Top/63-356

大航海時代4 ユキヒサ×イアン6

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トリップはこれであってるかな?六番目です。

バルデスが、イアンが、大砲によって傾いた船で、一瞬でた隙を付いた。
ザク、と、音がして、イアンは思わずあとずさった。
レイピアが、イアンの胸に刺さっている。それでも、イアンは攻撃をやめない。よろけながらも必死に立って、レイピアを繰る。
そしてもう一度、今度は腹に、レイピアが刺さった。
そのまま更にレイピアが身体を突きさし、イアンは倒れた。
負けるか、と、皆が思った。
(このまま…負けるわけには行かない…)
朦朧とした意識の中、イアンは、目の前にあるバルデスの首めがけ、護身刀を抜いて切りつけた。
途端、目の前はバルデスの血で染まる。
「…!き、さま…」
首を深く、切りつけた。
イアンは口の端しから血をたらし、バルデスの返り血を浴びながら、バルデスが倒れていくのを見た。
そして動かなくなったのを確認する。
「…やった、バルデスを倒したぞ!」
わあっと歓声が上がった。
バルデスが死んだ今、敵船はおとなしく降伏し、名実ともにバルデスという勢力はなくなった。
「…イアン!カルロ、止血をして!」
マリアが、遠くで呼んでいるのが聞こえ、イアンはそっと目を開けた。
誰かに支えられる。
その感触さえどんどん遠くなっていく。
手には護身刀を持っていたが、それがカラコロと音を立てて転がった。
「いかん、これは…、血がとまらん!」
「しっかりしてよ、イアン!」
カルロが、懸命にその場で応急処置をするが、血は一向に止まらなかった。
サムウェルが、泣きながら覗き込んでくるが、もう助からないことは誰が見ても明らかだった。
「ユキヒサに…」
「イアン!」
ユキヒサがこちらにやってくる。船を近づけていたおかげで、すぐにこれたが、ユキヒサの顔が、もう、よくは見えない。
「ユキヒサ…護身刀…有難う…。おかげで…勝てた」
イアンは、くすっと笑った。

ごふっと血を吐く。
「提督…すみません…私は…これまでのようです…。ユキヒサ、リング、ありが、とう」
「やだよ、イアン!起きてよ!!」
「…!」
ユキヒサが、ゆすって起こそうとするが、イアンは目を閉じ、そして動かなくなった。
やがて大砲の音はやむ。
冷たくなっていく恋人を抱きながら、ユキヒサは初めて涙を流して絶叫した。

「…素直に、喜べないわ」
マリアは、ユキヒサと甲板にいた。
クリスティナが甲板の掃除をしながら、時折その二人をちらりと見る。
イアンの死体は水葬にしなかった。
なぜなら、たまたま、ドゥーコフ商会の船がセビリアに停泊していると聞いたからである。
イアンの父親がすぐ傍にいる。
ならば父の元に返そうと思ったからである。
セビリアへは、すぐ傍だった。
進む船はところどころ損傷していたが、マストは折れなかった。すぐにバルデスが一騎打ちを申し込んできたおかげだ。
ユキヒサは、マリアの声に反応して、そちらを向いた。
「皆、よくやってくれたわ。水夫も、航海士も。でも、イアンがこんな事になるなんて…。ごめんなさいね、貴方たちの事、知っていたんだけど…」
「…しばらく、イアンといたい。副官室へ、行って来ます」
「分かったわ、あ、そうそう、この刀。貴方のでしょ。行尚(ユキヒサ)って彫ってあったから、すぐにわかったわ。イアンがいつも持っていたわね」
そういって手渡されたのは、バルデスの首を切り裂いたあの刀だった。それを手に取ると、ユキヒサは見るからに気を落とした様子で、副官室へ向かった。
 副官室はしんとしていた。
ベッドには、綺麗に血をふき取られた、イアンの死体があった。
そっと抱き上げる。
死体なのに、穏やかな笑みをたたえていた。
「っ…!」
涙が、ぽとりとイアンの顔に落ちる。
左手の薬指には、シルバーリングが輝いている。
ぎゅっと、イアンを抱きしめた。
「すまない…守ってやれなくて…お前を、絶対に幸せにすると…」
扉の向こうには、ジャムとフェルナンドとアルがいた。

三人とも、何も言わなかった。
扉の向こうで、ユキヒサが泣いているのを、静かに聞いていた。
死ぬ前、ずっと幸せそうなイアンを見て、三人は、良かったと心から思った。
そしてユキヒサも素直になってきた矢先、こんな事が起きた。
誰が手放しで喜べただろう。
サムウェルも、イアンと仲がよかった。ずっとサムウェルが泣いているのも知っている。
けれど、あんなに気丈に振舞っていたユキヒサが、ここまで落ち込むとは知らなかった。そこまで深い愛情があった事さえ、彼が死んではじめて知った。

