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ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ヴァンパイア気が弱いへたれくん。

「私とバルドでは種族が違う…」
「そうだな、違うな。なあ、例の相談した奴らに言われなかったか?人間となんてってさー」
それを聞いて、思い出す。
例の彼女たちは、『人間と』という言葉を使っていた。
それなりに知識がある、強い種族である者たちは、人間を嫌う。
 納得はするが理解はできない。
夜桜はそう思って、涙をぬぐうと、鋭い目つきになった。
初めてだろうか。いつも困った顔ばかりしている夜桜が、少し強気な表情を見せたのは。
「どちらにせよ、私は負けた。バルドが言う通り、何でもしよう。確か家事だったか。私は人間の生活に慣れていないから、教えてほしい」
「ん、おうよ、わかった。ま、その前に寝ようぜ、朝だ。朝はお前も苦手だろ」
今度は布団の中に入ると、いつものように両手を広げた。
早く来いということだ。
おとなしく夜桜は彼の腕の中に入ると、目を閉じた。

それから一週間が過ぎた。
最初作った味噌汁はひどいものだったが、一週間もたてば慣れたものである。
ガルズヘイム人でありながら日倭を愛するバルドの食事や風呂や洗濯といったものは大変だったが、何とかできるようになってきた。
しかし真昼の外に出なければならない洗濯物を干すという作業だけはできないので、それはバルドがしていた。
(水を使う仕事も苦手だが、約束は約束だし…)
いちいち水を使って洗い物をするたびに小さな火傷を負っていたが、すぐに癒えた。
「おーいそろそろ風呂ー」
バルドはここぞとばかりに夜桜をこき使った。
今まで家のことはすべて自分でしていたなだけに、周りのことをやってもらってもらうというのはバルドにとってはとても好都合だった。
 その間バルドは、本を読んだり外に出たりしていた。
「あ、ああ、すぐやる」
風呂だってガルズヘイム式とだいぶ違う。
五右エ門風呂にせっせと水を入れ、そのままでは入れないので下のほうに丸い木の板を入れる。
更に火を焚いて、わかす。
熱すぎてもいけない、冷たすぎてもいけないという風呂加減は難しいが、うっかりその時夜桜は風呂の加減を見ようとして足を滑らせ、風呂の中に体を突っ込んだ。
中はほぼ水だった。

体中に小さな火傷を負って、痛くて痛くて、すぐに外に出た。
 ぜえぜえと息をつくが、その時に響いた声で、バルドが駆けつけてきた頃には、夜桜は頭からつま先まで、水浸しだった。
小さな火傷のあとがいくつもできているのを見て、バルドが慌てて拭いてやる。
「ば、バルド…」
「馬鹿…。全身びしょ濡れじゃねーか、あ、ヴァンパイアは水が苦手なんだっけ。とにかく着がえないとまた怪我するぞ」
手を引いて、バルドはぐったりと首を垂れる夜桜を部屋に連れていく。
バルドの服は大きすぎるが、これしかないので仕方ない。いつもの黒いズボンとハイネックをとっとと脱がすと、タオルを渡した。
「い、痛い…、すまないバルド、迷惑をかけた」
それよりも脱いだ白い肌には、かなりの火傷で赤くなっていて、痛そうだ。仕方なく持っていたキュアパウダーをかけてやると、少しは傷が癒える。
「早く着がえろよー」
しかし、と改めて着替えている夜桜を見る。
肌が白くて、本当に陽に当たっていないことが分かる。
胸板も薄いし、筋肉もあまりついていないくせにやけに力が強かったりするし、それでいて銀髪は美しい。
今は体に火傷を負っているのでそれが痛々しいが、それさえなければ、と考えて、バルドは何か妙なことに気付いた。
(?)
「どうした?バルドのズボンは大きいな」
意気揚々と着がえている夜桜相手に妙な感情が芽生えた。
すぐそばの引きっぱなしの布団の上で、ズボンをはいて、大きめのバルドのトレーナーを着こもうと手にかけたところを、バルドが引っ張った。
「!?」
自分の腕の中に入れたかと思うと、そのまま押し倒す。
わけがわからずされるがままの夜桜は、バルドの目の奥に妙な欲望があるのを感じて、困惑した。
「な、にを?」
「黙ってれば痛くしないから」
肌に手を滑らせるバルドに、思わず夜桜は抵抗した。
バタバタと暴れて、バルドを引きはがす。
人間とヴァンパイアでは明らかにヴァンパイアの方が力が強い。
そのせいか、バルドは壁に背をぶつけたが、すぐに同じ行動に出た。
今度は夜桜の腕を片手でつかんで、また押し倒す。
「バルド、嫌だ!!」
「おとなしくしろ、俺のこと好きなんだろ!?」
バルドのしようとしていることは、強姦そのものだった。

