Top/59-375

P6太鼓唄

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  盤再始動オメ。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  しかしやまなしいみなしおちなし。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

彼等のバンドは男女二人ずつの四人組バンドであるからして、ライブで遠征があった時は必ず男二人、女二人に一部屋ずつ与えられる。
そして他のバンドにも多いように、彼等もライブが終わるごとに打ち上げを行う。
地方で食べる地方の食べ物と、全ての地で飲むライブ後のビールは美味いのだ。(女性の一人は飲酒しないが)
その日もたっぷり汗を掻き、気持ち良く打ち上げ、がっつり食べて飲んで、すっかり酔っ払ったメンバーとスタッフがホテルに戻ったのは日を跨いで少しした頃だった。
翌日は移動日だが、時間に余裕があるためチェックアウトぎりぎりまでホテルにいることができるとあって、男二人はシャワーを翌朝にすることに決め、寝てしまうことにした。
男の内一人は後から入ってきたメンバーで、バンド内でも末っ子のように扱われている。
しかし彼の性質が元来引っ込み思案であるのか、すっかり打ち解けた今でさえどうにも遠慮がちである。
酔っ払ってしまうとそれも少し薄れるようであるのだが、それでも普段の振る舞いを忘れるような男ではなかった。
しかし、今夜はどうもおかしい。
先輩に当たるもう一人の男は重い体を引き摺り、どうにかベッドに座った。
体が重いのは、可愛い可愛い後輩がべったり引っ付いて放れないからである。
何がいけなかったろう、ビールと日本酒と焼酎とワインと酎ハイとカクテルとウイスキーとその他諸々をちゃんぽんさせてしまったのが良くなっただろうか。
後輩の胃の中の惨事を思いながら無茶をさせた先輩は眼鏡を外してサイドボードに置いた。
薦めたのも良くなかったし、他の奴等が薦めたのを止めなかったのも良くなかった。
お陰で自分に皺寄せが来ている。
何だか耳元がくすぐったい。

「ん!?」
先輩が思わず振り返ると、後輩の額と自分の額が少しぶつかった。
「痛てっ」
「ちっ、近いよ!何してた!」
尋ねると後輩はにやーっと笑った。
気味が悪いが、元の顔が良い方なので覗く八重歯が何とも愛らしく思える。
「ぁんだよ!」
「ハ.ヤ.シ.さんの匂いを嗅いでましたぁ」
へろへろ笑いながら悪びれもせずに言う後輩に、先輩―ハ.ヤ.シは引き攣った笑いを返すしかできなかった。
「ヤ、ヤ.ノ君」
「はい!」
「寝ようか」
「はい!」
「じゃあ離れようか」
「いいえ!」

後輩―ヤ.ノの酔い方が今だかつてないほど重症であることに後悔を禁じ得ないハ.ヤ.シは寝てしまえば終わりだと全てを諦めることにした。
自分を抱き枕だと思い込むことにしたハ.ヤ.シの耳元へ高い鼻を擦り付けるように、ヤ.ノはふんふんとその辺りの匂いを嗅いでいる。
何が良いのだか、自慢ではないが発汗量が尋常ではないことを自覚しているハ.ヤ.シは今自分が余り良い匂いではないことを分かっていた。
ある程度のデオドラントはしたが、もうおっさんといわれる年齢である。
付き合いはそこそこ長くて濃いつもりだが、未だにヤ.ノのことが分からない時があるのが、ハ.ヤ.シの小さな悩みであった。
しかし今は考えたって仕方がないのでさっさと眠りたいハ.ヤ.シであったが、耳元のくすぐったさと抱き締められている体の違和感はどうにも慣れない。
もぞもぞと身動ぎしても体が放れる様子はなく、むしろ尻に何か当たる。
(おいおい、勘弁しろよ…)
これではいつまで経っても眠れそうにないと思ったハ.ヤ.シは変えられない体勢のままヤ.ノに話し掛けた。
「なあ、ヤ.ノ…」
「はい」
「暑くて寝れない、放れて」
「クーラーかけてるから涼しいやないですか」

耳元で喋られると、息が掛かって鳥肌が立つ。
若干唇が付いている感じがするのは気のせいだろうか。
「…尻に何か当たるんだけど、きもいから放れろ」
「何やと思います?」
「…」
ハ.ヤ.シが答えないでいるとヤ.ノは腰をより密着させるように擦り付けた。
普通の状態が大きいだけだと思いたかったが、どうやら違うらしい。
ハ.ヤ.シは頭痛を覚えた。
酔って頭が痛いのならどれだけ良いだろうと思った。
「ねえ、ハ.ヤ.シさん…」
ヤ.ノはハ.ヤ.シの耳に呼び掛けると、うなじに唇を移してちゅうと吸い付いた。
「ひぇっ!?」
これにはさすがにハ.ヤ.シも声を上げざるを得なかった。
全身が粟立ったが、唇は放れずそのままぬるぬると滑った熱い物が肌を濡らしているのを感じた。
「ちょ、あ…!?」

ただ抱き締めているだけだった両腕も動き始めた。
掌がハ.ヤ.シの体をTシャツの上からざらざらと撫で回す。
腹回りに少し付いた肉を弱く押し込むようにその感触を楽しんでいるようだ。
ハ.ヤ.シが余りのことに驚愕し、抵抗できないでいるととうとう片方の手がTシャツの下へ滑り込んできた。
直接肌に触れた掌が余りに熱いような気がして、ハ.ヤ.シはなぜか心臓の動きが速くなるのを感じた。
「や、ちょ…やだっ…。何っ…」
うなじにあった唇は答えず、首筋に移動して痕を残そうとしているようだ。
きつく吸われて毛細血管が破れる感じがした。
「んっ…」
ハ.ヤ.シが思わず声を漏らすとヤ.ノの動きがぴたりと止まった。
いつの間にか荒くなっていた自身の呼吸に気付き、整えようとハ.ヤ.シが深呼吸すると、それが終わらぬ内にヤ.ノはこれまでにないくらいきつくハ.ヤ.シを抱き締めた。
「ハ.ヤ.シさんっ、可愛いです!ハ.ヤ.シさん!!!」
「ちょっ、何…」
「大好きですっ、大好きなんです!ずっと!!!ずっと好きなんです!!!五年前からずっと…」
「はぁっ!?」

ヤ.ノは体勢を一気に変え、上から押さえ込むような形でハ.ヤ.シをじっと見つめた。
睫毛の長い、二重の大きな目に見据えられ、ハ.ヤ.シは急に顔がかっと熱くなったのを感じた。
どうしようもなくて口を開けずにいると、段々ヤ.ノの目が潤んできた。
自分が泣かせたみたいで嫌だなぁ、と思っているハ.ヤ.シの頬に、とうとう涙が落ちた。
思わず目を瞑ると、その瞬間再び抱きしめられた。
しかし今度は力がなく、壊れ物に恐る恐る触れているといった感じだった。
自分はそんな良いものではないと思いながらハ.ヤ.シはヤ.ノの頭を撫でてやった。
丸っこい頭に短い髪がつるつるとして何だかとても気持ちが良い。
子供をあやすように背中に手を回し、ゆっくりとしたリズムでぽんぽんとしてやると、ヤ.ノは顔を上げてびしょ濡れの眼でハ.ヤ.シを見た。
「何でハ.ヤ.シさん、優しくするんですか…」
「何でって…」
「そんなことされたら俺…、…俺…」
「だって…、…何か…」

犬みたいだったから、という言葉を飲み込み、ハ.ヤ.シは代わりに頭を撫でてやった。
ヤ.ノは一層瞳を濡らし、擦り付くようにハ.ヤ.シに抱き付いた。
ハ.ヤ.シは、何だか余りにヤ.ノが可哀想に思えて仕方がなかった。
「お前、俺とキスとかしたいの?」
「えっ?」
ヤ.ノは驚いたように顔を上げ、大きな目を丸くした。
「エロいことしたいんだろ?」
「あっ…、まあ…。でも…、それは…」
ヤ.ノは顔を赤くしてハ.ヤ.シから目を逸らした。
そして、ハ.ヤ.シを抱き締めていた腕を名残惜しそうに離すと、ベッドサイドに腰掛け、ハ.ヤ.シの方を見ずに言った。
「本当に、ごめんなさい。さっきまでのことは、…忘れて下さい」
「は?」
体を起こしながらヤ.ノの丸まった背中を見ていたハヤシの口から間抜けな声が漏れた。
散々好き勝手をしたのに、いきなり放り出してなかったことにしろというヤ.ノの発言に、少し腹が立った。
「もう、本当…。…あぁっ…、ごめんなさい…

