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片道切符

ナマ注意です。
元青心・高低、現原人バンド唄×六弦です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

最初は、良く見ている大好きなお笑い番組のドッキリみたいなものかと思った
んだ。
おまえ、俺を引っ掛けてるつもりか?なんて。

だってさ、俺、頭悪いからさ、あんな例えしか思い付かなかったんだもん。

――やらしてくんねえか?って言われたら・・・やらしちゃうかもしれない

えっと、それはつまり、“俺はそれだけおまえの唄に、声に、惚れこんでるん
だぜ”、ってのをまあインタビューの場を少し笑わせるつもりでそういう言い
方になっちゃった訳であってさ。

――マー××、あの時言った事、本当?僕がマー××を欲しがったら、本当に
  くれるの?
――ねえ、したいよ。マー××

俺の部屋で、何となく二人でレコードなんかを聴いていた時、あまりにも唐突に
おまえに抱き締められて、耳元でそんな事を言われて。
おまえは相当真剣だったろうに、その時の俺は思わず、隠しカメラはどこだ、と
探してしまった。

「ちょっ、え?ちょっと、待てまてまて」
やばい、このままじゃ押し倒されてしまう。
俺は結構必死で腕を突っ張って、おまえから逃れようと身を捩った。

「マー××、しようよ、したいんだ」
「だっ、だから、ちょっと、・・・っ、待てって!」
思わずおまえを突き飛ばす形になってしまって、一瞬、しまった、と思う。
俺は反動で背中を壁にぶつけて、おまえはよろめいて尻餅をついた。
そしてそのまま、怒られた犬みたいな表情で、俺を見つめる。
「だって・・・マー××があんな事言うから、僕はあれからずっと、その事ばっ
かり考えてて・・・」
カメラはどこだ、何処だ?
俺は落ち着きなく、それほど広くも無い部屋の中をうろうろ歩き回る。でも、歩き
回るうちに、ヒ××は俺に内緒でそんな仕掛け人なんかになる訳ないよな、バラエ
ティに承諾する訳ないよな、てかそんなバラエティねえよと少し冷静になってくる。
でも、ってことはさ、おまえ。
「・・・本気で?」
腰が砕けたようにおまえの前に座り込んで、何度もまばたきしながら呟いた。
おまえは、はっと我に返ったようになって、みるみる赤面した。
「ご、ごめんね!」
僕、何を考えてたんだろうね、とおまえは慌てて部屋を飛び出そうとする。
「あ、・・・待て、って!」

おまえを呼び止めた時点で、その後の展開はもう9割方決まってしまったに違い
ない。後の1割は、もうおまえに全部委ねて。
そして俺がおまえに言ったのは、全くもって頭おかしいとしか思えないほどの、
もし他人に聞かれでもしたら、そのまま窓から飛び降りてしまうほど恥ずかしい
台詞。もうこんな青臭い事は二度と言わないだろうと思っていたのに。

「ごめん、いきなり過ぎて、ビックリしただけ。・・・多分、ほんとにおまえと
そういう関係になったところで、・・・俺は何も変わらないし、今まで通り、お
まえとやってけると思う。・・・おまえと俺ってさ、もう、これからも、・・・
ずっと一緒にやってくんだしさ・・・。おまえにさ、そんな風に思われてたのは
別に、全然、嫌じゃないし。どっちかってと、・・・まあ、嬉しい、し・・・
で、でもな、心の、準備とか、ある、から、今日いきなり、は、待ってクダサイ」

何とかかんとか、そう言葉を絞り出す。
そうしたら、それをじっと聞いてくれていたおまえはすごくホッとした顔になって、
また物凄く魅力的な笑顔で、俺に頷いた。
ああ、俺は本当にこの笑顔に弱いんだ。
「ごめんねマー××。じゃあ、今度はちゃんと電話して行くから。・・・僕も、
ちゃんとしていくから」
少しはにかんで、立ち上がって、おまえは出て行った。

俺はおまえがドアの向こうに消えるのを見送って、おまえの足音が聞こえなくな
った瞬間、ソファにぶっ倒れた。
おまえに抱き締められた時に伝わった、おまえの激しい心臓の音が、苦しいほど今
俺の胸を打っている。
――ハジめての女の子かよ、俺はイイ年こいて・・・
笑われたい。今、凄く誰かに笑い飛ばしてもらいたい。
俺の言葉にも、全くこれっぽっちも嘘なんて無かった事を。

そうだ、俺はいつだって、おまえになら、何だって―――

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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