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光さす日まで

浄化ー。マス×盾…?思いきり過去捏造。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

三神がその噂を聞いたのは、一度や二度ではなかった。
夜の街に、時折ものすごい男が現れるのだという。
男といっても二十歳前くらいの少年で、暴力沙汰を起こしたりするわけではなく、
一見地味な風貌ながら、関わった相手が例外なく、まるで魅入られたように夢中になるというもっぱらの噂だった。
名前はもちろん、どこに住んでいるのか何をして暮らしているのか、知る者は誰もおらず、
ふらりとやってきてはその場で知り合う男とどこかに消え、
朝にはろくに話もせずに去り、一度関係した男とは二度と寝ないともいう。

三神には確信があった。あいつだ。あいつに違いない。
凄惨極まる縁で知り合い、息子とはいわないまでも、親類の子供を思うような気持ちで
見守ってきた、あの悲しい生い立ちを背負った少年に違いない。
三神は仕事柄少しずつ情報を集め、ますますその確信を深めていった。

三神は最近まで彼が暮らしていた施設に彼が入所してから足繁く通い、
彼が自ら背負い込んでいる重荷を少しでも手放すよう、心を砕いてきたつもりだった。
彼は自らを普通ではない、まともではないと言い切り、三神の手を取ろうとはけしてしなかった。
その時強引に手を取り、無理矢理にでも光の当たる場所に連れて行き、
闇に向かおうとする彼の心を彼が望まずとも救うべきだったのかもしれない。
三神は自分の臆病さを嫌悪した。

仕事を早めに切り上げた三神は彼がよく現れるというクラブに向かった。
もちろん、初日に彼に会えるとは思っていない。
三神は培われた根気を総動員して、必ず彼にたどり着くつもりでいた。

暗く、うるさく、秒単位で空気が濁っていくような店内。それに顔を背けるほど三神は潔癖ではない。
スーツ姿で棒立ちの三神は明らかに異分子であり、客にぶつかられては無遠慮に睨まれるが
逆に黙って一瞥をくれるだけで相手はすぐに去っていく。
こういうことにだけ鼻が利くんだなと呆れながら、三神は店内をくまなく見回した。

その時。見慣れた背中がたちの悪さを隠しきれない男に伴われて部屋の隅へ消えていくのが目に入った。
白いTシャツにジーンズ。こんな店には不釣り合いの無頓着な服装。きょうび珍しい程の撫で肩。
三神の視界から、すべてのものが消え、すべての騒音が遠ざかる。
三神は客という名の障害物をかき分け、その背中を追った。
救わねば。今救わねば取り返しのつかないことになる。三神は彼が消えたトイレに駆け込んだ。
三神の目に最初に映ったのは、ピアスをした男の耳と、男の首に腕を回して男と舌を絡め合う彼だった。

彼は、まるで三神が来ることがわかっていたかのように視線だけを三神にやり、
よりいっそう猥褻な音を立てて男とキスを続ける。
男はすでに興奮状態なのか、彼のTシャツに手を潜り込ませていた。

三神は男の襟首を掴んで、引きはがすように乱暴に後ろに引いた。
邪魔が入った男は当然のように激昂し何かを喚きながら殴りかかろうとする。
ああ、うるさい。三神は口の中で小さく呟きながら、男の顔の真ん中に拳をめり込ませる。
男が鼻血を噴き出しながらくずおれていく様を、彼は唇を光らせたまま眺めていた。

三神に、カズと呼ばれた彼は三神の運転する車の助手席に黙って座っている。
笑えばかわいくなりそうなその顔からは、今は何の感情も読み取れない。
「いつからだ」
三神が前方を見据えたままおもむろに尋ねる。
「尋問?」
「質問だ。いつからあんなことをしている」
「さあ。いつからかな。覚えてない。いつの間にかこうなっていた」
声変わりは迎えているが、彼…盾の声は、高いのに深い、独特のものだった。
盾はゆるりと車窓に目をやり、どこに連れて行く気?と呟いた。
「俺のうちだ。どうせ…誰もいない」
三神は盾がそれを嫌がるのではないかと思ったが、盾はふうん、と言っただけだった。
そして三神の横顔を上目遣いで見つめ、
「僕のこと、好きにしてくれてかまわないよ」
と囁き、身を乗り出して三上の耳たぶを軽く噛んだ。

