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三匹が斬る! 殿様×千石 「流恋情歌 Part2」

>>1乙です。
前スレ>>427の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
訳あって殿様がオカマちゃん風味。エロなし。
全三回投下の二回目です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

しぶる親父を拝み倒してその夜は飯屋に宿を借り、翌日ふたりはまた色街の近くに訪れた。
親父に梅乃屋まで言づてをしてもらうと、おきみから事情を聞いた女達が、老婆の目を盗んで代わる代わる船着き場まで足を運んだ。
女達は死んだ筈のお絹と話が出来る喜びや、薄情な千吉への恨みごとを口にし、それぞれの目に涙を浮かべていた。
別れがたい女達の願いと、旅仲間と待ち合わせをしている都合もあって、ふたりはしばらくこの土地に留まることにした。
そうなると宿代や飯代を稼がねばならず、あちこち訪ねて運よく、柄の悪いやくざ者に目を付けられている大店に、用心棒の口を見つけた。

男達を叩きのめしている最中にひょっこりお絹が顔を出し、兵四郎がきゃあっと悲鳴を上げてうずくまったりするので、真之介は気が気ではなかった。
ほとんどひとりで働き、なおかつ兵四郎を気遣ってやらなければならないので、いかに頑丈な真之介といえども少し身にこたえた。
だが乗り掛かった船だと開き直り、船着き場に通う兵四郎に付き添い、しつこく押しかけてくるやくざ者相手に暴れて、憂さ晴らしをしていた。

大店に泊まり込んでの用心棒暮らしが、そんな調子で三日を過ぎた頃。
親父の飯屋でふたりはまた、酒を酌み交わしていた。すると店に入るなり、声をかける者があった。
「あっ殿様!仙石さぁん!」
「あらっ、ほんとだ。元気にしてた?昼間っから酒飲んで、珍しく羽振りがよさそうじゃないの」
「やあ、お恵ちゃんに陣内。元気だぞ、酒は旨いしな」
「お前らも一杯やるか?おーい親父、もっと酒、酒くれ」
兵四郎は笑って挨拶を返し、真之介は奥に向かって徳利を掲げた。
そのかたわらに、鍔黒陣内とお恵は腰を落ち着けた。
「いや親父さん、俺達には飯を頼むよ。腹ぺこだし、ゆっくり酒飲んでもいられなくてさ。急いで梅乃屋に行かなくちゃ」
「そうよね。ねえ殿様、ここの宿場にある梅乃屋って店知ってる?」

着いたばかりのふたりの口から因縁のある店の名前が飛び出したので、兵四郎と真之介は大いに驚いた。
「ああ知ってる。この先の色街の中心にある店だ。陣内、そこに何の用だ」
「あら……ってことはお絹さんて人はもしかして、お女郎さんなのかしら」
「おいお恵、お前なんで、梅乃屋のお絹を知ってるんだ」
お恵の言葉にますます驚いて真之介が尋ねると、ふたりは旅の途中で出会った男から、梅乃屋のお絹という女に言づてを頼まれたのだと答えた。

三日前、陣内とお恵が連れ立って歩いていると、道外れの林の中からただならぬ悲鳴が聞こえた。
そっと覗いてみると旅姿の男達が何やら争っており、刃物を抜いた三人が寄ってたかって、ひとりの男に襲いかかっているようだった。
ふたりは襲われている男の顔を見て驚いた。旅仲間の真之介に、まるで瓜二つだったからだ。
慌てたお恵は人殺しだと大声を上げ、飛び出した陣内は仕掛け槍を振るって男達を追い払った。

駆け寄ると傷だらけの男は、もはや虫の息だった。
よく見れば髷の形や着ている物は違うし、何より腕の立つ真之介がごろつき連中風情に簡単にやられる筈もなく、全くの別人だとわかった。
男は千吉と名乗り、絶え絶えの息の下からふたりに頼み事をした。
とある宿場の梅乃屋という店にいるお絹に、自分が死んだことを知らせてくれ。
博打で当てた金を持って帰るつもりだったが、賭場から自分を付け狙っていたらしい追いはぎに襲われて、叶わなくなってしまった。
約束を守れなかったことをどうか代わりに詫びてくれと、涙を流してふたりを拝み息を引き取った。

