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海の記憶

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
映画「津具名井」の伍長×主人公。中の人目当てで見たら結末がツラすぎて、思わず捏造妄想せずにはおられなく…
あの作品でどうやってな次元のエロがありますのでご注意下さい。

その女性客が帰ろうと席を立った時、裏口の戸が開いた音が耳に届いて背筋がギクリと強張った。
案の定、そんな自分の異変に気付いた彼女が口を開いてくる。
「どなたかいらっしゃるんですか?」
尋ねられ、しかしそれには表情を変えないよう懸命に堪え、短く「ええ」とだけ答える。
こちらのそんな頑なな気配が伝わったのか、彼女はもうそれ以上を追及してくる事は無かった。
きっと育ちがいいのだろう。
「ありがとうございました。」
見送る玄関先で一度だけ立ち止まり、最後にもう一度礼を言う。
「お聞かせいただいた事は必ずいつか本にしますので。」
そして告げられた事に自分も再び「ええ」とだけ返したが、内心ではそんな事はもうどうでも良かった。
立ち去る後ろ姿が門を出ていくのを確かめ、やや乱暴な手つきで扉を閉め、鍵までも掛ける。
そして踵を返した足がまっすぐに向かったのは裏口のある台所だった。

部屋の扉を開ければ、そこにはテーブルの上に買いこんできた食材を取り出している青年の姿があった。
自分が入ってくると顔を上げ、微かに笑う。
「誰か来てたのか?」
問われ、ああと曖昧に返す。しかしそんな自分の微妙な反応に彼がこの時気づく様子は無く、手が止まる事も無い。
並べられていくパンや野菜。ちょっと重かったと瓶に詰められた蜂蜜が置かれ、そして、
「いい匂いだったから買ってみた。」
少しいたずらめかすように目を細め、隣りに立とうとしていた自分の鼻先に手にした丸い物体を突きつけてくる。
途端、甘酸っぱい香りが鼻先に広がった、それはオレンジだった。
朝に切って出すのでもいいし、なんならジャムでも作るよ。あれば食べるだろ?
話しながらも動きは止めず、そのまま今度は肉や魚はまだ残りがあったはずと冷蔵庫の方へ行きかける。
その二の腕を自分は掴んでいた。
「…何?」
いぶかしむような表情で彼が問うてくる。しかしそれには何も答えず、自分は掴んだ手の平に力を込めると
彼を己の方へ引き寄せた。
腕の中に抱き留め、そのまま強引にテーブルの上に乗り上げさせるような形で押し倒す。
「何?!」
今度こそはっきりと驚いた叫びが彼から上がる。けれどそれには一切耳を傾けず、
「抱きたい。」
そう一言告げ暴れかける身体を抑えつければ、その拍子に肘にぶつかったオレンジがテーブルから落ち、
夕暮れ時の同系色の光が差し込む石の床の上を転がっていった。

自分達がこの地に移り住んで一年近くが経とうとしていた。
戦後までなんとか生き抜き、退役した後自分が手に出来た職は、とある海辺に立つコテージの管理の仕事で、
夏場のヴァケーション時以外ならずっと住んでいてくれて構わないと言ってくれたそのコテージの持ち主は
裕福な老夫婦だった。
彼らは自分以外にもう一人、かつての軍人仲間がそこに住む事も快くよく許してくれた。
彼と初めて出会ったのは異国の地だった。
フランスへ派遣された軍の中、隊とはぐれた伍長である自分ともう一人、そして一兵卒の彼。
自軍と合流しなければと進む道行の中で知った彼の人となりはいささか謎めいていた。
戦場には似合わない端正な雰囲気を持つ、どちらかというと小柄な顔立ちの整った青年。
頭もいいのか、時折接触する地元の者達とも言葉を交わせるその教養に1度、「どうしておまえみたいな
上流の男がこんな最前線に?」と尋ねてみた事もあったが、それに返されたのは「俺は別に上流の男じゃない」
というにべもない答えだけだった。
あまり自分の事を話したがらない。しかし生き残りたい意思は強いのか、時として弱音を吐く自分達に
叱咤を飛ばすほどの精神力を持っていた彼が、それでも徐々に異変を見せ出したのは、探していた軍と合流し
自国へ帰る船を待つ浜辺に着いたあたりからだった。
歩く足取りに力が入らずフラフラと辺りを彷徨う姿を見た時には嫌な予感がした。
だから彼の様子を注意して見ていれば、その目から光は徐々に失われ、時としてあらぬうわ言を口にし……
精神的に参ってしまうのは無理からぬことだった。
だからせめて休めと、寝れる場所を探し、荷を下ろさせ、横にさせて昂ぶっているのだろう精神を宥めてやろうとする。
けれど彼の異変の原因は、そんな心的なものだけではあの時無かった。