一行はセビリアへ到着する。
毛布に巻かれた彼の死体を、副官室の寝台においてある。
イアンの父親は思ったよりイアンに似ていなかった。
だが、ブロンドの髪は間違いなく親子だと思わせるものがあった。
顔立ちはきっと母親に似たのだろう。
父親は、リー家の事を知っていた。もちろん息子がそこで働いていたことを。
マリアはすべてを話した。最後に何を言ったか、バルデスと戦い、倒れたが、それでも最後の力を振り絞って、バルデスを討ち取ったこと。
父親は、明らかにショックを受けていた。
案内された先に息子の死体。
眠っているように見えるが、触れてみると冷たかった。
「おお…イアン…」
ひざをついて、息子を抱きしめる。
「帰ろう、イアン。今度、生まれてくるときは私の息子にもう一度なりなさい」
と、左手の薬指に指輪がある事に気づいて、涙でぼやけた手で、彼の指輪をなでた。
「マリア殿。これは…?」
「ああ、それはですね…」
「拙者との対になる指輪です」
マリアがいいかけたとき、ずい、と、ユキヒサが姿を現した。
そして父親の前でひざをついて、土下座をした。
それが何を意味するのか、ジャムやマリアにはすぐに分かった。
「守ろうとしましたが、叶いませんでした。その指輪は拙者がイアンにあげたものです。この旅が終わったなら一緒に暮らそうと、約束しました」
「か、顔をあげてください。貴方は?」
「ユキヒサ=シラキです。イアンの恋人です。同性といえ、拙者はイアンのことを愛していました。また、彼もそうです」
ユキヒサは顔をあげると、その目から涙をこぼした。

父親は驚いたが、納得すると、頭を下げた。
「こんなに綺麗な死に顔です、息子はきっと幸せだったでしょう」
結局、遺体は故郷にはもって帰れないらしい。ならば、と、父親が自ら自分の船でこの近海に水葬するらしい。
その話を聞くと、ユキヒサは、はっと思いつき、自分の腰に刺してある護身刀を渡した。
「イアンに渡した守り刀です。水葬する際、一緒に…」
父親はそれを受け取ると、自分の荷物の中に入れる。
了解しましたと、一言添えると、息子の死体を抱きしめ、自分の船に戻った。

『ユキヒサ、ユキヒサ』
宿に戻った。泥のように眠るユキヒサは、夢を見た。
それはとても明るい世界だった。
イアンがそこにたって笑っていた。
『ユキヒサ、今まで有難う。父上が泣いているの、はじめてみたよ』
はっと、ユキヒサは顔を上げる。
いろんな人がいた。
イアンの後ろには、見た事のある死んだ水夫たちがいた。
ここは何処だ、と焦るユキヒサに、イアンはリングを見せる。
『このリングは貰っていくよ』
「待て、イアン、行くな!」
『ごめん、いかなきゃならないんだ。あ、でも。十年後に会いに行くよ。それまで、覚えていて欲しい』
「十年…?」
『きっとすぐに分かるから。それじゃあ、ユキヒサ、また、ね』
「イアン、待て、イアン!」
そこで目が覚めた。
光の世界に飲み込まれていく、イアンと仲間たちを見た直後だった。
夢。
それとも、現実と夢の境。
どちらだろう、と、ユキヒサは汗をかいていたので、額をぬぐった。
「イアン…。十年…?」

十年が経過した。
その頃には、地中海を制覇し、北海をも制覇する寸前だった。
あとはクリフォード軍のみ。それも、第一艦隊のみときた。
ユキヒサは二十九歳になっていた。
立派な大人として、そして斬り込み隊長として、活躍していた。
クリフォード軍との一戦の後、ユキヒサは疲れてそのまま宿に行こうかと思ったときである。
『十年後に会いに行くよ』
いつか夢に出てきた言葉が、頭を掠めた。
何故この言葉が今更思い出したのか、と、思った。
そうだ、今日はイアンの命日だ。
あれから恋人も作らず、誰かに手を出す事もなかった。
ただ、リングだけはつけたままだった。
「すーみーまーせーんー!」
と、遠くから少年の声がした。
振り返る。
水兵服をきた、その少年を見て、ユキヒサはぎょっとした。
息を切らして走り寄ってくるその金髪の少年の面差しは、イアンにそっくりだったからである。
とはいえ、十歳いくかいかないか位の少年である。
似ているとはいっても、振る舞いは全く違っていた。
手を振って、近くまで来ると、その少年はユキヒサをじろじろ眺める。
「すみません、えっと、リー家の船ですよね。貴方は日本の方ですよね。もしかして、ユキヒサさんですか?」
「あ、ああ、そうだ。君は」
少年は満面に笑顔を浮かべて、ぺこりとお辞儀をした。
「やっぱり!僕、イアン=ドゥーコフっていいます!父上がリー家の船に乗れって言ったので、ずっと探してたんです!兄上が大変お世話になったと聞いてます!」
「イアン…?」
ユキヒサが驚いて硬直するころには、仲間たちがぞろぞろとやってきた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )次で完結します。トリップちょっと失敗しました。


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP