兄弟
更新日: 2016-10-04 (火) 00:08:41
半生 霜新居で次男末っ子です。
本編のネタを派生させているのでネタバレ大量発生。多少捏造したネタもあるので、心の広い読者をお待ちしています。またオマケがありまして、そっちには三男が出てきます。改行の関係で細切れになってしまいます。悪しからず。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
健二の盗聴テープに、計らずも大号泣していた大洋は、途方に暮れる様にして柱に寄り掛かっていた。
「大洋にぃ?」
「・・・お、おぅ。修一、まだ、起きてたのか・・・」
「うん・・・」
すると、突然2階から修一が降りて来た。
泣いてる姿を見られまい、と大洋は慌てて涙を隠した。
「ねぇ。大洋にぃ」
修一は、大洋の隣に座ると、静かに口を開いた。
「俺さ。本当に、死んでほしくないんだ・・・大洋にぃに」
「まだそんな事言ってんのかよ。俺は、もう決めたんだって」
「だってさ、俺、嫌なんだ・・・大洋にぃがいなくなるなんて・・・」
「今までいなかったんだから、何も変わんねぇだろ?」
「でも・・・、こうしてまた会っちゃうと・・・・嫌なんだよ・・・」
「たいして覚えてもいない兄貴に愛着湧くかねぇ」
あまりにも真剣な面持ちの修一の語る言葉は、大洋の胸に突き刺さった。
湿っぽい考えはやめようと、大洋は必死に修一の言葉を茶化した。
茶化していないと、大洋は自分の涙が止まらなくなりそうで、自分をあまりにも心配する弟を抱き締めてしまいそうで、怖かったからだ。
大洋の知る修一は、まだ物心がついたばかりの小さな子供だった。
修一は、いつも「大洋にぃ、大洋にぃ」と大洋の周りをついて周った。
「大洋にぃ、遊んで」
「大洋にぃ、鬼ごっこしようよ」
修一は、大洋が大好きだった。
また大洋も、修一と遊ぶのが好きだった。
「ようし!修一。今日は兄ちゃんが鬼だ!」
「修一に、兄ちゃんが捕まるかなぁ?」
毎日毎日修一と遊んで、時には泥だらけになって怒られたりもした。
でも怒られても、修一は「大洋にぃ、またやろうね」とにこにこ笑っていた。
そんな平凡な毎日だった。
でもある時、自分と大造は兄弟と血が繋がっていない知らされ、大洋は落胆した。
大洋は高校生になり、修一は小学生になろうとしていた。
血の繋がりがなくとも、兄弟は兄弟。そう父も、大造も言っていたが、大洋にはその日から兄弟、あんなに好きだった修一すらも、赤の他人としてしか接する事が出来なくなっていた。
「大洋にぃ、遊んでよ」
「・・・・他の兄ちゃんに遊んでもらえ」
「なんで・・・?」
「兄ちゃん・・・忙しいんだ」
「大洋にぃ!」
そして、ある日。
大洋は家を出た。
書置きも、行き先もつけずに家を出た。
赤の他人しかいないこの家に、戻ってくるつもりはなかった。
修一のことも、忘れようとしていた。
「・・・大洋にぃ?」
暫くぼんやりとしていた大洋の顔を、修一が覗き込んだ。
「あ・・・。何だ?」
「考え事?」
「・・・まぁな」
それから20年。修一は大きく成長していた。
20年前の記憶、増してや子供の頃の事なんて覚えていないだろうと思っていた修一は、昔大洋と一緒に遊んだ事を覚えていた。
それが、じわじわと大洋の心を刺激し、決意したはずの心はぐらぐらと揺れていた。
「ねぇ、大洋にぃ・・・」
「何だ?」
「本当に・・・考え直す気は無いの?」
修一は、瞳の端にうっすらと涙を溜めて大洋を見た。
今にもあふれ出しそうな涙に、大洋にも熱い物が込み上げてきた。
「・・・あぁ」
精一杯の返答をすると、大洋は修一から目を逸らした。
その瞬間、堪えていた涙が溢れてしまった。
修一の涙に、溢れ出ている思いに、我慢が出来なかったのだ。
何とかごまかそうとしても、肩が震えてしまいどうしようもなかった。
「大洋にぃ?」
「・・・何でも、ねぇから・・・」
「泣いてるの?」
「何でもねぇって、言ってるだろ・・・」
「大洋にぃ」
「何でもねぇって言ってるだろ!!」
そう言って、大洋は修一を突き飛ばした。
突き飛ばされた修一は椅子にぶつかった。
思わず突き飛ばした修一の傍によると、修一は大洋に抱きついた。
突然の出来事にしどろもどろしていると修一の体が震え始めた。
「・・・・泣いてるのか?」
「行かないでよ・・・大洋にぃ」
「修一・・・・」
「お願いだから、死ぬなんて言わないで・・・。俺、大好きな大洋にぃが、死ぬなんて嫌なんだ・・・!」
「でもな、修一・・・」
「大洋にぃだって、本当に死にたくないんでしょ?」
「それは・・・」
「お願いだから・・・死なないで・・・・」
そう言って、修一はさらに涙を流した。
小さな頃から、めったに泣かなかったあの修一が、俺を思ってこんなに涙を流している。
修一の強い思いに揺れ動かされ、大洋は修一の涙をぬぐうと唇に優しくくちづけをした。
「ん・・・っ」
兄からの突然のキスに最初は戸惑っていた修一も、暫くすると大洋をさらに強く抱き締めた。
「・・・・ごめんな、こんな兄貴で」
「いいよ、謝らないで」
「もう寝ろ。俺ももうすぐ寝るから」
「・・・勝手に、出て行かないでね?」
「行くかよ。こんなに警察に囲まれてんだから」
「・・・おやすみ」
「おやすみ」
修一が2階に上がっていくのを見ると、大洋はまたさっきのテープを再生した。
修一が生まれた頃と今、自分たちは何が変わってしまったんだろう。
何が変わって、こんな事になってしまったんだろう。
テープが流れ終わると、大洋はその場で目を閉じ眠った。
おわり
おまけ †
一方、2階。
「あれ、健二にぃまだ起きてたの?」
その声に、健二はしていたヘッドホンを外した。
「まぁ、な」
「いつまでも盗聴してないで、早く寝たら」
「あぁ、もう寝るよ」
「おやすみ」
「おやすみ・・・」
健二は、修一が眠ったのを確認すると、大きく息を吐いた。
布団にもぐっても寝付けずにいると修一が下に降りていく音がしていたので、健二は興味本位にリビングの盗聴をしていたのだった。
今までの一連のやり取りを全て聞いていた健二は、頭を抱えた。まさかこんな物が録音出来るとは思ってもいなかったのだ。
思わぬものが録音出来てしまい、健二は苦悩した。2人は確かに元々血は繋がっていない、がしかし。
一応、兄弟だ。それにこんな事公開されたら困るに決まってる。
でも。
これは、何かあったときのお守りに使える・・・・・。
「いやいやいや」
何のお守りだ。
兄弟が切ないキスを交わしているテープを取っておいてどうする。
修一も、大洋も困るだけの代物だ。
聞き返すなんて事もないだろう。
あぁ・・・・。
「どうしよう・・・・」
健二の苦悩は朝まで続いた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 最高です!もっと読みたいです! -- marshmallow? 2016-10-04 (火) 00:08:41
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