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ひな祭り狂騒曲

ギャグ漫画曰和の太子×妹子 時代考証的にメタメタなのは仕様です
スレ18で出た太妹ひな祭り、というワードに滾った結果がこれだよ!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

理不尽な上司の命令には、ずいぶん慣れた。小野妹子はそう思っていた。
すぐ後ろに大きな落とし穴が待ち構えているとも知らずに。

目覚めるなり、妹子は跳ね起きた。日は既に登りはじめている。
――寝すごした!
あわてて支度をし、赤いジャージに着替え、栗色の髪をさっとなでつける。
視界に端に映る、一枚の紙。妹子はテーブル上のそれを忌々しげに一瞥すると、隣のパンを手に取った。
のんびり食べている時間はない。飛び出すように、家をあとにした。
「行ってきまーす!」
パンをかじりながら、道を駆け抜ける。
どうしてこんな目にあうのだろうと、妹子は昨夜を思い返した。

残業づくめの一週間だった。
あげく、アホな上司が横やりを入れてきたり、足を引っ張ったりと、心身ともに妹子は疲弊していた。
明日の休みが、光輝いて見える。洗濯と、掃除と、それから余裕があれば、自炊もしたい。
明日への希望を胸に、自宅へ帰りついた妹子を待っていたものは、一通の手紙だった。
ピンクの封筒にハートのシール。ふざけた封書は、差出人を見るまでもない。
「うわっ……太子からだ」
妹子は顔をしかめた。嫌な予感しかしない。

聖徳太子。
まがりなりにも、皇子。次期天皇に一番近い男。異臭を放つジャージの摂政、飛鳥の変人。妹子の上司だ。
本来、仕事外で関わりあう必要はないのだが、妻も恋人も友人(人間)もいない太子は、友誼を妹子に求めてくる。
今更、妹子はそれを拒みはしない。けれど、限度というものがある。
そうっと、封を開ける。

 『アホの妹子へ
 明朝八時 朝廷前に来ること
 にげたらゆるさんぞ
                       聖徳太子』
  追伸:カニの殻を剥いたあとの手はなんかおいしい

「直接言え! あと汚ねえ!」
妹子はため息をついた。やっぱり呼び出しだった。放っておきたいが、そうすると太子は何をしでかすかわからない。
せめて妹子にできることは、愚痴ることだけだった。
「休日出勤なんて、聞いてないよ!」

なんとか呼び出しにギリギリ間に合った。妹子は軽く息を整え、朝廷の中庭へと向かう。
そこには、巨大な建造物が出現していた。
「なんだこれ……」
幅は四メートルほど、高さ五メートルほどの赤い物体が、広々とした朝廷の中庭にそびえ立っている。
横に回ると、板張りの階段のようなものに、赤い布が被さっているようだ。ただ、この階段はやたらに一段が高い。
妹子の背丈の半分もないが、膝より高い。それが七段、積み重なっている。
昨夜、退出するときにはなかったはずだ。
よくこんなものを、一晩で。感心半分、呆れ半分で妹子はそれを見上げた。
最上段に、人がいる。紫の冠に、青いジャージ。太子だ。

「よく来たな、妹子」
「なんなんですか、これ。リアルスーパーマリオでも作る気ですか?」
太子はそれには答えず、上がってこい、と指で示した。
アスレチックの要領で、妹子は最上段を目指す。
「これ、例の法隆ぢみたいに崩れたりしないでしょうね」
「なめるな、今回はしっかり耐震構造で作らせた」
「やっぱり大工さんが一晩で作ったんですか……」
そのジェバンニぶりに心の中で合掌する。
七段の高さに、妹子はかつて落ちた落とし穴を連想した。ここから落ちたら、ただでは済まないだろう。
見晴らしはいいが、一段の奥行きはさほど余裕があるわけではない。
いささか、落ち着かない気持ちになる。
おはようございます、おはよう、と挨拶をすませ、さっそく本題に入る。
「それで、こんな朝早くになんですか? ろくな用じゃなかったら、僕帰りますんで」
「さっそく帰ろうとするなよ! まあ、そこに座りんしゃい」
促されるまま、妹子はその場に腰を降ろした。

