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蛙軍曹 黄×緑×黄

蛙軍曹の黄色と緑です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 ここ最近、ケロロの様子がおかしい。

 自室であるラボのモニターの前に腰掛け、クルルは思考を巡らせていた。
 挙動不審で滑稽で間抜けなのはいつもの事だが、合間にふとした違和感があるのだ。
 一人になったとき、会話の切れ間、一瞬だけひどく冷めたような顔をする。
 「あの頃」とは違う、表情の抜け落ちた黒くてただ深い目に、少し背が冷えた。

 本部からなにか言われたかと調べてみたが、なにも痕跡は無い。
 日向家や隊員ともトラブルは無い。
 誰かに相談している様子も無い。
 調べれば調べるほど分からなくなっていく。

――いっそのこと本人に直接聞くか――

 ケロロの事だ、適当にはぐらかして逃げようとするだろう。
 あの男はどれだけ調べてからかい倒しても、一向に底が知れない。

 景気付けでもするかのようにいつもの笑いを一つ残して、クルルはラボを後にした。

 シューターのような細い通路を通って、ケロロの部屋にでる。部屋の主は少し前から、プラスチックの塊と逢瀬中だ。
 来訪者に気がついていないわけではないだろうが、ケロロは黙ってぱちんぱちんとニッパーを動かしている。

 少し丸まった背中にもたれ掛かるようにして、座った。

「……なんか用でありますか」

 ぼそりと、手を止めず呟くように言われた言葉も、常のような勢いや飄々としたものは無い。
 クルルが自分を調べている事が分かっているのだろう。

「……あんた、最近妙だぜぇ」

 どうせ小手先の技など通用しない。
 ケロロは案外、直球勝負に弱いことがある。それすらポーズの可能性もあるが、クルルには確定しきる術はない。
 遠慮のないクルルの言葉に、ケロロは体中から面倒くさい、というオーラを出しながらニッパーを置いた。

「全く、クルル曹長は優秀でありますな」

「お褒めに預かり光栄なこった、く~っくっく。……で?」

 なんて事のないトーンでの会話のようだが、その実空気はとことん殺伐としている。
 ただ気怠げで虚ろなケロロと、何としてでも暴ききってやろうというクルル。
 部屋の体感気温は真冬並みである。

「んー、なんちゅーかね、我輩今とってもメンドい事になってんだよね」

 クルルと背中合わせのまま、ぶつぶつとぼやくように言うケロロに、クルルは渋い顔をする。
 冗談やふざけている時以外に面倒などという言葉は、普段のケロロからは出てこない。掴みどころが無さ過ぎる癖に、どこかしら見えない芯がある様な振る舞いをする。
 そんなケロロがわざわざ面倒くさいなどと言う。よっぽどややこしいことなのだろうか?
 弱さも喜びも、深いところは見せないケロロという男が、クルルは歯痒くて堪らない。
 だからこそ、とことん暴いてみたくなる。

「ほうほう、そりゃ気になるなぁ、隊長さんよ」

 愉快犯的な雰囲気は崩さないまま、引く意志が無いことも滲ませていく。
 こんな所で諦められるものか。

 ケロロの全てを知りたい。
 旧友ですら知らない彼を、独占してしまいたい。
 もうずっと前から、 クルルはケロロを求めてやまないのだ。

「流石のクルルだって、知らない方が良いこともあると思うけどなー」

「く~っくっく、そう言われちゃあ、聞かない訳にはいかねぇなぁ……」

 譲る気などさらさらないクルルに心底呆れた顔をしながら、ケロロは溜め息をついた。

「我輩さぁ、多分ね……」

 ケロロは面倒臭そうに後ろ頭を掻く。

「多分?」

「……多分、恋してるんでありますよ、クルルに」

「……く~っくっく、そりゃ、確かにメンドクセェこった」

 一瞬硬直したあと、さも愉快そうに笑いだしたクルルと、乾いた視線を空中に向けるケロロ。
 会話の内容とそぐわない、なんとも異様な光景があった。
 いつまでも声をあげて笑い続けるクルルを一瞥して、ケロロは何度目かの溜め息をつく。

「……たのしそーネ、クルルさん」

「そりゃあなぁ。アンタ、俺の反応予測ついてたろう?」

 クルルはケロロを特別な存在だと思っている。あからさまにはしていないが、隠してもいない。
 気がつきにくい好意だが、しっかりした意志がある。

 そんなクルルに、恋をしているなどと告げればどうなるかなど、明白だった。
 そもそもケロロは恋愛など面倒だと思っている。
 隊長システムや自分の気質を理解している為に、諦めに近い感情を持っていた。
 しかし、実際惚れてしまったものは仕方がない。おまけに相手はあの、トラブルとアクシデントをこよなく愛する黄色いひねくれ者である。
 甘酸っぱいときめきや切ない胸の熱さなど殆ど無く、ケロロに去来するのはただひたすらに、面倒臭い。それだけだった。
 恋心が募ると同時に、ややこしい事に対する不満や倦怠感も降り積もっていき、とうとうクルルに直撃される羽目になった。

「……あーあ、だから嫌だったんだよねー、クルルに言うの」

 絶対面白がるデショ、とまたしても大きい溜め息をついたケロロは、ニッパーを取り上げ作業を再開する。
 ひとしきり笑って満足したらしいクルルが立ち上がり、冷蔵庫型の通路のドアの前に立つ。

「ああ、そうだ隊長」

 ケロロは振り返って声をかけてきたクルルに視線だけを向ける。

「言い忘れてた。俺も、あんたに惚れてる」

 言い終わると同時にクルルはドアの向こうに消えた。
 一人きりになったケロロは、今日量産した中でも殊更地の底を這うような溜め息を落として、頭を抱えている。

「……知ってるっつーの、ひねくれ者が……」

 しかし先ほどまでの脱力感は無く、ケロロの顔は湯気でも噴きそうな程真っ赤に染まっている。

 同じ頃、赤面して悶絶するケロロの姿をモニターで確認し、自分も居たたまれない気恥ずかしさを感じて苦悩するクルルがいた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
半乾きのおっさんととことんひねくれた若造が好きすぎます。

  • 萌え死んだ -- 2011-07-17 (日) 08:08:46
  • うひゃあ萌える -- 2011-07-20 (水) 23:55:30
  • 萌えすぎて再発した -- 2011-07-21 (木) 12:33:56
  • 萌えましたであります -- 2011-09-04 (日) 19:04:25

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