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スキマスイッチ 「巡り落ちる」

生。☆と元アフロネタ。会話多くてかさ張ってすまない。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

新曲が出来た。詞が乗った。
いい歌だ。掛け値なしに。
やっぱりお前が歌うのは、いい歌だ。それも、掛け値なしに。
全部の作業が終わった後、最初に全部を聞き返すことができるのが俺の特権で、大体はそういうとき一人だ。
だから自然とニヤニヤしてしまうのは、俺の悪い癖かもしれない。まあ、渾身の出来ってやつ。
プロモーション活動ってのも疲れるもんだけど、でもそういうのも含め仕事だから。それに、もう慣れてるし。
年末も近いわけで、あちこちのイベントに呼ばれたり演奏したり、ありがたいことだね。
現実に忙しくて、そう、そうやって日々を消化してて、お前とほとんど毎日顔を突き合わせてるのに、大体
その話しかしなかった。当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
またお前はいつかみたいな、おっそろしいほどの変わり身の早さで、タケシにも何も不自然さを感じさせないとくる。
クールなのか残酷なのかくらいは、少し考えたりした。でもそれを思うたび、忘れられない熱さのことも同時に
思い出されて頭は、手は、髪は、変な風に泡立つような感覚に陥った。
ピピピと聞き慣れた音がする。
メールだ。
俺の携帯の音。
「はいはい」
誰も居ないのに一人で返事して、俺はベッド傍のサイドボードのそれを掴んで中を確認した。あ、思ってればタケシだ。
もちろんあいつなわけがない。それは最初から期待してない、あの携帯嫌い人間からのはずがない。
九時にロビー集合か。なるほどね。
うちの事務所とか、他のミュージシャンさんたちとの、今日のイベントの打ち上げのこと。ホテルロビーまで送り迎え
してくれんのか、さすが出来るジャーマネだね、タケシ。
俺はまあ、飲まないつか飲めないんだけど、例のアレな。アレ、あいつはな。あいつがな。
「…死ぬまで飲むからなあ…」
うん。俺が一人で苦笑いしながら、了解、あと十分で行くって返信を打ってる間に、今度は別の音がした。

こんこん。
と、聞き慣れない音。
「?」
固い音。出かける準備をしようと、ベッドの上に放り出してあったコートを握りしめて、俺は思わず周りをきょろきょろ
眺めてしまう。
どんどん。どんどんどん。
「…シンタくーん!?あれ、違うー?」
「!」
わかった、ドアの音!
お前、チャイム鳴らせよ、しかも不確定な自信で人の部屋のドア叩くなよ!
「はいはい、タクヤ、静かに……」
「何だ、居んじゃん」
「居るよ。…てか、お前こそ何してんの」
「え?プレステとか借りたいなと」
「じゃなくて、何そのカッコ」
ここのホテルのこの階には、うちの関係者は確か俺とタクヤだけで、別の部屋は全くの一般の人が泊ってるはずなんだ。
だから慌てて飛んで行ってドアを開けると、そう、にっこにことお前が立っていて、俺はちょっと怒っていいのか脱力
していいのか、な気分になった。
よくある。遠征先のホテルで暇なとき、俺の部屋でゲームしたり遊んだりするのは。でもさ、もう直ぐ集合時間よ。
お前何してんの、明らかに頭濡れてるし部屋着のTシャツだよね、それ。出掛ける準備とかそういうの、どうしたのよ。
「だって、ライブで汗かいたじゃん!だから風呂入ったんよ」
じゃなくて。俺はちゃんとシャツとジーンズ着てるでしょ、何だそのラフな格好は。
「おあ、何?シンタくんとこだけツインなの!?」
「聞けよ!」
いや、これにも慣れてるけど。これもよくあることだけど、お前が俺の話聞かないなんていうのはさ。
タクヤは足元もホテルのスリッパで、もう完全にくつろぎモードに入ってて、そんでずかずか俺の部屋へ踏み込んでくる。
俺の荷物は機材が多い。仕事柄そう、仕方ない。キーボード一本以外にも、色々要るんだ。
楽器以外にもリミックス用のパソコンとか、プレステとか、蹴りたいボールとかも。だからツインにしてもらってんだ。

