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WARLOCK IN LOVE

影の狩人 魔法使い×黒髪狩人

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

がくん――と頭が落ちて、マ/グ/ナ/スは慌てて姿勢を正した。一瞬居眠りをしてしまったらしい。
顔を上げると、カーテンの隙間から見える窓の外は、漆黒の闇から明け方の薄紫に変わりつつある。もうこんな時間だ。
マグナスは目をこすって息をつき、目の前のベッドに視線を落とした。白いシーツに包まれて、黒髪の少年――ア/レ/ク・ラ/イ/ト/ウ/ッ/ドが静かに眠っている。
「…なあ、まだ目を覚まさないのか?」
眠ったままの青白い顔に、マ/グ/ナ/スはそっと話しかけた。
ア/レ/クの額にかかった黒髪をはらいのける。その下のまぶたは、美しい青い瞳を隠して閉じられたままだ。
彼の身体を侵していた毒はすべて抜いた。骨や内臓の損傷も治っているはずだ。あとは意識が戻って、後遺症がない事を確認できれば安心できるのに。
早く目を覚ませよ、とマ/グ/ナ/スはア/レ/クを見つめて呟いた。
目を覚まして、俺が来たのが手遅れでなかったと証明してくれ。

昨夜マ/グ/ナ/スがこの研究所に駆けつけた時には、ア/レ/クは既に意識がなく、妖魔の毒を注ぎ込まれた胸はどす黒く変色しつつあった。
それを見た時には、これはもう手の施しようがないのではないかと、マ/グ/ナ/スは自分の背中を冷たい絶望が撫でるのを感じた。
どうしてもっと早く俺を呼ばないんだと怒鳴りつけたくなるのを抑えて、彼の妹を病室から追い出した。
そして毒を抜くために、何時間もかけてありったけの魔法をア/レ/クの身体に注ぎ込んだのだ。

「何をやってるんだろうな、俺は…」
ベッドから離れて窓辺に立ち、ぼんやりと外を見つめながらマ/グ/ナ/スは呟いた。
ガラスに映った自分と目が合う。ひどい格好だ。下ろしたままの長い黒髪は乱れ、シャツは皺が寄ってくしゃくしゃだ。
ア/レ/クが死にかかっていると聞いて、髪も服も整えるのを忘れて飛び出してきたからだ。
イカれてるな。俺らしくもない。
マ/グ/ナ/スは自嘲した。何たる慌てぶり。この俺が髪をセットしないで外に出たなど、何十年ぶりだろう。
この偉大なる高位魔法使いマ/グ/ナ/ス・ベ/イ/ンが。影の狩人たちの隠れ家まであわをくって駆けつけ、魔力をありったけ使ってア/レ/クを癒し、ベッドのそばに一晩中付き添って…
――あのパーティの夜、たった一度会って、ほんの少し言葉を交わしただけだというのに、どうして俺はこの黒髪の少年のためにこんな事をしているんだ?

マ/グ/ナ/スはゆっくりとベッドの傍らに戻り、ふたたびア/レ/クを見下ろした。
「ア/レ/ク…」
ためらいながら、小さくその名を呟いてみる。
あの夜には、まだその名前すら知らなかった。ただ、名も知らない物静かな彼の、黒髪の下でランプのように輝く青い瞳が、たまらなく美しいと思った。
マ/グ/ナ/スはシーツの上のア/レ/クの手を握り、その閉ざされたまぶたの上に静かに唇をかさねた。
なあ、俺たちはまだ出会ったばかりだぜ。これきりにするのはあまりに勿体無い。
目を覚ませよ。俺は、もっときみと話がしてみたい。

