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オリジナル 年上クール部下×おバカお子様年下上司 「バッティングセンター」

オリジナル、年上クール部下×おバカお子様年下上司ネタです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス!

久しぶりにやってきたバッティングセンターは、あまり混んでいなかった。もう遅い時刻だからか。
懐かしい。学生の時は、部活でへとへとになってもその後、こうやってセンターに通っては、何十球となく打ったもんだ。
「園川~」
大体こういうところは、一番奥が難関なんだ。時速150キロくらいに合わせてたり、変化球がえげつなかったり。
「その、かわあ!」
そう、ランダムに内角を攻めてきたり、時々カーブでタイミングを外されて悔しい思いを何度もした。
「そ~の~か~わああああ!!」
「うるせーぞ兄ちゃん!」
はて。
何だか呼ばれているような気がするが。
「バカ!お前俺を放置すんな!!」
ああ、確かにうるさい。お隣のゲージのおじさんに申し訳ない。
「……浅井さん……だから言ったでしょ、初心者には百キロ超は、キツイですって」
「てか、うぉっ!」
「ちゃんとボール見て!あと三球残ってますよ!」
ばすんと、身を乗り出したうちの上司の眼前を白球が走り抜けて、ゲージ後ろのマットにぶち当たる音がする。
危ないったらない。左打席に入ったフォームも腰が引けてて手は逆手だし、そんなんでよくここに来たいなんて言えたな。
全くの初心者だって胸を張るくらいなら、最初は一番簡単なはじっこのやつ、マシンにキティちゃんの映像が出るのにしときなさいって
言ったのに。
今日は出先から直帰の予定だった。上司と二人で現場視察に行った後のことだ。
最近俺に昼飯を貰ってばっかりだから、ラーメンでも奢ると上司が言い出した。俺もラーメンは大好きだから、その申し出はありがたく
受けることにした。
ジャンクなものばっかり食べてる上司の味覚を不安に思わないでもなかったが、行きつけと連れて行かれた店は確かに、結構うまくて
量もまあまああって。これまたラーメン好きらしい上司とギョーザとチャーハンも追加して、半分ずつ食べたりして。
で、その帰り道だ。

「だっ……」
ダメだ。完全に振り遅れてる。
「ピッチャーが投げたら、もう振りなさい!当たらなくても!」
気付いたんだが、この人、運動神経は相当鈍いんじゃないか。
ラーメンって人を砕けた気分にするよな。何となく。食いながら珍しくプライベートの話になって、そうそうお前野球部だったよなとか
学生時代の話にもなって、その後そうだ近所にバッティングセンターがあるんだよねと、ここへ引きずって来られた。
職場から近いには近いのに、俺は初めて来た。へえ、と思った。
あーあ。これは機嫌が悪くなってるぞ。髪もぐちゃぐちゃだ。
上司はスーツの上着を俺に預けて、先にゲージに入ったんだが、俺のアドバイスを全く聞かなかったのがこの結果だ。
「あーもう、むずい!何だこれ…当たんねえー!」
三百円で二十球、相場としては安い。でもフルスイング二十回で、しかも一回もかすりもしなかったんだから余計に息も上がるだろう。
若いなあといつも思うが、それでもぜーはー言いながらベンチの俺の隣に尻持ちをつくように座り込む上司は、軽く汗ばんでいる。
あの柔らかそうな髪が乱れて、結構、色の白い頬にも赤みが。
「…はは、浅井さんにも苦手なもんがあるんスね」
「うっせえなあ。何だお前、高みの見物か」
差し出したコーヒー缶を上目づかいで受け取る。背は座ってても俺の方が高いんだ。
「まあ懲りましたか、見るのとやるのとじゃ大違いっしょ。大体フォームがおかしいんです、初心者は」
「だからなあ、お前教えもしねーで横から色々言うだけじゃん!マジ速いんだぞ、わかってる!?」
「知ってますよそんなの。無茶なんですよ、浅井さんが」
「……んじゃお前、打ってみろよ!」
「はあ?」
「口ばっかじゃなくて、見せてみろよ!見本!見本!!」
いや、ちょっと。確かにずっと野球やってましたけど、俺にだってブランクというものが。
上司はスタッフのおじさんに大声で、一番速いゲージはどこですかとか聞いている。無理だって、そんなの。もう何年もまともに
バットなんか振ってないのに。
「浅井さん、ちょっと、勘弁して下さいよ」
「ヤダね。お前が俺をバカにするからだろ」
「バカにしてるわけじゃなくてですね、だから初心者……」
「う・る・せ・え!」