荒い息をしながら、夜桜の首をなめるバルドに、夜桜はそれを感じて、ひたすら怖がった。
足を使ってけりだおそうとするが、うまくかわされてしまう。
「バルド、お願いだから、嫌だ、嫌だ!!何でこんなことをする、バルドは…!!」
「夜桜!」
「私のことなんて好きでもないくせに、こんなことをするのか!?」
その言葉にやっと自分自身を取り戻したバルドは、手を緩めた。
ヴァンパイアのくせに寂しがりやで小心者。
そのせいか夜桜は、怯えきっていた。
「…、悪い、つい…」
「…」
「ごめん、忘れてくれ…」
だん、と壁を殴りつけると、バルドはうつむいて部屋から出て行った。
(何してんだ、俺…)
「っく…」
手早く服を着ると、すぐに夜桜は自分の部屋へ戻った。

結局その夜は夜桜は食事を作らず、部屋にこもりっきりだった。
バルドは自分のしたことを後悔したが、なぜにあのような行動に出たかをまだ理解していない。
 ただ、誰にも手をつけられていない、未知の種族を味わってみたかっただけか。
(違う、そんなんじゃねぇ)
もっと違う、今までに感じたことのない感情だ。
(何なんだよ!!)
あいつが悪い。あいつが悪い。
 あんな格好で無防備な姿を見せる、夜桜が悪い。
ずっとそう思おうとしたが、できなかった。
(…拒絶されるかも、だけど…、あやまんねぇと…)
台所にお椀を乱暴に放り投げると、バルドは夜桜の部屋へ向かった。

(満月…)
窓を開けて、外を見ていた。
バルドに襲われたからといって、この家を出ていくことはしなかったが、食事を作りに台所に行く気はしなかった。
また、バルドからも食事を作れとは言わず、お互いに気まずい状態だった。

窓から見た桜はもう散ってしまっていた。
だんだん葉桜に変化する桜の木を眺める。
ガルズヘイムにはない不思議な木だと、夜桜は感じる。
「夜桜」
と、声がした。すぐ戸の前にバルドにいるのに気がつかなかった。
「すまない、謝ることだけさせてくれ。入ってもいいか」
夜桜はどうするかで大変悩んで、返事をしないことに決めた。
入ってきたければ入ってくればいい。
入りたくないなら入らなければいい。
それしか考えられなかった。
「…入るぞ」
「…」
入ってきたバルドは、バスローブ姿だった。
夜桜はバルドの服を着ていたが、そでをまくったりしていた。
お互いに無言が続いたが、バルドは夜桜の前に座ると、手を伸ばしてきたので、夜桜はとっさに身を引いた。
「怖かったよな、ごめんな。自分でもよくわかってねぇんだ、でも謝んないとと思ってよ…」
自分でもよくわかってない。
 その言葉に、夜桜でもプッツンと何かが頭の中で音を立てて切れた。
「…殴る」
「ん?」
ぼそ、と、夜桜はつぶやいた。
手元には正義の鉄槌が置いてあった。
「襲ってきたら鈍器で殴るって言った…」
「うっ、ちょ、ちょっと待て、なんで正義の鉄槌…、せめてストーンクラブ+0かコンドル…」
正義の鉄槌をにぎりしめた夜桜は、ゆらりと立ち上がる。
そしてバルドの頭めがけ、思いっきり正義の鉄槌を振りおろした。
その瞬間、屋敷中にバルドの叫び声が響いた。
大丈夫、正義の鉄槌はいわゆる不殺武器。絶対に殺すことはできない。
 とはいっても、ヴァンパイアの力で正義の鉄槌が振り下ろされたとき、バルドは頭に大きなたんこぶ作って倒れていた。

