Top/60-210

たぶん全部気圧のせい 前編

難局のコックさん改め、シェフ。半生注意です。

ドクタ.ー×仁志村 後、新やん×仁志村。
前者を新やんが見てしまったその後。ぬるいエロがあります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「仁志村君、楽しいことしない?」
「え、なに?どんな?」

満面の笑みを浮かべて厨房へやってきたドクタ.ーに、うきうき聞き返してしまったのがそもそもの始まりだった。

太陽が姿を見せなくなって2ヶ月。
ドーム藤基地周辺は連日マイナス70℃を記録する夜の世界に支配されている。
のんびり穏やかマイペースの仁志村も、正直かなり滅入っていた。
計画的に仕入れたラーメンを盗み食いされたり、こっそりバターをかじる人間が現れたり。
話すたびにちょっとだけ緊張してしまう、雪氷の研究者であるモトさんには、「飯を食うために難局にきてるんじゃない」
とまで言われてしまった。
悪気はないのだろうが、これにはかなり傷ついた。
仁志村はその飯を作る為に、富士山よりも高く、ウイルスさえ死滅するこの白銀の砂漠にいるのだから。

そんなわけで、仁志村はまんまとドクタ.ーの毒牙に掛かった。
ドクタ.ーの言う“楽しいこと”は、仁志村の予想を遥かに超えたものだった。

「大丈夫、俺、医者だからね。なんかあったらすぐ治療するし。人体のスペシャリストだよ、仁志村君」
「はあ。…え、治療?」
「人間、性欲は持ち続けないと。それから何よりね、他人に触れること。これは一番大切。自己処理は勿体無い」
「いや、あの」
「じゃ、試してみようか」
「え、あの、ちょっと、…あっ」

……毒牙というほど、悪くはなかった。むしろすっきりしてしまった。
良くも悪くも、仁志村は環境に馴染むのが上手い。
14,000キロの彼方にいる家族の顔を想うと、とんでもないことになってしまったような気がしないでもない。

そして数ヶ月振りの夜明けが訪れてすぐ、悲劇は起こった。
ドクタ.ーと“楽しいこと”をしているところを新やんに見つかってしまった。
口止め料として強請されたいくら入りおにぎりは、不渡りとなった。(おそらくドクタ.ーの所為で)

仁志村は再び気が滅入った。

***

医療棟にあるドクタ.ーの診療室は厨房と違い、きちんと閉まるドアがある。

果たして、ドクタ.ーは全く懲りていなかった。
仁志村もなんだかんだで結局乗ってしまった。

消毒用とも飲用ともつかないアルコールの匂いが漂う室内は、仁志村の荒い息遣いと、体液が交じり合う濡れた音で満ちている。
毎夜ドクタ.ーがマスターに変身する“BARフクダ”のソファ席兼診察台の上、
執拗なほど長い口付けの合間に、仁志村は必死に空気を掻き集めていた。

「仁志村君、慣れて来たじゃない」
上から覗き込まれる笑みを含んだ視線に耐えかねて、仁志村は無言で目を伏せた。
身体の奥できつく擦れる異物の感覚が鮮明になる。
ドクタ.ーの動きに合わせ、下腹部に広がる痺れがより強くなって、眩暈がする。

「随分気持ちよさそうだねぇ」
…この人は本当にいい趣味をしている。

思わず手をあげ顔を覆った仁志村の手首を、ドクタ.ーは笑いながら強引に診察台に押し付ける。
そのまま強く突き上げられて、仁志村は掠れた悲鳴をあげた。

背筋に強い痺れが生まれる。
―もう少し。
喘ぎながら、そのまま上り詰める熱を逃そうとすると、図ったかのようにドクタ.ーが動きを緩めた。
駆け上がる快感を引き止められ、取り残されたような浮遊感に不安になって、仁志村は眉を寄せ薄く目を開けた。
ドクタ.ーの肩越しに天井の照明がぼやけて見える。

初めの頃は喉元まで圧迫されるような異物感がひどく、苦しいだけで全く楽しくなかった。
今でも異物感はある。しかし、回を重ねるごとに仁志村の身体に馴染んで、確実に気持ちが良くなっている。
こういう快楽があるんだなぁと、元来淡白な仁志村は他人事のように思う。
平時でさえ淡白だったのに、ドクタ.ーの手を取ってしまうのはなぜなのだろう。
人恋しいから?命に係るほどの寒さ故の本能?(明後日方向なのは置いておいて)
それとも気圧が低い所為なのか。そんなわけはないな、それはむしろ逆じゃないのか。
けれども仁志村は、閉ざされたこの場所で8人の隊員が次々に発情期を迎える様を想像してしまった。
滑稽すぎて、逆に恐ろしかった。

「ほら仁志村君、集中して」
「ふ…あ…」
挿入の角度が変わり、奥まで突き上げられた身体がたわむ。
診察台が仁志村の下で軋んだ音を立てる。
ドクタ.ーは顔を反らす仁志村の顎を強い力で押さえつけ、酸素を求め開いたままの口腔へ舌を差し入れた。
絡まる舌の動きに混ざり合った唾液が仁志村の喉を塞ぐ。
「ん…っ…」
ただでさえ息苦しいのに、呼吸まで奪われたら本当に死んでしまう。
ドクタ.ーの胸を上手く力が入らない腕でなんとか押し退け、首筋を這い上がる甘い痺れと苦痛に苛まれながら、仁志村は濡れた目を上げた。
「ドクタ.ー、もう…」
「もう無理?」
ドクタ.ーは薄く笑いながら、言葉なく首を縦に振る仁志村の腫れた唇を柔らかく噛むと、体勢を変えた。
仁志村の腰がその予感にひくりと反応する。
焦らされることなく与えられる快楽に、すぐに何も考えられなくなった。

