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スキマスイッチ 「タバコとか結論とか」

生。☆と元アフロネタ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

気まずい。とてつもなく。
視線合わさなくなった。気まずすぎる。
今までこんなこと、本当に一度の一度も無かった。ライブで大失敗した時も、酒で酷い目にあわせられた時も。
お前は俺を見る時、絶対に真っ直ぐ目を見ていたのに、なのに、今はさりげなく、でも確実に違う。
やっちまった感が、ものすごくある。
タバコの匂い。
それが最近、トラウマだ。あれを思い出してしまうから、あれを。お前のあの顔とかを。
でも、鼻をくすぐる。正直銘柄とかどうでもいいけど、とりあえず俺はそれが好きじゃない。
好きじゃないんだよ、タクヤ。
お前の好きなもので俺が嫌いなもの、そしてその逆も結構あって、ってそんなことも思い出すよ。
「…どーっすっか、ねっ」
後ろでお前が言ってる。大丈夫、聞こえてる。
ヘッドフォンの中ではお前が歌っている。でもまたそれが、何でだか今日は俺には、本当に気に入らない。
好きじゃない。
好きだけど。
好きじゃない、好きだけど、でも気に入らない。意味不明の何かがぐるぐる回る。
何だこりゃ。混乱してるなあ、俺も。
「……もうワンテイク、したいとこだな」
「あ、やっぱ気に入らない?」
「何だろ、しっくりこない」
いや、わかってるよ。お前今日、もう二十回くらい歌ってるよ。なのにしっくりこないなんて、結構あり得ねえ。
俺の音とお前の声が、噛みあわないとか。うわ、それ、確認すると結構なショック事実だ。
でもまたお前はふーん、とか。あんまり気にしてないのか気乗りしないのかな声で、いいけど、と返してくる。
ぴんぴんと、俺はモニタのボリュームをアレコレいじくっている。根本的な解決にならないのは承知の上で。
「あ!でもヤバいわ、今日は……飲みに行くんだよねー」
「へ?……あ、そうか」
「ドランクの皆とさ、勢ぞろいで約束してんのよ。久しぶりに」
「……そうか」

それは、初耳だ。
別に、聞いても仕方ないことだけど。俺、酒飲めないし。
それにそっちの人たちとは、何て言うか無理だよ、あんな酒飲み集団に混じれないよ。人間的には、音楽的には大好きだけどさ。
で、それは多分お前にも、言えることだ。
振りかえるとお前は体を反らせて、天井を見上げながら難しそうな顔をしていた。赤いシャツの襟に、柔らかい髪が埋もれてる。
じー、蛍光灯が鳴っている。
結構、音の根本の段階、テイクの段階を詰めていくのは今も昔もこうやって二人でやってることなんで、それは別にいい。
結構静かなスタジオのどこにも人気がないとか、そんなこと今さら気にしていない。
気にしているとすれば、お前が真っ直ぐ俺を見ないこと、くらいだ。
俺は無言で、ヘッドフォンを手渡す。お前は体をかがめて、こっちに首を伸ばしてくる。ほぼ真横。
横顔ならお互い楽だな。
「……お互い?」
「へ?」
「あ、何でも無い」
何で?俺も楽か?
自問自答する言い方に、こいつは肩のあたりに視線を上げて問いかけた。ほら、目を見ないだろ。
「……あー。何か俺も、アレだな」
「アレか?」
「ばらっバラ。ハウってんのかてーの」
ヘッドフォンを片耳に、そんでもう片手には煙草の煙で、目を閉じてハミングしているが。
俺は口髭を覆い隠すようにして、その匂いをやり過ごす。
「……合わないとか、ヤダね」
ぽつり、お前が呟いた。
「イヤだね」
だからって。その返しを俺は、ちょっと一瞬飲み込むことで耐えた。
「だって、飲みに行くんだろ?明日にしようよ」
「や、そりゃ行くけど、うん。行くけどさあ?」
「んじゃいいって。こういう日もあるって、ことで」
「でもシンタ君は残るよね。で、明日までここにいるだろ」
いやま、そういうことは確かに多々あるけど。俺に原因があるなら、取り除かないとさ、ほら。

