選択は自由
更新日: 2011-04-24 (日) 16:48:46
オリジナル 社会人×社会人あほの子です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「俺、先輩ならバックバージン捧げてもいいと思ってますー」
「また言ってるよ」
サークルOBが集まっての飲み会の後、先輩のアパートで飲み直しの真っ最中。
いつか言ってやろうと思ってはいたんだ。先輩はオットコ前ですって、言いてぇなあーと思っていたまま、なかなか会えなかったのだ。
「いやいや、本気ですしー」
「あ、そ」
「ほんとほんと、本気にしてくださぁーいー」
「酔っぱらいに言われてもな」
「酔ってませんって」
「へいへい」
「どーしたら俺の本気がわかってもらえますかぁー」
「わかってるわかってる」
「んー、じゃあ先輩キスしましょぉー」
「はいはい」
ベッドに背中を預けて、どうでもいいように顔をこちらに向けた先輩の首に手を回して、んーちゅっと軽くキスをする。
酒が入るとキスがしたくなると言うのは、寂しんぼだからだ、と、ついこないだ振られた彼女に言われた言葉だけど、そうかもねーと思う。
キスはいい。
いいのよキスは。
飲み会となると俺はあちこちでキスしているらしい。
俺は寂しい。正直、彼女とヨリを戻せねぇかなあ、と頭の隅で考える。
両手で先輩の顔をはさみ、よくよく見つめてみる。んー、男の俺から見てもかっこいい。
「ほんっとぉ、先輩っていい男っすねー、無精髭っぽい髭似合うかもー。ジョニデみたいかもー」
「はいはいどうもどうも。相変わらずお前はキス魔だね」
「そうなんすよー。でへへ」
唇をとがらせてもう一度キスしようとしたら、先輩の手で避けられた。
「先輩、俺今日泊まりますねー」
「いいよ」
「先輩、俺と一緒の布団で寝ましょうねー」
「やだよ」
「ええー、なんでー、ほんと、俺、先輩ならバックバージン捧げてもいいくらい先輩のことが好きなのにぃー」
「やだよ、お前みたいな面倒なの」
「ええー? 俺面倒じゃないっすよー? 寝相はいいですもん」
「面倒だよ、ストレートでノーマルな男なんか。お前、エッチだって正常位だけだろ」
「んなことないっすよぉー、いろいろやりますって」
どーも先輩の言ってることと俺の言ってることのニュアンスがイマイチ違う気がするな、と思いつつ、ここで引くわけにはいかないからムキになる。
ノーマルったってエロ話だって好きだし、AVも大好きだし、あれこれだって大好きだ。
先輩は缶ビールをぐびりと飲むと、横目でこちらを見て、
「んじゃ、お願いしてみな」
と言った。
「はい? お願い? なんすか?」
「『どうぞ、俺と寝てくださいお願いします』」
「はい?」
「『どうぞ』」
「どうぞ」
「『俺と』」
「俺と」
「『寝てくださいお願いします』」
「寝てくださいお願いします」
先輩はにやりと笑うと、もう一口ビールを飲んでベッドに腰掛けた。
「んじゃ、俺の前で正座してもう一回言ってみ」
なんかやっぱりちょっと俺の意図する所と違うような気がするな? と思いながら、先輩の前に正座して、顔を見上げ、
「どうぞ俺と寝てくださいお願いします」
と言った。
先輩の顔を下から見上げると、えらく男っぽい。
こんな角度で人の顔を見るって、普通無くない? つか、正座して見下ろされる、この体勢って何。
先輩の視線が俺の顔からゆっくりと下に下がっていって、首筋とか、胸とか、腰とかを眺められる。
落ち着かなくて、なんかこう、先輩ってドSくさーと思う。付き合い長いけど、先輩ってこんなキャラだったっけか。
「覚悟が足りないなあ」
「なんすか、覚悟って」
「お前酔っぱらってるしなあ。酔っぱらいと寝る趣味ねぇの、俺」
「すぐ醒めますってー」
「じゃあ、酔い醒ましに散歩がてら買い物行ってこいや」
「よろこんでエー」
パシリになる、それで覚悟とやらが先輩に伝わるならおやすい御用ー。
「駅の近くにドラッグストアがあったろ。あそこ、終電近くまでやってっから」
先輩は紙の切れっぱしに何かメモをして俺に渡してよこした。
「後で金はやるから、立て替えといて」
「喜んでェー」
正座したまま片っぽうの尻をくいっと持ち上げてジーンズのポケットにメモをねじくりこむと、立ち上がる。
先輩も一緒に立ち上がると、俺の目の前に立ち、
「口ちょっと開けてみ」
と言って、訳が分からんうちに顎をつかまれてキスされた。
キスって言うのはこう言うの、と言うようなキスだった。深い。深くて俺の舌に絡んで来る先輩の舌がエロい。
これが女の子だったら確実に腰が砕けてる。
「お前が選ぶんだからな」
唇が離れると、すぐにくっつきそうな距離で囁かれる。
