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出立前夜

一応ナマモノ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

目が覚めたら、彼がいた。
「来てたのか」
あいかわらずの仏頂面というか、渋い表情。
どんな顔をしていいか分からない、といったところか。
「いつからいた?起こせばよかったのに」
「気持ちよさそうに寝てたら、起こせないよ」
ふっと和らいだ表情に、自分までも優しい気分になれる。
「思ったより、大丈夫そうでよかったよ。安心してフランスに行ける」
「あぁ、いよいよだったっけな。忘れてた」

この世界にいる者なら誰でも憧れる、世界的な権威のあるコンテスト。
彼は数年前にも挑戦していて、あと一歩のところで栄光を逃していた。
「俺、絶対勝つから」
「うん」
「だから、おみやげはトロフィーだ」
「期待していいんだろうな」
「勿論」
まだ痛む左腕を伸ばす。
驚いた彼が、慌てた表情になる。
「手ぇ出せ。左手」
「痛いんじゃないの?」
「ちょっとなら平気。点滴入ってる右よりマシだ」

強がってはみたものの、やはり痛いものは痛い。
だが、痛みを押してでも彼に勇気を与えたかった。
彼の左手が自分の左手に重なったのを見て、そっと手を閉じる。
「俺の分まで、大暴れしてこい。お前なら絶対に勝てるから」
「頑張るよ」
「無事に帰ってこいよ」
「……」
さっきまで和んだ顔をしていたのに、今度は泣きそうな顔。
俺の前では忙しいヤツだ。
「泣くな。勝ってから泣けよ」
「……そうだな」
また元の仏頂面。
意識しないと、表情が固まってしまうクセはなかなか抜けないらしい。

「帰ってきたら、また来るから」
「あぁ」
ぎこちなく笑って出て行った彼は、出たところで泣いているだろう。
俺が何も言わなくとも、大舞台に強い彼なら何の問題もない。
だからいつもの調子で、いつもの励まし。
それが彼の不安を取り除く、唯一の方法。
「頑張れよ…」
彼の手のぬくもりと若干の痛みが残る左手を見ながら、俺はまた眠りについた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
携帯からなので、ぶつ切り申し訳ない。
今の『俺』は多分ここまでの状態ではなかろうし、
『彼』も忙しくて行ってはないはず。
『俺』の1日でも早い復活と『彼』の凱旋を祈るばかり。


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