陣内とお恵は、真之介によく似た男の最期の言葉を、無視することは出来なかった。
千吉の懐にあった残り少ない金で最寄りの寺に供養を頼み、遺髪を携えてお絹のいる宿場にたどり着いた。

なんという因縁であり皮肉な話なのだと、聞き終えた真之介はため息をついた。お絹が風邪をひかず千吉が追いはぎに遭わなければ、ふたりは再会を果たせた筈なのに、幾日かの差で相次いで命を落としてしまうとは。
すでにお絹も生きてはいないことを告げると、恋人達のあまりの運の悪さに落胆し、陣内とお恵はしばらく黙り込んでしまった。

「そうだったのかあ。とんだ無駄足になっちゃった。せっかくお絹さんに、渡してやろうと思ったのに」
陣内が懐紙に包まれた遺髪を懐から取り出すと、兵四郎が手を伸ばして受け取った。
「ねえ殿様、どうしたらいいかしら、それ」
「またあの寺に戻って、墓に入れてもらうしかないかなあ。千吉の実家まではわかんないしね」
「うん……あのな、ふたりとも、よく聞いてくれ。実はな、お絹って女は」
兵四郎の手の中にある遺髪を悲しげに見つめるお恵と陣内に、真之介は現状を説明しようと切り出した。
すると兵四郎がいきなりぽろぽろと大粒の涙を零したので、一同は仰天した。兵四郎は遺髪を胸に抱きしめ、俯いて震えながら泣いた。
「ちょっと、ど、どうしたんだよ殿様!」
「やだあ、お腹でも痛いの?初めてだわ、殿様が泣くなんて」
うろたえる陣内とお恵を、真之介は慌てて諭した。
「大丈夫だ、お前ら落ち着け。おい、お絹、お絹だな。話を聞いていたか」
「お絹ってなんだよ。仙石、お前何言って」
「しいっ。黙って、陣内さん」
戸惑い喚く陣内をお恵が制し、真之介が女の名前を呼ぶと、兵四郎はゆっくりと顔を上げた。

「……勝手だよ、全く。今更、こんな姿で戻って来て。お金なんかの為に命を落として……あんたが帰って側にいてくれたら、あたしはそれでよかったのに。せんさんの馬鹿、せんさんの馬鹿野郎……」
振り絞るような声で呟くと、兵四郎はまた顔を伏せた。
「ねえ仙石さん、これってまさか」
「ああ。信じられんだろうが、お絹の魂は今、殿様の身体にいるんだ」
「え、えーっ!またまたあ……どうせ、殿様の冗談なんでしょ」
「たこ、この馬鹿。いくら殿様でも、こんなたちの悪い冗談なんぞやるか。なあお絹、そいつをどうしたい。お前の墓に一緒に入れるか?」
優しく語りかける真之介の様子に、これはまさしく本当らしいと、お恵と陣内は顔を見合わせた。

再び顔を上げた兵四郎の涙は止まり、悲嘆に染まっていた顔付きは随分穏やかになっていた。
「お絹……いや、殿様、か?」
「うん。お絹は引っ込んだ。俺の奥深くに、隠れちまったようだ」
様子を伺う真之介に頷くと、兵四郎は取り出した手ぬぐいで涙を拭き、遺髪を台の上に置いた。

「そうか。よっぽど悲しかったんだな。幽霊が死んだ男を悼むってのも、なんだかおかしな話だが」
「ああ、今お絹は自分でも、どうしていいのかわからないんだ。落ち着くまで、そっとしといてやろう」
そうだな、と真之介が呟くと一同はまたしばらく沈黙し、それぞれ物思いに沈んだ。

静寂を破る声と共に、男が慌てて店に転がり込んで来た。見れば用心棒を勤めている店の手代で、また例のやくざ者達が、今日は更に人数を増やして押しかけて来たと言う。
兵四郎と真之介は押っ取り刀で飯屋を飛び出し、陣内とお恵も取りも直さずその後ろに続いて走った。

