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明日も会いたい

半生il。
不意にs1から見返していて滾ったので話もs1-1のつもりです。出てくる人も。
まだまだホンノリ程度の描写です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

自首してきた男は、いかにもうだつの上がらない“牢獄”の人間らしい、浅はかな知恵の持ち主だった。
友人を殺した社長を相手に仇をとるどころか、事件のもみ消しに加担する代わりに、リストラ対象から逃れられるよう交渉したという。
どの面さげて「友達」だったというのか、取調室を後にする薫の足取りは、いつにも増して乱暴だった。
「馬鹿な奴ですよね、でっちあげの罪を被ってまでリストラ免れたいなんて」
エレベーターのボタンを二度連打しながら、薫が吐き捨てる。
隣に佇む上司は何の返事も寄越さなかったので、必然的に独り言めいた響きになった。
「ま、あんなトコにいたら腐っちまうのも仕方ないだろうけど……」
頬をかきながら、薫は昼間に見てきた「資料室」という名前のリストラ対象者の末路部屋を思い浮かべた。
うず高く積まれた段ボールに囲まれた、デスクもない狭い部屋一つ。一日中あそこで煙草をふかして、時が過ぎるのを待つらしい。

――あそこに一年いてごらんなさいよ、誰だって気が狂うでしょ。

そうだろうか。そうかもしれない。そうかもしれない。
あの疲れた男の顔を見た一瞬、薫は確かに同情的な気分になった。まるで自分を見ているようだと思った。
隅っこに追いやられて、何もかもを奪われて、諦めて消えるのを遠巻きに待たれている。
真綿で首をしめるみたいな嫌なやり方だが、組織が生き残るには仕方がない。
秘書の女の言い分が、内村部長の忌々しげな表情と重なった。
俺だって――。

「亀山君、乗らないんですか」
「あぁ、乗ります、乗りますよ」
我にかえった途端、容赦なく閉じていく目の前のエレベーターに、慌てて薫は飛び込んだ。
右京のどこか呆れた目が、眼鏡の奥から胡乱げに見上げてくる。
また何か言われるな、と薫は構えた。
「考え事は結構ですが、どうせなら……」
ほら、きた。
「いーえっ、役に立たない考え事ですよ、すんませんね」
「そうでしょうねぇ」
にべもなくあしらわれて、薫は横向いた影に隠れながら、べ、と舌を出した。
昼間、無駄口を叩いた結果「役に立たない感想」と強烈に皮肉られたのだ。厭味で返したつもりだったが、残念ながら上司はしれっとしたままだった。
「とにかく、これで、社長が犯人ってのがはっきりしましたね」
「まだ犯人が決まったわけではありません」
言いながら足早に歩いていく右京の背中を薫は追いかけた。
「そりゃ、直接手を出したのは違うやつかもしれませんけど……」
言葉に詰まって、唇をへの字に曲げる。
棘のある言い方はいつものことだが、それにしても、何となく右京の気が常より立っているような気がした。
折角少しずつ真相へ近づいてきているというのに、ちっとも面白くなさそうではない。
特命係の狭い部屋に電気をつけながら、薫はうかがうように腰を少し折った。
「右京さん、怒ってます?」
ストレートに聞いてしまう辺り、薫も馬鹿正直なのだった。

「はい?」
肩ごしに振り返った上司と部下の視線が交錯した。だがそれも一瞬のことだった。
先に目を逸らした右京の口から、わずかなため息が漏れた。追って、静かに付け加えられる。
「……今日はもう帰りましょう」
「え」
面食らった薫が思わず「でも」と言い募るのを聞き流すように、右京はコートを手にして出ていこうとする。
「くだらない考え事をしながら出来る仕事ではありませんよ」
ぴしゃりと鼻先に突き付けられた叱咤に、薫はむきになって声を荒げた。
「くだらなっ、て……!くだらないってことはないでしょう!」
「では、“ろくでもない”考え事でしょうかねぇ」
「~~っ!」
頬をひくつかせた薫だったが、「君も」と続けられて、押し黙る。右京は入口で立ち止まったまま、じっと背の高い部下を見上げていた。
「何ですか」
「君も……」
短い沈黙が流れた。ひどく、じっと見つめられて、薫はうろたえた。
何もかもを見透かすような目に、悪いことなど何もしていないのに、叱られるのではと身構えてしまう。まるで出来の悪い生徒になった気分だった。
「あの、右京さん?」
薫が恐る恐る口を開くと、右京はふと目を覚ましたように小さく首を振った。
「何でもありません。お先に失礼」
言うなりさっさと出て行ってしまう。
「え、え、ちょっと、右京さぁんー……」
間延びした薫の声に、デスク周りの新聞を片づけていた角田の方が茶々を入れた。
「もう帰りかよ、いいねぇ暇なトコは」
「ほっといてくださいよ、もうっ!――お先に!」
半ば叫ぶように言いながら、加速をつけて走り抜ける。
直感的に、右京を追いかけていかなければいけないような気がしていた。

“君も、やはり嫌で仕方ないのでしょう。”

しゃんと背を伸ばした上司の口から、もしかしたら、そんな言葉が漏れかけていたのではないかと思うと、胸が張り裂けそうなのだった。

違います、と言いたかった。
おれは、確かに一課に帰りたいけど、でも、それは、決して貴方のせいじゃ――。
いや、そうじゃなくて、本当は、本当は――。

「右京さぁん!」

警視庁のエントランスを出ると、冷たい風が身を切るように吹き付けた。
ようやく振り返った右京は、大都会の夜景をバックに、いつもの取り澄ました顔をしている。
薫は大声で叫んだ。

「また明日!」

その瞬間、わずかに、でも確かに右京の頬が緩んだような気がして、薫はもう一度、力の限りにフライトジャケットを振り回したのだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すみません。エラーに引っかかって手間取りました…

  • あの頃はいつも、薫ちゃんの無邪気な愛が右京さんを大きく包んでくれてましたね・・・うぁ~ん、薫ちゃん帰国して!! -- 2011-10-28 (金) 22:57:32
  • 右京 -- 2011-12-03 (土) 02:35:45

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