身体の下から自分を止めようと名を呼んでくる彼の声がある。
しかしその一切を無視して、眼下のシャツの襟元に手を掛け裂く勢いで横に引けば、跳ね飛んだボタンの感触に
彼が息を呑んだのがわかった。
近頃暑くなってきたからか、彼はシャツの下に何も着ていなかった。
晒される自分と比べれば遥かに白い肌を綺麗だといつも思う。
けれどそんな想いは、これもいつも腹にある引き攣れた跡を見咎めた瞬間掻き消える。
今はもう大分色素も薄くなった、しかし初めて戦場で見た時、それは爆弾の破片を受けたまままともな治療も
受けられず、赤黒く膿んでいた。
撤退船に乗り込み、帰国する途上で彼の容態は悪化した。
感染症がひどくなれば命にも関わる。
ジリジリした想いで寄港を待ち、到着すると同時に病院へと担ぎ込んだ。
港近くの病院は彼に限らず同じように負傷した兵士達で溢れかえったさながら野戦病院の様相を呈していた。
ベッドも薬も人手も足らない。
そんな中でただ付き添い、出来うる限りの手伝いをして彼の回復を待った。
一時は意識が混濁して危ない状況にまで陥った彼は、それでもギリギリの所で持ち直し、やがてその瞼を持ち上げた。
しかし何もかもが元通りと言う訳にはいかなかった。
敗血症に至る一歩手前の意識障害の名残か。
彼は自分の事を忘れていた。そして何より、己自身の事も何も覚えていなかった。

あの時の衝撃を思い出しながら、乱暴に彼の衣服を剥いでいく。
下肢に手を掛け、スボンを下着ごと器用に引き下ろしてやれば膝にわだかまるその感触に彼が引きつるような
息を洩らした。
首筋に昇る朱がまるで生きている事の証のようで、たまらない感情が腹の底から込み上げる。
遠いあの頃、自分達の周囲には死が満ちていた。
例え病院内であっても手が足りないと放置される死体は幾つもあり、その内の一つが自分の傍らにもあった。
昨日までは生きていた。まるで淋しさや死の恐怖を紛らわせようとするかのように、その男はたまたま隣りにいた自分に
とりとめのない話をし続けた。
その男は言った。自分は親も兄弟も恋人もいない、天涯孤独の身だと。
振り返って、見下ろす。
ようやく目を開けてくれた彼は、これまで訳有りな人生を送ってきた者のようだった。
けれどそれをすべて忘れてしまった。
見比べる顔と顔。耳に残る過去の事情。
まだ夜の明けきらぬ早朝の病室は寝静まり、自分以外起きている者は誰もいなかった。
そんな中目に飛び込んできた男の手首のドッグタグ。
恐ろしいほどに罪悪感は無かった。むしろ暗い衝動が自分の中には満ちていた。
彼と男の円形の金属板を入れ替える。
世の中は混乱していた。国中に死が満ちていた。
死体は夕方には運び出され、自分達は彼がわずかでも動けるようになるのを待ってその病院を去った。
追ってくる者、疑念を抱く者は誰もいなかった。
あの瞬間、彼は自分だけのものになったのだ。

その後自分は軍に復帰したが、負傷した彼が徴兵される事は免れた。
戦地へ行き、休暇が取れ、戻る度に彼の記憶がどうなったか、残っていてくれるだろうかと不安を抱き続けたが、
そんな自分の懸念を余所に彼は自分の手の届く場所に留まり続けた。
そして迎えた終戦。自分は彼の手を取って旅に出た。
何もかも失くした彼だが、それでも唯一大事に持ち続けているものがあった。
それは1枚の写真だった。
青い波が打ち寄せる海辺に立つコテージが映るその景色を探しに行こうかと告げれば、彼はそれにうれしそうに笑った。
結局、それと同じ場所は見つける事は出来なかったけれど、それでも似た立地の場所で職と家を手に入れ、
新しい生活は満ち足りたかのように思えた。
しかしそこに彼女は現れた。
突然この家を訪れたその若い女性は、自分の事を彼の恋人だった女性の妹だと告げた。

腕を伸ばし、テーブルの上に置かれたままだった蜂蜜の瓶の蓋を器用に外す。
身体の下の彼は、のし掛かり抑えつけてくる重みに徐々に抵抗する気力を無くしているようだった。
しかしその隙をつくように、指にすくい取った蜜をその足の奥に塗り込めてやれば、さすがに我に返ったような反応が戻る。
「そんなもの…っ…いや…だ…」
切れ切れに訴えてくる、しかしそんな声を今の自分は聞いてやる事が出来なかった。
「ひどくはしないから。」
手の動きは止めぬまま、こめかみ、頬、首筋へと宥めるように唇を滑らせていく。
それに彼はギュッと目をつむり、唇を噛み締めた。
ひどくはしない。いや、出来ない。だから十分に慣らしてやりたい。
指先にそんな熱がこもるのはすべて先程聞いた話のせいだった。

彼の恋人の妹だと名乗った女性は、これまで謎だった彼のすべてを自分に語った。
彼は彼女の家の使用人の息子だったと言う。
家の援助を受けて大学を出て、医者になる事を目指していた。
その生い立ちの中で主筋にあたる家の娘と恋に落ちた。しかし彼のそんな幸福な時間は長くは続かなかった。
ある日屋敷で起きた事件。
当時、その家に滞在していたある少女が暴漢に襲われた。
その犯人に彼は仕立てられたのだ……
『すべては私のせいです』
彼女はそう言って、あの時自分の前で深く項垂れた。
あの日、彼女は彼と姉の情事を垣間見てしまっていた。
姉に憧れていた。彼は初恋の人でもあった。そして何より自分は子供すぎた。
過度の潔癖と正義感。
自分は少女を襲った男の正体を知っていた。けれどその記憶を彼とすり替え、偽りの証言をした。
彼は刑務所に送られ、それ以降二度と会えてはいない。
『18になって、家を出て、ようやく彼のその後を追う事が出来るようになりました。戦争が始まり、刑期短縮の為
彼が従軍を志願し、フランスに派遣された事まではわかりました。でもその先の情報が途切れてしまった。
そんな中色々調べて、あなたが彼と同じ部隊にいらっしゃった事がわかりました。彼の事を何か覚えてはいませんか?』
懇願するように問われる。それに自分はしばし返事を返す事が出来なかった。
彼女が彼の事を知ってここに来た訳ではない事には安堵の想いが込み上げたが、それ以上になぜという混乱が
頭の中を埋め尽くす。
『どうして…今更そんな事を?』
だから無意識にそんな言葉を洩らせば、それに彼女はその眉根を強くしかめた。
『襲われた少女は結婚しました。相手は……私が真実に見た男です。』
彼女はその男の名を言った。それは自分のような人間ですら聞いた事のあるこの国の名士の名だった。
『私は取り返しのつかない事をしてしまいました。今更許されると思ってはいませんが、それでも出来る事なら
一言でもいい、謝りたい。』
涙交じりの訴え。しかしそれが自分の心に届くはずも無かった。
彼女は語り続けた。自分はいつかこの事を本にしたい。実名も恐れはしない。その為にも彼の事を知りたいのです。
子供だったと彼女は最初に言った。しかし今とてその世間知らずさは大差ないと思う。
本にする?それはいつの事だ。それが成るまでの間、彼女が苦しみ続けるのならそれでいいではないかとさえ思う。
実名公表?それで彼に罪をなすりつけた者達が世間に恥をさらそうが、それで彼に何が戻る?
上流階級の者達が寄ってたかって身分の低い者を虐げた、そんな話は世間にザラにある。それでも、
『出来れば刑務所で何があったのかも、私は知りたい。』
彼女は育ちがいいのだろうと思った。今の境遇がどうあれ、その本質は典型的な上流階級の人間。
刑務所で何があったか。
あんな顔をしあんな雰囲気をまとった男が放り込まれればどんな目にあうか、そんな事は火を見るより明らかだった。
知った真実は自分の心に冷えた怒りだけを生んだ。
だからあの時自分は答えた。
『彼はフランスの浜辺で帰国かなわず、敗血症で亡くなりました。』
それに彼女は瞬間絶望的な目を上げた。しかしそれ以上の感情は必死に押し殺し、最後にこう一言だけ告げた。
『彼を待ち続けた姉も、空襲で亡くなりました。』