三神の家は何もなく、生活感が微塵もないものだった。三神にとって自宅は寝に帰る場所でしかなった。
そんな空間にすら盾は所在なさげに立ち尽くしている。
三神以上に盾は、家庭という要素をその身に持っていなかったのだ。

「風呂に入りたかったら入ってもいいぞ」
「風呂場でするの?別に僕はどこでもいいけど」
男と二人きりになる=セックスなのかと、三神の心は暗くなる。
「俺は別にお前と寝たいわけじゃない」
素っ気なく背を向ける三神に盾は小さく笑うと
「そうなの?僕は三神さんとしたいけどなあ」
と呑気にも聞こえる口振りで答えた。
三神が思わず振り向くと、盾は三神のすぐそばまで来ていて、
三神の後頭部に手をやるとその薄い唇を自分のそれで塞いだ。
盾は三神の口内を舌で存分に犯してからゆっくり唇を離す。
「ねえ、してよ三神さん。今まで試したかったこと、全部僕にしてくれていいから。
爪を剥がしてもいい。目を潰してもいい。毒を飲ませてもいいよ。
犬になって這い回れと言ったらそうする。足の指だって舐めるよ。
三神さんがしたいこと、全部僕にしてよ」
急に饒舌になった盾の体の奥から匂い立つ冷たく暗い色香に、三神はわずかに怯んだ。
これは、並みの男では太刀打ちできないだろう。三神でさえ、理性がぐらつく。

「…カズ。やめろ。自分を大事にしろ。ちゃんと普通の暮らしをしろ」
「普通?」
盾の表情が一瞬だけ泣きそうに歪む。
「あなたがそれを言うのか。普通の人は悪いことをすれば罰を受ける。
だけど僕は罰を受けなかった。僕は普通じゃないんだ。
普通じゃない僕はどうすればいい?僕は壊されたい。誰からも大切にされたくない」
三神は盾を抱き締めた。盾は身をよじったが、それさえ押さえつけて耳元で囁いた。
「わかった。だったら俺がお前を壊す。お前に大切な相手ができるまで
俺のことしか考えられなくなるようにしてやる」
三神は覚悟を決めて、盾をベッドに引っ張り込んだ。

盾の全身に赤い痕が散る。至る所に口付けた三神は、盾のそれを口にしていた。
盾の声は高く低く響き、笑っているのか泣いているのかわからない顔になっていた。
限界まで攻めた後口からはなし、今度は後ろを指でしつこくなぶる。
盾は三神を急かし、叫びながらねだる。三神は盾の脚を割るとその身をねじ込んだ。
痛みに盾は陶然となり、三神を締め付ける。三神は顔をしかめてやり過ごしながら
盾をセックス漬けにすると決めたはいいが、自分が溺れそうになっていることに小さく苦笑した。

「結局あの日三神さんは3回でしたね」
特製苺ミルクをストローで飲みながら、盾は謎めいた笑みを浮かべる。
「…カズは7回か」
三神も常にない、少し意地の悪い笑顔になる。
「ちょっと、いったい何の話だよ。そういや今日は記念日みたいなものか、って言ったきり2人とも黙るし」
駆動が横で面白くなさそうに口を尖らせる。
「ん?ああ、こっちの話」
盾は大人びた優しい笑みを駆動に向ける。
三神はそれを見やりながら、ああ、カズにも大切な相手ができたのだなあと
わずかな寂しさと感慨深さに顔を綻ばせた。
盾に巣くう闇は余りに深く重いが、この小僧ならやり遂げてくれるに違いない。
慕ってはくれたが、愛してはもらえなかった自分には結局できなかった、
盾の心に灯をともす大役を果たしてくれるだろう。
「おい、小僧」
わざと厳めしい顔つきで駆動をじろりと見る。駆動の顔がわずかに引きつる。
「カズは本気出すとすごいぞ。お前なんか気を失うだろうな」
意味がわからずぽかんとする駆動と目を白黒させる盾。
こんな2人を見守って生きることができればどんなにいいだろう。
三神は一瞬だけ強くそう思った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ああ、変な話になった。私は盾×鑑識なのでマスターは保護者感覚なのです。


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