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スキマスイッチ 「世界が」

生。☆と元アフロネタ。これでお終い。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

まあ色々あったなと、溜め息みたいだけど全然違う息をついた。意味合いが全く違う。
色々で纏めるのもどうなのよ、と言えばそうなんだけども、お前の言い方も結構それどうなのよ、だったしね。
お互い様みたいな面はあるよな。
「こんな気持ちいいなら、もっと早くやっときゃ良かった」
しかし余韻無し、この発言。この言い方に何となくぐさっと来るあたり、俺の方が繊細なんじゃないのかと思う。
うんそのまあ、それ、が終わってから、一人でベッドでゴロゴロいつまでもしてたら、もう俺帰るよ、って。
ちょっと、ホントに俺の方が、ヤリ逃げされたみたいになってんだけど。別にゆっくりピロートークとか、期待してはないけども。
Tシャツを被るお前の頭を、寝そべったままぐしゃぐしゃとしたら、お前は笑った。ははっ、て、柔らかく。
そんで笑いながらどうだったよ、とか言われてもね。
「好きだよ」
「返事になってないよ、シンタ」
「そりゃ、ゴメンよ」
初回の思い出とか、実はあんまり余裕がなかったです、としか言いようがなく、俺の方が恥ずかしいのは実は本当だったりした。
ちゃんと、女の子相手みたいにしてみなとか、そういう煽り方をすんなって。
言われたら途端に、むしろ意識しちゃうだろ、お前なんだって。でもさ。
「あと、やっぱ声が好き」
「俺の?」
「うん」
エロく言えば、アノ声な。何かもう、たまんなかったよ。
お前あんな風に言うんだ。あんな風に。
途端に枕にばつが悪そうに埋めた俺の頭を、お前は思い切り小突いた。思い出すなバカ、とか、図星過ぎて身動きできない。
あんな声で、俺を呼ぶんだと。
耳に残る。
ずっと思ってたけど、お前の声は耳に残る。
寝ても覚めてもって言葉通りだ。夢の中でも多分聞いてた。
起きてからも、最初にぼんやりホテルの部屋の天井を眺めながら、俺はお前の声のことを思っていた。

で、まあ、うん。俺がおかしな具合だったのは、まあ仕方ないだろ。次の日タケシにどんだけ、訝しがられたことか。
ぼんやりしてんなよ。って、そりゃそうだ。
聞いてんの俺の話!?って、スマン聞いてなかった。
挙句にやっぱお前ら、話し合いじゃなくて喧嘩したんじゃないのとか、いや逆だむしろ逆、と俺は思ったんだけど。
だけどそれが、何でそう思うのよって言ったら、そりゃお前以上にタクヤがおかしいからだよ!って返された。
「…は?」
どゆことだ。
いや確かに言われてみれば、だった。いつものお前じゃなかった。
あのおっそろしいほどにクールと言うか、今まで残酷なくらいに、何が何でも全く態度を変えなかったタクヤが、だよ。
朝ロビーで顔を合わせた時、何だかこっちを眩しそうに見て、一っ言も何も言わなかった時点では、別にそんなことも
あるかとか、それくらいにしか思わなかった。俺もちょっとは変な気分だった、し。
でも確かになんだ。移動中の車でも何時も煩いお前が、黙って即、寝に入っちゃうし。だけどそれは無理させたかなとか、
ああ逆に俺は責任もあることだし、そっとしておいてやりたい気分になってしまったわけで。
その上で差し入れも欲しがらないとか、うわあ。そりゃ気付くべきだった、明らかに変だ。
ていうか、俺以外が気づく程度には変だ、元気がないってあっさりわかる。今だってそうじゃないか。
寂しい時に何時もするみたいに、ぼんやり何も無い窓の外を見てたかと思えば、弾く気もないギターをぽつぽつ鳴らしてる。
ここで気心の知れた後輩でも居れば、俺は間違いなくあいつのテンションを上げて来いって指令を出しただろう。
だけど悲しいかな、そうそう上手くはいかないな。今は俺とお前の、仕事なわけなんで。
要するにここは俺が何とかしなくちゃならない、そんな部類のことなわけで。正直自信はないんだけど。
黒めの髪が、そのはじっこが赤いシャツの襟の上で跳ねている。
ああ、何度も言う、何度も言うけど、たまらなく好きだな。
頼りない鼻歌とかさ。それでも微かなお前の気配とかさ。