指に取った蜂蜜が擦られる熱で緩く溶け出すまで、受け入れさせる場所を解すのを止めない。
傷つけたくはない。その一念からの行為も長すぎれば執拗へと転じてしまうのだろう、気付いた時彼は
手の甲を口元まで持ち上げ、その上に歯を立てて洩れそうになる声を必死に噛み殺していた。
暴れる抵抗は諦めたのか、力の抜けた足はテーブルの下へと投げ出され支えていないとずり落ちそうになる。
だから抱え直す為に一度指を後ろから抜けば、それに彼の目はうっすらと開かれた。
「……もぅ……」
小さく掠れながら零された訴えには、さすがに我に返る憐憫の情が沸いた。
けれどここで止めるにはすでに自分は熱くなりすぎていたから。
「ひどくはしない。」
同じ言葉を繰り返し、取り出した己の欲を彼にあてがい押し込めば、その圧迫感に身体の下でうっすら汗ばんだ肌が跳ねた。
「…あぁっ…く…ぁあ…っ」
身体を割り裂かれる感触にもがき呻き、けれど十分に解されていたせいで痛みは感じないのか、上げる声には
やがて啜り泣く様な響きが混じり出す。
一旦受け入れてしまえばすぐに淫蕩に溶け落ちる。そんな慣れてしまった身体を自覚するのが辛いのだろう。
再び噛み締めようと上がりかけた彼の手を、しかしその時自分は掴み抑えた。
「声を殺さなくていい。」
けれどそれに彼は首を微かに横に振って拒絶を示すから、続けてこうも告げてやった。
「俺が塞いでいてやるからいい。」
身を伸び上がらせ、重ねる唇。
繋がったまま更に深い奥を突かれ、悲鳴じみた嬌声が彼の咽喉を震わせるのを感じながら自分はこの時、
ふと彼に初めて口づけたのはいつだったろうと思う。
そうして記憶を手繰り寄せれば、それはあの戦場の夜を浮かび上がらせた。
心身共に追い詰められ、彼は当時目を閉じても尚、悪夢にうなされている事が多かった。
兵士達が横になるかろうじて屋根があるだけの場所で上げられる叫びは、周囲の苛立ちを呼び起こし、
それを防ぐ為に自分はかぶる毛布の下で彼の唇を塞いだ。
砂と埃まじりの薄暗い闇の中で交わすそれは必要に迫られた手段だった。が、
「……んぁ…あ…ぁ……」
役目を奪われた彼の手が、自分の肩の上に落とされる。
そして縋るようにしがみつくようにこめられるその指先の力を、今自分はたまらなく愛おしいと思う。
交わす唇の狭間から時折洩れる互いの荒い呼吸の向こうに、遠く海の音が聞こえていた。
その寄せては返す波の調べはあの頃と変わらないのに、自分達はひどく遠い所まで来たのだと感じていた。

汗と蜜と吐き出した欲に塗れた身体を湯を張ったバスタブに浸ける。
そしてそれは彼だけではない自分もと踏み込むと、彼は少し戸惑ったようだがそれに何か口を開く事は無かった。
背後へと回り込み、彼を後ろ抱きにするようにして背をバスタブの淵にもたれさせる。
静かだった。
窓から差し込む光はもはやかなり弱く周囲に夜の訪れを告げていたが、白熱灯をわざわざつける気にはならず、
少し薄暗い浴室の中で、彼の肌に手ですくい取った湯を掛けてやる。
幾度も繰り返す、その行為に彼の緊張も徐々に解かれていったようだった。
「……テーブルの上に買ってきたもの出しっぱなしだ…」
やがて前を向いたままポツリと零された言葉に、自分の口元はほのかに緩む。
「後で俺が片づけておくよ。」
「…夕食の用意、何も出来てない…」
「それも俺がやるよ。なんなら風呂でたら近くの店で何か買ってくるか?」
「……いきなりあんなふうにされるのはもう御免だ。」
「……すまない。」
ズバリと言われ、即座に謝る。その素直さに彼のわだかまりは少なからず消えたようだった。
もたれかかってくる身体が不意に重くなる。預けてくるその肌を自分は湯の中で大切に抱いた。
「もうすぐ夏が来る。」
そうしながら話しかける。
「この家の持ち主がやってきたら、その間また旅行にでも行こう。どこか行きたい所はあるか?たまには街中に
出てもいいし、それとも避暑で山にでも行ってみるか。」
饒舌に楽しげに。それに彼はしばし考え込むような沈黙を落とすと、やがてこう返事を返してきた。
「海へ。」
聞こえたのは密やかに乞うような声だった。
それに自分は一瞬絶句しながら、それでもこの時懸命に「そうか」とだけ応えてやる。
彼が探している海は、きっとあの写真の中のものだった。
そしてあの写真を彼に渡したのが彼の恋人だったろう事を、自分は今日知った。
失くしたものを今も無意識に追い求める、そんな彼がひどく痛ましくなる。それでも、
「行こう。」
自分は言った。
「ここではない、どこかの海へ。」
湯の中、手の平で彼の腹の傷を確かめながら誓う。
「一緒に行こう。」
その場所に辿り着けば彼は何かを思い出すかもしれない。しかしそうなっても、
今の自分はただ、彼を愛していた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
面倒をみてくれた伍長の優しさだけが救いでした…


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