「ちょうどいい時期だからな。ひな祭りパーティを開く!」
「はあ」
いかにもイベントごとの好きそうな太子が考えそうなことだ、と妹子は思った。
節分でひどい目にあったくせに、懲りない男である。
「お酒と、お寿司と、お菓子を振る舞って……あと、余興もある予定なんだけど」
「はあ、いいですね。で、僕に何をさせようと」
「うん、雛人形になってほしい」
「雛人形に……なる?」
どういうことかと、妹子は困惑した。まさか縮めというわけでもあるまい。太子はときどき、言葉足らずだ。

「太子」
覚えのある低い声がすぐ真下から聞こえ、妹子は太子と同時に一段下を振り向いた。振り向いて、ぎょっとした。
「あ、竹中さん」
太子は承知済みとばかりに動じない。
妹子が予想した通り、そこに立っていたのは太子の友人・フィッシュ竹中だが、いつものトレーナー姿とはまるで違う。
朝服を改造したような束帯に太刀を佩き、矢筒を背負う。頭に冠を乗せ、それに耳飾りのようなおいかけを付けている。
武官の装いだ。

面食らった妹子に、竹中はにこりと微笑みかけた。
「やあイナフ、今日は楽しもう」
「ど、どうも。その扮装は……?」
「右大臣だ。いや、左大臣だったか?」
右大臣と左大臣。なるほど、どういうことか妹子にはわかってきた。

竹中は太子に向き直った。
「彼女たちの準備ができたと。上げていいか?」
うん、と太子が頷くと、すぐさま竹中は降りていった。

「雛人形になるって、お雛様の格好をするということですか」
いわゆる「生き雛」か。妹子は得心した。つまりこれは、雛壇だ。
「そうそう、コスプレコスプレ。
ひな祭りといえば、雛人形だろ、でも飛鳥時代に雛人形、ないしなー。室町時代まで下らないと。
だからいっそ、ええーい、なったれ! と」
「……はあ」
その情熱はどこからくるのだろう。無駄に元気なオッサンだ。そのエネルギーを、少しは仕事に向ければいいのに、と妹子は思う。

「それで、僕はなんの役を――」
きゃあ、という歓声があがり、妹子の声はかき消された。
着飾った采女を、竹中が抱え上げて運んでいる。降ろす姿も優雅で姫にかしずく騎士さながら、美男美女で絵になるなと妹子は思った。
太子たちの一段下、二段目に采女が三人、配置される。三人官女だ。
官女たちは顔を見合わせると、太子と妹子を見上げてくすくすと笑った。
「案外、お似合いですこと」
「色合いもちょうど赤と青ですしね」
「よかったですわ、妹子様が引き受けてくださって」
まさか、と妹子の顔から血の気が引いた。
続々と集まってくる人と、調度類。
妹子の隣に燭台が置かれた。ぼんぼりだ。背面には金屏風が立つ。

「太子、あんたまさか僕に、お雛様役をやれ、と……?」
「そうだけど」

太子は悪びれる様子もない。妹子の視界が、ぐらりと揺れた。
「……太子はお内裏様なんですよ、ね?」
「決まってるだろ」
主張するように、太子はえへん、と笏――例のアイスの棒を、掲げた。
「あの、太子……わかってるんですか?」
「なにを?」
くもりのない無垢な瞳に見返され、ぐ、と妹子は言葉に詰まる。

雛人形のシチュエーションは、お内裏様とお雛様の結婚式だ。
太子が新郎で、妹子が新婦。
妹子の脳裡にジャージネクタイで新聞を読む太子と、エプロン姿で目玉焼きをサーブする自分が浮かんだ。
なんだ、今の新婚ビジョン。
カッ、と妹子の頬に赤みが差した。頭を振ってわけのわからない妄想を吹き飛ばす。
役とはいえ、太子と夫婦なんて冗談じゃない!

