デカワンコ 重村×小松原+柳沢・ワンコ
更新日: 2011-04-23 (土) 12:39:28
半生 刑事犬 ツゲ×コマ+ヤナ・ワソコ
第8話後の話です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
「お茶酌み、ナウ」
給湯室から、ふうわりと膨らんだスカートを翻してワソコが登場した。
丸いお盆を両手で持ち、その上には大小様々な3つのマグカップを載せている。
まるで春を先取りしたような、水色の地に白やピンクの小花をあしらったワンピースを自慢げに揺らめかせ、ゆっくりとした歩調で優雅に足を進めている。
そして、ちょうど門/馬のデスクの前辺りまで来ると、突然ワソコはあらぬ方向に顔を向けて口を開いた。
「今、13係では、ツゲさん、コマさん、ヤナさんが、朝から拳銃使用その他諸々についての報告書を作成中です」
「―――ッてイキナリ始まるのかよ!」
「ちなみにボスは、Sこと浅/倉刑事、そしてガラさんの事件の顛末について、朝一番で刑事部長から呼び出しを受けたので部屋にいません」
「知ってるよ!」
「チャソコさんもまだ検査入院中です。そしてデュークさん、キリさんは、素早く報告書を片付けて外に休憩に行ってしまいました」
「っていうか、お前いっつも誰に説明してんだよ!」
「ということで、今、13係に残っているのは、実は結構不器用でキーボードを打つのが遅いヤナさんと、」
「…ッテメェぶっとばすぞ!!」
「主任、現場リーダーということで、他の皆さんより報告する内容の多いツゲさん、コマさんです」
「だから知ってるよ!!!」
ワソコの放つ独り言へ、柳が逐一合いの手を入れる。
その御馴染みの光景に、先程からうんざりした表情でデスク上のノートPCと取っ組み合っていた小/松/原が顔を上げた。
「ヤナ、お前うるせぇぞ」
「ですよねー…って、えぇ??お、俺ですか??」
「黙ってろ」
「……はい」
途端にしゅんとなった柳が項垂れる。
その横で、どこ吹く風のワソコが柳の専用マグカップをそのデスクの上に置いた。
「は~い、皆さん、ちょっと休憩にしましょう。温かいお茶ですよ。はい、ヤ~ナちゃん!」
「わぁい、どうもありがとぅー……ってお前いつまでそれ引っ張ってんだよ!“ちゃん”は止めろっつっただろ“ちゃん”はッ!」
またしても威勢良く抗議の声を上げたものの、斜め向うのデスクに座った小/松/原からサングラス越しにギロリと睨まれ、柳は再びPCの影に隠れるように大きな身体を縮こませた。
そんな柳の元をさっさと離れたワソコは、今度は並んだ机に隣同士で座っている重/村、小/松/原の背後に立った。
「はい、コマさん、今日もバッチリ茶柱立てておきました!」
「…いや、これ紅茶だから、な?」
「はーい、ツゲさん、お茶です」
「ありがとう」
マグカップを受け取った重/村は、早速一口啜ると、ニッコリと穏やかな笑みを浮かべてワソコを見返した。
「どうしたのワソコ、何だか今日もご機嫌だね」
「えぇ~?やっぱりそう見えますかぁ~?」
「かなり気持ちワリィことになってんぞーお前」
「そんな!ヒドイです、コマさん!!」
大仰に顔をしかめたワソコだったが、すぐに満面の笑顔に戻ると、舞台女優のように両手を上げて天井を振り仰いだ。
「だって私、凄く嬉しかったんです!皆さんがあんなに私を信じてくれていたなんて!私、13係の一員になって本当に光栄です!この気持ちを皆さんにお伝えしたくて、少しでもお役に立ちたいんです!」
「あー分かった分かった。よーく分かったからワソコ、もうハウスな、ハウス」
PC画面から目も離さず、シッシッとまるで犬を追いやるように右手を振る小/松/原の背中に向かって、「ヒドイです~」と呟きながらワソコが倒れ込む。
