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眠りの朝

ぴク差ー、玩具話3で宇宙船氏×保安官
映画ネタバレですご注意願います。
ED後の話です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

明かりの消えた子供部屋は昼間よりも輪郭がぼやけて、前に過ごした部屋を思い出す。
記憶に鮮やかに残る部屋よりも、ピンクや赤の目立つ風景。
窓辺に座る宇っディは、ベッドで寝息を立てる少女を一瞥してから庭へと視線を落とした。ふう、と吐いた息は、目の前のガラスに当たって少しだけ白く曇る。
可愛らしい子供部屋の、楽しい楽しい一日目の夜。

自分で望んだことだ。
誰にも、強制されてやしない。

「宇っディ」
振り向かなくても誰か分かった。
低くて耳障りのいい声は、いつだって自分を落ち着かせてくれる。
凶悪な子供部屋で恐怖に怯えた夜も、帽子をなくした日の朝も、煮えたぎる炎を前にした死の瞬間も。
「どうして案ディと行かなかった?」
「みんなで一緒にいるためさ」
オモチャたちにとっては無限に伸びる道路を目線でなぞって、間髪入れずに宇っディが答える。
背を向けた相手が、言葉を続ける。
「後悔しているんだろう」
「していない」
「キミは嘘が下手だ、保安官」
顔を覗きこんでこないのは優しさだ、意地悪じゃない。そんなものこの正義の戦士が持ち合わせているわけがない。
だから余計に、綿の詰まった心が抉られる。手放した未来が、今更になって胸に襲ってくる。
「案ディと一緒に大学に行って、勉強机の上に飾られて、たまの夜には懐かしく抱き上げられる」
そうだ、それは手に入るはずだった夢だ。毎晩毎晩、湿った箱の中で眠りながら、狂おしいほど求めた結末だ。

ぎゅうと畳んだ膝に顔を埋めて、宇ッディは自分の視界を閉ざす。閉じた世界の中で、静かな声が繰り返す。
「それを君は望んでいたはずだ…どうして戻った?」
思わず、顔を上げて振り向いていた。
「しつこいぜ、場ズ!俺が決めたことだ、口出しされる筋合いはない」
向かい合った相手の表情は変わらない。相変わらず、憎たらしいほどだ。
「その通りだ」
軽く頷いて、トコトコと近づいてくる相手が横に腰掛ける。こうやって横に座るのは久しぶりのような気がしていた。
「今日は楽しかったな」
場ズがぽつりと呟く。
久々に案ディの手に包まれて、日が落ちるまで遊んだ。遊びまくった。震えるほどの喜びが全身を駆けて、みんな、彼のおもちゃとして生まれて良かったと心から思った。
宇ッディは場ズの言葉に深く頷いて、それから笑って銃の形にした手を場ズへと向けた。
「…『おいポテト頭、ここが年貢の納め時だぜ、銃を捨てろ。手ぇ上げな』」
突きつけられた指に、場ズがニヤリと唇の端を上げた。立ち上がって、大袈裟なアクションで両手を挙げる。
「『待て待て相棒、違うぞ俺だ。銀河を守る宇宙戦士、場ズ・ライト伊ヤーだ』」
「『なんだって!?場ァズ、生きていたのか!!ようし、一緒に悪を倒し、囚われのジぇシーを救出するんだ!』」
そこで、宇ッディの長い腕がぽとりと横へ落ちた。勝気な瞳が沈んで、眉根が下がる。
「一緒じゃないと意味がない」
「宇ッディ」
「俺たちはみんな、仲間だ。どんな遊びも、冒険も、仲間と一緒じゃなくちゃ、俺は楽しくないんだよ、場ズ」
ぼんやりとした星の光の下で、二つの人形が顔を合わせる。やがて静かにゆっくりと、場ズが口を開いた。
「それは同感だ」
座ったまま、肩を軽く叩かれた。そうされると、安心する。いつものことだ。
「邪魔してすまなかったな、宇ッディ。私はもう、休むことにするよ」
「場ズ」
立ち上がりかけた場ズの腕を、不意に宇ッディが掴む。覗き込んだ場ズの眼の中に、揺れる自分の情けない表情が映っていた。

「場ズ、俺はもし案ディが君も一緒に連れて行くと言っていたら―――」

開いた唇が、何か重なるものによって封じられる。
固く冷たい感触の奥に、滲むような温もりを感じた。
「カウボーイ、それ以上は言わないでくれ」
触れたものはすぐに離れて、おやすみ、と耳に囁かれる声を聞いて、彼は窓辺から音もなく飛び降りた。まるで勇敢な宇宙戦士のように。
ベッドに戻るその背中を見て宇ッディは、彼もまた同じ望みを抱いて、その望みに深く傷ついていたことを知った。
(ごめん)
場ズへの言葉と共に、気持ちがあふれ出しそうになって膝を抱えた。

案ディ。案ディ。案ディ。
いつまでも、案ディのおもちゃとして存在していたかった。
いつまでも、君の温もりを感じていたかった。
いつまでも、大人になってほしくなかった。
いつまでも、みんな。
おもちゃのエゴは、どこにも行けない。

君はいつか、もう一度俺を抱き上げてくれるだろうか。

オモチャにとっても、子供にとっても待ちわびる朝がもうすぐやって来る。
窓辺に差す明るさが古びたカウボーイ人形の目を焼いて、窓辺にひとつ落ちた雫は、
存在するはずがないものとしてすぐに乾いて消えた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

  • この作品関係は初めて見ました。私は反対CPが好きだけど、これはこれでイイ! -- わお? 2010-08-09 (月) 23:49:05
  • 泣いた… -- N? 2010-08-17 (火) 23:43:21
  • 私も反対のPCの方が好きです。でもリバもいいかもと思いましたww -- ? 2010-08-24 (火) 22:57:05
  • 私も反対のCPの方が好きです。でもリバもいいかもと思いましたww -- ? 2010-08-24 (火) 22:57:17
  • 私も反対CPの方が好きです。でもリバもありかもと思いましたww -- ? 2010-08-24 (火) 22:58:26
  • 本命CPなので盛大に萌え死にました←また読みたいです!!!!!! -- 2010-11-04 (木) 03:56:28

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