ああやっぱり。コドモの機嫌を損ねていた。
ちょっとぼーっとしていた俺も、悪いけど。
だから、こういうセンターは一番奥のゲージが難関なんだ。何だって、時速百五十キロだと。
おいおい、半端なプロの投手より速い。誰だこれ設定してるのは。名物ゲージ、確かにそうだろうな。
「む、無理っすよ」
「上司命令」
「はあ~!?」
「へっへっへ。何ぁんだ、打てたら俺がちゅーしてやるから!」
「…い、りませんよ!」
途端にニヤニヤしだした上司に完全に背中を押されるようにして、俺は殆ど閉じ込められるようにして、そのゲージに放り込まれる。
「よし三百円は、俺が奢ってやるからな~」
「…楽しそうですね、浅井さん」
仕方ない。まあ久しぶりに打つのは楽しみだったし、俺は俺にとってずっと慣れ親しんだ、左打席に入る。
スーツの上着はさっきのベンチに置いて、腕をまくってメットを被る。素手で金属バットてのと、足元が革靴っていうのだけは違和感だ。
どん。その俺の前を、あっという瞬間に風と轟音が駆け抜ける。
「はやっ!はええ!!」
そのマットにすごい音と振動を残す時速百五十キロに、ゲージの外で上司がぎゃあと声を上げた。
うるせえなあ。わかってるよ。
マジで並じゃねえんだぞ。
マシンの腕が上がった瞬間構える。次の一球、その次の一球、俺は振り遅れた。
「…あ、当たんのか…」
がきんと固い音だけ残して、白球はコロコロとマシンの方向へ転がった。これじゃショートゴロが精いっぱいだ。
まだ振り遅れてるな。バットヘッドの回転が遅い。
俺は腰を落とす。来い、内角。
「っ」
呼びこめ!
「わっ」
内角は俺の得意だ。インハイなら、いくら速くてもついていける。
一球が鋭くマシン上のネットに突き刺さってからは、体が思い出した。
そうだ外角、低めは一歩踏み込んで流せ。インは引っ張る、真ん中高めなら腰の回転で、センター返しで。

「……。」
カーブもナックルもチェンジアップも来ないなら、そうは。打ち取られやしない。
がきん、のヒット音が透き通って、鋭くきいんと響き渡るようになって。いつの間にか、ばらばらと打っていた他のお客さんもこっちの
ゲージの周囲に集まってきていた。
結局二十球打って、空振り二回、ゴロ六球。ヒット性の当たり十球、まずまずかな。
メットを脱いだら少しだけ、俺も汗をかいていた。息はまだ上がってないんだが、久しぶりに集中してた、俺もまだ若いな。
うん、久しぶりにいい感じだった。ちょっといい気分で、軽く腕で額をぬぐいながらゲージを出たら、あれ。
「…浅井さん?」
何で、この人固まってんの。
「俺の勝ち、ですかね」
「……おう」
もう空だろうに、さっきのコーヒー缶ずっと握りしめる様にして、何だ。いきなり静かになっちゃってる。
気のせいかさっきまで赤かった頬っぺたもひきつっている。髪はどことなく、警戒している猫の毛並みを彷彿とさせる。
いや全体的にそんな雰囲気で、兄ちゃんやるなあとか、さっきのおじさんに褒められている俺を見上げるようにして黙っている。
「中高大、ずっと四番だったんですよ、これでも」
「……。」
「自慢じゃないですけど、一応社会人野球部にも声掛けられたりしたくらいで……」
「……。」
あれ、いや、ほんとにどうしたんだ。
さっきまできゃんきゃん言ってたくせに、ここまでぐうの音も出ないようだと、こっちはいい気分よりも逆に心配になる。
「浅井さん?」
ぬっとスーツの上着を差し出したら、一瞬飛びのいた。おい、これはあんたのでしょうに。
冷えますよ、いいかげんもう冬が近いんですから。
何か変だ。
何だこれ。
俺が上着を羽織ると、ちょこちょことついてくる。一応、ついてくるのはついてくる。
実は官舎住まいな俺たちは帰る方向も一緒だから、どうしようかタクシー拾おうかとも思ったけど、まあいいか。
久しぶりに体がまだ疼いているから、歩きたい。
歩いていいですかね。多分三十分くらいかかるだろうけど。俺の歩幅についてくるのは、ちょっとホネかもしれませんけど。
大通りから住宅街の方へ抜けていくと、段々静かになってくる。見上げるとくっきりとした三日月だ。