「シンタ君よ」
「はいよ」
「キスしようか」
思わず隣を見たら、真っ直ぐなタクヤの目と、久しぶりに目があった。
「色々考えてみたけどさ、イヤだって結論で」
「何が、よ……」
「シンタ君と何か合わないとか、どうしてもイヤだ」
「……。」
「聞いてんのかい」
「……聞こえては、いるけど」
好きだよ。もう何がどうでも。
嫌いなことがいっぱいあって、好きじゃない部分もちゃんとあって、でも好きでしかない。
そういうのを見透かされたみたいで、俺は多分、一見超不機嫌だった。多分。
あのさ、そういう顔するの止めろって。本気でそんな風に見えるから。
嘘だ。超ド級のSっ気持ちなのを俺は知ってる。こいつがそんな、しおらしいキャラなわけない。
「ドランクの皆も、好きだけどさ」
「うん……」
「一緒にやってんのは、シンタ君だけだ」
そんな顔するなよ。
「やってくのは」
マジで、そんな顔すんなよ。
好きだよ、なあ。何がどうでも、お前がいいよ。タクヤ。
「だからよ」
「……」
「合わないとか、そんな」
「タクヤ」
「んなのは」
もう、だから黙れ。黙ってくれ。

余計なことを考えるのは俺の癖だ、と思ってたけど、多分それはお前の癖でもある。
言葉とか雰囲気とか、仕草とか、そういうので雄弁に圧して来る癖に、どうして最後は退くんだよ。
そんな顔すんなよ。させたくないんだよ。
ああ。タバコくせえ。
髪のイメージとおんなじで、唇は柔らかかった、けど。また、俺のトラウマになりそうな気がする。
「……。」
ちょっと見上げ気味に顔を離して、そして開口一番こいつは、髭の感触ってのは違和感、だと抜かした。
「…う、るさい!」
「ビビってんじゃないよー。舌くらい入れなよ」
「ちょっと、何それ!!」
そしてあははははと笑ったタクヤは、慌てて手に持つ煙草の灰に気付いたようだった。
うわ、アブねえ!ってそりゃ、俺がアブねえわ!こっちに火ついたらどうしてくれる。
「だってそれ、今のは、お前が、あんまり!!」
「俺が?」
「あんまり、……っ」
あんな顔するからじゃねーの、と言ったら、またタクヤは大笑いした。どんな顔だよ、だと?
髪を自分でくちゃくちゃにしながらもう、今度は子供みたいだ、悪ガキのノリ。痛い、ヘッドフォン押し付けてくんな。
「……俺が好きだって顔」
「えー?聞こえねえー?」
「もういい!!」
「……んじゃ、俺行って来るわ」
タクヤは酔ってない。まだ。酔ったらキス魔になるタイプだけど、今はまだ、これから行くってところだ。
「で、帰って来るから」
正直、それはしてほしくない。酔っぱらったお前が帰って来ても、何ぁんもプラスにはならないって。
タクヤはまたにんまり笑いながら、でも二度三度、そう繰り返した。それを俺は別の意味に思う。
「……わかった」
そう、だからそう最後は片手を上げて、わかったから行って来いってひらひらさせた。

ああ。マジ要らねえのに。
バタンとドアの閉まる音がして、俺はさっきのあいつみたいに天井を見上げて、難しい顔をした。
眉間に皺だ、おそらく。
いや普通に嫌だろう。自分が参加してもいない飲み会の後始末、ものっそい性質の悪い酔っ払いの面倒をみるのなんて。
ていうかあいつ第一に、一人で帰ってこれんのか?その点から既に疑問なんだけど。
そんな普通のことを考えながら、俺の手はでも別に無意識に、乱れたんじゃないかって口髭を弄ってた。
違和感か。
それから自分の口にも、指が当たる。
今、一つの結論が出ている。俺の方の結論だ。
「……。」
それに俺は向かい合っている。
要するに何があっても、みたいな。同じ着地点でないと、どうしても嫌なんだ、俺らは。
どうしても、何が何でも。絶対に絶対にだ、一緒に歩くってことだ。
その為ならたぶん、何を犠牲にでもできる。
「…って。コト?」
アブねえ。火がついた。
どうしてくれる。タクヤ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お互い責任転嫁してればいいよ!


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