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How did boys refuse the sun? Ⅱ

40参照ください。 ※Ⅳで終わりです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

納戸の中で、力一ノレは埃をかぶった本をみつける。まだ幼い頃、生きていた祖母がよく読んでくれた絵本。子供向けとはいえ装丁が凝っていて、平易な言葉になおされてはいたが、アーサー王の冒険譚がいきいきと描かれていた。
その挿絵がかのバーン=ジョーンズで、力一ノレはいまだ芸術には疎いが、これだけは何度も何度も繰り返し見ていたせいか、すっかり脳裏にやきついていた。
「……やっぱり。そっくりだ、あの子に。」シャ一口ック・ホームズに。
もう名前は忘れてしまったが、姫の絵姿に、少年の面影が重なる。だからずっと、どこかで会っていたような懐かしさを感じていたのだろう。
少し、頬が熱くなる。納戸はまだ蒸し暑かったが、そこから出れば火照りはすぐに夜気が冷やしてくれる。それでも力一ノレはわずかばかり動悸を意識した。
「力一ノレ、何をしているの?」母が仕事から帰ってきて、ガレージに車をいれていた。
「探し物。あったよ。」良かったわね、と買い物袋をさぐりながら、ミセス・パワ一ヌ゙は目当てのものを掴み、息子へ手渡した。
「手を見せて。」湿疹で皮膚が剥けかけた指に、母は目を曇らせる。「今度の薬がきちんと効いてくれるといいんだけれど。」
どうもプールの消毒薬が力一ノレの体質に合わないらしく、皮膚がところどころ赤く腫れている。
「まぁ、何よこの子ったら、にやにやしちゃって。ひとりで何を楽しんでいたの?」
「新しいともだちができたんだ。」そう言うと、力一ノレは知らず得意げな顔を浮かべる。
「今度うちへ連れていらっしゃい。あら、女の子じゃ気まずいかしら。」
その心配はいらないが、シャ一口ックが自分の部屋で寛ぐ様子はまだちょっと想像できない。そう思った直後にも力一ノレは、部屋の掃除をしなくては、との心地よい焦燥に急き立てられるのだった。

本を読みながら、やあ、と呟いたあと黙っているシャ一口ックに、あ、エスコートはおれか、と力一ノレは少しばかり動転する。「今日もサボるの?」
「いや、考査期間はおれらも休み。」じゃあそこが空いてるな、シャ一口ックが先を行く。
「プールの授業は好き?」「そんなものにぼくがでるとでも?」
プールサイドのタイル床に座っていいものかしばらく逡巡し、結局少年の視線は力一ノレへ戻る。「服が汚れるのは愉快じゃない。」「いまロッカーから椅子もってくるよ!」
急いで力一ノレはひとけのない室から、見るからに座り心地の悪そうなスチールパイプの椅子を運んだ。息せき切ってシャ一口ックの前へ広げてみる。表面の半分を覆う錆、得体の知れない黒ずみ。
「…立ってたほうがいいや。」「あ、や、待って!それじゃ、ほら!」
おもむろに力一ノレは着ていたジャージを脱ぎ、パイプ椅子の上を覆ってやる。
「ほら、これでいいだろう?あ、おれの服は洗濯したてだから気にしないで!」
躊躇なく行われた一連の流れに、年下の少年は少し驚いていた。そして良く発達した見事な胸筋をあらわにしている相手へ眉をひそめる。決して羨みなぞしないが、軽薄な異性たちには尊ばれ喜ばれるもの。
幾度も水にさらされ、なめらかになっている表面の肌は同じ人種と思えない褐色で、否応も今の季節を思い出させる、嫌いな夏を。
「…ブランメルのつもり?」「あ?…ブランなに?スパイスガールズのメンバーにそんなのがいたっけ?」「いい。忘れて。」
それにしてもこうした力一ノレから妙な圧迫を覚えるのはなぜだろう?この生命力溢れる逞しさに対し、枯れ枝のようにかぼそい自分を、同じ男性性で括っていいものか。

「仮にぼくがここに座ったとして、君はそのあとどうする?」「そのあと?そのあとって?」「着て帰るのか?」「ああ!もちろんそうするさ、街中とプールを同じにするわけにもいかない。」
「……しかたない、ギルの部屋にでも行くか。」「は?」「いいから早くそれ着て。」
脇目もふらず、シャ一口ックは歩いていく。訳がわからず、力一ノレは椅子を尻目についていこうとした。が、椅子の上のジャージを取りに一旦戻らなくてはならなかった。

「ギルはいなかった。なんにしろ計画性がなってない。ぼくは明日までにこの本を読んでしまわなくてはならない。あと20ページ。15分も要らないが、君はどうする?」
ギルって誰だ。いわゆるともだちとダベる時にいる計画ってなんだ。そしておれといっしょにいるのに本って。「きみがそれ読んでる間、おれここで待ってていいかな?」
別に構わないさ、校舎裏は整備された丘陵になっていて、なるほど、草の上のほうが確かに衛生的でないあの椅子よりも快適そうだ。シャ一口ックは声にだして許可こそしなかったが、疎んじる風もなく、ただ黙って背負い鞄を脇へと下ろす。
そして座り込んだ途端靴紐を緩め編上げ靴を脱ぐと、あのアーガイル柄のソックスも脱ぎ、草の上に整然と並べるのだ。
「どうしたんだ?石でも入ってたか?」「読書中はこうする。読んでると脳が動き回るから血流も活性化して、末端が熱くなっちゃうんだ。」