そろそろ冬だなあ、と思う。
職場の大掃除もしなきゃな。
年末進行、めんどくせえな。
そしてとりあえず、まだ上司は黙っている。
「…浅井さん、どーしました、ホントに」
俺は、先を歩いていた。
あんまり静かなのでそこに居るのかって確認も含めて、首だけで振り向いたつもりだった、つもりだった。
「!?」
その瞬間だ。
ある街灯の真下で、肩をグイッと引かれたのは。
「……なあ」
「……。」
「マジで、ちゅーしなきゃ駄目、とか…?」
まだ上着を小脇に抱えたまま、上司は俺をその場に縫いとめた。
数秒間。
俺らの間にはただ何もない時間が流れる。
俺も固まってるし、上司も固まっている。さっきの警戒心の塊の猫みたいな雰囲気そのままで。
そう、その時思った。髪の柔らかそうな具合もそうだけど、この人はどことなく猫みたいだ。
くるくると表情が変わるし、上目づかいが得意だし。いや得意ってなんだ、俺がよくこんな顔を見てるだけなんじゃないか。
俺がよくこんな顔を、させてるのかも。
「……な、んの話…」
「さっきの。…イチオウ、オトコノヤクソクだし」
そこでふいっと唇を尖らせて、手を離した。ああ、とそこで俺は漸く合点がいった。
どうやら。どうやらこの人は、さっき言った冗談を馬鹿みたいに気にしてたらしい。そんなことだったのかと。
こっちは完全に忘れてたのに、何を気にしてるんですかと、俺は軽く笑い飛ばそうとした。でもまた少し、それには時間がかかった。
尖らせてる、その唇を見てしまった。見てしまったんだ。
きっと、柔らかい気がした。
「……い、要りませんよ」
そしてまたその、数秒後。
声、ぎこちなかったかな。俺の体はまだ固まってたから。
でもその声で上司はぱっと顔を上げた。ふにゃって、ああまたくるくる表情を変えて。

よかったーって、ちょっと、頭抱えてしゃがみこまないで下さい。大げさです、御近所迷惑な音量です。
それからあんまりそんなリアクションされたら、俺だってちょっと傷つく。知らないでしょうけども。
ぴょこっと飛び上がった上司はまたさっきみたいに、俺の背中をぐいぐい押しながら笑いだした。そんなことしなくても歩きますよ。
まあでも、そんな風なほうが、らしいですけどね。
「あー!でもお前すげえなあ!いやー見くびってた」
「……どうも」
「でも今度は勝つぞー。ナニ、お前ナニが苦手?」
は。苦手って。俺の顔を見上げてくる上司のいたずらっぽい顔は、次の街灯まで少し暗くて、目だけキラキラしてるのが余計目立った。
すげえ音痴ですって正直にぶちまけたときの、また嬉しそうな顔ったら。
コドモだ。コドモすぎる。
でも俺は、それが何度でも見たいのかもしれない。
「よし、次はカラオケ勝負だな!」
「……ちょっ、あのね、絶対に自分が勝てる土俵に持っていくのはやめて下さいってば!」
「今度ぁ俺が勝ったら、お前がちゅーし……」
「……は?」
「……、は、したら困る」
「俺だって困ります」
見続けたいのかもしれない。
少しダッシュ。わあわあ言いながら先を走っていた上司に追いついた。もう本当に夜も遅いんですから、静かにして下さいよ。
「……なあ、何か」
ぽつんぽつんの街灯の、またその一つの下で、思いついたように上司は首をかしげながら俺を見上げて、言った。
「俺ら、……意外と仲良くなってねえ?」
そう、その髪。きゅるっとした丸い目、見上げるそれをゆるく隠しているくしゃくしゃのそれ。
今は汗をかいた名残りで、柔らかくも少しねじれて乱れているけれど。
それに俺は手を伸ばしたくなる、そんな瞬間があるのを、もう自覚してるんだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ほのぼのドキドキが好きです。 支援ありがとうございました。

  • ちっ…ちゅー期待!超期待! -- 2010-12-15 (水) 19:49:29
  • ちっ…ちゅー期待!超期待! -- 2010-12-15 (水) 19:52:44

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