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難局日誌  余子嶺 記

日曜ナイトのドラマ「難局大陸」より
新聞社 先輩と後輩のお話、エロなしです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

難局日誌 昭和31年○月1日  余個嶺 記

蔵餅さんたちが一命を取り留めてから、宇積先輩は上機嫌だ。
本当に心配してたから。先輩がうれしいと僕もうれしい。
先輩はいつもエネルギッシュで、強くてかっこいい。その記者魂と旺盛な好奇心には
いつも頭が下がる。
・・・・そう、旺盛な好奇心には・・ちょっと迷惑・・・。

先輩は常に何か記事になることを探しているが、生憎こんな閉鎖された空間の
わずか11人しか人間がいない場所でそう大ニュースが転がっているわけではない。
都合、先輩は隊員たちの個室の突撃取材と称していきなり飛び込み、覚め縞さんが
幼い息子さんの描いた絵を手にしてホームシックで泣いている場面を見るわ
若い荒氏山君が自分を慰めているシーンに遭遇し(鍵をかけない荒氏山君も悪いが)、
顰蹙を買うわ、僕が妻へ送る電文(短い中にも気持ちを込めた文を書くのは大変だ)
を覗きにきたり・・・、数々の迷惑行為に及んでいる。
「余個嶺よお、退屈だなあ。」
「そうですか。いいことじゃないですか。ほんの2.3日前まで青ざめた顔してた
じゃないですか。心臓に剣山植えてる先輩が。」僕は笑う。
「だれが剣山だ。俺の繊細な大和心はお前にはわかるまい。」
実際、この一見ガサツを絵に描いたように見えるこの人が、意外や名文筆家である
ことは知れ渡っている。昨年の難局キャンペーンでは大人たちのみならず子供たちの
心までグッと掴んだ名文は今も僕の心に感動を呼び覚ます。

「おい、余個嶺、今日は通信状況いいんだろ。」
「そうですね。快晴ですし良好です。」
「よし、ソ連の通信傍受しろ。日本に戻って浦島太郎にならないように、ここで
スクープ記事を書くぞ。」
「何言ってるんですか、こんなとこで。僕程度が傍受できるわけないでしょう。」
「よしっよしっ、ここだったら身ルヌーイ基地が割りと近いな。ここでソ連の
機密情報集めるぞ。余個嶺、実は俺は人類で初めて宇宙ロケット打ち上げるのは
ソビエトだと踏んでるんだ。」やる気満々である。
「何、バカなことを。アメリカがいるってのに。それに傍受したってロシア語なんか
解読できませんって。」
「大丈夫大丈夫。俺が訳してやるから。」
・・・そうだった。この人は度ストFスキーが原書で読めるんだった・・・。

「先輩、そんなに暇だったら、那珂里さんの料理手伝ってあげたらどうです。
難局で作れる料理って制限があっていい記事になると思いますよ。」
僕もKGBから受信傍受の疑いで抹殺されるのは避けたい・・。
国には、いとしい妻と生まれたばかりの二人の子供が待っているのだ。
「ああ、それはとっくに試してみたんだけどな。てんぷら油の温度下げようとして
水足したら大ごとになって、それ以来厨房立ち入り禁止になったんだ。」
はた迷惑な文系だ。
「とりあえずここでしか書けない身近な記事を書きましょう。ねっ、国民はそういうのを
望んでるんです。難局での生活とか読者は待ってますよ、きっと。」
「そうかなー。」
「そうです、そうですよ!」とにかく宇積先輩の意識を大スクープから逸らさないと。
「そうか・・・・、うーーん。そういえば生活面で気になることが・・・。」
「何です?先輩、興味を持ったことあるんですか。」とにかく盛りあげよう。
「・・・・余個嶺、お前、弁天さま使ったことあるか?」
「ええーーーーーーーっ??!」