「ああ…わかる。おれもレース終わったあとはよくそうなるから。」
「単純運動といっしょにしないでほしい。」だんだん、こうしたシャ一口ックの物言いに、力一ノレも慣れてきたようだ。というより、時々彼が使う難しい言い回しがさほど気にならず、なぜか意味がわかっているような気さえする。
本当はわかっていないのに。
なにより、シャ一口ックに拒まれているわけではないこと、つきあいたいという要求を忌憚なく受け入れてもらえたことを、力一ノレはとても意外に思い、そして嬉しくもあった。
「…うるさくして悪いけど、その、手とか足、熱くなったかい?」まだ5分も経っていないが、力一ノレは微動もせず読書に没頭しているシャ一口ックを隣にして、黙ってはおれなかった。
「確かめてみれば?」「え?…どうやるんだ?」「触覚以外でこの場合できるなら教えてほしいよ。」同時に、彼はページを繰る。当然顔がこちらを向くこともない。
「…さわってみて、いいのかな?」返事はなかった。力一ノレはそっと、背表紙を支える左手へ、自身の指先を伸ばしてみる。しかし思いたって、その手を折り曲げられた膝へ転換した。剥き出しのふくらはぎには肉は薄く、骨の上をすぐ皮膚が覆っているようだ。
くるぶしに浮かぶ静脈の色を際立たせる日焼けと無縁の白肌が、熱に縁があるようにはとても見えない。そこも他の部位同様、色を失っているのだから。
力一ノレは震えそうになる指先をさらにゆっくり伸ばし、甲ではなく、小指の先へ一瞬触れてみる。しかしそれが呼び水となり、次には掌をシャ一口ックの骨ばる甲へ押し付けてしまう。

「あ、ごめん!」「なぜ?そうしろと言った。いいさ、君の手はひんやりしてきもちがいい。」
少年は身を捩り、もう片方も、と言う代わりに膝を交差させる。力一ノレは言われるまでもなく、他方の手でそちらを『冷やして』やった。
手の効果などすぐになくなるだろうに、シャ一口ックは読書が終わるまで力一ノレの奉仕を許していた。

ひとけも絶えたこんな場所で、力一ノレの隣にいるあれはいったいなんだ?
鉄の味がするまで唇をかみしめ、ジムは彼らの死角で不穏を醸成させている。

授業を採っているわけでもないギルフォード・グロウサムの小部屋は、生物教師の職務にはたして必要か疑わしい書物に埋め尽くされていた。
力一ノレは半ば圧倒され、四囲の書棚に積まれた本群へきょろきょろと視線をさまよわせている。
「すまんね、呼びつけておいて待たせるなんて。シャ一口は何をしてるやら。」
その直後、ドアは開きシャ一口ックが入室。対面する2人の座る椅子で、この狭い部屋はもう立錐の余地を失くしている。
席を譲ろうと立ち上がる力一ノレへ片手を払い、彼は遠慮なく教師の膝の上へと腰掛けた。
「おおぅ!よさないか、シャ一口。階段を昇れなくなる。」
「もっと大腿筋を鍛えりゃいいことさ、ギル。あなたちょっと太り気味だろう?」

力一ノレは眼を白黒させた。先日『いなかった』と言ったのはグロウサム先生のことだったのか?
それ以上に、相手をまるで目上とも思っていないシャ一口ックの口のききようは、驚く以外に力一ノレへ妙な蟠りと隔たりを自覚させた。
問いたいのはやまやまだが力一ノレはそうせず、待ち人も揃ったことだし何がこれから起こるのかをまずは待とうと、沈黙を続ける。
「じゃあギル、始めようか。」「シャ一口がいると彼が困るぞ?」「ふふん、見当外れだ。審理は当事者立会いでなされるべきだもの。」
結局、そうすれば楽だからと、片腕をグロウサムの肩へ回し彼の膝の上でバランスをとるシャ一口ックは訳知り風に力一ノレを疎外する。
いや増す居心地悪さから立ち去りたいのを堪え、力一ノレは首の後ろから吹き出る汗を煩わしげに拭った。
「しかたないな。わたしは責任持たんぞ。…さてパワ一ヌ゙君、だったね。率直に訊こう。君はまだシャ一口に自分のその、コホン、自慰行為を見てほしいと思っているかね?」
なんだって?! 力一ノレはとんでもない発言の声主と、その横で飼い猫まがいに寛いでいる少年を交互に凝視した。と思っていたが、目がぐるぐると廻って世界がしばらく静止したように暗転。
とも思っただけで、実際力一ノレは椅子上で石化したにすぎなかった。
「と、とんでもな……だれがそんな…いや、おれかな…なんだっけ……あれ…ええと…」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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