「タクヤ?」
俺が呼ぶと、お前は思いっきり背筋を伸ばした。
「うぁっ?」
おい。何でそんなびっくりする?別にここで、昨日の続きとかそこまで俺、節操なしじゃないよ。
ぴんっ、てお前が爪弾いてたギターの弦を変な風にはじいて、不協和音が流れた。変な和音が。
「…次、リハ四時だって」
「お、おう」
「タクヤ」
「なんだよぉ」
「……コーヒー、空だよ」
ぷいっと横を向いて、とっ散らかったテーブルの上からマグカップを引っ張り出して、何かこっちと目を合わせないよう
頑張ってるみたいだけど。いやそれ、さっきから何回も空なの、なのに何もぐもぐやってんだ。
変だよ、確かに。何でこんな狭い楽屋でさ、俺に背中向けてんの。
そりゃ気まずいかもしれないよ。そりゃ、俺だってちょっとは気恥ずかしいよ、なあ。だけどそこまで嫌なら、出てってくれても
いいんだよ。
何でそこまでして、ここにいるの。でもって、俺の顔を見ないのさ。
「あのさ…後悔してんだったら、謝るから。なあ」
そんな気はなかったんだけど、そうなると俺も、段々心配になって来る。昨日のあの直後には、全然そんな風には思わなかったけど。
タケシからの出演メモを置いて、傍のパイプ椅子に座る。あ、意識してなかったけどこいつを、机と壁の方へ追い込むみたいになって
しまっていた。
「こっち向け、タクヤ」
「イヤだ」
「……は?」
ギターを抱え込んで、ぐるり反対方向に逃げる。明らかに俺を見ないようにしてる、これは。
お互いのジーンズの膝頭がくっつくくらいの距離なんだけど、そんな距離を、逃げようとしてる。
もっと離れたければ本当に、あっという間に光年の距離になることなんか、お前には簡単なはずだ。お前にはいつでも。
昔からお前には、俺を脱ぎ捨てることなんか簡単なはずだった。縋ってたのは俺の方。
俺が髪をぐしゃぐしゃに、昨日みたいに手を伸ばして乱しても、タクヤはじっとギターを抱きしめていた。

「…タクヤ、俺さ。…謝りたく、ないんだよ」
何か言ってくれ。頼むから。
「だから…どうしたらいいの」
お前中心にまた景色が変わっていく感覚に陥る。でも今は繋がってる、手の中の髪の感触を弄ぶ。
馬鹿だなと普通に、自分でも思う。
ただこういうものを見つけたことがない奴には、何て言われても別にいい。いいんだ、俺は。俺は。俺は。
「……喋らんで、くれるかな」
ぽつり。
「……え?」
「声、聞くと、ちょ……マジで。聞きたくないんで」
がたん。
「うわっ」
突然の展開、突然すぎる展開。
発言もいきなりなら、立ちあがるのもいきなりだ。少しぼうっとしていた、俺にギターを放り投げてきたと思ったらお前は。
「コンビニ行く!4時までに戻る!」
「え、え、え!?タクヤ!?」
「呼ぶな!喋んなよ!!」
酷過ぎないか、この仕打ち。
危うくパイプ椅子のまま後ろ向きに、俺はひっくり返りそうになった。それを見向きもしないでお前は吐き捨てて、相変わらず目を全然
あわせようともしないで、ああテーブルとかスタンドとかにガタガタぶつかりながら部屋を出て行こうとする。
ちょっと。
ショックで胸が潰れそうになるとか。女子か俺は、とも思ったけど事実過ぎて。
一瞬泣こうかと素で思った、素で。
たった数歩離れただけだけど、これが光年かと。縋ってたのは俺の方だったと。
瞬間に思い知って、俺は一人で泣こうかと思ったんだ。思ったんだよ、タクヤよ。
「…シンタ」
「……?」
だけどその事実を俺が、俺の頭が一応理性とか意識とかそういう物が受け止めて、数秒何とか理解しようと努めていたその時だった。
呼ばれてふと振り向くと、ドアの前でお前が固まっていた。
正確に言うと、凝り固まっていた。
片方の手はドアノブにあって、出て行こうとした瞬間に意識がこっち側に戻って、振り向いてしまった。
そんで振り向いてしまったらもう、どっちにも行けないんだ、みたいな。

