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モーツァルト! コロレード×モーツァルト

生ネタです。東/宝ミュー/ジカル、M!より、大司教×天才児。
初めて見たけど萌えたぎったよ…!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

眼下の街並みは、薄らと白くぼやけ始めていた。朝方より上空をどんよりとした雲が覆い、案の定雪景色となった。
赤い屋根や煉瓦造りの時計台が、それでもまだ落ちきらぬどこかからの光を受けて静かに立っている。おかしな明るさだ。
窓の下を行き交う物売りのワゴン車や、ザルツ/ブルグ市民の外套の色も故にまだ、しっかりとしていた。
馬車馬の白い息も御者の鞭の響きも、冬の寒々しさを含んでいたが、だがガラス窓一枚隔てたこの部屋には入りこんでこない。
大司教は優雅にマントを翻し、窓際から暖炉の傍の椅子へ腰掛けた。ふっかりとそれが、好ましく身を受け止める。
生地はびろうどと絹に限る。それも最高の職人の手で、刺繍の全てを施したものを。
静かであり、温かい。薪はたっぷりと燃え明るく、余計な詮索は何もせぬ。
傍のテーブルには僅かに湯気を立てるカップが、またつつましく控えている。
もうすぐ夕食の刻だ。今頃シェフは大わらわで、この街の領主である大司教のディナーの準備に取りかかっていることだろう。
それまでの大司教の、この優雅な沈黙と高雅な空想の時間を、邪魔する者はいない。
いや、居ないはずだった。
「……猊下。申し訳ございません」
いつものように典雅に瞼を閉じた、その刹那。
不意に、重厚なドアをノックする音が聞こえた。
全てが大司教の好みに作られているこの居室の、その扉を開けまた触れることが出来る者など、それこそ限られている。
「……アル/コ。何事だ」
「は……」
配下の、媚びへつらうのが上手い伯爵の顔を思い浮かべながら、大司教はうっとりと目を閉じ、微動だにせず呼び掛ける。
アル/コ伯爵は伯爵で、またドアの外から焦ったように、しかし苦々しげに話を続ける。

「モー/ツァルトの、件でございます」
「……あれか。どちらの方だ、父親か」
「息子の、方の……」
「ふん」
「あやつめ、猊下の命に背くだけでなく今度は……曲を聴いて頂くまで帰らぬと、まあ傲慢を絵にかいたような振る舞いで…」
「参っておるのか」
「いえ、勿論叩き出しましてございます、猊下!ところがあの若造、とことん思い上がり甚だしく」
「……。」
領主の嗜みとして、音楽家の一つも飼うのは常識だ。
しかしこの大司教の音楽への拘りは相当なもので、その鋭敏な感覚に対して、並みの音楽家など全く歯が立たぬ。
その中で古くから仕えているレオ/ポルド・モー/ツァルト、この男は面白みはないが下らぬ曲は書かぬ男だ。
だがそれでも、大司教を芯から満足させることなどは到底出来ない。それでも大司教がその男を見限らぬのは、今は偏に
その息子の存在あってのことと言えよう。
確か名を、ヴォ/ルフ/ガングと言った。
大司教はうっすらと、切れ長の瞳の瞼を開いた。ちらちらと舞う炎の明かりが、やや滲んでいるように目に映る。
「……あの男が、どうしたと」
ため息をついて黙りこんでしまった伯爵を、大司教は先を語れと促した。
そうか。確か昨日、フーガの一曲も書けぬものに用はないと、叩き出し追い返していた。それを持参したとでもいうのだろう。
ただし招かれざるものであることに違いはない。もう直ぐ夕食の刻限なのだ。
大司教とは、いやしくも神に仕える身だ。神の絶対性を彼ほどに崇め、口にする者はないと言っていい。
しかしそれを。あの男は踏みにじる。
声でも、態度でも、そして音楽のすべてにおいて。
「は……、ヴォ/ルフ/ガングめ、目障りなことに、その……お屋敷の庭に座り込んで、一歩も動かぬと……」
「……何時からだ」
「昼よりずっとでございます。いやはや気がくるっております猊下、この天気ですぞ」