しかしそこで、ワソコは急にきょとんとした表情を浮かべた。
「ん?」
クンクン、と自慢の鼻をひくつかせ、もう一度確認するように小/松/原の肩口辺りに鼻を寄せる。
「おい、何なんだよお前は」
居心地悪げに眉を寄せ、小/松/原はワソコから逃れるように身を引いた。
構わずしばらく匂いを嗅いでいたワソコだったが、今度は隣の席に座っている重/村の胸元辺りをクンクンと嗅ぎ回ると、
「あれ?」
両腕を組み、腑に落ちない様子で首を傾げた。
「どうかした?」
重/村が落ち着きのある美声で柔らかく問い掛ける。
「…変なんです」
「何が?」
「だって、今日のツゲさんとコマさん、……お二人から全く同じ匂いがします」
ポツリとワソコが答えた途端、
「ッブフォアッッ!」
「ガシャーン!!」
「キャアア!」
柳はPC画面に盛大にお茶を噴き出し、小/松/原は持っていたマグカップを床に落とし、それに驚いたワソコが悲鳴を上げるという三重奏になった。
「だ、大丈夫ですか、コマさん!?今、雑巾持って来ますからね!」
何故か固まったまま動かなくなった小/松/原に向かって、ワソコが必死に声を掛ける。
一方、重/村は全く動じない様子で静かに席を立つと、床に散らばった陶器の欠片を拾い集め始めた。
給湯室から雑巾を持って来たワソコと共に身を屈め、一生懸命になって床を拭いているワソコに向かって、細かな欠片を拾いながら俯いたまま口を開く。
「―――別に同じ匂いがしてもおかしくないんじゃないかな。偶然、同じメーカーの洗髪料や石鹸を使うことだってあるだろうし」
「いいえ、そんなはずはありません。同じメーカーでも、開封した時期によって匂いの強さも変わりますし、それが置かれていた状況によっても匂いは変わっていきます。全く同じになることはありえません」
「…そうなんだ」
「そうなんです」
うんうんと同意を求めるようにワソコが力強く何度も頷く。
そこですっくと立ち上がった重/村は、ワソコの遥か頭上で再びニコリと笑みを浮かべた。
「―――じゃあ話は簡単だ。昨日、例の事件のあと疲れちゃって、コマと一緒に駅前のサウナに行ったんだよ」
「……そそそそそそうだぞ、お前!バカじゃねーの!すっげバッカじゃねーの!サウナとか銭湯とか、スーパー銭湯とか、それこそスーパースーパー銭湯だってあるかもしれねぇじゃねーかよッ。誰もツゲさん家にコマさんが泊ったとか思ってねーんだよッ!!!」
勢い良く立ち上がって捲くし立てたは良いものの、柳の言葉が終わると、室内には何故か奇妙な沈黙が流れた。
柳はみるみる顔を蒼褪めさせ、広い額には玉のような汗さえ浮かんできている。
そんな柳の様子を見据える重/村の目が、まるで取調室でマル被と相対している時のように不気味に光るのを、ワソコは不思議な気持ちで見守っていた。
今や柳の額からしたたり落ちた汗が、顎に伝ってデスクの上に落ちそうになっている。
「ヤナ」
「……はい」
「うるさい」
「……はい」
図らずも「蛇に睨まれ脂汗を流すカエル」の実物版が目の前で展開されていることを知ってか知らずか、ワソコはと言えば、椅子に座ったまま微動だにしなくなった小/松/原の薄い両肩を掴んで思い切り揺さ振っている真っ最中だった。
「ちょっ…コマさん!?コマさん!!スミマセン、皆さん、コマさんがさっきから固まったまま動きません!コマさん、コマさーーーん!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングをミスりました…。
最後になりましたが、スレ立て乙です!
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