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スキマスイッチ 「酔っ払いとの会話」

某生モノ、なので注意を。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

こいつは酔っぱらい。泥酔してる。よくあること。
今までもよくあったこと。だから今のこの会話は、後になったら本当に百パーセント覚えていない。
「じゅーろくねんだ」
「十七年じゃないかね」
「う……っせえ!」
酔っぱらいだな。数のカウントもおかしい。
とりあえずきれいに揃えた爪の指をひのふの、と折って数え直そうとしてるけど、いやそれじゃ足りないから。
ほれ、癇癪を起した。出会ってからの年数なら、足の指まで使わないと多分足りない。
「そーじゃない!だからな、じゅーろくねんなんだ!」
「十七……」
「でな!だからさ!そろそろセックスくらいいいんじゃねいの、っつってんの!!」
こいつは酒に弱いくせに酒が大好きで、そしてさっさと酔っぱらった後のことは、本気で全部俺に丸投げしてくる。
まあこれくらい付き合ってれば慣れるけど。それは今日だってそうだ。
ライブの打ち上げの後なんで、正直俺もちょっと早く寝たい。明日も早いんだし。
隣の部屋まで帰してくれ。明日になったらまた、マネさんより早く起してやるから。
「……ハァ」
「んだそりゃあ!アホ!ボケ!アフロ!」
気のない返事をしたら、ぽこぽこ頭を殴られた、痛い。もうアフロじゃねーってのに、容赦ない。
ホテルまで連れ帰って、ベッドに沈めるまでは上手くいったんだけど。今日はそこでむっくり起き上がって、口を開いたと思えばこう。
愛嬌のある顔立ちだ、とま、俺は思う。酔っぱらうと眼が座るが、ときどきそれも可愛げあると思う。
でも、一度キレだすと罵詈雑言が止まらない。
あの声で。良く響く、やわらかくて伸びのある、惚れこんでるあの声でだ。あああ、結構へこむ。

「おマエ、俺を何だと思ってんだ!」
「え、相棒……」
「……もしかして、そんだけとか!?ふざけんじゃねーぞ!」
しかし言うに事欠いて、何を言い出すのかと思ったら。
そんで、そういうため息もバレた。死ねアフロ!っておい。だからもう俺はアフロじゃねえ!!
「いて、タク、や、イテ!幾つだお前!!」
「……ってと」
「……いい、いい。足の指はいい」
くしゃくしゃと、セットが乱れたパーマ髪をいじってやったら、漸く落ち着いたようだ。
ベッドのシーツを握りしめながら、俺の方を見ないで何かブツブツ呟いてる。
「だって」
「……」
「不安になんじゃんよ」
「……?」
「……俺ひとりで、ソロやってても、お前止めねえし」
「う?」
「昔みたいに、追いかけてこねえし」
ああそりゃあ、三十超えたし。つか、ソロとか何時の話よ、一昨年?でも結局はまた、こうやって一緒にやってるじゃん。
でもがきんちょの頃は、いやそれからも、俺が一緒にやりたいって言ってもお前が逃げ回ってたんだろうが。
だから好きで追いかけてたわけじゃない。お前が逃げるからだ。いや、好きで追いかけてたんだけども、そりゃあ。
「……なぁ」
まだブツブツ、何か言いながら一点病みたいに固まってしまったこの相方に、俺も困ってしまった。
でも寝かしつける使命がある。明日も早いのは、俺もだけどこいつも同じだし、運命共同体だし。
「だから?安心したい……つか、そういう感じで、俺と寝たいってか?」
「うん」
まあ素直。って、じゃなくて。
「あほー」
「何でだ!!」
「何でもないだろが。……寝ろ!!」

油断してたらしく、その一撃でこいつはあっけなくベッドに仰向けにひっくり返った。チャンスとばかりにシーツで挟む。
じたばたするけど、ここで力を緩めるわけにはいかない。
「こら。……待てって!言うから!言うから!!」
「ハァァ!!??寝ねえぞ、俺ぁ!!」
「違くて!……そういう時は、俺から言うから!!」
「?」
「……お前としたくなったら、俺から、言う」
多少卑怯かな、とは思わんでもなかったが、シーツの下の耳のあたりにそう言ったら、ぴたり。動きが止まった。
「だから、今日は寝え。な」
大丈夫、こいつは酔っぱらい。大丈夫、いつもこういうときの話は、百パー覚えてねえんだから。
とんとん。ぽんぽん。
頭のあたりから肩、腰、脚のあたり。ちょっとずつ叩きながら、少しずつ息を殺して、俺は遠ざかった。
枕元の水、ペットボトル確認。
ヘッドライトの電源オフ、確認。
静かにゆっくり、ゆっくりドアへ。起きるなよ、また蒸返すなよ。明日はまた、二人で顔を合わすんだし。
起きるなよ、俺が出ていくまで。
だってそうだな。考えるとそんなにもか、俺がお前を見つけて、追いかけまわして今になって、十何年も経ったのか。
それは言い変えると、そんだけの間、片思い続けてきたみたいってなことで。
「……やっべ、かった」
端的に言うと、ものすごくしたい。俺だって。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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