礼儀を知らぬ。唯のしもべに過ぎぬ輩であるのに、そのしもべが堂々と領主の館へ乗り込んでくるなどと。
日頃よりあの若者の振る舞いにはそれこそ、大司教への畏敬のかけらも見て取れぬというのに、愚かにもほどがある。
息子の所業に常日頃から父親は頭を抱えている、という噂も耳にする、当然だ。少なくともレオ/ポルドはこの大司教のしもべで
あることを、自覚している。
それはひいてはこの世を統べる教皇猊下への忠誠、神への信仰ということではないか。それを、あの愚かな息子は何を。
あの男はいつも、大司教のすべてを踏みにじる。
しもべとしてこれ程に、不愉快な男はおらぬ。
「……如何致しましょう猊下……、いや音楽家の一人や二人、病に倒れたとて何もお気になさることではございませんが……」
「アル/コ」
「はっ」
「シェフに伝えよ。ディナーは半刻、遅らせる様に」
「…は?」
溌剌とした目と天から授かった、そのままの髪を無造作に束ねる。
手足は自由に、どこまでも自由に空を駆け、そして声は高らかで朗らか。
星の光を具現化したようで、星そのものが降り立ったかのような輝きと煌めきを持つ。
だが、神を凌駕する天才など、認めぬ。
不意に内から開いた扉に、伯爵は明らかにひるみ、一瞬すくみあがったようだった。廊下の石の冷たさが、さっと肌に伝わり来る。
「げ、猊下!?」
結えた髪も、直ぐに冷えた。
大司教は唯一人優雅に、だが大股で歩く。
赤いマントに金の刺繍が、その度に翻る。こつこつと、靴音も響き渡る。
回廊を降り、大ホールへ抜け、幾人もの使用人どもが慌てて道を開け頭を垂れる姿を、大司教は見ているが目には入っていない。
路傍の石ころと同じようなものであるが故だ。
館のあちこちに、揺らめく蝋燭の炎が宿っている。
しかし雪空は、それでもまだ奇妙に明るさを残していた。

手づから大扉を開けた瞬間、冷たい風と叩きつけるような雪が、そのマントに飛びかかって弾かれた。大司教はゆるり首を回し、
積もり始めた雪に白く黙り始めている門から、そろそろ凍りつこうとしている噴水のあたりにその姿を認めた。
一見、ただの塊だ。雪を積もらせ、しんと動こうともしない。
「……何の用だ、モー/ツァルト」
さく、さくと。
今度の靴音は響かず、一歩ずつ音と跡を残し大司教の歩みに続いた。
ただの塊だ。
大司教にとっては、唯のしもべ、唯の音楽家の一人に過ぎぬ。
天からは羽毛のように雪が降り、時折狂ったように風に舞いあがって落ちる。身の温もりがその度わずかずつでも失われて、ゆく。
その中にまだ、その塊は動こうともせず。
いや、ようやく顔を上げた。
「……目障りな真似をするな」
しゃがみこんでいたその男の頭から、輝く茶金の髪の上から、さらさら落ちるそれは確かに雪だ。相当に積もっている。
空は重く黒いのに、積もった雪のためか景色の色はむしろ、鮮やかさと艶やかさを増したようにも見えていた。
「はっ……」
ゆらり、ヴォ/ルフ/ガングは笑んだようだった。
「ようやくお出ましですか。随分とお待ち、いたしました、よっとっ……」
ばっと、そして。雪よりも白い、白い白い輝きが、まるでその男の手から放たれたように空に舞った。
一つ一つ、一枚一枚。舞った後、だが意志を持ったかのように風にさらわれず、落ちる。
落ちる。落ちた。
その一枚を、大司教はゆっくり身をかがめ手に取る。
微かに雪が、指に触れた。
「あんたのお望みの、フーガですよ猊下。春よりも美しく、光よりも気高い……!!」
旋律が紙の中、黒く黒く踊っていた。

