オリジナル 隠密×主君 「誘いたがり」
更新日: 2011-01-12 (水) 00:49:07
某スレの者です。スペースお借りします…
オリジナルで、苦労人な隠密×ビッチな主君の幼馴染。
※一応、暴力・流血描写注意です
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「いや、つい流されて」
何故、と聞かれたから正直に理由を答えたら、次の瞬間ファルマに殴り飛ばされていた。
ベッドの端に腰掛けていたのが、二転三転して壁際で無様に転がされてしまっている。
腕利きの隠密の拳を受けたにしては、そのまま昏倒せずに済んだところを見ると多少は手加減してくれたらしいが、
それでも口の中が切れたらしく、つんと鼻につく鉄の匂いが脳内を汚染する。
けたたましい音。
よみがえる映像。
フラッシュバック。
しかしそれでも冷静でいられるようになったのは年の功か、と思えば顔に浮かぶのは苦笑いだった。
血を拭うふりをしてそれを隠し、気を取り直して見ると、ファルマは母親に手を挙げられた少女のような顔でこちらを見下ろしている。
一瞬、自分が悪いことをしたような気持ちにさせられたが、ふと我に返って考えてみれば殴られたオレが謝るのはおかしな話だ。
口元へやっていた手には想像していたよりも多い量の赤がこびり付いている。
平静になるに従ってじくじくと痛みが押し寄せてくた。
歯が折れなかったのは不幸中の幸いだが、それを差し引いても最低だった。
ただでさえ腰やらケツやらが痛かったのに、元々自分はそれほど痛みに強い方ではないから、ともすれば泣いてしまうかもしれない。
しかしいっそ泣いてしまえばファルマも少しくらい反省するだろうか。
そんなことを考えているのがバレたのかどうかは知らないが、ファルマは怒りを隠そうともしない獰猛な顔で、オレにしてみれば不条理な言葉を並び立てる。
「安売りしてんじゃねぇよ」
「売った覚えはないが…」
「屁理屈こねるな。同じ事だろ、欲しがられたからって簡単にヤらせやがって・・・」
「まぁ、初めてでもないし、惜しむほど大層なもんでもないからな」
「そんなこと言うな!」
こういう時、ファルマはオレのことが好きなんだろうなどと都合の良い考えばかりが沸いてきて、ぶつけられる不条理を跳ね返す隙をついつい見過ごしてしまう。
ファルマの言葉は小さな子供の言い分と同等だ。
言っても仕方ないことをごねるのに、どことなくかわいげがあって憎めない。
「事実だろう?どれだけの人間がオレを、」
「そんなことを言うな・・・っ」
ひどく傷つけられたような顔をしているファルマに途方に暮れる。
何か言おうものなら泣き出しそうだ。
本当に泣きたいのはオレの方なのに。
オレだって、別に望んで男とヤるわけじゃない。
「くっくく・・・」
「何がおかしいんだよ・・・?」
「オレを殴って気が済んだか、ファルマ。気が済んだなら、出てけ。
お前の言うとおりオレは男相手に身体を安売りする最低野郎だ、そんな野郎に構ってないで、どことなりとも行っちまえ。
別に付いてきてくれなんて頼んだ覚えはないし、こんな風に殴られるんだったら居ない方がずっとマシだ」
「ばっ・・・オレはただ・・・!」
「ただ、何だ」
憤怒、困惑、悔恨、悲哀、懇願、ファルマの瞳には実に色々な色が浮かぶ。
それは見ていて飽きなかったが、見ていて辛い事もあった。
以前は。
ファルマは二、三、何かを言いかけて、口をつぐむ。
そうして、最後に出て来たのは確かにオレが望んだ言葉に違いなかった。
「・・・・・・悪かった」
「分かればいい」
これで元通り。
主君と従者。友人同士。幼馴染み。
また明日から顔を付き合わせていける。
それは、確かにオレの望み。
2人にとっての最良。
この関係が続くなら、きっと最期の時まで一緒にいられる。
「オレも悪かったよ。出来るだけ、気をつける」
「・・・ああ」
多分、ファルマは気付いている。
薄っぺらな笑顔、言葉だけの謝罪に。
また、オレが繰り返すことに。
気付いていて、口を閉ざす。
上出来だ、と褒めてやりたいが、ここで褒めれば彼の努力が台無しだ。
あたかも何も無かったかのように、お互いやり過ごす。
ファルマが出て行った後になって、笑いがこみ上げる自分を最低だと罵って、腫れて痛みを訴える頬にそっと触れる。
一途なファルマ。
オレが最期まで一緒にいてほしいと思っている事に、お前はきっと気付いていて、その願いを叶えてくれる。
だけど知ってるか?
お前が今すぐオレから離れていってくれたって、全然構わないって事。
真面目で、優しいお前が、最低なオレに慣れてしまう前に、オレがまともだった頃の記憶と共に、オレを見限ってほしいって思っている事。
卑怯なオレは、決して口には出さないけれど。
「上出来、か・・・」
上出来なのは、彼か、己か。
分からないまま、きっと最期まで一緒にいる。
それが幸か不幸かも分からない。
一つだけ確かなことは。
ファルマと最期まで一緒にいる、その事を思うと、胸が暖かくなる事だけ。
彼はどう思っているのかは知らないけれど、どう思っていようが構わない。
この暖かささえあれば。
今は、それだけでいい。
そう思って、目を閉じた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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