Sky-jacker
更新日: 2011-05-02 (月) 12:47:29
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| 二厘ラヒダーネタ・5スレ目244の
| 逆サイドなんだナ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| なんかグダグダだけどネー
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ モエマツリフカーツ・・・?
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
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「個人的な都合」で多くの約束のスケジュールがずれ込んでしまい、飛行機の便を遅らせなければ
ならなくなってしまった。
状況を察して、予定の変更を快諾してくれた関係各位には感謝の言葉もないが、自分がこれほどまで
に弱いものなのだと改めて認識させられて、多くの人に心配や迷惑を掛けてしまったことに申し訳ない
気持ちでいっぱいにもなった。
もっと強くならなければ。何があっても揺らぐことのない鋼の心を持たなければ。
チケットに記された席は出入り口の近く。多少人通りがある為いつもより忙しないが、急な変更だった
ので仕方のないことだし、この程度の人の気配ならば気にしなければ問題はない。
機体が大地を離れてからようやく人心地ついて、長い移動に備えて用意した本を開く。文字だけの表紙
の専門書は、学生時代に専攻していたものだ。もしかしたら今後役立つことがあるかも知れないし、もし
読んでいて飽きたら、即時に睡眠導入剤代わりにもなる「優れもの」だ。
小さな窓から射し込む南半球の春の日射しを頼りに文字を辿る。…が、疲労の為か、シーズンが
「終わった」という安堵にも似た虚無感の為か、数ページも読まない内に睡魔が襲ってくる。乗務員の
控えめな足音も子守歌のように眠りの世界へと誘う。こんな魔物なら大歓迎だ。背もたれを少し倒して
目を閉じ、やわらかな浮遊感をもたらす眠りの海に身を沈める。次に目覚める時、窓の外はもう秋の
欧州の空だろう。
…眠りから意識を引き揚げたのは、乗務員のものとは明らかに違う、跳ねるような足音だった。それが
席のすぐ脇で止まる。
誰に語りかけるでもなく呟く声は高めのイタリア語。聞き慣れた声だ。彼が元々この便に乗る予定だった
ことを思い出し、気まずい思いに眠気が去ってゆく。
おそらく、この長いフライトに退屈しているのだろう。話し相手を求め機内をうろついて、ここまでやって来た
に違いない。
だが、昨日までの出来事を思い起こすと、今、彼に対して以前のように振る舞うことはできない。彼の
皮肉めいた"仕返し"に磨り減った神経は、いつも通りの笑顔を作ることを許しはしない。それならば、
たとえすれ違いとなっても、出来るだけ互いに嫌な思いをしない方法をとるのが得策であろう。だから、礼を
欠く行為であるとは分かってはいるが、このまま眠っている振りをしてやり過ごすことを選ぶ。さすがの
彼でも、眠っている者を無理矢理起こすような不躾な真似はしない筈だ。
しかし、彼はなかなか立ち去らず、かと言って話しかけてくる様子もない。眠っている相手を起こすのも
失礼だが、起こさずにずっと横にいるのも失礼だろう、とこちらの無礼を棚に上げて徐々に苛立ちが湧き
上がってくる。
この嫌な空気を打ち破るには、彼と向き合うしかない。根負けしたような形になるのは癪だが、こちらから
話しかけることを決意する。多少の衝突は避けられないだろうが、それでもこの焦れったい沈黙よりは
ましだ。
声を発する準備として(気を落ち着ける為も少しはあるかも知れない)軽く深呼吸する。と、喉を通る空気に
彼の匂いが混じり…
何秒固まっていただろう。止まってしまった息を吐き出して目を開けると、通路の向こうに遠ざかる彼の姿。
足取りも軽やかに、ちょっとした悪戯を成功させた子供の様な屈託の無さで。
余りにも唐突だった出来事に停止した思考能力を無理矢理再起動させて、今起きたことを頭の中で
整理する。
こんな時、どんな対応をするのが適切なのか。
答は出ないままだった。ただ分かっているのは、どんな反応も全て「手遅れ」であること。唯一許される
のは、鼻歌交じりに立ち去る後ろ姿を呆然と見送ることだけ。
彼の姿が見えなくなってふと気付く、唇に微かに残る感触と温度。そして彼の匂い。
ほんの一時の遊戯からそんなに時間は経っていないのに、どうしようもない懐かしさがこみ上げてくる。
暖かいような、悲しいような。それは痛みを伴う名も知らぬ感情へと変わって胸を満たしてゆく。
こんな感情はもう捨てた筈なのに。こんな不自然な感情はあってはならない筈なのに。
この心は未だ彼に乗っ取られたままなのか。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ やっぱヘタレー。
| | | | ピッ (・∀・ )
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