野球 内野手と外野手 「気の迷い」
更新日: 2011-04-13 (水) 22:38:03
62巻19の続きみたいなもの
年下と年上
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ヒサビサノ ジサクジエンガ オオクリシマース!
テレビ画面には女性アイドルが可愛い笑顔を振りまき、リズムよくダンスを踊りながら歌っている。
ソファで隣に座る小柄なチ一ムメイトは、にっこりと頬を緩ませながら彼女たちを眺めていた。
少し温くなったビールを飲み干し、缶に爪を立てて音を鳴らすと、彼は「ん?」と振り向いた。
「誰が好きなん」
「さっきも言ったじゃん」
「覚えられへんわ」
ため息をついて、背もたれに体重をかけた。彼は空いた缶を取って立ち上がる。
「つまんないんだったら帰ったら?」
テーブルに残されたビール缶を見て気が付いた。まだ彼は一本も空けていない。自分ばかり飲んでいる。
「ねえ、飲まないの」
「俺は明日もあるから」
事も無げに言う。だが内心は悔しいに違いない。
彼は不振の為に、降格を受けた。明日からは別行動になる。
わかって、自宅に押し掛けたのだった。
「あー、そうだったね。寂しくなるねえ」
「ウソ。寂しくないだろ」
「あはは。そんなことないですよー」
「どーだか。まだビールあるけど飲むか?」
「あのさ、飲まないのはそれだけじゃないでしょ」
返事がない。振り向くと、彼は冷蔵庫を開けながらこちらを見て固まっていた。
「え」
「前のこと、思い出すからじゃないですか」
彼は頬をひきつらせながら、目を逸らせた。
「・・・何のこと、覚えてないよ」
ぱたん、と冷蔵庫の扉を閉める。
「ふーん」
画面を見ると、アイドルは衣装を替えて、色とりどりの照明を浴びながら踊っている。
彼は再び隣に座るが、先ほどよりも僅かに間を開けていた。
「ねえ」
顔を近付けると、彼は「わあっ」と声を上げて背を逸らして後ろに倒れ込む。
そのまま覆いかぶさって、彼を見下ろした。
「ホントに忘れた?これから思い出す?」
「ダメだって!俺明日あるんだし、それに、こういうことは良くないって!」
逃れようとして胸を押す手を捕まえた。指先を舐めてみる。
「うっ・・・わ」
彼の怯える表情を見て、つい笑ってしまった。
「誰にも言ってませんし、言いませんよ」
聞きなれたメロディが聞こえた。アイドルの一番のヒットチャートだ。
「テレビ消して・・・」
「見られてるわけじゃないのに?」
「次、見るたびに、今日の事を思いだす・・・」
彼の手首からは力が抜けていた。どうやら抵抗は諦めたようだった。
癖のある髪を撫でると、潤んだ視線と合った。
普段見ることのできない表情。自分だけが見ることのできる表情だ。
そっと唇をついばんだ。音を立てて何度も啄んで、舌を絡める。
息をついて離すと、彼は頬を紅潮させながら、今にも泣きそうな表情で見つめた。
「何で俺なんだよ・・・」
「・・・」
返答に困った。
他の人となら、同じことをしただろうか。たまたま彼だったのだろうか。
いや、そうじゃない。
じゃあ、何故。
「他の子だったら、可哀そうじゃないですか。本気じゃないんだし」
あれ、何か違う。正しい言葉だと思って言っているのに、何かが噛み合っていない。
「・・・もう良いじゃないですか、そんなこと」
誤魔化すように、服に手を差し入れて肌に指先を滑らせた。彼は目を閉じて声を上げないように唇を噛む。
その上から、そっと唇を重ねた。
*****
目が覚めるとベットの上だった。
カチカチと時計の音が耳につく。頭を動かして窓を見るとまだ夜は明けていなかった。
傍らには彼が眠っている。
あの後、長い時間触れ合ったが、結局最後まではしなかった。
次の日があることに、気遣ってくれたのだろうか。
する前には「他の子だったら、可哀そう」なんて言葉を吐いておいて、酷いんだか優しいんだかわからない。
近付いて顔を覗き込むと、彼の腕が伸びて引き寄せられる。
ぎゅっと抱きしめられて、一瞬身体に緊張が走るも、それ以上は何もしない様子だったのでホッとした。
規則的で、安らかな吐息に包まれる。
気の迷い、なのだろう。とはいえ。
彼の腕の中は、居心地が良かった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!力イマクwktk!
- 本尊は存じ上げませんが胸にキュンとくる話だなあ -- パンナ? 2011-04-13 (水) 22:38:02
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