***

レンズ越しのきつい眼差しが先程からずっと仁志村に向けられている。
右手を怪我した新やんは、モトさんのサポートに付く事ができなかった。
厨房で出来る事もないのだが、先程から作業台に肘をついた姿勢で居座っている。

―やりにくい。

仁志村は針の筵に座っているような気分で、数日前のドクタ.ーとの会話を思い出していた。

『ドクタ.ー、新やんと何か話した?』
渡されたウエットティッシュで情事の残滓を拭いながら仁志村はドクタ.ーを伺う。
もともとこれが聞きたくて、診療室に足を運んだのだった。
『うん、俺を脅すのは百万年早いって事で、いくらは没収しといた』
『それで』
『それだけ』
ドクタ.ーはそっけなくそう言うと、火を点けたばかりのタバコを目を細めて不味そうに吸った。
『それだけって…あと4ヶ月もあるのに』
さすがに気まずい。
ここでの生活はまだまだ続く。それなのに、“口止め料”を取り上げた上に、何のフォローもしていないなんて。
ドクタ.ーはどこか寂しげに笑った。
『4ヶ月も、か。前にも言ったけどさ、俺はあと数年ここにてもいいな』

「仁志村さーん、聞いても良いですか」
のんびりと響いた新やんの声に、仁志村は飛び上がりそうになった。
「…なに」
「前、オレが凍傷になったとき、モトさんのサポートに代わりに入ってくれたでしょ。モトさんとどんな話してたんですか?」
「どんな話って…削りだした長細い氷…コアだっけ?それの値段とか、かな」
万が一落したら弁償しろ、と脅された気もする。
「ふうん」
「なんで」
「モトさん、結構キツイとこあって、俺、割と落ち込むんですよねー」
「うん」
「いや、すげーいい人なんです。大好きなんですけど、ウチの教授より全然イケてるし」
仁志村も異論はなかった。モトさんはすごくいい人だし、楽しい人だとも思う。
気難しい所が多々あって、機嫌が読みにくいことも沢山あるけれども。
自身の仕事に対する姿勢は、畑違いの仁志村から見ていても格好良い。
生活サポートチームとして同じ隊にいることが誇らしく感じる程に。

「で、モトさんとも、あんなことしてるんですか」
油断していた仁志村は、危うく持っていた包丁を落しかけた。無意識に瞬きの回数が多くなる。
「…あんなことってなにかな」
「イチャイチャ、とか。キスしたりと」
「してません」
新やんが仁志村のほうへ身を乗り出す。
「じゃ、ドクタ.ーとだけ?」
「黙秘します」
「俺とは嫌ですか」
「え?」
さらに新やんは仁志村に近づいた。
「俺ともしてください」
仁志村は笑い飛ばそうとしたが、新やんの思い詰めた様な表情を見て諦めた。
新やんはつい最近遠距離恋愛の恋人に振られたばかりだった。
相手の元に駆けつけられないもどかしさを、吹き荒ぶ雪嵐の中で必死にやり過ごしていたのを知っている。
仁志村は少し心配になってしまった。
「自棄はよくないよ、新やん」
「自棄じゃないです。だってオレがモヤモヤしちゃったの、仁志村さんの所為ですよ。あんなやらしい顔してるから」
「…インマルサットの鶯嬢はどうしたの」
「それはまた別の話で。つーか先の話で。だから、」
「減るからだめ」
「むしろ減らしましょうよ!」
「やだよ」
「おねがいします!」
「はいはい、食事中あぐらかかないようになったらね」
「もうかきません!ぜったい」
「…新やん、何言ってるかわかってるの?」
“自分を棚にあげて”、とはっきり顔に書いて新やんはむっと押し黙った。
眩しい程白い包帯が巻かれた右手を仁志村に差し出す。
「わかってます。だって手が不自由なんですよ、仁志村さん」
「反対があるでしょうが」
「いや、俺はこっちって決めてるんで」
「しらないよ。さ、向こうでビデオでも見ておいでよ」
仁志村は一方的に話を切り上げ、調理作業に戻った。
その場で立ち尽くす新やんが視界の隅に入ったが、無視を決め込んだ。

「モトさんに、言っちゃおうかな」

今度こそ高い金属音を響かせて包丁が床に落下した。
どうしてモトさんなんだ。
驚きすぎて包丁を拾うことも出来ず、仁志村は暫く真正面から新やんを見つめてしまった。
新やんは不貞腐れた子供のような顔をして仁志村を睨んでいる。
「冗談、だよね」
新やんは一瞬目を逸らした後、何かを振り切ったような鋭い視線を仁志村へ向けた。
「冗談かもしれないし、冗談じゃないかもしれません」
仁志村の心臓がぎゅっと音を立てて収縮した。
「口止め料はきっちり頂きます。ご存知の通り俺、今、手負いのケモノですから」
やっぱり自棄じゃないか。
可愛い弟分のようだった新やんの豹変振りに、仁志村は文字通り開いた口が塞がらなかった。
気圧か。気圧だな。きっとそうだ。難局の低気圧はきっと何か違うんだ。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

10レスいってしまうので、ここで中断します。後編につづく。
貴重なスペースありがとうございました。


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