「どうして僕がお雛様なんですか! 普通女性でしょう」
三人官女だって女性がしてるじゃないですか、どうして肝心のお雛様が男なんですか。
そう主張し、一段下を見ると、官女たちは一斉に目をそらした。

「……」
「……」
「……」
「…………」
断ったあと、らしい。
心で妹子は膝をついた。
太子のもてなさを、甘くみていた。

「誰もなり手がいないんだよ~。高所恐怖症とか、私がイケメンすぎて無理とか。でも、お雛様を欠かすわけにはいかんからな。
頼む妹子! ほれ、これやるから」
太子が差し出したのは、お雛様が手に持つ桧扇だった。
「いらんわこんなもん!」
妹子はそれを太子に投げつけた。太子の額に直撃する。
ていうか、そんな理由を信じるなと妹子は言いたい。
「ひなあられ!」
「もうぅ~、しょうがないから引き受けますけど、今回だけですよ!」

着々と準備が整い、雛壇に人が集まってくる。
早々にこのイベントを終わらせたい。妹子は回りを見渡した。誰か、この状況をなんとかしてくれる人はいないものか。
トラブルメーカーに、ストップ役足りえる者に。それぞれの背中に向けて、妹子は祈った。一縷の望みをかけて。

  ケース1 : フィッシュ竹中の場合
後頭部に焼けつくような熱い視線を感じ、竹中は笑った。
イナフ、俺は。
仲良くしている人間を見るのが好きなんだよ。
その場を崩す期待を寄せられても、困るな。
竹中は振り返り、妹子を見上げた。親指を立て、ウィンクする。
声に出さず、唇だけを動かした。
「グッドラック、イナフ」

  ケース2 : 馬子帰る
蘇我馬子は、今イベントのスポンサーの一人だ。
資金を出し、警備も私兵から出した。蘇我の姫をお雛様役に、と話が来たついでに、馬子までここに立つ羽目になった。
存外、太子は人を乗せることがうまくなったものだ。
又甥の成長に、馬子は口の端だけで笑った。ただし、乗り続けるつもりは毛頭ない。
「馬子様、ご報告申し上げます」
蘇我の従者が進み出て、段に登り、馬子に耳打ちする。あらかじめ用意しておいた仕込みだ。
馬子はひとつ頷くと、近くを見渡した。岩のような男、ゴーレム吉田がいる。
右大臣が魚人なのだ、左大臣が泥人にすり替わっても問題ないだろう。
「そこの君」
「! 俺か?」
いそいそと、吉田は馬子に駆け寄った。
「急用ができた。私は行かねばならん。代わってもらえるか?」
「任せろ、岩のように硬い俺だから、武人にはちょうどいいんだぜ!」
装備一式を吉田に譲ると、馬子は足早に朝廷の奥へと向かう。その後ろを、従者が付き従った。
「――もう少し、あれを尻に敷くことを覚えてくれると扱いやすくなるのだがな」
「……は? あ、あの」
「一人言だ、気にするな」

  ケース3 : ピューと吹く調子丸
ひときわ高い笛の音が、響き渡った。謡と太鼓が、それに続く。
五人囃子は、全員太子の舎人だ。
その一人、調子丸は妹子の刺すような視線を感じながらも、笛を吹き続けた。
妹子さんスミマセン、そう心の中で謝罪する。
女性が皆嫌がって、お雛様のなり手が誰もいなかったんです。生け贄になってください!
できればそのまま太子のお嫁さんになってください、既にポジション的にはそんな感じですから、問題ありません。俺の負担が減ります。
どうかお幸せに!
気まずさをふき飛ばす勢いで、一心不乱に笛を吹いた。
なんだか今日は、調子がいい。

女帝・推古の名のもとに開かれたひな祭りパーティは、お酒も食事も振る舞われるとあって、盛大に人が集まった。
中庭の奥に位置する雛壇にも、注目が集まる。
華やかで、いい催しだ。さすが女性天皇らしい。そんなささやき声があちらこちらであがる。
お雛様役を振られた妹子は同僚にからかわれるやら、噂されるやらで針のむしろだった。
頼りにできるものは誰もいない。自分でこの状況を終わらせなければ。
妹子は太子に向き直った。

楽しげに太子は人々を見下ろし、酒を飲んでいる。
盃があいた。手持無沙汰な妹子は、三人官女から借りた銚子で酒を注ぐ。
盃に、花びらがふわりと舞い降りた。白酒に、早咲きの桃の花。
「あ……桃花酒、ですね」
「うん。楽しいなあ、妹子」
「そうですか?」
妹子からすれば、ただお酒を飲んでいるだけに見える。
ふわふわと太子は笑った。酒に酔っているわけではないようだが、上機嫌だ。