バスローブだけしか羽織っていない彼の、体力の半分以上がガリガリと削られたのはいうまでもない。

がばっと起き上がった。
何があったのか思いだそうとして、頭にどでかいたんこぶがあることに気付いた。
謝りに行った際についにブチ切れた夜桜に殴られたことを思い出す。
「…」
「ってぇ、夜桜?」
起き上がった時に目の前にあったのは、夜桜の寝顔。
しかしバルドの体に掛け布団がかけられていて、頭はちょうど夜桜の膝の上にあった。
彼は座りながら寝ている。
外を見てみれば、もう昼になっている。
障子越しに随分と明るい日差しが入ってきているが、夜桜はその陽の光に負けて眠っているところだった。
「夜桜…」
賭けに負けた、と一週間前に自分から言ってきた。ということは本当にバルドのことが好きなわけだ。
それなのにバルドは、ただ好きなら体の関係くらいあっても良いだろうと押し倒した。その時のおびえた表情は忘れられない。
(ヴァンパイアの夜桜より人間の俺のほうが不純)
参ったな、と頭をかいて、こぶに当たって少し苦しんだ。
今で抱いてきた連中のことを思い出せば、誰もバルドの本音や思いなどどうでもよくて、ただ、『英雄』という肩書に惹かれてやってきた。
(俺も、似たようなもんか。好きなら抱かれたくて当然とか勝手に。それ以前に抱かれる気があるのかすら確認してなかったけど。男だし)
夜桜は純情すぎる。
「お前、抱かれる覚悟ぐらい見せろよ。俺は抱く側にしか回んないからな」
うつらうつらとしながらも、何度か頷いたように見えた気がして、彼の髪をなでた。
「…バルド…」
起きたのか、と思ったが、目元が動かないのを見て、寝言だということに気付いた。
「…き」

「?」
「…い…」
「??」
薄い唇が何かを言いかけて、止まる。
夢を見ているのか、小さな言葉ばかり。

夢の中では、夜桜は記憶を遡っていた。
もうどれほど昔のことなのかはわからない。
物心ついた時にすでに両親はなく、ガルズヘイムのダンジョンを転々としていた。
都市ダンジョンに行けば、先輩のヴァンパイアが世話をやいてくれることもあった。
姿は今と変わらないけれど、確かにその時の彼は子供だった。
「いいかい、人間とは関ってはならないよ。奴らは何でも殺したがるからね」
ふっ、と口元を緩める先輩ヴァンパイアの言葉に、夜桜は首をかしげる。
「でも、人間は、とても面白いよ。ゲートから落ちそうになった私を助けてくれたり、迷子になると、行き先を教えてくれる」
「それでも駄目だ、奴らは君が人間だと思っているからね。君はちょっと気が弱いし、甘いところがあるからなおさら心配だよ…」
「私は気が弱いけれど、いい人間もいる」
そう、例えば…

「バルド…とか…」
「なんだ夜桜」
目を開けたら、バルドが目の前にいて、頭をなでていた。
そうだ、殴った後に気絶したバルドを介抱していて眠ってしまったのだ。
目の前にあるバルドの顔をそっと両手で包む。
襲われても殴っても結局惚れた弱み、嫌いになんかなれやしない。
先輩冒険者に言われたことを夢の中で思い出した。人間と関わるな、と。
「あと三週間…、バルドは、もしも私のことを好きなってくれたなら、ヴァンパイアになってくれるか?」
ヴァンパイアにならなかったなら、ここを去る。なるのだったら、あの異世界の二人のように。
「本気で愛したら、ヴァンパイアになるかもな」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )バルド暴走でした


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