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しあわせのかたち

半生注意。ごく軽いエロ有り。

東京全力しょうじょ
最新9話のワンシーンから。助手×弁護士です。来週の10話で弁護士に再婚フラグが立ちそうなので、急いで書いてみました。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

マンションのリビングには、午前中の太陽が差し込んでひどく明るい。
「…頑張れよ」
卓也がそう言って微笑むと、張り詰めていた緊張が解けたように桜井も笑った。
「麗さんのおかげで、目が覚めました」
「麗のおかげ?」
「はい。何も聞かれてないですか?…麗さん、一昨日家に来たんです」
桜井から聞いた話に、卓也は言葉を失った。
桜井は卓也の本意を誤解したまま、本気で司法試験を諦めようとしていたらしい。
自宅まで押しかけて、直接彼に伝えてくれたのは麗だった。九月の試験まで事務所を休んで勉強に専念して欲しかった事も、アシスタントではなく、対等なパートナーとしてずっと一緒に組みたいと思っている事も。

『お父さんには、桜井さんが必要なんです…私じゃ、駄目なんです』

麗さん、泣いてたみたいですよ。桜井の言葉に、卓也は小さくため息をついた。
桜井の替わりなんて始めから求めてない。麗は麗のままでいいのに―。
麗の押しの強さに甘えて、自分の気持ちにきちんと向き合っていなかった事に、卓也はようやく気付いた。

「あの…」
「ん?どうした?」
麗の事を考え込んでいた卓也は、話が終わっても何故か帰ろうとしない桜井に視線を向けた。
口ごもって卓也の顔色を窺うと、桜井は恐る恐る切り出した。
「…あの、最後に…その」
「だめだ」
間髪入れずに却下されて、桜井は叱られた犬のように項垂れた。
「…キスだけでも」
「だめ」
卓也は目を細めて、じろりと桜井を睨み付けた。
「来年の合格までそういうのは、なし」
がっくりと肩を落とす桜井に呆れて、卓也はため息をついた。旅館での一夜に散々無理をきいたのは、一体何の為だと思ってるのか。
「私だって、お前に会えないのを我慢するんだからな」
「……はあ」
臆面もなく言い放った台詞に、桜井はどうリアクションしていいか分からず軽く頬を引きつらせた。

「…いや、彼女たちとお前は違うだろ。ほら、その…えーと、あ、男で付き合ってるのはお前だけだし」
さすがに微妙な空気に気付いて、卓也はわざとらしく咳払いした。
彼の中では三股の彼女たちと桜井は〈別枠〉扱いで、今のはあくまで誠実な発言のつもりだった。世間一般ではその〈別枠〉を本命ともいうが、桜井には当然伝わっていないし、卓也もあえて深く考えないようにしていた。少なくとも今は。
「僕がいない間に…あの、例えば華子さんと結婚したりしませんか」
「あのなあ。しないよ。…あ、まさかそういう心配もしてたのか!」
ますます呆れたように卓也は声を上げた。
「…すいません」
「私は誰とも結婚するつもりはない。お前がそんな風に思ってたなんて知らなかった」
「すいません」
桜井はもう一度繰り返した。
「…事務所を休んで…先生に会えなくなるのが…不安だったんです…」
桜井の声はだんだん小さくなって、ついに下を向いて黙り込んでしまった。耳まで赤くして縮こまっている様子を可愛いと思いつつ、卓也はソファに凭れて天を仰いだ。
本人には全く自覚がないから質が悪い。仕事のサポート以上に、自分が桜井の勉強時間を奪ってしまっていた理由も分かってないのだろう。
公私共に、ずっと側にいてほしいと、離したくないと思っているのは自分の方なのに。
そんな顔をされたら―
「…一回だけだ」
「え、あ、先生?」
いいんですか、としどろもどろの唇を素早く塞いでやった。なんでこいつの唇はこんなに赤いんだろうと思う。
「続きは、模試が終わってから…」
〈続き〉の期限が来年九月から二週間後に変わっている自分に苦笑しつつ、離そうとした身体をそのまま押し倒される。

「…や、あの、ちょ、桜井?」
コートを脱いでネクタイを緩めると、桜井は卓也のパジャマを捲り上げた。既に卓也の声が耳に届いている様子はない。
「違うよ、一回ってのはキス…あー!もー!人の話を聞け!さーくーらーい!!」

「…いたた、狭いですね、ここ」
体を動かす度にクローゼットの壁に頭をぶつけて、桜井は顔をしかめた。
「…んっ、仕方ない…だろ。寝室のベッドは使えないんだ」
「でも、すごく近くに感じられますね」
鼻先をくっつけて嬉しそうに笑う桜井が、愛おしいとふと思う。
「好きです、先生」
「…先に言うなよ」
「え…」
「ちょ、あんまり動くな、…あ…っ、あ」
今なら麗の問いに答えられるかも知れないと、卓也は思った。
だから―早く帰ってこい。

『お父さん、いま幸せ?』

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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