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ナンパ

番ガードからモブにナンパされてるところに櫂と三和が通りかかるイメージ
ベタだけど漫画1巻の対ミサキ戦での正義の味方参上!的二人の登場シーンが忘れられなくて

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

小さい頃から妹のエミと並ぶたびに「よく似た可愛い兄妹ね」と言われることが度々あった。
時には姉妹と間違えられることもあってその度お母さんが苦笑しながら訂正していたのを覚えている。
小学生の時にいじめらた時も「女みてー」と言われた事があって何となく自分の顔が男らしくないのかなとは自覚していた。
でもさすがにスカートを履いているわけでもないのに女の子に間違えられたのは初めての経験だった。

「君暇してるの?一緒にどっかいかない」
「ここらへんに住んでるの?可愛いね」
公園の噴水の横にぼんやり座っていたところにいきなり知らない二人の男に話しかけられて、
アイチは唐突にイメージの世界から引き戻されびっくりして目を瞬かせた。
「あの、えっと…?」
「あ、びっくりさせてごめんね。俺たち怪しい奴じゃないから」
「そーそー、暇でぶらぶらしてたところに可愛い子がいたから一緒に遊ぼうと思って」

いや十分怪しいんですけど…ひょっとしてこの人達、僕を女の子だと勘違いしてるのかな…

鈍いアイチにもさすがに今の状況が何となく飲み込めた。
今日は多少暖かかったのでいつもの上着を着ずに、タートルネックのシャツとズボンだけだったので
確かに見ようによっては女の子の服装に見えないこともないかもしれない。

それにしても服装だけでそんなに女の子に見えるのかな…

内心密かに落ち込みながらアイチは立ち上がった。
「ご、ごめんなさい、今から行くところがあって。それに僕男なので…」
自分で性別を名乗らなければいけない情け無さと相手の勘違いを指摘する気まずさで
俯いたままぼそぼそとそう言いその場から去ろうとしたアイチの足は、しかし前に立ちはだかった男のせいで再び止まった。
「またまたー冗談ばっかり」
「そんなこと言わないで、ちょっとカラオケに付き合ってくれるだけでいいからさー」
二人の男に囲まれると中3にしては小柄なアイチの体では二人を見上げる格好になってしまい覚えずアイチの足がすくむ。
足を止めたアイチに気をよくしたのか、男の一人がアイチの肩に手を回した。

「おごるから一緒にいこ…「おい、ちょっとまて」「ちょーっとまった!」
聞き慣れた声とともにアイチの肩の上の手が消え、強い力で後ろに引っ張られる。
たたらを踏んで新たに現れた人物の後ろに回されたアイチは振り返ってぱっと顔を輝かせた。
「櫂くん!三和くん!」
アイチの声に三和がちょっと振り返って「正義の味方参上、なんてね」とささやいてウインクし
櫂は振り向くわりに引っ張ったアイチの手に少し力を込める。
「こいつは俺たちの連れなんだがどこに連れていくつもりだ」
眼光鋭い櫂の視線に男達は一瞬ひるんだが、櫂達の明らかに高校生と思われる制服を見て
与し易しと思ったのか多少引きつった笑みを浮かべた。
「おいおい、俺たちはちょっとその子と遊ぼうと思っただけじゃねーか」
「ちょっとカラオケ行って食事おごってやろうという大人の親切心だぜ」
再びアイチに手を伸ばそうとした男に、櫂は更に険しい顔になって一歩前に踏み出す。
その時一触即発の空気に割り込むかのように、三和が大きな声で男達に声をかけた。

「あーお兄さん達に言っとくけど、もうさっき警察に電話したから、『公園で小さな女の子を男の人達が
無理やり連れ去ろうとしてます』ってね。
もうそろそろおまわりさんが来るんじゃないかな、あ、来たかも、おまわりさーん!こっちこっち!!」
大声で公園の入口に向かって叫んだ三和に二人はぎょっとした顔になった。
さすがに警察が来てこの状況を見れば男達が不利になるのは明らかである。
覚えてろとかクソガキがとか小さく呟いて足早に去っていく二人の後ろ姿を睨みつけた櫂と、
誰が覚えてやるかと舌を出した三和は、男達の姿が視界の向こうに消え去ったのを確認してアイチを振り返った。
「ごめんねっ!櫂くん三和くん」
「別に」「悪いのはあいつらなんだからアイチは気にするなって」
三和がアイチの頭を抱え込んでわしゃわしゃと多少乱暴に頭を撫でられて
二人を巻き込んでしまったと青くなってこわばっていたアイチの顔にもやっと少し色が戻る。
「あ、警察の人は…」
「そんなのくるわけないだろ、はったりだよはったり。ああ言えば一番穏便に退散してくれると思ってさ。」
アイチの頭を撫でながらいたずらっぽい笑みを浮かべた三和に思わずアイチもつられて顔がほころぶ。

いつもカードキャピタルに集まる面子の中でも、三和は一番頼りにされているムードメーカーのような存在だ。
それは一歳年上だからとか言うことではなく、いつも陽気で笑っていて、そのくせカードキャピタルで
誰が悩んでいたり落ち込んでいたりしていると「なーに考え事してんだ?」とさりげなく声をかけたりするところが
皆から好かれているのだと思う。
そんな彼に「もう大丈夫だぞ」と頭をなでられると、いじめられていた昔のように冷たく
氷を飲んだように萎縮していた気持ちが軽くなっていくのを感じた。

アイチの顔色が戻ったのを確認した三和の腕からやっと開放されると、櫂がポケットに手を突っ込んだままアイチに声をかけた。
「あいつらに何もされなかったか」
まだ若干険しさが残った視線で上から下まで見られ、アイチは慌てて首を縦に振る。
「う、うん何もされてないよ。」
「…ならいい」
視線から鋭さが消え、一瞬櫂にしては珍しく優しいと言っていい視線に見つめられアイチは思わず赤面した。
アイチが小さい頃、どんなにいじめられても、学校に行くのが苦しくても手を差し伸べてくれる者など周囲に誰もいなかった。
そんな時唯一ブラスターブレードという手を差し伸べてくれた人もすぐにアイチの前から去ってしまい
それからは彼の残したカードだけを支えにして、苦しく色のない学校生活に耐えてきた。
帰ってきた櫂は4年前とは一見ずいぶん変わっていて、あまりにそっけない態度に
時々不安に思うこともなくはないけれど、でもこんな時は昔と変わらない優しさを感じる。

「ありがとう…櫂くん、三和くん、なんか」
なんか二人とも表に出る形は違うけれどもどちらもとても優しくて、まるで
「うん?」「…?」
「なんか櫂くんと三和くんってまるでお兄ちゃんみたいだなって」
赤面してそう言ったアイチは、眉をしかめて何とも言えない微妙な表情になった櫂と
その横で爆笑する三和にきょとんとする羽目になった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

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