ヤ.ノは頭を垂れて顔を両手で覆っているようだ。
小さい声がくぐもって聞き取りにくい。
ハ.ヤ.シはヤノの横に腰掛け、おもむろに肩を組むと、ヤ.ノの顔を覗き込んだ。
「なあ、こっち向け」
ヤ.ノは弱々しくかぶりを振ったが、ハ.ヤ.シは強引にヤ.ノの両手を顔から引き剥がした。
思わずヤノがハ.ヤ.シの方を向くと、ばっちり眼が合ってしまった。
少し怒っていることが表情を見て取れたので、ヤ.ノはいよいよ不安で堪らなくなった。
「なあ、お前さぁ、何なの?散々さぁ、好き勝手しといてさぁ…なぁ!聞いてる!?」
怒鳴られ、ヤ.ノは体をびくりと震わせた。
殆ど聞き取れないくらい小さな声で一回「ごめんなさい」と言ったが、それは果たしてハ.ヤ.シの耳に届いていただろうか。
「あのな、お前、男だろ。男ならな、お前…あ、あれだよ。な、何とかしてみろよ!」
恐らく言葉が上手く出てこなかったのだろう、ハ.ヤ.シの適当な丸投げを結果的に受ける形になってしまったヤ.ノは涙目で困惑した。
一方ハ.ヤ.シも自身が言ったことに対してヤ.ノがどのようなアクションを取れば正解なのか分かっていなかった。
自分で何とかしてみろと言ったものの、一回怒鳴るとすっきりしてしまったので何だかどうでも良くなってきたハ.ヤ.シは、もう一度謝るか何かしてきたらもう許してやろうと思っていた。
しかし、ヤ.ノは空気を読まなかった。

いきなりハ.ヤ.シの両肩を強い力で掴み、自分の方にその体を向けた。
ハ.ヤ.シがこれはまずいという考えに至る前にヤ.ノが殆ど叫ぶように言った。
「しっ…、失礼します!!!」
やめろ、という言葉を放つ前に唇を塞がれたハ.ヤ.シは自分の発言を心底後悔した。
ただ押し付けてくるだけならまだ良いのだが、言葉を発そうとしていたため薄く開いていた口の中にヤ.ノの舌が強引に入ってきた。
なぜこういう変な度胸はあるのだと思いながらも、ハ.ヤ.シはそれを受け入れるしかなかった。
自身で撒いた種だ、責任は取らねばならないし、経験の一つとして悪くはないだろう。
それに案外嫌悪感はない。
そういえば最近キスなどしていなかった。
それにしても少々息苦しい。
「っぷあぁ長い!!!」
ハ.ヤ.シは思わずヤ.ノを突き飛ばした。
勢い余ってベッドに倒れ込んでしまったヤ.ノだが、なぜかなかなか起き上がらない。
サイドボードに頭をぶつけたのだろうかと思い、覗き込むと、そのままハ.ヤ.シはヤ.ノの腕に捕らえられてしまった。
今度は向かい合う形でぎゅうと抱き締められ、顔がヤ.ノの胸に埋まってしまったハ.ヤ.シは放せと言わんばかりに暴れた。

すると、案外すんなりヤ.ノの腕が緩んだ。
しかし放す気はないようで、両腕はやんわりとハ.ヤ.シを拘束している。
「もう…、何なんだよ…」
ハ.ヤ.シが文句を付けようとヤ.ノの顔を見ると、照れたように笑っている。
元の顔が良いだけに、不覚にもその笑顔にどきりとしてしまったハ.ヤ.シの隙をついて、ヤ.ノが言った。
「ハ.ヤ.シさん、俺嬉しいっす。ハ.ヤ.シさんとキ、キスできるなんて、まるで、何か、夢みたいっす」
「お、おう。そ、そうか。じゃ」
「俺もっと頑張ります、頑張ってハ.ヤ.シさんのこと気持ち良くします!」
「あ、は…、…は?」
じゃあ放せ、を言わせてもらえなかった上に、何だか飛んでもない発言を耳にしたような気のするハ.ヤ.シは迫りくる身の危険に対して引き攣った笑いを返すしかなかった。
「俺、男なんで何とかします!!!」
とても良い笑顔でそう言ったヤ.ノを見てハ.ヤ.シは重要なことを思い出した。
そうだ、ヤ.ノは酷い酔っ払いだった。

翌日、自身の発言の責任を十二分に取ったハ.ヤ.シの言うことを、普段以上によく聞くヤ.ノの姿が見られたという。

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  次回があったら投稿ペースに気を付けます…。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  一分間隔くらいって大事。
 | |                | |             \
 | | |> STOP.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

390さん
ありがとうございました!

P6、秋シア一楽しみ。
ただもうちょっとでかいキャパでやってほしい。


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP