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神メモ(四代目×ナルミ)

神様のメモ帳 四代目×ナルミです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

以前、雇い主である幼い少女は
ナルミは四代目の眼を直視できる数少ない人間だと称した。
特に意図的にそうしていたわけではないのだけれど
四代目の眼を見ること自体に抵抗はなかった。
……別に、眼を逸らしたら野犬よろしく
襲いかかられそうだと思っているわけではない。
今日も今日とて、平坂組事務所に呼び出されナルミは、そんなことをぼんやりと考えながら
組員曰く「急に画面が青くなったっス!」状態なパソコンの復帰に努めていた。
「直るか」
「直りますよ。ついでに、またアップデートしときますね」
「ああ」
どうしてこんな単純なことが、これだけ人数のいる
平坂組の誰もが出来ないのだろうと、思いはしたが口には出さなかった。
それくらいの分別はある。
「園芸部。全部口に出てるからな」
「は!」
呆れ果てたような四代目の言葉に慌てて振り返れば、
いつもの狼の眼が眇められている。
怒っていると言うよりは、やはりその声色通り呆れているのだろう。
すみません、と謝るのも憚られるし
とりあえず、誤魔化すようにへらりと笑ってみると、四代目が片眉を器用に上げる。
そういう仕草が様になると、何とはなしに眺めていると
四代目も負けじと食い入るように見つめてくる。
元より互いに口数が多い方ではないが、こうして無言の中
ただ互いに見つめ合うのもおかしな話だ。
まさか四代目こそ、眼を先に逸らした方が負けなどと
野生の狼のようなことを考えているわけでもないだろうに。
「……どうしたんですか?」

流石に訝しく思い、そう訊ねるも返事はない。
その視線だけは逸らさずに、四代目が立ち上がりゆっくりと歩み寄ってくる。
その眼を見つめ続けている以上
自然、仰向けてしまう首が疲れるな、などと思っていると
ちょうど目の前で立ち止まった四代目が身を屈める。
やはり視線は、逸らさない。
徐々に近くなる狼の双眸に焦点が合わなくなる。途端。
「……」
何か柔らかくて、少しかさついたものが、自分の口に押しつけられた感触。
それを計りかねて、ただ目を瞬かせていると、僅かばかり距離を取られたおかげで
ほんの少しだけ見えるようになった四代目が、覿面に顔を顰めているのが分かった。
「……目くらい瞑れねえのか」
不機嫌そうな表情で、不機嫌そうにそう呟かれ、反射的にぎゅっと目を瞑る。
「…………」
思わずそうしてしまってから気づく。
おかしくないか。
その前に、今、自分は、何をされた?
「いや、ちょ……!」
再び目を開き、抗議のために口まで開けたのが悪かった。
「……っ!」
間抜けにも開きっぱなしだった口唇は、同じように開いた四代目の口唇に
発しようとしたその言葉ごと食らわれる。
狼に噛まれた。
口づけなんて、そんなロマンチックなものじゃない。
これは捕食だ。
がぶり、がぶりと角度を変えて、
食い散らかすそれは、まさに狼そのもの。
あまりのことに、抵抗すら忘れた。

それが、どれほど長い時間だったのか
或いは一瞬のことだったのか、判然としない。
気づけば狼は食事を止め、いつもの通りの泰然とした様子で、こちらを眺めている。
「――おい、園芸部」
声をかけられ、不自然なほどに体が跳ねた。
そうして一瞬後、一気に体が熱くなる。
絶対にあり得ないと脳が理解を拒否しようとするが
口唇に残る感触と、口腔に残る自分以外の唾液の味がそれを許さない。
熱い。頭も、顔も。
きっと今、自分の顔は、幼くも聡明な探偵が愛する
あの毒々しい飲み物の容器のような色をしているに違いない。
「し……しつれい、します!」
椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がり、部屋を飛び出る。
「あれ?兄貴、もうお帰りで?」
「お疲れっした!」
後ろも見ずに事務所を飛び出す途中、電柱たちに
暢気な声をかけられたような気もするが
それに応える余裕などあるはずもない。
ただただ、その場から逃げて
そして、慣れ親しんだあの場所に帰ることだけで頭がいっぱいだった。
「アリス!」
「な、なんだ!」
だから、そこに到着するなり
ノックなどという人としての礼儀などかなぐり捨てて扉を開け、部屋に飛び込んだのだ。
突然、飛び込んできた人物に
その部屋の主は長い黒髪を跳ねさせて弾かれたように振り返った。
主の驚愕に呼応するように、ベッドの上の
彼女の半身達が、数匹ころころと転がり落ちる。
「四代目が……っ」
「お、落ち着け、ナルミ!四代目がどうしたというんだい?」

「四代目が、僕にキ……」
「……き?」
そこまで口にして、はたと気づく。
たった今起こった、衝撃的且つ非現実的な事象を
この年端もいかない少女に話してどうするのか。
いくら混乱しているからとはいえ
そして、四代目の不可解な行為の謎を、一人では抱えきれないからとはいえ
流石にそれは、どうなんだ。
そう考えるだけの冷静さを取り戻した途端、
アリスに縋ろうとした自分の行動が、急に恥ずかしくなる。
「……いや、何でもない。何でもなかった」
「待て、ナルミ!どう考えても今のは何でもなくはないだろう!」
「いや、本当に何でもないんだ!」
「今のきみはさながら、餓狼の牙より這々の体で逃げ出した
哀れなヘラジカの如き有様だぞ!」
「な、なんでそれを?!」
「そうなのか?!」
しまったと思うが、それでもやはり言えない。
言えば或いは、アリスのその明晰な頭脳によって
何らかの回答を得られるかもしれないと分かっていても。
どうして言えるだろうか。
まさしく狼の牙の餌食になったなんて。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ナルミ視点の為、四代目が物凄く手慣れて冷静なように見えますが
ナルミが帰った後の四代目は、きっとジタバタしてるはず。
お目汚し失礼しました。


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