弁天様とは、別名難局1号、その・・・・等身大の女性の形をした性具である。
「俺、興味はあるんだけどなあ。やっぱりその気にはならないんだ。」
「はあ・・・。」
「お前はその気になるか?」
「今のとこは・・ちょっと。僕には妻がいますし。」
「難局における性欲。これはちょっとした生活レベルの興味を惹くネタだと
思わんか。」
「はい・・・。」まあ、生活レベルかどうかは別として、ソ連よりはマシだ。
「余個嶺、俺と試してみないか?」
「☆+□×%#!!!」僕は奇声を発した。
「この場合、無機物にはそそらないが、有機物にはその気になるかも・・と
考えるんだが。」
僕は有機物扱いですか・・・。
「お前、どうだ?」
「ぼっぼっぼくには、可愛い妻が・・・。あのっあのっ」涙声になる。
「いいじゃないか。男同士だと妊娠しないだろ。実害ないしスッキリするし
名案だと思うんだよな。試してみようや。」
もう、どこをどう突っ込んでいいのかワカラナイ・・・。
「そっそんなの、もっと昔なじみの仲のいい人で試してください~。ほら、いるでしょ。
蔵餅さんとか、日室さんとか・・・。」もう、僕以外なら誰でもいい。
「日室・・・、下手だと軽蔑されそうだしな・・・。」
そういう問題か。
「蔵餅か・・・・・・・・・・・・・・・・・。」先輩、長考に入りました。
「やっぱ止めとくわ。あいつ、なんだかんだで別に好きな奴がいそうだし。
だから余個嶺、お前さあ・・。」
「那珂里さんっ。那珂里さんならあったかそうですよ。」
神様仏様、僕は地獄に落ちます。だれでもいいから人身御供に捧げます。
「いやあ、俺も選ぶ権利あるしさ。結構面食いなんだよなあ。」
相手にも選ぶ権利があることを考えないのか。
「せっせっ先輩。あの、不名木さんとか、あと、そうっ!荒氏山君。」
「確かに、溜まってそうだな。あいつ。」
荒氏山君、さんざんな言われようです。
「でも、彼、結構男前ですよ。ひげそって髪下ろすとアイドル系!」
「そうか。荒氏山か。そうか、考えてみよう。・・・メモメモ。」
僕は心の中で荒氏山君に米搗きバッタのように頭を下げた。

とにかく、怒涛のやり取りが続く中、突然宇積先輩が笑い出した。
とにもかくにも明るくくったくのない笑顔。
どうやら僕はからかわれたらしい。先輩ひどいっ!
「先輩、スクープならこの前の没んヌー天の苦難の旅なんかどうです。
みんな無事だったんだし、いい記事が書けると思いますよ。先輩の筆ならきっと
甘さに堕ちない迫力ある記事が書けると思います。」
「ああ、あれはパス。」
「何でですか。これこそ難局でしか書けない記事ですよ。生死の瀬戸際で間一髪で
3人を救助できたなんて、感動的な記事になるんじゃないですか。」
「でも、それを記事にすると実行した蔵餅や、それを許した☆野さんについて
あらぬ中傷が出てくる・・・。」先輩は少し遠い目をする。
「先輩・・・。」
「無鉄砲・・・俺は結構好きだ。越冬隊事体が無鉄砲の極みだしな。それに登頂の旅は
結果としては生死がかかったが、かなり綿密に組んだ旅だったと思う。でも世間は
そう見ない。無鉄砲とか隊長失格とか血税の無駄だとか。きっと蔵餅の過去を暴く奴
も出てくる。そうなると越冬隊について無責任な醜聞が世間にバラ巻かれる。」
「先輩・・・。」
「俺は偽善やまやかしは大嫌いだ。嘘は書けない。でも今の日本は醜聞じゃなく
希望を求めてる。蔵餅のためじゃない。蔵餅に5円玉を手渡した子供たちのためだ。」
「・・・・・。」
「没んヌー天登頂の報に俺は泣いた。何よりも支えあって生き抜いた蔵餅たちの
人間力に感動する。極限でも人間は人間であり得ることを文字にしたい。
・・・でも、俺は書かない。」
先輩はニヤリと笑う。「甘ちゃんだな。俺も。」
「なあ、余個嶺、俺はブンヤ失格と思うか。」
「いいえ。」
「余個嶺。」
僕は先輩をまっすぐ見て言う。
「先輩の頭の中にある記事は、今、俺が読みましたから。」
先輩はクスリと笑って僕の肩を叩いた。
「ほら、行くぞ。」
「えっ?どこへ?」
「まだ医務室は記事にしてない。」さすが先輩。どこまでもはた迷惑でかっこいい。
「また出入禁止になったらどうするんです。」僕は笑う。
「二人でかぶれば怖くない。」
「お供しますよ。」僕は、走って付いていく。カメラバッグを抱えて。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お目汚しでした。
あんまり慣れてないので、うまく書き込めてるかどうかドキドキです。


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