「てめえら、いい加減にしろ。あんだけ痛め付けられて、まだ懲りねえのかっ」
「うるせえ、さんぴん!今までみてえにゃいかねえぜ、今日のこっちの人数を見ろい!」
真之介に喚き返した男の言葉通り、店の前には目つきの鋭い喧嘩支度の連中がいつもの倍の二十人ばかり並び、兵四郎達を取り囲んでいた。
連日不様に追い返されたのが余程腹に据えかねたのか、一家を挙げて挑んできたようだ。
「どうだかねえ、数が増えたからいいってもんでもないぜ。こっちも今日はひとり多いが、役に立つかは微妙だからなあ」
「なんだと仙石!そんなこと言うと陣ちゃん、いち抜けたってしちゃうよっ。大体俺にはこんな喧嘩、関係ない……んん?」
居並ぶやくざの中に、旅から帰ったばかりなのか、手甲脚半を身に付けた男達が三人混じっていた。その男達を顔をしかめて睨み付ける陣内に、平四郎が尋ねた。
「どうかしたのか、たこ」
「うん、ちょっとね殿様、あそこの三人、見覚えがあるような……」
「あーっ!陣内さん、あいつらよ。殿様、仙石さん!あの三人が、千吉さんを殺した奴らよっ」
「なぁにぃ!?ほんとか、お恵っ」
「陣内、確かか。確かにあいつらか」
「うんうんそうだ、間違いないよ。くそうお前ら、よくも千吉の金を奪ったな!」
兵四郎達が怒りを漲らせた表情で向き直ると、追いはぎ一味はうろたえたが、やがて開き直り胴間声で叫んだ。
「な、なんでえ!千吉なんて奴、知るもんかっ」
「俺達ゃ、この一家の身内だ。おかしな難癖つけやがって、てめえら叩きのめしてやる!」
それを合図に、やくざ達が一斉に長脇差を抜き放った。

「このろくでなしの盗っ人共が、しらばっくれやがって!千吉の仇討ちだ、手加減しねえぞ」
愛刀を抜いた真之介の喚き声を皮切りに、兵四郎と陣内も刀と槍を構えた。
野次馬達が悲鳴を上げて遠巻きに眺める中、喧嘩は始まった。次々と襲いかかる刃をかわし、三人は難無くやくざ達を殴り倒していった。
兵四郎は追いはぎの男達と向き合い、険しい顔で睨みつけた。
別のやくざを峰打ちで倒した真之介は、刀を構える兵四郎の肩が震えているのに気が付いた。

「よくも、よくもせんさんを……ぶ、ぶっ殺してやる!」
呻くように叫んだ兵四郎の身体からは、怒りと憎しみの焔が噴き出し、揺らめいているように見えた。だが慣れぬ刀の重さに腕はがくがくと揺れ、その危なっかしさに真之介ははらはらとした。
「お絹、待て!気持ちはわかるが、今は出て来るな。俺達に任せろっ」
諌める声に聞く耳を持たず、兵四郎は刀を振り上げ、やみくもに追いはぎ達に斬りかかった。
追いはぎのひとりの長脇差が唸りを上げて刀を叩き、その衝撃に兵四郎は刀を取り落とした。
ぎらつき迫る刃に目をつぶった兵四郎の前に、素早く駆け付けた真之介が立ちはだかった。
男の刀を力任せに跳ね返すと、返す刃で着物の前を斬り裂いた。
すると懐から零れた紺色の胴巻きが、ずしりと重そうな音を立てて地面に落ちた。
「おっと、どうやら当たりだな!そいつに幾ら入ってる?音からすると、たかがやくざの三下が持てるような額じゃねえだろ」
「千吉は、五十両盗られたって言ってたよ!」
「そいつ、逃げる時に千吉さんから、その胴巻きを引ったくっていったわ。あたし、覚えてる!」
畳み掛けるように真之介と陣内、そしてお恵に追い詰められ、三人の男達はいよいよ泡を喰った。
「返してもらうぜ。千吉がいない今、そいつはお絹のもんだからな」
真之介は伸ばした刀の先に胴巻きを引っ掛け、掬い上げてから平四郎に手渡した。
涙を浮かべた兵四郎は、ひどく大事そうに両手で胴巻きを握り胸に当てた。

「お兄さん方、ご覧の通りこいつら盗っ人だよ!お上に訴えたら、そちらの親分さんもとばっちり食うかもよ」
「それがいやなら今すぐ、こいつらと縁切れ。ついでにこの店からも手ぇ引け。そしたら訴えずに、俺達で始末を着けてやる」
陣内と真之介の言葉を受けて、格上らしき数人の男達が話し合っていたが、やがて彼らは長脇差を鞘に納めた。
「わかった。役人なんざ怖くもねえが、そいつらあ一家の面汚しだ。代貸のこの俺が親分の名代として、たった今縁を切るぜ。店のこたあひとまず、置いといてやる」
ひとりが言うと、他のやくざ達も刀を仕舞った。身内に見放された三人は青ざめたが、やけ気味に罵声を張り上げ、再び刀を構えて真之介達に向き直った。
胴巻きを懐に抱いた兵四郎はふいに顔を上げると、先程落とした刀を拾い上げた。
「旦那、あたしゃやっぱりやりますよ。せんさんの仇を取るんだ」
「いや、いかん。お前は手を出すな。その手を血で汚しちまったら、千吉に極楽で会えなくなるぜ」
きつく諭す真之介の厳しい顔を、兵四郎は眩しそうに見つめた。
その隙を見て、男達が襲い掛かってきた。だっとその間を駆け抜けた真之介の愛刀が閃き、一瞬の内に三人を斬り捨てた。
どうっと倒れ伏した音を背に息をついた真之介は、刃を染めた血を袴で拭き取った。
「お絹、お前は綺麗なまんまで、せんさんの待つあの世に行くんだ」
振り返りにやりと笑った真之介に、泣き笑いの表情で兵四郎が頷いた。
それを見た陣内が、ちぇっ、あいつひとりでかっこつけやがってとぼやき、お恵はまあまあとそれを宥めた。

その夜、梅乃屋は店を挙げてのどんちゃん騒ぎとなった。受け取った金は楽しいことにぱあっと使ってしまいたい、というお絹の願いで、梅乃屋の女達を全て借り切った。
真之介達は元より、世話になった飯屋の親父や、真之介達の雇い主の大店主人、更には喧嘩相手だったやくざ一家の親分までもを宴席に招いた。
艶やかな遊女の酌に照れた親父は、顔を赤くして滅多に呑めぬ美酒を味わった。
つまらぬことが原因でいがみ合っていた主人と親分は、仲裁を買って出た陣内の口車と酒の勢いに乗せられて、今宵を限りに争いをやめることを誓い合った。

兵四郎とお絹は交互に入れ代わり、賑やかな宴を楽しんだ。浮かれた陣内がおどけた歌や踊りを披露し、それを見て真之介達も皆も声を上げて笑った。
上客に満面の笑みを浮かべたやり手婆は、いそいそと酒や肴を運んだ。

大いに盛り上がった宴は、やがて静まった。千鳥足で帰った客もいれば、酔い潰れた居残りの客が、広間で女達と雑魚寝を決め込んでいた。
滅法酒に強い真之介はあぐらをかき、ひとりまだ手酌で呑んでいた。
かたわらで寝転がっていた兵四郎が、ふいにゆらりと上体を起こした。

「……せんさん」
「おいお絹、お前まだ俺をそう呼ぶのか」
寝ぼけまなこで呼びかけられ、真之介は苦笑した。
「ふふ、冗談ですよ。これが最後ですから、勘弁しておくれな」
「おい、最後って……」
「ねえ旦那、ちょっとふたりだけになりませんか。あたしの部屋で」
真之介の手を取り立ち上がると、兵四郎は広間を出て彼を奥に招いた。
廊下から薄明かりがほのかに差し込むお絹の部屋は、隅に行灯や文箱などのわずかな調度品が寄せられ、すっきりと綺麗に片付けられていた。。
畳の真ん中に腰を下ろした真之介の正面に、兵四郎は正座をして向き合った。
「あたし、旦那方には本当に感謝してるんですよ。せんさんのお金を取り返してくれた上に、仇まで討ってくれて」
「まあな、いろいろ運がよかったんだ。それもこれも皆、お前のせんさんが引き合わせたのかもしれんぜ」
「そうねえ……あの人、約束を守ってくれたんだね。この世ではとうとう会えなかったけど、その気持ちが嬉しいですよ」
「うん……そうか」
切なげな表情の兵四郎に、真之介はただ頷くしかなかった。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回で終わります。


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