手の中に握ったア/レ/クの指がぴくっと動いた。
「ア/レ/ク?」
慌てて顔を覗き込むと、青ざめたまぶたがかすかに震えてゆっくりと開き、ふたつのみごとな青い瞳が現れた。
ああ、やっぱりこいつの眼はいいな――
マ/グ/ナ/スの唇に笑みが浮かんだ。
近くで見ると、ア/レ/クの深いブルーの両目はまるで宝石だ。見つめると吸い込まれそうになる。
「眠り姫のお目覚めだな。――俺がわかるか?ア/レ/ク/サ/ン/ダ/ー・ラ/イ/ト/ウ/ッ/ド」
「マ…グ/ナ/ス・ベ/イ/ン…?」
マ/グ/ナ/スを見上げ、かすれた声でア/レ/クが呟いた。周囲を見回し、もう一度視線をマ/グ/ナ/スに戻す。目の中に混乱の色が見える。
「どうしてあんたがここに――」
どうやら意識ははっきりしているようだ。マ/グ/ナ/スは幾分ほっとしながら、彼の問いに答えた。
「きみはジ/ェ/イ/スとかいうあの金髪の坊やと妖魔の間に飛び出して、毒の爪で切り裂かれたんだ。覚えてないか?」
記憶が甦ったらしく、ア/レ/クはハッと目を開き、自分の胸にさわった。
「あれだけ高位の妖魔の毒には、この研究所の解毒剤では対応しきれない。そこで、ブルックリンの高位魔法使いたる俺様が、かわりにきみの傷を癒したというわけだ。――失礼」
マ/グ/ナ/スはシーツをそっとめくって夜着をひらき、ア/レ/クの身体を確認した。
昨夜は妖魔の毒で黒く染まっていたア/レ/クの胸は、今はやや青白いものの、きれいな肌色に戻っている。醜い傷跡は残っていない。マ/グ/ナ/スは自分の腕前に満足した。
「まだどこか痛むか?」
ア/レ/クは小さく首を振った。
「…みんなは?」
「あの影の狩人の坊やたちの事か?全員元気だ。つまりきみ以外は、って事だが」
ア/レ/クはほっとしたようにうなずき、そして不思議そうな目でマ/グ/ナ/スを見上げた。
「なぜ来てくれたんだ?」
「と言うと?」

「あんたは僕たちの事は嫌いなんだと思っていた。助ける義理もないはずだ」
「俺はダ/ウ/ン/ワ/ー/ル/ダ/ーだが、別にネ/フ/ィ/リ/ムは嫌いじゃないさ。まあ好きでもないがね。ただ――」
マ/グ/ナ/スは首をかしげて少し考えると、手を伸ばしてア/レ/クの顔に触れた。
「――この眼がもう一度見たかったんだ」
眼を傷付けないように注意しながら長い爪でそっと黒い睫毛をなぞると、ア/レ/クは赤くなってその手を払いのけた。
「やめろ。ふざけるなよ」
マ/グ/ナ/スはおとなしく手を引っ込めて、椅子にどかっとふんぞり返った。そして足を組んで尊大にア/レ/クを見下ろした。
「――まったく、馬鹿なまねをしたもんだな。俺が来るのが少し遅ければ、きみは死ぬところだったんだぜ」
ア/レ/クはため息をついて、意外にも素直に応えた。
「…そうだな。馬鹿なまねをしたよ」
「――きみはそんなにあの坊やが好きか?」
ふと思いついて不躾に尋ねると、ア/レ/クは顔から血の気を消し、明らかな狼狽の色を浮かべてマ/グ/ナ/スを見上げた。
「何の話だ?僕は別に――」
「隠すなよ」
マ/グ/ナ/スは面倒くさそうにア/レ/クをさえぎった。
ア/レ/クが無茶をしたのは、話を聞く限り、彼の幼馴染で義兄弟のジ/ェ/イ/スの為だ。淡い金髪に、蜂蜜のように輝く金色の瞳の、天使のように美しい(性格は悪いが)あの少年――
パーティの夜、自分の傍らに立つ彼をひそかに見つめていたア/レ/クのまなざしを、マ/グ/ナ/スは今でも思い出せた。
「隠さなくていい。きみはゲイだし、きみは彼を愛している。俺にはわかるんだ。――だがあいつのどこがいいのかはわからないな。俺には性格の悪いクソガキにしか見えないんだが」
ア/レ/クはむっとしたようにマ/グ/ナ/スを睨み上げた。
「それに――あいつはストレートだろう」
何故かかすかな胸の痛みを覚えながら、マ/グ/ナ/スは付け加えた。
「どんなに愛したところで、あいつはきみを愛さないのに」
ア/レ/クの顔が鋭さを増し、マ/グ/ナ/スは自分の言葉が彼を傷付けたのを知った。
怒り出すかと思ったが、ア/レ/クはやがて目から険を消し、ふっと力を抜いて目を閉じた。
「――わかってたよ」
ア/レ/クは言った。

「…わかってた、そんな事。僕はジ/ェ/イ/スに愛されない」
溜息の混じった、静かな声だった。
「――でもそれでいいと思ってたんだ。一生親友として彼のそばにいられれば、彼の隣で命が尽きる日まで戦友として戦っていられれば、それで十分だって」
再び開かれたア/レ/クの青い瞳はわずかに潤んでおり、そこに顕れた意外な脆さに、マ/グ/ナ/スは胸が奇妙にざわつくのを感じた。
「でも…いざジ/ェ/イ/スが本気で――遊びじゃなくて、はじめて本気でひとりの女の子を愛しはじめたら、僕は全然平気でいられなかった。動揺して、嫉妬して、みっともないまねを沢山してしまった。これもそのひとつだ」
ア/レ/クは昨夜まで醜い傷に侵されていた自分の胸に触れた。
「僕は子供だな。恥ずかしいよ」
マ/グ/ナ/スは少し考えて、静かに答えた。
「心ある生き物は愛で愚かになるものだ。別にきみだけじゃない。恥ずかしい事でもない」
「…あんたも?」
マ/グ/ナ/スは少し笑った。
「そうだな。俺も愚かになる。誰かを愛すれば」
「誰にも話したことがないんだ。その…ジ/ェ/イ/スを…愛しているって」
「そうか」
「イ/ザ/ベ/ルにすら話したことがないのに、何であんたには話してしまったんだろう。今の話、誰にも言わないで」
「心配しなくても、誰にも言わない」マ/グ/ナ/スは肩をすくめた。「面白い話でもないしな」
ア/レ/クは小さく息をついて、安心したように目を閉じた。
「ふふ…『性格の悪いクソガキ』か」
ふいにア/レ/クは笑い声を立てた。
「本当にそうだよな。――でも、あいつあれで結構可愛いところもあるんだよ」
耳に心地よい、風のような笑い声だとマ/グ/ナ/スは思った。その響きに、胸が軽く締め付けられる。こいつはもっと笑えばいいのに。

「――どうやらもう大丈夫そうだな。意識もはっきりしているし、毒の後遺症もなさそうだ」
マ/グ/ナ/スは欠伸をして椅子から立ち上がった。
「それじゃあ、俺は帰るぞ。徹夜して疲れた」
「マ/グ/ナ/ス」
ア/レ/クは慌ててマ/グ/ナ/スを呼び止めた。
「その…ありがとう。色々」
マ/グ/ナ/スは鼻を鳴らした。
「礼はいらない。後で代金をきっちりもらうからな。俺はタダ働きはしないんだ」
「代金?」
不安げな顔になったア/レ/クを見てにやっと笑うと、マ/グ/ナ/スは横たわったままの彼の上に素早くかがみこんで、唇に優しく触れるようにキスをした。
部屋に沈黙が降りた。軽く触れるように押さえた手の下で、ア/レ/クの肩が硬くこわばるのをマ/グ/ナ/スは感じた。
そっと唇を離して目を合わせると、ア/レ/クはマ/グ/ナ/スを見つめて硬直したまま、見る見る真っ赤になった。
「…そういう反応をされると、俺の方が照れちまうんだが」
「うるさい!」
あまりに初心すぎる反応に、何だか子供に悪さをしてしまったような気分になってマ/グ/ナ/スは頭を掻いた。もしかしてこいつはキスをしたことがないのか?――ないかもしれない。
何しろ今までずっと、こいつは全く脈のない片想いの義兄弟しか目に入っていなかったのだから。
マ/グ/ナ/スは人差し指で自分の唇に触れ、首を振った。
「…ま、これじゃ全然足りないが…、今日はこれでいい。残りの『代金』を支払う気になったら、いつでも俺の家に来てくれ」
ア/レ/クは慌てて起き上がって、立ち去ろうとしたマ/グ/ナ/スのシャツの裾を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待って!だっ…だだ代金って、なに?」
「家に来たら教えてやる」
マ/グ/ナ/スはそう言ってウィンクし、ますます赤くなるア/レ/クをながめて楽しんだ。
それからふと真面目な顔になって、いった。
「――なあア/レ/ク、真面目な話、本気で俺を試してみないか?」
「は?」

「俺が思うに、きみはそろそろ誰かに愛される事を学ぶべきだ」
マ/グ/ナ/スはさっき見たばかりのア/レ/クの表情を思い出した。天井を見上げてジ/ェ/イ/スの話をしていた時の、寂しそうな色の瞳。
彼はまだ愛される事を知らない、とマ/グ/ナ/スは感じた。
報われないとわかっている相手に愛を注ぎ続ける事に慣れ過ぎていて、自分が愛をもらう事には少しも慣れていない。
だからちょっとした口説き文句にも、挨拶のような軽いキスにすら耐性がない。だから何をされてもすぐに赤くなる。
寂しい事があまりにもあたりまえで、そこから抜け出す事を考えようともしない。
愚かな奴。そんな酷い恋にいつまでしがみついているつもりなんだ?
――俺が教えてやるよ。ア/レ/ク。
愛した者から愛される喜びも、愛し合う快楽も、俺がきみに全部教えてやる。だから――
「…あんな奴忘れて、俺のものになっちまえよ」
自分でも驚くほど真摯な声だった。マ/グ/ナ/スは自分の口から出た言葉に自分で戸惑った。
ア/レ/クは声も出せずに、驚いた顔でマ/グ/ナ/スを見つめていた。
急に気まずくなって、マ/グ/ナ/スは咳払いをした。
「…じゃあ、帰る。またな」

「…何を言ってるんだ、俺は」
廊下に出ると、マ/グ/ナ/スは病室のドアに背中を預けて息をついた。吐いた息が熱い。胸に手を当ててみると、初めて恋を知った少年のように心臓がドキドキしていた。
マ/グ/ナ/スが少年だったのは、何百年も前の話だ。
「はは…」
マ/グ/ナ/スは思わず声を出して苦笑した。
何て事だ。俺は恋をしているのか。――この俺が、本気で?
このマ/グ/ナ/ス・ベ/イ/ンが。その気になれば、欲しいと思った相手は男でも女でもいくらでも欲しいだけ手に入れられるほど魅力あるこの俺が。あんなキスの仕方ひとつ知らないようなティーンエイジャーのガキに?
しかも――しかも――あろうことか片想いだ。ムカつく。
ムカつくのに、一方で同じだけわくわくしている。退屈な長すぎる人生の中で、思いがけず自分の心を奪う相手に出会えた事に。
「ア/レ/ク…」
既に自分の中で大切な響きになりはじめている名前を、もういちどそっと呟く。呟くだけで、胸が心地よくざわめいた。
――さて、これからどうしようか?
マ/グ/ナ/スは自分に問いかけた。
柔らかい唇だったな。あの先へ進むにはどれくらいかかるだろう?愛の言葉を交わして、互いの肌に触れられるようになるには。
あれだけ初心な坊やだと、どっちにしても最初は俺の方から歩み寄らないと何ともならないな。
とりあえず、次に会ったら、人間の作法に従って携帯電話とやらの番号でも渡してみようか。もっともその前に、俺が人間用の携帯電話を契約する方法を考えないといけないが…
「『俺も愚かになる。誰かを愛すれば』――か」
マ/グ/ナ/スは自分の言葉に独り笑うと、研究所の長い廊下を、家に帰るために歩き出した。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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