ストレス時代
更新日: 2011-04-24 (日) 15:58:17
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| 某フィルムタイプ薬品のCMに感動したんだって
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 第二段は州取 英二だね
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| |ト メ タ" イ ン | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | \ / | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | (・∀・) | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
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ストレス時代に救世主がやってきたよ!そんなヘタレなアイツが主人公のオハナシだよ!
とりあえずはEROなしの導入編だよ!若干トイレ描写が粘着質だよ!
(だってそれが彼のいいところだもんね!)
※全体的に予想以上の長さになってしまったので、中断を入れさせていただきます。
山のように積まれた書類を持って、止田は廊下を歩いていた。赤い絨毯を一歩踏みしめる毎にそれは不安定に揺れる。
「止田さん、持ちましょうか?」
「あっ、わっ、わわッ」
突然声を掛けられ動揺し止田が思わず足を止めると、書類はぐらりと円を描いて揺れた。
それをとどめようと踊るように足を動かした結果、案の定の転倒をし、書類は止田の頭の上へ崩落する。
バサバサ、と豪快な音を立てて乱舞するそれを、止田は呆然と見上げていた。
止田の視界の端には、ベージュの膝丈スカートと、ベストの裾が見える。
「ご、ごめんなさい!私が突然声かけたから、ビックリさせちゃいましたよね。ごめんなさい!」
言いながら膝を折り、大下美由紀は慌てて書類を拾い始める。
大下の姿を見て、止田は我に返り、書類へと手を伸ばした。
「あっ、いや、別に大下さんのせいではないです。すみません」
顔も上げずに言い、黙々と拾い始める。
「おお!止田、ご苦労なこったな!」
通りすがりに笑いながら声を掛けるだけの無情な先輩からの激励を受けながら、しばらく二人で廊下を占拠して拾い続けた。
おもむろに大下が口を開いた。
「止田さん、今回の発表、機密事項が多いみたいですね。社運がかかってるって聞いたけど……」
「あ……はい……なんか、いきなり重役任されて」
はは、と空笑いをしながら、書類に目をやる。そこには企業機密がびっしりと書き込まれ、様々なプランが書き起こされている。大下が言った“社運”がまさにそこにあった。
社運が廊下に散らばっているのに、それを拾おうともせず去っていく仲間が多いことに止田は胸が痛んだ。
そもそも、その散らばっているものが“社運”だと彼らが知る筈もないのだが。
「こんなの、うまくいきっこないんですけどね」
また自嘲するように小さく笑った止田を、大下は励ましも応援もしなかった。ただ、無言で書類を拾い続けていた。
国内大手の製薬会社“大蝶製薬株式会社”に入社し、止田和史は3年になる。
大蝶製薬株式会社は、社長の岩谷進をトップに、斬新なアイディアで改進を続けるトップ企業だ。
止田はその巨大企業の中、営業職で現場を経験し、6ヶ月前に企画部へ異動になった。
友人達からは「ペコペコしなくていいなんて、良かったな」と羨ましがられ、一般的には昇進と言われている道だったが、
止田にとっては常に上司の監視下にある事のほうがよっぽどのストレスだ。
大下美由紀は入社4年目の先輩で、何かと止田を見てくれているが、これも監視のひとつだと止田は感じていた。
(おなかいたい)
大下に手伝ってもらい広い集めた書類は、欠損がないことを確認して、またナンバー順にまとめ直さないといけない。
今度は落とさないようにとダンボール2個に詰めたそれを台車に乗せて、企画部へ戻るため廊下を歩く。
(おなかいたい……)
下腹部がギュリ、と音を立て、冷や汗が出た。あぁ、またいつものストレス性の下痢だ、と止田はため息を吐いた。
台車を廊下の端に寄せ、トイレへ入る。個室へ入ると鍵をかけた。
いつものようにトランクスを脱いで便器へ座ると、すぐさま極度の緩い状態の便が出た。