「お前も飲む? 一献」
「いえ、勤務中ですから」
「休みじゃん」
「休日出勤中です、太子のせいで」
「お堅いねえ、お前は」
「僕は普通です。ほら、おつまみもバランスよく取らないと、悪酔いしますよ」
「せんわ! お前、私の酒豪ぶりをなめとるな……」
「なんか気持ち悪いくらいニヤニヤしてますし、もう酔ったのかと」
「気持ち悪いって言った!? まったく、お前は上司をなんだと……だって、楽しいもん」
「なにが楽しいんですか?」

妹子の問いには答えず、太子はくい、と盃をあけた。
ん、と黙って盃を差し出す。妹子も無言で、酒を注いだ。それをキュッ、と飲みほして、太子は大きく息をついた。
「見てみろ、妹子。人の顔。みんな、楽しそうだろう?」
「ええ、そうですね」
老若男女、普段は朝廷に立ち入ることのない人々も招いての大盤振る舞い。食べて、飲んで、しゃべって。そこには、笑顔がある。
「私のしてることはさあ、すぐに結果が出ないことがほとんどだから」
「ええ」
「だから、憲法を作っても、遣隋使を派遣しても。それで民が喜んでるところなんて見れないからな。
こうやって、民衆の楽しそうな様子を見るってのは……楽しいな!」
太子の心からの笑顔に、妹子はドキッとした。
たしかに、笑顔には人を楽しくさせる力があるのかもしれない。

でも、ドキッ、はない。太子相手に、それはない。妹子の心がざわつく。
この状況のせいか。もう、役を降りてしまいたい。

「ところであのう、太子……ひな祭りって何かわかってますか?」
「わかってるよ、上巳の節句だろう?
種を撒く前の閑農期にお酒やごちそうを神に捧げて、豊穣を願う。で、おさがりを皆にふるまう」
「へえ……そうなんですか」
「もともとはな。それが大陸の五節句と合わさったんだ。農耕民族らしい行事っちゃ行事だろ。妹子、節句ってどう書く?」
「え?こうじゃないんですか?」
節句、と妹子は人差し指で宙に書いた。
「いや、もとはこう書くんだよ」
いいか? と太子は妹子の手首をつかんだ。
「!!」
妹子は激しく動揺した。そんな、手首ごときで、手を握られたわけでもないのに。いくらなんでも意識のしすぎだ。
太子はそんな妹子に気付くことなく、妹子の指で文字を書く。妹子はそれを目で追った。宙に浮かんだ文字は、節供。
「お供えもののこと、そのものだ」
「あ、ああなるほど、節供が転じて、節句……」
「そゆこと」
太子は満足げに頷いた。
その手が離れる。手首がじん、と熱を持ったように妹子は感じた。
どうしてしまったんだろう、自分自身がわからない。まさかと思う。太子相手に。それでも今、胸がドキドキしているのは、まるで――

「ところで妹子、あの箪笥や茶道具はなんのためにあるの?」
「…………」
どうしてそんなに物知りで、雛人形のことを知らないのだろう。まさか、知らないフリをしているなんてことは。
それはない。妹子はそう確信している。太子に演技力は皆無だからだ。
「あれらは……嫁入り道具です」
「へっ? ヨメイリ?」
太子はぽかんと口をあけた。
「あの牛車で運んで、駕籠でお嫁に着たんです。……お雛様が」
「ああ、嫁入り。そういうことか……って、えええっ!」
ポポッ、と太子の頬が赤く染まった。
「し、知ってたよ、そんなん……」
「今知ったでしょう、あきらかに! ていうか、雛人形をなんだと思ってたんですか」
「おもしろ芸人集団だと思ってた……」
「そっちの雛壇!?」

「え、ちょっと待って、ちょっと待って。ということは……」
太子は眉間に指を置き、思考した。

「私が婿で」
自身を指さし、手首を返して妹子を差す。
「……お前が、嫁?」
ごくん、と唾をのみ込んで精一杯の平常心をよそおい、妹子は言った。
「不本意ながら、この雛壇にいる以上、そういうことになりますね」
「妹子が、嫁……」
ぽーっと、みるみる間に太子の顔が赤く染まる。
「やめろ、僕でよこしまな想像するな!」
「え、いや、普通そんなこと言われたら……するだろ」
「…………ッ!!」
さっきの新婚妄想を思い出し、妹子の頭に血が上る。文句を言えた筋合いではない。
お互いに相手の顔が見れなくて、おかしな雰囲気になる。

「…………」
「…………」
雛壇の最上段に、真っ赤な顔をした男が、二人。
じりじりとした空気に、焼かれそうになる。
なんだこの状況。もう無理だ、限界だ。妹子は恥ずかしさに消えてしまいたい。

はっと気がつくと、雛壇は太子と妹子を除いて、無人になっていた。三々五々に散って、あちこちで楽しんでいるらしい。
下から、竹中と調子丸が見守るようにこっちを見ていた。
妹子と目が合うと、二人は顔を見合わせて頷き、くるりと背を向けた。竹中が手を振る。そして二人は、去って行った。
お前らのしわざか。余計な気をまわさんでいい。ていうか、いつの間に仲良くなったの!? わなわなと妹子は震えた。
その震える手を、しっかと握るものがいる。
「た、太子」
「…………」

真っ赤な顔で俯いたまま、口の中でもごもごと太子はなにかつぶやいている。
ああ、聞きたくない、なにも聞きたくない。妹子は耳をふさぎたくなった。イヤーマフを持ってくるべきだった。
「あ、あの、太子、もうみんな下りて行っちゃったんで、僕たちも下りましょう。ね?」
妹子は立ち上がった。しかし押しても引いても、太子は根が生えたように、動かない。

「行くな」
「え……」
「行くな、妹子」
ぎゅう、と力強く手を握り締められ、妹子は息が詰まりそうになる。
「この雛壇の上だけだ、お前と夫婦でいられるの。だから、もう少しだけ……」
太子は身を縮めた。俯いて、背中を丸めて、顔が赤い。眉は情けなく下がって、唇はへの字に引き結ばれて。大きなだだっ子。
そんな顔をさせたいわけじゃない。妹子が見たい、太子の顔は。もっと、明るくて、ほがらかな――

「……別に……」
「え?」
ぼそりとつぶやいた妹子に、太子は顔をあげた。
「別に、ここだけの夫婦じゃなくっても、いいですよって言ったんです!」
妹子の叫びに、思わず太子は立ち上がった。
「い、いいい妹子?」
「はい」
「あ、ああああの、私……あの、その……」
太子は妹子の手を両手でぎゅうと握りしめ、懸命に言葉を探す。探す。探す。
一向に出てくる気配がないので、妹子は焦れた。
「言っておきますけど」
「はい」
しゃきっ、と太子の背筋が伸びた。
「二人きりのとき限定ですから。それ以外のときに嫁扱いしたらぶっ殺すぞ」
「なにこの子夫と認めた人を脅してきたよ!」
「じゃあ、早く下りましょう。お腹がすきました」

言いたいことを言った妹子は、は、と息を吐いた。顔は赤いし、耳まで熱い。
けれど、なんだか胸は、すっきりしている。
「ほら、行きますよ太子」
「ちょ、ちょーっと待って、待って妹子」
太子は妹子を呼び止めた。
「なんですか」
「私と夫婦になるって……」
「はい、そう言いました」
あまり何度も言わないでほしいと思う。いちいち確認されるのは、恥ずかしい。
それともなにか、ここで誓いの言葉でも言えというのか。妹子は太子をじろりとねめつけた。

「それって、えっちも混み?」
「ッ……!!」
顔面が爆発するかと妹子は思った。
ようやく自分の気持ちを理解しただけで、そんな先のことまで考えてない!
「し……」
「し? しり? おケツ?」
「知りません、バカッ!!」
「でべそっ!?」
至近距離からのボディーブローに、太子は悶絶した。
そのまま、飛び降りるようにして妹子は逃げた。これから、自分たちはどうなってしまうのだろうと新たな問題に懊悩しながら。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

  • 笑い萌えた! -- 2014-09-29 (月) 03:37:37

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