「はい? 買うものを?」
「まあいいから行ってこい」
とん、と肩を押された。勢いでよろめく。おお、やっぱり俺酔ってるわ。
アパートの玄関で靴を履いていると、また声をかけられた。
「携帯と財布持ったか? 忘れ物ねぇか」
「? なんすか、実は俺追い出されモード?」
「いやいや、泊めてやるよ、もちろん。お前が戻ってこれたらな」
「えぇ? 酔ってたって迷子にゃなりませんよー。ってきます」
「おう」
夜の住宅街をぶらぶら歩き、ドラッグストアの手前で自販機を見つけ、のどの渇きを覚えてスポーツ飲料を一つ買う。
ペットボトルの半分を一気に飲むと、体中に水分が行き渡った気がして一息ついた。
酔ってる時はスポーツ飲料は良くないんだっけかなあ、と思いつつ、残りも飲み干して、ゴミ箱にペットボトルを投げ込む。
歩いたのと、冷たいものを飲んだので頭がさっぱりして、少し酔いが醒めた気になる。
こうこうと白い明りが目にまぶしいドラッグストアに入り、おびただしい商品の棚の中を歩いて、そう言えば、と尻のポケットからメモを取り出す。
・ゴム(L)
・ローション
殴り書きの先輩の字。
なんだよゴムって。Lサイズとか見栄張っちゃってぇ。
ってゆーか、なにこれ、他人のコンドーム買わされるなんてどう言う羞恥プレイ。
ぶふふふっと笑いながら、カゴにご指定のLサイズを入れる。
あとローションって何だ、化粧水か。先輩ってオシャレさん。イケメンはたゆみない努力で作り上げられているのだな。
「男性用化粧品」のボードが天井から下がっている棚の所へ移動していろいろ見るが、どれがいいのか分からない。
携帯でメールする。
先輩の化粧水何ですか
しばらくして、手の中の携帯がぶるっと震える。
化粧水じゃなくてゴムの横に並
んでるヤツだよ
お前の好きなのどれでもいいよ
ん?
なんだか目が滑って、液晶をじっと見つめる。
ゴムの横?
もう一度、コンドームだなんだが置いてあった棚の前に移動して、ようやく理解する。
ローションって、あれか! アレの時に使うぬるぬるするアレか!
俺の好きなの、って、なんだそりゃ。わかんねえ。とりあえず、ピンク色のチューブを適当に選んでかごに入れる。
ほんとこれ、酔いも醒める羞恥プレイだわー。鬼畜だわー。こんなこと考えつく先輩ってある意味すげぇわ。
そういや他にも何か書いてあったな、とメモを見直す。
・ゴム(L)
・ローション
・イチジク浣腸2コ
「え?」
さっきは目が滑って見えてなかったと言うか、単語が頭に入らなかったそれが、今度はしっかりと目に飛び込んできた。
「え?」
そして、そこで初めて、俺が言ったことと先輩が言っていたこととメモに書いてあることが繋がった。
さーっとすごい勢いで酔いが醒める。
誰かが俺を見たら、コンドームの棚の前で、ぽかんと口を開けてアホみたいにメモを見つめて固まる男が一人と思われただろう。
(面倒だよ、ストレートでノーマルな男なんか)
(どうぞ、俺と寝てくださいお願いします)
(覚悟が足りないなあ)
(終電近くまでやってっから)
(忘れ物ねぇか)
(お前が戻ってこれたらな)
(お前が選ぶんだからな)
(お前が選ぶんだからな)
先輩が言った言葉が頭の中でぐるぐる回る。
まだ間に合う終電。
先輩のアパートには忘れ物は無い。うん、無い。
正座した俺、
深いキス、
俺の舌に絡まる先輩のエロい舌、
無精髭が似合いそうな男前の先輩。
終電までまだ時間はある。駅はすぐそこ。逃げ道を用意したのは先輩。
その時、手の中の携帯が勢いよく震え出した。
驚いて取り落としそうになりながら、発信者を見ると、ヨリを戻してぇなと思っていた元カノだった。
俺はヨリを戻したいと思っていた。
そうだ、電話に出れば。そして電車に乗れば。逃げ道はすぐそこに。
終電、
元カノからの電話、
アパートにいる先輩、
選ぶのは俺、
…俺?
って、何で俺、迷ってるの? 普通は迷わずに電話出るコースだよね?
すぐさま店を出て駅に向かって電車に乗るコースだよね?
え?
…え?
俺はコンドームの棚の前で、震え続ける携帯を手に、立ち続けている。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- そこはかとなく漂うエロスと真剣な先輩の気持ちにノックアウトです。 -- りん? 2010-09-26 (日) 11:20:46
- あほの子が可愛すぎるwとっとと先輩の家に戻って美味しく頂かれてしまえ!と心から叫びたい。萌えをありがとうございました。 -- 2010-10-09 (土) 00:39:42
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