を言葉にすることに躊躇いがあったからだ。

生きているのか心配になるくらい泥のように眠る彼には、
一週間という短い期間の後に別のタイトル戦が待ち構えている。
静かに彼の頬に手の平を当てると、青白かった顔色が少し赤みがさし
心なしか表情も穏やかになった気がしてホッとする。

この感情にまだ名前をつけることはできない。
けれど彼がこうして少しでも安らかに眠れるのであれば、
自分ができることがあるのであれば、なんでもしてあげたい。
外の世界では戦うこと以外に自分は何もできないから。

ふと思い立って、そっと眠る彼の額に唇を寄せた。
いつもはしない、けれど、今は心がそうしたい、と思った。

「お疲れ様。」

まだ、夜は長い。

先程より強く彼を抱き込み、この安らかな時間がもっと長く続けば良いな、
と取り留めも無いことを思いながら眠りついた。

眠りの先には赤い帽子を被った小さな少年が笑っていた。

十九世side

めずらしく昔の夢を見た気がする。

まだ小学生の頃の自分、目の前にいるのは同じく小学生だった彼。
一緒に大会に出よう、と彼を誘ったのは自分だった。ハニカミながら了承してくれた彼。
そう、あの時自分は彼と一緒ならもっと将/棋が楽しくなる、と思ったんだ。

そして、それは、今でも…

意識が覚醒すると同時に暖かな気配を感じ目を覚ますと、
皺の寄った群青色の浴衣の布地がぼんやりと目に留まる。
背中からじわじわと彼を思わせる暖かな体温が浸み込んできて、
ああ昨日は彼との対局が終わったんだったと思い出す。

首を伸ばして窓の方を見上げてみるとまだ日は上っておらず、
ホッとして彼の胸元に再び顔を埋めて目を閉じる。
昨日皆が寝静まった時間に部屋を抜け出し、
眠る彼の隣に潜り込み共に眠りについた時と同じ仕草で。

彼の傍らでは何も考えることなく静かに眠ることができる。

対局後はどうしても頭の中が思考の渦に支配されて、
自分の思考、相手の思考、傍観者の善意や悪意が入り混じり飽和状態になってしまう。
酷い時にはそれが思考を狂わせてしまい、
悪夢を見たり、眠りが浅くなったり、時には眠れなかったり、ということが往々にしてある。
それが、彼の体温を感じながら眠るときだけは、
周りの雑音も、内から湧き上がる衝動も、全てから解放されて眠ることができる。

それが何を意味しているのか、単に他人の体温が自分を安心させているだけなのか、
深く考えることをずっと自分は放棄してきた。
彼の腕に包まれながら眠ることは心地よくて離しがたくて、
考えることで閉じられた二人だけの空間を壊したくはなかったから。

彼の方は一体こうした自分の行動をどう思っているのか気にならない訳ではないが、
きっと同じような思いでいてくれるのでないか。
何故なら、こうして毎回鍵を開けて自分を待ち、眠る自分を抱きしめ、
何も言わない自分をただ優しく受け入れてくれているから。

傲慢と言われればそうかもしれないが、自分でも可笑しなくらいの確信がある。

きっと彼は言葉は無くても理解してくれている。
彼がこうして揺るぎ無くそこにいてくれているから、
自分はこうして走り続けて行けるのだということを。

離れがたいがそろそろ戻らなくてはいけない。
彼の腕の中からそっと抜け出そうとすると、
不思議なくらい簡単に腕から抜け出すことができた。

いつもと変わらない、眠りの底にいてすら優しい彼。
まるで「行っておいで。」と言うように。

…そのまま、離れないほど、強く、抱きしめてくれればいいのに。

そう心のどこかで叫び続ける願望に蓋をして、
安らぎを与えてくれた彼の大きな手にお礼を込めて唇を寄せる。

「行ってきます。」

そうしてまた、閉じた安らぎの世界から戦いの舞台へ戻る。

眼鏡を掛けていつもの自分に戻り、外の世界へ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ムシャクシャしてやった。反省はしているが後悔はしていない。
規制関連で長い時間のレスになってしまいました。色々すんませんでした。

  • ようやく見つけられました。うっとりです。 -- 2017-07-18 (火) 23:20:56
  • 泣きました。最高です……。 -- 2017-07-23 (日) 01:02:09
  • 離れないほど強く抱きしめるバージョンも見たいです……プラトニック最高でした! -- 2017-07-24 (月) 23:56:57
  • 何度も読み返しています。ありがとうございます。 -- 2017-10-11 (水) 23:42:42

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP