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オリジナル 「冬の日」

オリジナル
冬の日

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース

薄い雲が僅かに光を滲ませる冬。
日差しの穏やかさとは程遠い、足元から深々と刺すように冷え込みが這い上がる昼過ぎ。
頭上では強い風が渦巻き、時折悲鳴を上げている。
カンカンカンカン……
踏切のバーが下がる音。
しばらく遅れて、都会ではもう見ない四角いフォルムの電車が目の前を通り過ぎる。
更に数秒後には強い突風。
駆けてゆく空気に引っ張られて俯いた首筋。
そこへ冷たい風が入り込み、思わず身体がビクリと震える。
背後から押し殺した笑い声。
ふぅとこれ見よがしに溜め息をついて、自分より少し高い位置にある相手の目を見据える。
「寒いんだから仕方ないでしょう」
返事はない。
それでも震える空気や伝わる雰囲気から、笑いが治まっていない事が伺い知れる。
鞄で軽く横腹辺りを小突いて、上がってゆく途中の踏切のバーを潜るように早足で進む。
駆け足で追ってくる足音。

ムキになって歩調を早め、距離を広げて先を急ぐ。
これからの行き先なぞ知っている癖に、それでも追ってくる様子に、今度はこちらが笑いをこらえる。
信号で止まっている時に、こっそりと絡められた指先。
珍しく控え目な様子。
仕方なしに手は振り払わずそのまま。
チラと見えた横顔は、いつになく緊張しているのか表情は硬く。
少し吹き出してから、手を握る。
そんな冬の日。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ。


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