意図
更新日: 2011-04-24 (日) 16:29:13
生。旬ものかな? 某番組での会話より。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
彼の部屋を訪れたのは、他意があってのことではない。
この地で彼らに提供された場所は素晴らしい景観とアメニティをあわせもってはいたが、
いかんせん限られた人間と限られた空間に長く拘束されるというのは苦痛を伴うもので、
日が経つにつれ、彼らの大部分がここでの時間を過ごすのに四苦八苦していた。
そのための対策を練ってきた彼らに対して自分はいささか不遜だったかもしれない。
自分が放った一言は、一様に彼らを呆れさせた。つまり「なんか貸して」である。
そのターゲットはもっぱら彼になった。
日課のように往復している彼の部屋に、いつものようにおざなりにノックして、
返事を確かめもせずに入る。しかし彼の姿はなかった。
いくらこのフロア一体は彼ら一行が占拠しているとはいえ、この国でこれは
ちょっと不用心なんじゃないか? 彼らしくもない…と思い、他人の部屋に勝手に
入る罪悪感よりもこの部屋を空にしたまま自室には戻れないという義務感が勝って、
主のいない部屋へ踏み込んだ。
そもそもこの部屋を訪れた目的である、見終わったばかりのDVDの続きを探したいという
気持ちがあったことも否定できない。
勝手に好きなの持ってけ、と数日前に彼が示した荷物の中から目的のものを
見つけ出すとすぐにやることがなくなった。部屋に踏み込んでDVDを漁ることは
できても、それを勝手に再生したりその他の私物に手を出すことはさすがに
はばかられたので、手をつけても問題ないと思われるベッドの上の読みかけらしい
雑誌を捲りながら彼を待つことにした。
しばらく没頭して読んでいた記事が終わって顔を上げ、ずいぶん時間が経過したのに
気付き、ようやく彼はどこへ行っているのだろう、という疑問が頭をもたげた。
といってもやることは限られている。スタッフと大事な話をしているのか、あるいは
他のメンバーと暇つぶしにゲームでもやっているのか。
いつ戻ってくるかわからないから自室に帰ろうか、でもそれだと俺本当にただ留守中に
忍び込んだだけになるし…と逡巡する。さっさと帰って来いよ。と八つ当たりのように
思いながら雑誌を投げ出してベッドに倒れこんだ。そのシーツに微かに温もりを感じて
心臓が鳴った。
彼とこうして同じ目標を掲げて異国の地で長い時間を共に過ごすのは初めてではない。
ただ、それが当たり前だと信じていた6年前と比べると、それからの二人が歩いた道程を
考えれば、こうして再び同じ地に立っているのは奇跡だとすら思えた。
閉じた目蓋の裏に彼の姿を浮かべてみる。
いつもどこか飄々として、困難を前に苦闘しているときにさえ自信を傍らに携えて、
見ている自分の不安さえ取り払ってしまう。懐に飛び込んだつもりがするりと交わされて、
逆に予測のつかない角度からあっさり自分の核心に触れられて戸惑う。
まるで彼のプレイスタイルそのままに。
きっと、彼は知っているのだろう。
彼のその姿に、言葉に、伸ばしてくる手に、どれだけ自分が掻き乱されるか。
知っていて笑いながら近づいて、簡単に触って、髪といっしょに自分の心をぐしゃぐしゃに
したまま別の誰かのほうへ行ってまた笑う。
「タチ悪……」
ぽつりと声に出してから、消えそうな彼の温度を確かめるようにシーツに頬をうずめた。
部屋の前に立って、ドアが完全に閉じていないことに気付いてヒヤリとした。
しまった、やられたかもと覚悟しながらドアを押し、ベッドの上に本来あるはずのない
物体を見つけ、覚悟したものとは別の種類の驚きに固まる。
そこに見慣れたジャージ姿の男が横たわっていた。
まさか隣の部屋と間違った?
いやいやこの自分の私物だらけの部屋にそれはないだろう、と思い直し、近付いてその
体の脇に彼の獲物を見つけて合点がいった。
それにしても人の留守中に勝手に入り込んでベッドを占領したまま眠りこんでしまうとは
油断ならないというべきか、油断しすぎというべきか。
据え膳食わぬは何とやらという言葉が一瞬頭を掠めたが、苦笑して追いやった。
実際、悪い気はしない。
彼がこうして自分の部屋で無防備な姿を晒していることは。とりもなおさず、自分への
信頼を表しているようで。
おとなしく丸まった寝姿からはプレイ中の激しさなど微塵も感じられない。普段から
よくも悪くも正直で嘘のつけない彼だが、試合になるとまさに火のような熱さで誰にでも
ぶつかっていく。その炎は時に周りも彼自身をも巻き込んで批判の的になることもあるが、
焼き切られそうな彼の視線の中が自分がおさまることは不思議な昂揚をもたらしてくれる。
きっと、彼は知らないのだろう。
彼のその姿に、温度に、まっすぐ見上げてくる瞳に、どれだけ自分が揺り動かされるか。
知らないで隙だらけのまま近づいて、信頼しきった顔をして、だからいつも手を伸ばしても
中途半端に触れるだけで、とどめ置くこともできない。
「タチ悪いわ……」
寝顔におりた手はやはり曖昧に触れただけで、すぐに行き場を失い滑り落ちていった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )まだまだ萌えが止まらないよ!
次に彼らを見れるのはいつなのか。
むしろ今後彼らを同時に見れる日はあるのか。そう思うと切ないです。
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