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誰も知らないこいの唄

オリジナルで、人間×人狼の話です。知人さんが見たという夢が元ネタ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

人里に面した森の中、その深くのけもの道に、ひとりの少年が立っていた。子供の柔らかさよりは骨っぽさの方が幾分目につく少年は、背を伸ばして声をあげた。

「だいちゃん、遊びにきたよ」

一見、誰もいない木立に向かってかけられた声。しかし、反応は確かにあった。がさがさと葉が擦れ、忙しい足音が聴こえてきたかと思うと、少年の細い身体に誰かが抱きついた。

「らんちゃん、会いたかった!」

言葉通りに嬉しそうな、弾んだ声。その持ち主は、らんちゃん、と呼ばれた少年と同年程度の少年だった。ただその頭には、犬科を思わせるけものの耳が生え、腰からは同様の尻尾が覗く。

「相変わらずストレートだね、だいちゃんは」

「すとれーと、ってなに?」

「素直ってことだよ」

直情的な相手に、少年は苦笑混じりに、しかし柔らかく微笑んだ。らんちゃん―もとい嵐は、森近くの村に住む人間だった。対して、だいちゃんこと大は、この森に住むけもの人―人間曰くの「異形の者」だった。

本当は互いの住処の掟で、人間とけもの人が会うなどご法度だ。しかし、ふたりはそんなことを大して気にもせず、よく山で遊んでいた。
人見知りで村に友だちの少ない嵐にとって、いつでも笑顔で接してくれる大は、かけがえのない存在だった。幼いときから森の深くで慎ましく暮らしてきた大にとっても、嵐は人間で唯一の友だちだった。
ふたりは性格こそ月と太陽のように違ったが、それ故にか不思議とかみ合い、人目を避けて仲を深めた。年を重ねるにつれその縁は強固になり、お互い無意識に恋に似た思いを抱いていた。

だが、ふたりが十代の半ばも過ぎたある年、嵐の住む村が大飢饉にみまわれた。
主食である小麦からなにまでの作物が不作となり、雨も降らない。人々は飢えに喘ぎ、苦しみ、いつしか「神の怒りだ」と騒ぎ立てた。
食糧の奪い合いすら勃発する中、村長は村人たちを我が元に集め、高らかに言い放った。

「森に住む異形の者を生贄として神に捧げれば、その怒りを鎮められるとの伝承がある」

統率者である村長の言葉に、藁にもすがりたい思いの村人たちは賛同し、異形どもを狩って神に捧げようと息巻いた。

その熱狂の中で、嵐は元来白い肌をさらに青白くさせていた。頭に浮かぶのは、けものの耳や尻尾を揺らして笑いかける大の姿だ。
明朝に大人たちが生贄狩りを行う、と聴かされた嵐は、その夜の内に森へと走った。
いままでで一番急いでいつもの場所へ辿りつき、息をきらす喉を張り上げ、「だいちゃん!」と呼んだ。夜中に、それもただならぬ様子で来訪した嵐に、現れた大は「どうしたの?」と心配そうに訊ねた。

「だいちゃん、逃げよう」

事情を説明した嵐は、大の手をとってその目を見つめた。成長し、嵐よりも背丈の伸びた大は、耳と尻尾をうつむかせ困ったように嵐を見る。だが、「俺の家に隠れればいい」と説得する彼に、やがて大はこくりと頷いた。
それを確認した嵐は、大の手をしっかりと握り、急いで山を降りた。

かくして、ふたりの同居生活が始まった。
嵐の家は村のはずれにあり、彼自身近所との付き合いは薄い。灯台もと暗しというのか、村人たちは大の存在に気付かなかった。しかし、村を覆う飢饉は深刻だった。
ひとりが食べるものすら難しい最中、嵐は小さなパンを半分割し、大と分け合った。

そうやってどうにか日々をしのいでいったが、元々細く色も白い嵐が痩せていく姿に、大の胸は痛まずにはいられなかった。
あるとき、いつものようにパンの片割れを差し出された大は、「俺、今日はお腹空いてないから。らんちゃんが食べていいよ」と言い、そのパンを返そうとした。
しかし、自分と同様に痩せていく大が、それでも笑って嘘をつく様に、嵐のひとつの思いは強まるばかりだった。

(だいちゃんを、ころしたくない)

事実、森に住んでいたけもの人の何人かは、既に生贄として手にかけられていた。生贄を捧げる程に救われると信じている村人たちを見て、嵐は反吐が出そうだった。
殺させやしない。俺が、守るんだ。そんな思いを噛みしめながら、ひもじい生活を送る日々が続いた。

そして翌年、村の飢饉はどうにか終結した。作物もある程度は取れるようになり、村人たちは安堵の息をついた。それは嵐も同様だった。
しかし、彼はあることに気付いてしまった。
大のことだ。飢饉が終わり危険は去ったのだから、けもの人である彼を山に返さねばならない。

それは当然のことであったし、嵐も彼を連れ出した当初はそのつもりだった。
だが、それが出来ない。嵐にとって、大のいる生活はかけがえがなく、大のいない生活など、もはや考えられなくなっていた。
だから、嵐は嘘をついた。

「らんちゃん、外はどうなってるかなあ」

「…まだ、危ないよ。ここにいなきゃだめだ」

「…そっか」

そう返すと、大の表情が悲しげに翳る。
それに胸が痛むのを誤魔化すように、嵐は大に口付けた。そのまま床に押し倒して、抵抗のない身体をまさぐる。
居住を共にして以来、ふたりはこうしてセックスもするようになった。元より種族も性別も超えた慕情であったため、それは当たり前のように生活にまぎれた。
らんちゃん、らんちゃん、と濡れた声で呼ばれる度、嵐の胸はいとおしさと罪悪感でないまぜになる。それを消す潰すように、嵐はまた大を掻き抱くのだ。

そうやって、延長された同居生活が続く最中だった。
ある日、嵐が外出している間。いつも通り残された大は、珍しく村のはずれを通った村人の声を、その会話を聴いてしまった。

「今年の麦は、豊作だねえ」

その嬉しそうな言葉を聴いて、大は初めて、とうに飢饉が終わっていることを知った。それは同時に、ずっと信じていた嵐の嘘を知ることだった。
ぼう然とする大の元に、嵐が帰ってくる。荷物を降ろすその背中に、大は声をかけた。

「らんちゃん」

「なに?」

「外は、どうなってるの?」

問いかけた言葉に、嵐の動きが止まる。
少し間が空いてから、その答えが返された。

「…まだ危ないよ」

いつも通りの返事。いつも通りの、嘘。
それを聴いた大は、

「…そっか」

と、いつも通りに頷き、微笑んだ。
森に住むけもの人であった彼は、故郷よりも、嵐という孤独な青年を選んだ。
ねえ、らんちゃん。あなたが望むなら、俺はずっと馬鹿な飼い犬でいいよ。だって、そうしたらひとりじゃないでしょう?
そう微笑む大を囲う小屋の外には、彼の知り得ぬ豊かな秋が広がっていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
元は生物パラレルとしてのネタだったんですが、そのまんまな感じに名前を変えきました。元が分かる人がいたら神。
しかし自分は人狼ものが好き過ぎる…。
失礼いたしました。


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