「タクヤ!…打ち上げ行くぞ?」
そんな荷物に埋もれた方、のベッドにこいつは、躊躇なくダイブする。頼むから壊さないでほしい、気を使ってほしい。
「あ、俺今回は行かない」
「…は?」
「ま。ま。タイチョウフリョウで」
嘘つけ。どこがだ。そんなにんまり笑って、どこが。
普段ならどんなにつらくても、酒が飲めなきゃ人生じゃないって飛んでいく癖に、どんな風の吹き回しだ。
「何言って…ほら。タケシ待ってるし。早く着替えてきなってば」
「集合何時?あと何分?」
「九時にロビーだって。…あと十分くらい」
「そか」
じゃあ十分でいいや。
タクヤが笑いながら言った時、何だろう。
ぴん、と。りりりり、と。警鐘、警報みたいな音が聞こえた。
嫌な予感みたいなのがしたんだ、本当に。後で考えれば。
とりあえずマジに体調が悪いとかいうので、手招きされるがままもう一方のベッドに腰掛ければ(今日俺が寝る方、ね)、
こいつはダイブして突っ伏した姿勢のまま、芝居がかった風にうんうん頭を抱え始めた。何だこのコントは。
もう冬だ。髪をちゃんと乾かせ、でないと逆に風邪ひくよ。
「…何してんの、お前」
呆れて俺が言ったら、心配しろよー、と今度はがっかりしたような声と顔。アホか、お前。
「シンタくんは行くのかよー?」
「行くよ。…飲めないけど。行かない方が気、悪いっしょ」
一応これも仕事。仕事みたいなもん、楽しいから大歓迎な部類でも、ちょっとは義理とか付き合いも絡んでる。だから。
そう言ったらまたタクヤはにやにや笑った。怖い。ぶっちゃけ無気味。
何か、確かにこれは企んでるって顔。
「じゃあ、俺が行くなって頼んだら?」
「…は?」

ホラ来た。
それ来たぞ、タクヤの無理難題、無茶ブリが。別名ワガママとも言うが。
最近黒に近い風に染め直した髪を掻きあげながら、明らかにこいつは俺を困らせて楽しんでる風だ。悪い冗談だ。
俺は思った。思おうとした。
「…バカ言うなよ、マジでしんどいなら、タケシに言ってよ」
そう。でないと、りりりりり。警報が煩い。
「あー。なる。シンタ君は相方を見捨てるわけね」
「何よ、今日は。何のコント?何の冗談……」
「考えた?」
「…何を?」
「俺のこと」
「?」
「俺はちゃんと、考えてたよ」
だからその話をしに来た。
タクヤは起き上がってベッドの上に座り込み、言いながら笑顔をゆっくり挑戦者の顔に変えた。
ほら来た。
悪い予感が。俺の中で警報が鳴り響く。
「十分…あと五分か。それでいい」
何回も何十回も、俺は考えた。俺は考えた。俺はね。
タクヤは言う。
言外に、お前はどうだって言っていた。何のことかくらい、そのくらいはもうわかっていた。
「シンタ君この前…俺が全部だって言ったよね。バカみたいだね」
本当にムカつく顔で笑う。本当に俺を小馬鹿にしてる時の、半笑いの最低の目だ。
「それ、もっかい言ってみな」
「……」
「どういう意味なの」
そんな顔も知ってた。何回も見て来た。こんな風に追い詰められたり、きつく詰られたりも何度も、何度も。
俺は。でもまた、その言葉にウソがないのも事実で。
この前腕に抱いた。そうだった。
寒さと熱さで、ぞっとするほどの夜だった。

思い出せば一気に何十枚ものページがめくれるように、俺の前の景色、色、空気、全てが変わっていく。
お前を中心として、お前だけが変わらずに。
「……。」
そこから、すごい沈黙が流れた。
俺は多分息も止めていて、その苦しさに気付くまで随分かかっていた。
何処からも、何の音も聞こえない。ホテルの薄い壁の向こうからも、大して高くない階下の街の音も。
突然、思いっきり空が高くて、地面からも遠い気がした。他の何もなく、俺はただお前の前にいるだけなんだと。
半分笑ってる目にはそれでも俺をひきつけてやまない何かがあって、逃げられもしない。
いつものようで、でもいつものようでなく。
暗くもないのに頼りなくて泣き出しそうな気分、の一歩手前、いやもう、その領域に踏み込んでいた。
たまらず俺が目を閉じると、数秒してゆっくり暖かいものが頬に触れた。掌だった。
その温みのこともまた。
「俺は考えてた」
ひとつひとつ。ぽつりぽつり。
「シンタ君って」
声も。俺の名前を呼ぶことも。
そうだな。俺は考えようって言って、考えてなかった。
考えたくなかった。考えてもどうしようもないと思った。
お前はそれをバカみたいだと言うし。実際そうなんだろう。
お前は俺の最強だ。掛け値なしに。
お前と別れて違う道を、違う方法で歩くことになったら、それは本当に全く新しい世界だ。
そんな風だ。俺はそうやって一回死んで、また生きていける。
俺はお前が居なくても、俺の生きたいように、生きられるから。
だけど、そんでじーさんになって、いい人生だったって本当に死ぬ間際に、多分お前とのこの十年間を必ず思い出す。
「シンタ?生きてる?」
生きてる。死んでない。
バカみたい。確かに。
死ぬときに、お前思い出して、結構いい人生だったよとか、言う気なんだ。俺。
そのときに思い出すお前のことを、多分誰にも言わないで俺は、ずっと自分の中に置いておくつもり。