「……。」
怒ってるみたいな顔だが、ごめん、泣きそうな俺だったけどちょっと笑いそうになった。
何でだか、耳も頬っぺたも真っ赤だからさ、お前。
そんな顔で凄んでも、って。怖くないよ、全然怖くない。
「何、…タクヤ」
お前が手を、ゆっくりあげた。掌を拳に変えながら。
真っ直ぐ俺を指す。
そのまま、また黙る。
「シンタ」
そして、しばらくして押し殺した風に言った。
何で。何でここでハイタッチなの。
そう言いたかったけど、お前が余りにも必死そうに見えるので、俺は黙っていた。
手を伸ばせば多分届くそれくらいの距離、だ。何とか、俺はパイプ椅子の角度をバランスぎりぎりまで傾けて、腕の先を拳にして、伸ばした。
お前の大事なギターは抱きしめたまま。
こつんと触れあうだけ。別に何でも無いこと。
「……コンビニ、行って来るし」
何俺、どうしちゃったのよ。
「…え?」
「コンビニ」
「…あ、うん」
それきり、いきなり現実に戻ったみたいにお前は背中を見せて、乱暴にドアを閉めて出て行った。ばん、と強い音と風が残った。
「…何だあいつ」
そう、それから数秒、俺が固まっててもそれは仕方ないことだと思う。
思わずゆっくり呟いて、さっきの拳の方の手で癖みたいに口髭を撫でる。ゆっくりじんわり、その手が柔らかくなっているような感覚があった。
その手を、ギターヘッドに置く。お前の指がいつもそこにあるところに。
二、三、音を出す。低い響き強い響き、幾つかのコードも鳴らしてみる。
けれどどんな音の中でも俺の耳はお前の声の方を、覚えている。
こんなの無い、のかもしれない。
こんなの無い。
こんなの無い、はずだ。
俺はどうしちゃったんだ。

何かがちょっとずつ、俺の感覚を逆なでている。それに俺はびくびくと、馬鹿みたいに過剰な反応を返してしまって、コドモじゃないんだから。
そう理性では思う。でも心のどこかでそれが怖くて、俺は目を閉じたり頭を止めたり、息も止めたりしてじっとしようと努めた。
だけど何で、それをあいつはわからないかな。
何であんな風に、俺を呼ぶかな。
耳に残るよ。お前の声は、耳に残る。あんな風に呼ばれたら、覚えちゃうよ。
あんな声で、俺を呼ぶんだ。
マフラー無しで出てきたことを、コンビニまでの十数分の間に俺は後悔した。寒ぃ、今日は。
天気はめちゃくちゃいいのに、空が青い分風が冷たい。冬になってる、いつの間にかちゃんと、冬になってた。
電信柱からの何重ものラインが、それもくっきりとして眩しいように見える。こんなの初めてだ。
ポケットに手を入れて手もぎこちない。右足、左足、そう次は右足。そんな風に思ってないと、上手く歩けない気がする。
どうやって昨日まで俺、歩いてたんだろう。一歩一歩、自分のスニーカーを意味なく見つめてしまう。
ああマフラー。耳を覆いたかった。
シンタ君の声が消えない。
すれ違う誰の声も。走ってる車のクラクションも。店先のコマーシャルソングも。
全部その外、みたいな感覚。
別に欲しくないガムを一個だけ買った。レジの前で並んでると、わけもなく俺は遠近感が狂った。
レジのおばちゃんに袋要る?なんて、要らないって言えばいいのに入れてもらっちゃったりして。地球にやさしくないなあ。
ドアを出たところで、深呼吸をしてみた。また冷たい風がくしゃっと髪を揺らして行った。
指に引っかけた袋もくしゃっと、鳴る。そんなこと今まで思いもしなかった。
こんなの無い、って何度も思った。でも本当に無い。
俺はどうなったんだ。何であいつには、それがわからないかな。
でも、こんなん、なんてのは。
「…無い、わぁぁぁ~…!!」

こんなのは無いよ。こんなのなんて。本当に俺、どうしちゃったんだ。
何かがちょっとずつ、違う気がする。全部が。
くそ、シンタの方は何ぁんにも、変わってないって顔してるくせに。俺だけがおかしくなった。なってる、事実として。
うん、シンタだけは変わらないんだけど。
俺にとっても、それ以外と比べても、何も、うん。
俺はコンビニ前でへたり込んで、かっこ悪く頭を抱えてた。日だまりがやたら優しくて、笑ってるみたいだ、と思ってた。
だけどそれ以外の全部が。
そう、街ってこんな風だっけ。コンクリートってこんな色だっけ。冬ってこんな寒さだったっけ。
黙ってると、地面がグラグラ揺れてるみたいに思える。風の音が、嬉しそうに叫んでるみたいに思える。
意識も感覚も踊ってる。光の色は。冬の温度は。空の高さは。
それでまだ、耳にはあの声が残ってる。
世界が全部違って見える、なんて。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
戸惑う☆が大好物です。
ありがとうございました、また時々どこかで。

  • 全部読みました?すっごくよかったです(*>д<*)?またよかったら番外編でも良いので書いていただきたいです? -- 2012-06-21 (木) 22:29:35
  • 何度も何度も読み返すほど好きなお話です。この作者さまの作品に、また何処かで出逢えますように……! -- 2017-04-10 (月) 16:44:13

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