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極戦 早流

2話の最後らへんです。

目の前にはでっかい夕日と、それに向かってバカみたいに走るあの先公とクラスの奴らがいる。
俺はその光景を眺めながら、口の中に広がる鉄の味を噛み締めるよう何度も口内の傷口を舐めた。

「あいつら、ガキみてぇ」

フ、と小さく息を漏らして笑う声が聞こえる。
隣に目をやると、はしゃぐあいつ等に視線を向け、呆れたように笑う流がそこにいた。

『ごめん』なんて言ってしまえば簡単なもんで、ついさっきまで仲たがいしていたこいつとの間に流れる空気は、もう以前のように柔らかだ。

「・・・早戸?」

俺の視線に気付いたのか、小首を傾げてこちらを向く。
長い前髪が目にかかり、夕日に照らされて影をつくっていた。

少しばかりその光景に吸い込まれていた俺は、瞬間、我にかえり、それを誤魔化すように胸ポケットから煙草を取り出し火をつけた。
大きく息を吸い込んで肺に煙を満たす。
唇から煙草を離すと、傷口に触れていたフィルター部分が微かに朱に染まっていた。

「しゃーねぇから俺らも行く?」

言いながら煙を吐き出す。
風向きのせいでやけに目に染みる。
目を細めて流を見ると、そうだな、と一言言って笑っていた。

「あ。早戸待って」

土手の斜面を降りたところで、不意に後ろから名前を呼ばれる。
振り返ると、流が口に煙草を一本くわえながら制服のポケットの上をポンポンと叩き、何かを探すように下ってくるところだった。

「やべ。絶対ぇ殴られてる最中ライター落とした」

ズボンの後ろにあるポケットにも手を突っ込んで確かめるが、その表情は既に諦めているようだ。

それなら、と俺はジッポーを取り出すため制服の内側に手を滑らせる。
ツルツルと肌触りの良い生地に手を通すと指先に冷たい金属が触れ、慣れた手付きでそれを取り出しながら顔を上げた。

「火ィ分けて」

気付くと、息がかかるぐらいの距離に流の顔があった。
俺がくわえている煙草の先から直接火を貰おうとしているのか、流は顔を寄せ、自分がくわえている煙草をゆっくりと合わせている。

ジッポーを取り出そうとする格好のまま固まってしまった俺は、流の顔に目が釘付けになっていた。

女みたいにキチンと整えられた眉に、伏せられた事で細長い影をつくる睫毛。
微かに開けられた唇は、赤く綺麗で、どこか淫猥だ。

「サンキュ」

暫くすると、流の声と共に紙の焼ける臭いが鼻を突く。

顔が離れていく寸前、流の切れ長の目が俺を捕えた。

「何やってんだよ早戸。置いてくからな」

流は不思議そうに俺の表情を伺い、俺が追い付くのを待つようにゆっくりと夕日に向かって歩を進めた。

眩しいくらいの夕日のせいだろうか。
俺に向かって真っ直ぐ伸びている流の影が、少しオレンジかがって見える。

胸に引っ掛かって取れないこの奇妙な感情を押し出すよう、ゆっくりと煙を吐き出した。

END

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 代理でSTOP。以後テンプレ使用を呼びかけておくます。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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