温もりのように、光のように、大事なことのように。護るように、忘れないように、誰にも渡さないように。
「タクヤ……」
頭を抱えた俺の、その髪をお前が撫でている。
お前が俺の人生にどれだけ食い込んだか。どれだけ俺に食い込んでいるか。
それをちゃんと伝えろと言われて出来ない、俺は、バカだ。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。
ああ。バカみたいとかじゃなくてバカだ、もう。くそ、息が荒い、情けない。泣いてるみたいじゃないか。
ぴぴぴぴぴぴぴ、ぴぴぴぴぴぴ。
泣いてないってば。煩い。警鐘。
「シンタ、電話……」
あれ、……現実?
「……え?」
ぼんやり顔を上げると、俺の隣をタクヤが指差す。
ホテルのベッド特有の、重だるい感触と色のシーツの上に、俺の電話が半分埋まって、でも必死に何かを訴えかけていた。
電子音と、コールの点滅。モニタにうちのマネージャーの名前が、あ、と思って見上げた目ざまし(ベッドサイドの)の
時刻は、いつの間にかいつの間に、とっくに集合時間を過ぎていて。
タクヤがよっと、声を出しながらそれを掴んで、俺を見る。
無言で今度は何も言わず、だが俺の目から視線をそらさず、それを俺の手に握らせる。電話はずっと、鳴ったまま。
「……。」
現実が俺を呼んでいる。
お前が俺を待っている。
俺は一瞬、見比べた。だけどそんなの、どっちを選ぶかなんて、そんなの選択にならない。なりっこない。
「……もしもし?」
『あー?シンタ君?ちょっと、時間過ぎたよ、何やってんのー?タクヤも降りて来ないしさー!?』
「…悪い、タケシ」
『いーから。俺飛ばすからー。とにかく早く来てよー?』
「じゃなくて…俺、今日はパスするわ」
『はあ?何でよっ』
「タクヤも。…ちょっと、二人で話したいことがあって」

俺はお前を見ている。お前も黙って、こちらを見ている。
『何、何、ちょっ…お前ら、マジにまたヤバい喧嘩とかしたんじゃっ…』
「ん、喧嘩じゃないよ。じゃなくてちゃんとした、面と向かって話すことっていうか…」
『…えーと、それは、お前ら二人でとことん話し合うべき、ってタイプのやつなの?』
「……うん、そうだね」
そうだな。タクヤにも聞こえてるかもしれない。
『そか。…わかったよ』
うちのマネージャーは、こうだ。だから出来る奴だ。何だかんだで俺ら二人に揃って、惚れこんでくれてる。
畜生、いい奴だなタケシ。背が小さいとか口うるさいとか、無茶振りはタクヤ並みだとか、色々あるっちゃあるけど。
『じゃあな。絶対決着付けろよー。逃げんなよ、二人とも』
「お、おお」
『こっちは何とかしとくからな!俺が!…感謝して働け』 
そう、こっちは俺らが何とかしなきゃならない。
俺らがさ。
なあタクヤ。
電話を切ったら、こいつは笑った。今日初めて見る、子供みたいな嬉しそうな、裏のない笑い方。
俺を押し倒して上に乗っかって来る。冷えた洗い髪が、今度は気持ちいいと思える。
首を背中を、この前みたいに抱きしめられた。俺は、俺も多分、笑ってるんだろうなと思っていた。
「シンタ君よ。俺は、シンタ君のことちゃんと、考えてたよ」
ぽんぽんと肩を叩くと、タクヤは言った。
「俺、……死ぬまで忘れないと思うよ」
耳元で、口説き文句だな、これは。
まあ口説かれる気は、満々です。
「シンタ君のことはさ」
殺し文句。どうもありがとさん。
俺は俺で、さっき考えてたみたいなことを言った。
言ったらまた、バカかお前って、心底呆れたみたいな声のあと、キスをされた。
熱くもなく、寒くもない。そんな夜だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
途中でさるってさらにすみませんでした。


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