下腹部はまるでつま先で踏まれているかのように痛んだ。内臓が動いているのが自分でも解り、吐き気をもよおす。
「うぇ」
思わず声を出して上体を倒す。冷や汗が頬を伝い、膝に落ちた。
(俺はなんでこんな体質なのに、こんなデカい事やらされてんだろ)
しばらく個室でもんもんと考えながら、同時に用を足す。ひととおり出し切って尻を拭き、流した後、またトランクスとスラックスを上げた。
不快な匂いとサウナ状態になった個室から出ると、トイレ内の空気はやたらと爽やかに感じた。
トイレから出て、また台車を押して歩く。正面から大下が歩いてくるのが見えて、止田は会釈をした。
大下が駆け足で近寄ってくる。先ほどとは打って変わった笑顔だった。
「あ、ダンボールに入れたんですね。ナイスアイディア!」
「ホントだぁ!こんな量を持ってたなんて、無謀ですよ、止田さん!」
大下の後ろからひょっこりと顔を出しているのは、止田と同期の沢村香奈だ。入社4年目の大下にいつもくっついていて、子分のような状態である。
おそらく大下からこの件に関して一通りの話しは聞いているのだろう、まるで書類の散らばり具合を知っているかのような顔をしている。
「そうですね、無謀でした。じゃぁ、ちょっと企画部戻るんで」
書類の散乱で精神的にも疲れ、下痢で体力も使いきり、クタクタだった止田は早々にそこを後にした。
残された二人は顔を見合わせ、小さく笑っていた。
午後6時。退社の時間になり、終礼が行われる。皆一様に伸びをしたり、身なりを整えたりと自由に動いているが、止田は違った。
一切の事など関係ないようにパソコンに向かっている。
窓際で沈む夕陽を背にしながら、部長の福島が止田に向かってまるめた紙を投げた。コツン。
「ぃてッ」
「おい、お前業務違反だから」
福島はため息を吐きながらジャケットに袖を通している。中年太りが始まったその体を、上等なジャケットはスマートなラインで包み込んだ。
止田が申し訳なさそうに会釈をしながら、情けない顔で笑う。
「あ、すみません。でも、まだ発表の書類が出来上がってな」
「ふざけんなおい。残業代なんか出ねーぞ」
止田の言葉を遮って、福島は現実をぶつけたが、止田はそれでも変わらない表情で会釈をしている。
「あの、本当、これだけはやらないと、心配で仕方が」
「お前自分の仕事が遅いだけだろうが。1時間でカタつけて出ろ。1時間したら電源落とすからな。管理にそう言っとくから」
「え……」
困ったように固まる止田の横を、福島が通り過ぎる。誰よりも先に部署を後にするその姿と、固まる止田の姿を、部署の人間達は交互に見比べていた。
午後6時42分。もう部署には止田以外誰もいなくなっていた。
大下と沢村はやたらと残ろうとしていたが、する事もないのか早々に帰っていった。
かち、かち、と時計の針の音がする。止田はじっとパソコンの画面を見ている。
その時、ピピピピピピ……と地味な携帯のメール受信音が響いた。
止田が携帯を手に取り、受信メールを確認する。
FROM:サチ
件名:今日どんな?
内容:
おしゴト、お疲れ様!
今日こそは会えるかなぁ?
ってか会ぃたぃょー(><)!
あたしマヂでッッッッ
おいしいご飯作るょ?
ため息を吐いて、止田は携帯を閉じた。冗談はやめてくれ、と頭に浮かんだ。
仕事に追われて帰れない。食事もそこまで食べたくない。緊張して眠れない。
しかし、彼女は帰宅を猛烈に催促し、自宅への立ち寄りを強制し、食事へのコメントを求め、最終的には体を求めてくる。
疲れているなどという言葉は、どんなに言っても理解してくれない。
それをこなす器用さを、止田は持ち合わせていなかった。
(どうしてこうなっちゃうんだろう。6年も付き合ったのに)
止田は窓に目をやった。そこにはガラスに反射して自分を見つめ返す姿があった。
弱々しく、情けない、眉の下がったその表情を見て尚更悲しくなる。
その時だった。バチン!と音がして、全ての電源が落ちた。
「あ…………あぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
止田の絶叫が暗い部署にこだまする。
避難誘導のライトがぼんやりと部屋を照らし、窓の外は他の高層ビルのオフィスから漏れる光できらきらとしている。……が、そんな事は止田にとってどうでも良かった。
「データ!データが!あぁぁ!データ!!!」
(やばい、おなかいたい!)
「データを!そうだ、管理だ!」
(おなかが―――ッ!!)
頭と体が別々の動きをしている。
慌てて立ち上がり、オフィスのデスクの隙間を縫って歩く。時折他の人のデスク横に詰まれた書類に蹴躓きながらも、視線は前方しか見えていない。
企画部を出た瞬間、何かにぶつかった。
「ゎぶッ!」
顔を抑えながら数歩後ずさると、止田はゆっくりと目を開けた。避難誘導のライトで、足元と廊下の所々に緑色のライトが光っている。
そのライトに照らし出され、目の前にはぼんやりと人影が見えた。自分よりも背が高い、その雰囲気からして男のようだった。
「すっ、すみません!」
慌てて言う止田に対して反応するように、人影は何度か首をかしげている。おそらく、止田をしげしげと眺めているのだろう。
「もう終業から1時間経っていますが……何をしているんですか」
低い声が、波のように廊下に浸透した。凛と張り詰めていながら、相手に有無を言わせぬ響きがあった。聞いたことのない声に、止田は少々たじろぐ。
「あっ、あの……まだ、企画が出来上がってなかったので、少し残っていました」
「叫び声が聞こえたから来てみたんですが」
その言葉に、止田の胸には若干の安堵が生まれた。何かしらの事件を察知して来たということは、警備員だろう。
「あっ、す、すみません!僕です!突然電源落とされて、データが消えちゃったもんで」
先ほどより少しフランクに話しをしてみるが、相手は黙ったままだった。
ぎゅるるるる……止田の腹が、まるで地底の唸り声のように鳴って体を震わせた。
(やばい!おなかが限界だ!)
「あのっ、すみません、ちょっと急ぐんで!!」
止田は腹に手をやり、男に会釈をしながら歩き始めた。視線はトイレ、ただ一点を見つめている。
立ち尽くす男を迂回して、先ほどの威勢はどこへいったのかという勢いで弱々しくトイレへ入っていった。
毎度の事ながら、腹を下しやすい己を呪うしかない。止田は手をハンカチで拭きながらトイレを出ると、廊下が明るい事に気付いた。
慌てて企画部へ戻ると、そこもきちんと電気が点いていた。そして、自分のパソコンは落ちる寸前の状態のまま、無事に立ち上がっていた。
ホッと胸を撫で下ろし、すぐさま保存をする。
(きっとさっきの警備員さんが、管理に連絡してくれたんだ……!)
「警備員さん、ありがとう!」
「誰が警備員さんですか?」
止田がハッとして振り返ったそこには、30代後半と思われる男が立っていた。
髪は黒く整っているが、緩くパーマがかかっていた。濃紺のスーツを着こなし、腕を組み、鋭い目付きで止田を見詰めている。
止田は一瞬で相手を観察した。
見たことのない男だったが、その声は先ほどぶつかった相手だと容易に想像が出来た。あわてて止田が言い訳をする。
「あの、すみません、さっき姿がよく見えなくて警備員さんだと思ってしまっていました」
「警備員ではないですが、警備員みたいなもんですね」
男がゆっくりと近づいてくる。止田は無意識にディスプレイの画面を隠した。男は苦笑しながらも、歩みを止めない。
「今さら隠したって無駄ですよ。何故パソコンが立ち上がってたのか、疑問ではないですか?」
言われて止田の顔色が変わった。
たしかに男の言う通りだった。電源が落とされた強制終了の状態でパソコンを再度立ち上げても、普通はIDやパスワードを求めてくる。
止田のIDとパスワードを入れなければ、ログインすらできないはずだった。
そしてそのIDとパスワードは個人で管理されており、止田以外は知らない情報だ。
近寄る男に、止田は慌てて定規を手に取り、男に向けて構えた。
「あなた、何なんですか!」
「警備員ですよ」
「勝手に俺のパソコンを立ち上げたりするなんて、警備員のはずがない!」
「おや、貴方が言ったんじゃないですか。私を警備員だと」
止田は後ろ手でパソコンの電源ボタンを長押しし、強制的に電源を切った。男が驚いた表情をすると、止田は鞄を鷲掴みにして駆け出した。
「警備員さんーッ!不審者ですー!」
廊下に響き渡る声で叫びながら、止田が姿を消す。
男は、射抜くような視線で止田の席を見下ろしていた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
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