「……。」
「どうだ。……僕を侮辱したことを、撤回しろ」
「……何を、無礼な」
「あんた、フーガの一つも書けないだとか、僕を侮辱しただろう……謝るのは、あんただ!」
そう、あまりにも礼儀知らずな若者。
ヴォ/ルフ/ガングはくっきり、冷え切った指をこちらに向けた。その先に既に輝く何かで、こちらを斬り裂かんほどの勢いで。
みすぼらしいコートから、穴のあいた粗い布地のズボンから、雪が落ちる。
「……愚かな。貴様は……私のしもべに過ぎぬ。しもべにこの私が、頭を下げるだと?」
「はっ…!」
落ちる。落ちる。
「……だけどあんたは、僕の音楽には逆らえない!」
輝く。煌めく。
「僕は音楽だ!」
ヴォ/ルフ/ガングは、その名の通り吠えた。肩から髪から、さらさらと降り積もった雪がこぼれた。
「……。」
目尻から耳へうっすらと赤みが走っている。切れ上がった目が、彩られていた。
瞳には変わらず星が宿る。激しく燃え上がり、その輝きをどうにも抑えきれぬように身もだえている。
張りつめた肌はそれ以外驚くほどに白く。そして声は高らかでくすみなく。
これほどに無礼な若造の曲など、と。普段なら一笑に伏していただろう。
だがその時手の中の芳しい喜びを、大司教は知らず知らず、握りしめただけだった。
二人の間には雪がただ落ち続けるだけ。
神を凌駕する天才。
奇跡の子。星の子。いや星そのもの。
「パパだってそうだ!あんただって……、結局、僕の才能だけを愛してる!!」
それが瞬間、弾け飛ぶように叫んだ。
「僕の、才能、だけ……!!」
そしてゆっくり墜ちるのを、指先が緩やかに墜ちてゆくのを、大司教はただ見守っていた。
そしてゆっくり墜ちた時。瞳は揺らがずにこちらを睨みつけていたが。
そしてゆっくり墜ちきった時。
胸に踊る炎のように湧き出たその感覚のことを、何と呼ぶべきであったのか。

熱く猛り、それでいて喜びに近くくすぐったいようで、力強く叫ぶようなそれ。
父親に何を言われて来たのか、知らぬ。だがあの堅物が、自由すぎる息子に酷い説教を喰らわせる姿など、容易に想像がつく。
この若造は、それを何度も味わってきたはずだ。
それでも何時も、父の後ろを慌てて追っては、その顔色をうかがっていた。
この星は叫んでいる。
今望みをかなえれば、星を手にすることが出来る。
その術を知って、大司教の中の感覚は勢いを増した。
「……もし、私が」
自由で、朗らかに、気高く、煌めくまま、愛されたい。愛されたい。愛されたい。
「貴様の、才能だけでなく……このまま」
このままの僕を愛してほしい。
手に取るように叫ぶ星。
「……身も心も、愛してやると言ったら?」
ならば星はこの手に宿るか。この手の中永遠に、神の手にすら渡すことなく輝き歌い続ける。
それは甘美で、至福のこと。
たとえ神を裏切ることで、あったとしてもだ。
ゆっくり今度は、大司教の指がヴォ/ルフ/ガングを指した。
言葉は落ちず、ヴォ/ルフ/ガングの耳に届いた。そのはずだった。
何故なら瞬間で、冷え切った眦が、見開かれた瞳が、理解したと赤みを増す。
身も心も。甘美な響きだ。
それはどちらにとっても、ひどく甘美で淫靡な響きだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

大司教は天才児に固執し過ぎだと思うんだ。

  • 雰囲気がエロいです、姐さん!! -- 2011-01-21 (金) 13:17:14

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