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D30とド荒

里予王求 D30とド荒です
同ジャンル投下は数名の方がいらっしゃいますので
テンプレに基づきサブタイトルをつけようと思ったのですが
どうにも思いつかなかったのでトリップをつけました。
シリーズ物ではありませんが同ジャンル過去作品一覧 31-415 37-60 44-401 50-501
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

しゃちほこドームでのバイトは、時にドラマを見てしまう。
滅多にない事だけれど。

あ…盛野さんだ。ラッキー…

正直こういう所でバイトするのって、選手目当てだったりする。
働いてみれば試合も見れないし思っていたのとは全然違うけど、
たま~にこういう、裏ですれ違ったりするのが嬉しい。
まぁ、何食わぬ顔で通り過ぎるだけなんだけど…仕事中だし、相手は試合前のピリピリした時だ。
握手だサインだなんてのはもちろん禁止。
角を曲がった所で、つい隠れて盛野さんを目で追ってしまった。
トイレか。
ん?向こうから来る青いのは…
盛野さんとド荒がトイレ前ではち合わせた。珍しい光景に笑ってしまう。
盛野さんに「俺が先」と言われたド荒が「漏れちゃう」のポーズをする。そうだ、確かこの二人仲良いんだ。
微笑ましいやりとりについ、目が離せなくなった。
そういえば最近不調続きの盛野さん…よかった、笑顔だ。

結局盛野さんが先に入って、出てきたとたんにド荒が慌てて入って行った。
…あれ?
盛野さんが帰らない…。
ド荒を待ってる…?

ドアを開けてまだ居る盛野さんに大げさにびっくりするド荒。二度見、三度見、四度見あ叩かれた。
真顔で何も言わない盛野さん。……おいド荒……お前、出番だぞ。
僕は仕事を忘れ一人壁に隠れながらグッと拳を握り、二人を見ていた。
知ってるんだ。
見ちゃったもん。
泣いてなかったけど、泣いてた。
毎日毎日、終わりには沈んだ顔。次の日の朝には笑顔になって頑張っていたけど。
知ってるんだ。
「お前昨日バク転成功したな」
昨日を切り捨てて笑顔になる事がどれだけ大変か。
切り替え?日々は続いているのに。
「ずっと失敗ばっかりだったのに」
応援の声、罵声、野次。色々聞こえる。きっとお客様が思っているよりはるかにここにはよく響く。
期待に応えられない日々は、どんどん積み重なって盛野さんにのしかかっていた。
ド荒は一生懸命ジェスチャーで応えている。
「練習?ふーん。お前が?」
差し伸べられる手も握れなくなっているのかもしれない。
それでも、できる、できると暗示をかけて。
「練習したんだ。あっそ。……俺も練習したいな」
練習してるじゃないですか。あんなに。
…それは、二軍で、ってこと?
「…。」
お前なんか落ちちまえ、この役立たず。足引っ張るんじゃねぇ
そんな声は毎日聞こえる。
それでも監督は盛野さんを落とさない。
落とさない理由は、わかる。だけど、もどかしい気持ちにもなる。
落ちない事の有難さと、いっそ落ちてしまえたら…そんな挟間に盛野さんは居た。
黙ってしまった盛野さんを、ド荒はジッと見ていた。
そしておもむろに手を伸ばし、盛野さんの頭に触れる。
いいこ、いいこと、撫でた。

その手はすぐに払われた。
「ずうずうしく触ってんなよ人の頭を。」
めげないド荒は盛野さんを指差すとその手を拳にして自分の胸に当て、トントンと叩いた。
そして、親指をたててgoodのポーズをした。
(おまえの きもちは おれが わかってる だいじょうぶ)
「……あっそ。お前にわかられてもね。」
なにいってんだよ おれがいるだろ~??
とでも言うように、ド荒がずうずうしく盛野さんの肩を組んでもたれかかりお腹を叩いている。
あ、叩かれた。
あ、蹴られた。
大げさに痛がり、指を刺して抗議するド荒。
蹴られた足を引きずり、骨が折れたとアピールする。
相手にされないとわかると、盛野さんを指差して、泣くポーズをして、プーと馬鹿にして笑う。
当然また蹴られた。
盛野さんを指差し、自分を指差し、腕をパンパンと叩く。
(おれは おまえより うでがある)
盛野さんと自分を交互に何度も指差し、バッティングのポーズ。
(かわりに うってやろうか?)
「やっぱ天狗だわ」
よかった…盛野さん、めっちゃ笑顔だ…。

二人はもつれながら、叩き合いながら、グラウンドへと出て行った。

その日の三打席目、盛野さんは数試合ぶりにライトスタンドへ奇麗なアーチを描き、
その打点が決定打となりチームを勝利へと導いた。
ヒーローインタビューに答える彼に、スタンドからは拍手と割れんばかりの声援が降り注いだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
打てますように。


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